ルフィの娘の過去改変記 作:微炭酸は弾けない
「それはありえない。お前、歳は?」
「17です」
「どうやらまた適当なウソを――」
「モンキー・D・ルフィ、それが貴方の息子ですよね?」
ドラゴンお祖父ちゃんが目を見開く。
革命軍のトップ故に『世界最悪の犯罪者』と称されて追われる彼は当然ながら家族のことを同じ革命軍のメンバーにも明かしていなかったと未来でロビンさんに聞いたことがある。信頼できる仲間にすら言っていなかったことを知っているのだから、少なくとも冗談とは取られないだろう。
「モンキー・D・ルフィ!?最近、暴れに暴れている超大型ルーキーだろ!?」
「ニコ・ロビンが乗っている船の船長か!あのエニエス・ロビーを壊滅させた……」
「最近じゃあ、天竜人を殴り飛ばして海軍大将に追われながらも逃げ切ったって聞く危険人物だ!」
「そもそもドラゴンさんに息子いるのか?」
パパの名前はこの時代でも有名だ。丁度、天竜人を殴ったことが大事件として世界を震撼させた直後だし、皆が一斉にドラゴンお祖父ちゃんに詰め寄った。
「ドラゴンさん、本当なんですか!?」
「ん、ああ」
ドラゴンお祖父ちゃんが適当に認めると途端に騒がしくなる。
「だとしたら全然似てないじゃん!」
「ママ似なんですよ。あっ、私のママは海賊女帝ボア・ハンコックです」
「海賊女帝!?あの世界一の美女と名高い!?凄いな、ドラゴンさんの息子!」
「ところで可愛いお嬢さん、お名前は?」
「えっ、その、コアラ、ですぅ〜!」
ママの名前が出るとにわかに騒がしくなった男連中を余所に、サボおじさんをボコボコにしたり、治療したり忙しそうだった帽子の女の子が気になっていたので名前を聞いたけどコアラさんというらしい。両手を握って微笑んだら、何とか名前は教えてくれたものの、顔を真っ赤にしてサボおじさんの後ろに隠れてしまった。小動物みたいなアマゾン・リリーではあまりない反応だ。もっと仲良くしたいけど、時間がないのでそれはまた今度かなぁ。
「そういえば皆さん、私の自己紹介がまだでしたね。私はボア・ソラーレ。ソラで良いですよ」
「……モンキーじゃないんだ」
「ガープ爺がモンキーなんて碌でもない名は名乗らんほうがいいって言うんで、ボアを名乗っています。まあ、私が次期アマゾン・リリーの皇帝なのでそれが自然かとも思いますし」
コアラさんの呟きには即座に答えていく。こうして相手の些細なことにも反応し続け、会話を重ねていくのが女の子と仲良くなるコツだとレイリーから教わった。
「ガープ!?もしかしてドラゴンさんの親父さんって」
「ええ、海軍の英雄、伝説の海兵、海軍中将ゲンコツのガープですよ」
「どうなってんだアンタの家系はっ!」
ドラゴンお祖父ちゃんはあまり気にした様子がないけれど、実際私達の血筋ってとんでもないことになっているからねぇ。『伝説の海兵』の息子が『世界最悪の犯罪者』でその息子は『七武海』。いやー私みたいな美しくて聡明で清純な乙女が生まれてきたことが奇跡だね。
「俺の息子のことを知る者は極めて少ない……だが、ルフィは今17だ。まさかルフィが0歳の時の子供と言うんじゃないだろうな」
「だから言ったじゃないですか、未来から来たって」
騒がしい周囲を気にした様子もなくドラゴンお祖父ちゃんは私を見極めようとしていた。時間はないけど、この辺はしっかりと説明しとかないとね。
「タイムマシン開発中の事故で意図せず過去へ来てしまったというわけです。私が言うタイムマシンというのは元々Dr.ベガパンクが構想していたもので――――」
状況や、タイムマシンの理論を掻い摘んで説明するとドラゴンお祖父ちゃんは難しい顔で考え込み、やがて一応は認めてくれたみたいである。
「……つまりお前は未来から来た俺の孫、そう言いたい訳か」
「そのとおりです。理解が早くて助かります、ドラゴンお祖父ちゃん♡」
「はぁ、理解したわけではない。色々と信じがたい話が多い。故にお前が何者であるかはこの際どうでもいい。重要なのは――何が目的でここへ来た?」
「ああそうでした。それが私がサボさんのビブルカードを持っていることに繋がるんですけど」
どうやらドラゴンお祖父ちゃんにとっては私が何者であるかよりも、私が何を目的にした人か、が重要なようだ。流石は革命軍として政府と戦ってきた男、『未来から来た孫娘』なんて大難題があっても必要な情報を見逃さない。
今、彼が知るべきと判断しているのは、バルティゴの場所を知り侵入できる
だから私はただ敵でないことを示し続ければ良い。実際、私の目的は革命軍に敵対するような話ではないのだから。
「サボさんはパパとエースおじさんと盃を交わした義兄弟なんですよ。私からするとサボおじさんということです」
「俺が!?火拳や麦わらと!?」
「何?……いや、サボを保護したのはゴア王国だ。ありえない話じゃないが……サボは恐らく貴族の生まれだぞ?ルフィやエースと深い関わりになるとは思えない」
「サボおじさんは自由を求めて家出してたらしく……まあその辺のところは
