ルフィの娘の過去改変記 作:微炭酸は弾けない
マリンフォード、処刑台。
頂上戦争の引き金、『海賊王』ゴールド・ロジャーの息子、白ひげ海賊団2番隊隊長――『火拳』のエースはそこで跪き処刑の時を待つ。その横には歴戦の老兵が2人。海軍本部元帥『仏』のセンゴクと海軍本部中将ゲンコツのガープである。
「黄猿!?何があった!?」
「いや~センゴクさん。ありゃとんでもないのが乗ってますよ〜」
上空から光となって処刑台に現れた黄猿が膝をついている様子にセンゴクが慌てて問い質す。未確認の飛行物体を確認するため空へと偵察に向かった黄猿がこれだけ疲労していれば、何があったのかと慌てるのも無理はない。
「革命軍の幹部が乗っとりましてね〜」
「何!?おいガープ!また貴様の『家族』か!麦わらと言い、この戦争を何度かき回せば気が済む!!!」
「わしにも分からんわい!ドラゴンに聞けい!」
「聞けるなら苦労せんわ!!!この馬鹿者が!!!」
ガープの胸ぐらを掴み、これでもかと揺らすセンゴク。天竜人を殴りながらも大将から逃げおおせ、インペルダウンに侵入しては、脱獄囚を率いてこの戦場に現れた麦わらのルフィ。海軍の面子を踏みつけにするような事態であり、これだけでも頭が痛いのだが、ここに『世界最悪の犯罪者』ドラゴンまで参戦すればもう収拾がつかない。センゴクのストレスの原因がほぼガープの血筋によるものなのだから、どつき回さないだけ仏の名に恥じぬ鋼の理性である。
「くっ、乗っていたのは誰だ!」
「ありゃ〜参謀総長のサボでしょうね〜」
「No.2をこの戦争にっ!?何を考えてるんだドラゴンはっ」
革命軍がこの戦争に横槍を入れる理由は何か。どんな策略があるのか。センゴクがこの戦争にもたらされた新たな火種に頭を悩ませているところに、黄猿が頭をかきながら、さらに厄介な情報を告げる。
「それよりもわっしは一緒に乗っていた女が怖いねぇ〜」
ドクロの仮面に顔の上半分を隠されていても分かる美貌と、蠱惑的な魅力を振り撒く肢体。特徴的な要素を多く持つそんな女性はこれまで革命軍には確認されていなかった。今まで前線に出てくることはなかったのか、新たに加入したのか。
「あんなのは革命軍にはおらんはずでしょ〜。わっしの光を逸らしたりする曲芸は別に良いんですがね、無名とは思えねぇ覇気に、能力を無効化する不可思議な道具を持っているようでしてねぇ」
能力には相性というものがある。黄猿の『光』に対して有利な能力ならば光の攻撃を避ける手段もあるのだろう。しかし、黄猿の本気の一撃を止め、叩き落としたあの覇気による足技、何より、海楼石でもないのに能力を封じられたあの不思議な泡は、危険だ。
「どうしますセンゴクさん。また戦え言うならわっしも本腰入れなぁいかんのですがね」
「……いや、深追いするな。処刑時刻までここを死守することを最優先させるんだ。ドラゴンの意図がなんであれ、それを達成できれば我々の勝ちだ」
ドラゴンの策略によって革命軍のNo.2と隠し玉(?)が送り込まれてきた。そう考えているセンゴクは、ドラゴンの意図がわからない以上深追いはすべきではないと考えた。貴重な大戦力である三大将の一角をここで足止めされるのは、白ひげ海賊団に付け入る隙を与えることになる。あくまで目的はエースの処刑、敵は白ひげ海賊団だ。ルフィと共にこの戦場に降り立ったエンポリオ・イワンコフを含めても革命軍はたったの3人。三大将を仕向ける程の優先度は今はない。
センゴクの判断は正しい。
個々の実力は折り紙付きとはいえ革命軍はたった3人、大局的に考えれば、そこへ戦力を投入してしまうことは過剰だと誰もが思うだろう。
しかし――この判断が、戦争の運命を、いや、
「……おい、ジジイ。今、奴らはサボと言ったか?」
エースは自らの失態によって引き起こった戦争をこの処刑台から見てきた。
自らの責任だと騙る
誰もが皆、命を賭けてこの戦場にいる。
ならば、この戦争を引き起こした張本人として、もうジタバタしたくなかった。
差し延べられた手も、裁く白刃も、全てを受け入れる。
そう、決意して戦場をその目に焼き付けていたエースの耳に入ってきた『サボ』の名前。
