ルフィの娘の過去改変記 作:微炭酸は弾けない
「『炎戒』!」
地上が見えてきたところで、火の玉を撃ち、そこからいくつもの炎の陣を地上に発生させる。技を使う時にその準備として陣を作ることで範囲を絞りコントロールがしやすくなるのだ。マルコ(チョッパー先生の一番弟子は絶対に私なので、弟弟子ということで呼び捨てにしてる)からエースおじさんの技を色々聞いて、技名はそれを踏襲して考えたりしてる。その前も似たような技はいくつか使ってたけど、特に名前つけてなかったし。やっぱり名前があったほうが格好いいし、何となく強くなる気がするんだよね。
「『火柱』!」
まるで私とサボさんを囲むように円形に並んだ炎の陣から、火柱が高く上がる。
炎の陣が発生した時点で周囲にいた人は退避しており、ただ空に向かっていくつかの火柱が上がっていくだけだけど、するとどうなるか。炎により温まった空気は上昇気流となって私達にぶち当たる。下からの上昇気流が、私達の落下による運動エネルギーを相殺し、ふわっと地面に降りられる……はずだったんだけど。
「サボさんごめん!想定より運動エネルギーを殺せなかったんでちょっと痛いかもです♡」
「お前は!?」
「私は炎になって回避するんで、サボさん頑張って♡」
きちんとAIで計算したんだけど、周囲の風向きって常に変わるからね、思った通りにならなかった。このまま地面に落ちても死にはしないくらいには運動エネルギーを殺せたけど、痛そうなので私は嫌だ。なので、地面が近づいてきたところでサボさんをぶん投げて、私の体を炎に変えることでさらに落下による運動エネルギーを相殺。再び体を炎から戻し、華麗に着地する。
サボさんより先に着地できたので、仕方なく、以前も活躍した『ゴムゴムの風船クッション』をAIで計算したサボさんの落下地点に置いておく。手間の掛かるおじさんである。
「へぶっ!!」
「ナイス着地!」
「殺す気か!」
失礼な。『ゴムゴムの風船クッション』があれば落下しても無傷で着地可能なことは私が証明済。絶対安全な着地手段だというのに。
「この状況で随分余裕な態度じゃねーかよい」
特徴的なパイナップルヘアーに独特の口調。トリトリの実 モデル
自然系よりもさらに希少と謳われる動物系幻獣種なだけあって強力で、再生能力を付与する青い炎を纏い、不死鳥に変身し自由に飛行できる。再生に限界があるらしいけど、私が試し打ちした『炎帝』を受けてもピンピンしてたので余程でなければ即再生可能なのだろう。
そのマルコを中心に、白ひげ海賊団の面々が私とサボさんを包囲していた。
「あれ?なんで私達囲まれてるんでしょう?」
「そりゃそうだろ!!!」
包囲網から一歩前に出ているマルコは呆れた顔をしていて、サボさんは頭を抱えてしゃがみ込んだ。あ、マルコ、この時代では眼鏡をかけていないんだね。
「覚悟は出来てんだろうなぁ、ハナタレ共」
「私達、味方ですよ。エースお……エースさんを助けるべく参上した救出隊です」
「バカ言うんじゃねぇ、テメェ今そのエースを消し炭にしちまうところだったぞ、アホンダラ」
「なってないんで良くないです?」
勿論私はエースおじさんを殺そうなんて思っていない。あそこに炎帝を撃てば、海軍に動揺を与えることができるし、上手くいけばそのどさくさで誰かがエースおじさんを救出出来たりするんじゃないかなって予測してのことだ。ガープ爺がいるのは確認していたので、あの程度の攻撃は防げると確信していた。
それをバカだのアホだのと、実際なってないんだから良くない?