私もそんなに詳しくは聞いてないから、どうやって3人が義兄弟になったのかはぼやっとしか知らない。というかパパもサボおじさんが女ヶ島を訪れるまで生きていることすら知らなかったらしいからね。
革命軍と行動を共にしていたロビンさんを女ヶ島まで送るためにサボおじさんもついてきて再会したんだとか。
「これ、記憶喪失に良く効く薬です」
チョッパー先生から教えを受ける身としては万能薬を目指したいところなので、ありとあらゆる状況に対応できるようにある程度の薬は常に持ち歩いている。私はパパみたいに引くレベルの毒耐性とかないしね。その中から記憶喪失に効きそうなものをチョイスして出してみた。これはあまり接種してはいけない系の薬物を複数種類混ぜ合わせたもので、本来は自白剤として使用するものなんだけど、使い用によっては脳を刺激し、記憶を呼び覚ませると思うんだ。未来の世界ではサボおじさんは記憶を取り戻していたし、切っ掛けさえ与えれば可能だろう。
「私を信用出来ないのなら飲まないほうが良いと思いますが」
「いや、飲むさ。俺が本当に君の言う通りなら……“今”知らなくちゃ一生後悔するっ」
今日あったばかりの怪し過ぎる女から手渡された薬なんて、普通なら絶対飲むべきではないんだけど、サボおじさんは躊躇なくそれを手に取り、勢い良く口に放り込んだ。
「うわぁあああああ〜!?」
変化は劇的だった。頭を抑えて叫ぶサボおじさんの姿は尋常ではなく、コアラさんなんて今にも飛び出しそうなのを必死に堪えている。そんな状況が数分続いて、サボおじさんの様子が落ち着いた。
「サボくん、大丈夫!?」
「はぁはぁ……思い、出したっ!ルフィとエースは俺の兄弟だ!!!」
涙を流しながらサボおじさんは全ての記憶を取り戻したらしい。記憶喪失の人にこの薬使うの初めてだったけど上手くいって良かった。正直、成功するか五分だったんだよね♡
「感謝するよ――これで俺はエースを助けられる」
「まだ気が早いですよ。一緒に来てくれるならすぐに出ましょう、時間がない」
天候次第ではここからだと開戦に間に合うかギリギリだ。サボさんは深く帽子を被り直すと、ドラゴンお祖父ちゃんの方を真剣な表情で見詰めた。
「ドラゴンさん」
その一言に込められた熱は、サボおじさんの言わんとしていることを十分以上にドラゴンお祖父ちゃんへと伝えた。
「フフッ……行って来い!!!それがお前のやるべきことならな」
「ええ、必ずやり遂げますよ」
まるで息子の船出を祝うかのように笑ったドラゴンお祖父ちゃんとサボおじさんが拳を合わせる。
「サボ君!私も!」
「コアラは待っていてくれ。これは革命軍参謀としての俺じゃない、エースとルフィの兄弟としての戦いなんだ」
コアラさんの頭に手を置いて言い聞かせるように話すサボおじさんの口調は優しい。……水を差すことになりそうだから言わないけど、オクトちゃんに乗れるのは私以外に後1人なのでコアラさんはどうやっても行けない。空気を読める私はそれを口にせずに黙って待った。
「絶対、帰ってこないとダメだよ?」
「分かってるさ」
何この甘酸っぱい雰囲気。周囲の革命軍メンバーもちょっと気恥ずかしそうに目を逸らしたりしている。アマゾン・リリーって男いないからこういうことってないし、何か新鮮だ。
「サボおじさん良いですね、可愛い女の子にあそこまで想ってもらえて」
「そういうのじゃないさ。……それと、そのサボおじさんっていうの止めてくれないか?違和感があって仕方ない」
「まだ私生まれてませんしね。では、サボさんで」
コアラさんと別れてこちらへやってきたサボおじさんを小突くと照れを隠すように呼び方を提案された。仕方ないのでサボさんと呼ぶことにする。
「そんなに食料いるか?これ少し減らせば後1人くらい――」
「――必要です。誰がなんと言おうと必須なんです」
アマゾン・リリーで貰った食料は全部食べ切ってしまったので食料を補充させて貰っているとサボさんが良く分からないことを聞いてきたので、当たり前の回答をする。
これでも我慢しているので絶対に必要である。食料減らせば後1人くらい乗れるけど、食料は必須なのである。
「さて、準備は出来ましたけど――覚悟は出来てますか?これからたった2人で頂上戦争に踏み込むことになりますが」
「覚悟?そんなものは盃を交わした時に出来てるさ」
サボさんは久しぶりに思い出した昔のことが浮かんでいるのか満面の笑顔でそう言った。
「あ、やっぱり一旦お風呂借りてきていいですか。次いつ入れるのかと思うとムズムズして」
「時間がないんだろ!?良いから行くぞっ!」
「あ~私のお風呂タイムぅ!!」
うぅ、時間がないのは確かなので泣く泣く諦めることにする。やはり無理してでもオクトちゃんにお風呂を付けるべきだったか。
時計サイズにまで小さくするために余計な機能としてお風呂を省いたフランキーを恨みながら、私はサボさんと共にマリンフォードへ向けて出発した。
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