「なんじゃエース。知り合いだったのか?」
「……いや、そいつはもういない。懐かしい名前だと思っただけだ」
サボはエースの義兄弟であり、既にこの世にいない。
思えばエースにとって最初に出会った最高の仲間であり、家族。共に、生まれによって苦悩し、自由を求め、愛すべき
なのに今は、その守るべき弟が自らのヘマのせいで危険に晒されている。サボからの最期の手紙の一文を思い出す。
――長男2人 弟1人 変だけどこの絆は俺の宝だ。
ルフィの奴はまだまだ弱くて泣き虫だけど。
おれ達の弟だ。よろしく頼む。
「……こりゃあ空からキレたサボが降ってくるかもな」
自嘲気味に笑うエースの遥か頭上。奇しくも女の子にお姫様抱っこされながらという実に愉快な状況で落下中のサボがいることを彼は知る由もなく。
そして。
「おい、なんだあれは!?」
「こいつはまずいねぇ〜」
「黄猿!周辺の海兵を退避させろ!俺が食い止める!」
飄々とした態度でいる黄猿ですら冷や汗を流す火球――いや、太陽が処刑台を焼き尽くさんと降ってくる。仮に防げたとして周囲には甚大な被害が出てもおかしくはない。センゴクは機動力に長けた黄猿に退避命令を任せ、能力を発動させる。
センゴクの体が膨れ上がり、その肉体は黄金の輝きを放つ。
ヒトヒトの実 幻獣種 モデル大仏。
今では振るうことも滅多に無くなったが、かつては世界中の悪を討ち滅ぼしてきた力。
「何故だっ!?あれは俺のっ!!!」
この場で最も驚愕したのはエースであろう。一目で分かる。あれはメラメラの実の能力によって作り出された――自身に宿っているはずの悪魔の力で作られた自身の技、『炎帝』。
同じ悪魔の実及び同じ能力者が同時期に複数存在することはない。それ故にありえない現象が、今、目の前で起きている。
「フンッ!!!」
能力によって巨大化したセンゴクは、掌から放たれる衝撃波で太陽の如き灼熱の火球を必死に抑える。エース奪還が目的であるはずの敵が、まさかエースのいるこの処刑台を消し飛ばす程の攻撃をしてくるなど全くの予想外。三大将は全て出払っている中、己の能力を全開にしながら、センゴクが『迎撃』ではなく『抑え守る』を選んだのは――この場にもう一人、海軍の誇る英雄がいるからだ。
「センゴクっ!そのまま抑えとれ!」
「やり過ぎるんじゃないぞっ!」
駆け出したのは海軍中将ゲンコツのガープ。その右拳に込められた覇気は戦場全体に伝播し威圧する程の力強さ。
「……あの老いぼれが。まだまだくたばりそうにねぇ」
「ありゃ確かに伝説の海兵だよい」
『四皇・白ひげ』エドワード・ニューゲートと、その腹心である1番隊隊長マルコは、ガープの覇気が昔と何ら変わらない強大さであることに称賛を送りつつ、警戒を高めた。
敵も味方も、戦場のあらゆる人間の記憶にその拳は刻まれたことだろう。
そして誰もが語り継ぐ。
今も昔も、ただその拳1つのみで正義を貫いてきた男の伝説を。
「
生きる伝説の拳が、太陽を吹き飛ばした。
一方その頃、ソラとサボは。
「あれ、なんで私達は白ひげ海賊団に囲まれてるんでしょう?」
「当たり前だろうが!!!」
彼女達を囲むのは白ひげ海賊団の名だたる猛者達。そしてそれをモビー・ディック号から見下ろす巨漢、白ひげ。
「覚悟は出来てんだろうなぁ、ハナタレ共」
伝説の海兵に勝るとも劣らない覇気が2人に向けられようとしていた。
〜補足〜
原作でガープとサボが会っているのが一コマしか見つけられず、どういう関係性だったか分からなかったので、個人的にはガープがサボのことを知っていたなら、サボという名の男が革命軍として知れてきたときにドラゴンに訊ねる、もしくは生きていることをルフィに伝えたりしたんじゃないか、と思うので、ガープはサボから名前は聞いていない、もしくは忘れている、という設定でお願いします。
(アニメではガープがサボを含めた3人と修行するシーンがあるらしいので、アニオリ派の方はガープはサボのことを忘れているということでお願いします)
感想・ここすき・高評価、本当にありがとうございます。
とてもモチベーションになります。