「張り合うな、相手は四皇だぞ!?」
「でも一方的に悪者にされるのも嫌じゃないですか」
「どう考えても悪いんだよ、この状況だと!」
サボさんが両手を上げて、マルコの前にまで出る。白ひげもマルコも、まずはこちらの話を聞いてくれるらしい。
「すまない、この状況だと信用できないかもしれないが、俺達は本当にエースを助けに来た」
「お前ら何者だよい。あの炎、ありゃあ何の能力だ?まるでエースの『炎帝』だ」
この戦場で長々と説明している時間はないのだけど、それを説明するには長々とした複雑な話が必要になってくる。サボさんもそう思ったのか少し考えて口を開く。
「まず俺はサボ――エースの義兄弟だっ」
「弟ならもう来とるよい。随分威勢のいいのが派手に暴れてる」
義弟ということはパパのことだろう。エースさんを救出するのが第一目標だけど、それに注力し過ぎてパパが死ぬようなことにならないようにしないと。私というイレギュラーの介入でパパが死んじゃいました、とか最悪過ぎるのでそこは常に意識する。
「俺とエースとルフィは3人で義兄弟の盃を交わしたんだ」
「弟の方はエースから良く聞いてたが、お前のことは一度も聞いたことがないよい」
「俺は死んだと思われているんだ。つい最近まで俺も記憶喪失で……」
「随分と都合の良い話じゃねーかよい」
ついさっき弟だというパパが乱入してるのに、今度はまた最近まで記憶喪失だった義兄弟が来たとか言われても、そりゃ疑うよねって話で。そこに今度は未来から来た
もう話し合いは無理かな、と私が思っていると、モビー・ディック号から見下ろしていた白ひげが衝撃的な一言を放つ。
「そこの小娘――お前、エースの弟のガキかぁ?」
「えっ、何で分かったんですか?」
驚き過ぎて逆にリアクションが淡白になってしまった。私とパパってロビンさんが首を傾げるくらい似てないので、初対面のそれも大して話してない人にバレるなんて思わなかった。
「グラララララ、長く生きてると分かるようになる。お前らぁ良く似てやがる」
勘のようなものなのか、研ぎ澄まされた見聞色の覇気なのか。流石は四皇、私には理解できない手段で最適解にまで辿り着く。
「だが親父、エースの弟にこんなでかい娘がいるのは矛盾するよい」
「ああ、おかしな話だがお前は疑うか?」
「いや、信じるよい。親父が認めるならそれでいい」
こんなありえない状況なのに白ひげが認めれば全て覆る。
「で、自称エースの兄弟。お前も一先ず味方と見てやるがどこの海賊団だよい」
「いや、俺は海賊じゃない。革命軍で参謀総長をやってる」
「何?それを先に言えよい。それならエースの弟の味方だろ」
「うっ、確かに。それを先に説明していればこんなややこしいことには……」
この場には既にパパと共に革命軍の幹部エンポリオ・イワンコフさんが現れており、パパがドラゴンお祖父ちゃんの息子であることも明かされているため、革命軍=パパの味方という図式が共通認識になっているのだろう。実際のところは、色々と数奇な運命でそうなっているだけで、革命軍としての作戦で協力しているわけではないのだけど、そう説明した方が楽だったのは間違いない。
「あの炎はお前の能力かよい」
「いえ、それはサボさんではなく私なんですけど説明するの凄い複雑なんで後でで良いですか?」
私達が悠長に話している間に、海軍の軍勢が迫ってきていた。白ひげの能力を警戒してか常に一箇所には留まらず、流動的に陣形を変えながら、乱戦の中を突き進んでくる。
「仕掛けてきやがったかよい」
「ここは私にお任せを。味方と認めてくれたお礼です」
「おい、エースの弟の娘!」
「それ長いんで、私のことはソラでお願いしますよい」
「真似すんなよい!」
1人、迫りくる海兵達の前に出る。
明らかに白ひげを打倒できるような実力者が見当たらないということは、何かの作戦を開始する前にこの場所へ白ひげを留めておきたい、という意図を感じる。そうでなければただの無謀な特攻。私が未来でガープ爺から話を聞いている限り、センゴク元帥のやり方とは思えない。
私は右手を中指と人差し指を突き出し親指を立てた、銃のような形にして軍勢に向けた。別にしなくても可能なんだけど、まあこういうのはハッタリが効いてたほうがかっこいいのである。
「ばーん♡」
瞬間、目の前の軍勢の殆どが泡を吹いて倒れていく。さらには乱戦の中にいた海兵達も次々と倒れ、その連鎖は止まることなく続く。
「覇王色の覇気かよい!?」
覇王色の覇気とは、要は強い威圧感や殺気を発して、ビビった奴を気絶させる、という力だ。数百万人に1人しか素質を持たず、『王の資質』と言われたりするけど、次期皇帝の私が持っていないわけ無いんだよね。パパもママも持っていたし、私も物心付いた頃には使えてた。
「いやー随分と見晴らしが良くなりましたねぇ」
海軍戦力が確か10万人だったはずなので、1万人くらいは落とせてると良いんだけど。正義ってものを掲げて命賭けてる人達は精神が強いからね、それくらい落とせてれば上出来だ。
「こりゃすげーよい」
「あ、マルコ……さん。話しておきたいことがあります」
「なんでそんな葛藤してんだよい」
チョッパー先生の一番弟子としてのプライドがマルコに敬称を付けることを躊躇わせたけど、ここは物事を円滑に進めるために我慢する。
マルコに伝えたいことを伝えたら私はパパを助けに行く。ママがエースおじさんの手錠の鍵を入手していて、それをパパに託すはずだからだ。もう持っているかは分からないけど、ママはパパにしか鍵を渡さないと思うのでここを援護するのがエースおじさん救出には必須なのだ。
「ではマルコさん、聞いて下さい。ここから話すことを貴方が信じるかどうかでこの戦争の行方は180°変わりますよ」
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