異星人の創った女性型アンドロイドに逆行転生或いは逆行憑依して歴史を変えるかも知れない話   作:片玉宗叱

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 都合上、現代の地名を使っています。一応、この当時の事は調べて書いてはいますが個人では限界もあります。今話以降の現地(フィリピンやボルネオ等)に関して物語上ではありますが適当設定になる場合があるのでご了承下さい。
 後書きは愚痴なので読まなくても問題無しです。


35 ルソン島

―ユリウス暦千百二十一年、十一月。南シナ海、ルソン(呂宋)島近海。

 

 タケル一行は中国大陸沿岸を南下しながら諸々の調査をしつつ、台湾海峡を通過して南シナ海へと入り、今はルソン島北部、二海里の海上に居た。*1

 

「観測ドローンで見ても、この辺は人の手が入ってなさそうだな」

 

「人も見かけないね」

 

 彼らがドローンを飛ばしているのは現在で言うフィリピン、ルソン島のカガヤン州の辺りである。

 北東にはバブヤン諸島があり、ルソン島との間の海はバブヤン海峡と呼ばれている。

 

「川があるよ」

 

 ドローンで見付けたのは現代のカガヤン川と思われる。ルソン島最長の川のだ。流域に人の住む集落があるかも知れない。

 

「ホントだ。ルイ、川沿いに南下出来るか?」

 

「うほっうほほうほごほうほ(高度このままだと艦を東に移動する必要あり)」

 

「うほうほっうほ(レーダーの範囲からも外れますね)」

 

「イマヌエル、艦を東へ移動。川の河口沖で停止。ルイ、ドローンの高度を上げて」

 

「(了解っす)」

 

「うほっ(了解)」

 

 艦の位置を変えて、ドローンはカガヤン川と思しき川に沿って南下して行く。*2

 

「稲作がされているね。集落もあるし、結構人口が多い可能性があるか」

 

 この当時の人口データが無いので何とも言えないが、現代のフィリピンの人口は約一億人、日本の人口が一億二千万人である。この比率から推測になるが十二世紀当時の日本の人口が七百万人程度である事から、フィリピン諸島全体でも人口は七百万人弱か、それ以下と考えても良いのではないかと思う。*3

 

「将来的には住民を懐柔して入植?」

 

 フウカの問にタケルは少し難しい顔で応える。

 

「そうだね。蝦夷地での人口が増えたらだろうけど。氾濫した痕が彼方此方に見えるから入植したら治水は必要だね」

 

「気象とか植生とか調べる拠点も要るよね」

 

 タケルとフウカの遣り取りを聞いていたシズクが顎に指を当てて考える仕草をしながら言う。

 

「基礎的な気候データは異星人から貰っているし、常駐拠点を構えるにしても人口が増えてからかなぁ。今は使えそうな場所探し優先だから上陸は極力控えるよ?」

 

 どこかウズウズそわそわしている娘二人にタケルは釘を刺した。

 

「「えーっ」」

 

「えーじゃありません。これから島嶼が多くなって狭い所を抜けたりとか、あなた達二人の出番が増えるんだから我慢しなさい」

 

「だって、さっきチラッとだけどバナナあったの見えたよ?」

 

「バナナだよ? バナナ。 お母さん、食べたくないの?」

 

 バナナの栽培の歴史は意外と古い。東南アジア原産であり、実は主食として調理用バナナ、所謂プランテンが相当古くにインドやオセアニア、五世紀頃には既にアフリカまで伝播している。*4

 

「シズクもフウカも落ち着け。生食用とは限らないんだぞ? 野生種だったら種があるって言うしな」

 

「「あっ……」」

 

 タケルにそう言われ、がっかりして肩を落とすシズクとフウカである。彼女達は生食用の甘いバナナを期待していたようだ。*5

 

「当初の予定通り、このまま沿岸沿いにルソン島からビサヤ諸島を巡ってミンダナオ島とパラワン島を回って現在位置へ戻る。その後はボルネオ島へ向かうよ」

 

 タケルがアルトゥルに指示を出し、航路が決定する。ルソン島の東沖を航行し、ビサヤ諸島を巡ってから西に抜けて、ミンダナオ島を反時計回りに回ってボホール海を西に抜けて、そのまま西進してパラワン島を回った後で北上して戻って来る航路だ。*6

 

「(ご主人、どうせ大陸から離れてるんすから、人目を気にしないでウパシチリ(有人ドローン)で地上観測した方が良いと思うんすけど。ほら、ウパシチリは地形レーダーも搭載してるっすから、座標の特定も早いっす)」

 

 イマヌエルの提案に、タケルは暫し考え込む。

 

「「はいっ! 搭乗希望!」」

 

「うほぅっ……(自分も……)」

 

 その時、娘二人が勢い良く元気に手を上げた。そしてルイも控え目に手を上げている。

 

 タケルの「行きたいの?」の問いに、二人は「うん!」と返事をして頷き、ルイはこれまた控え目に首肯している。

 何か有った時の為に、分乗とはせずに全員でウパシチリに同乗する事になった。

 ルイの体重は約二百キログラム、シズクとフウカは合わせて九十キログラムに若干届かない。一応、全員乗せてもウパシチリの搭載重量はオーバーしていない。但しプロテクターと金砕棒を装備すると完全に重量オーバーになる。

 

「上陸はダメだよ? プロテクターも武器も持って行けないんだから」

 

「金砕棒だけなら持って行けるよね?」

 

 タケルが言い含めるが、娘二人はどうあっても上陸してみたいらしい。ただ、残念ながらゴリラさんチーム用の金砕棒は重量十五キログラム。微妙に重量オーバーとなる。それをタケルが指摘するとフウカが言う。

 

「じゃあさ、わたし達用の金砕棒なら良いでしょ? ルイの頭部プロテクター位の余裕も出来るし」

 

「うーん、心配だなぁ……」

 

「お母さん、過保護が過ぎる」

 

「わたし達はもう子供じゃないんだよ」

 

「うほっうほほうほう!(お嬢達はこの身に代えても守る!)」

 

 腕を組んで悩むタケルに、頬を膨らませて抗議する娘二人。ルイ、キミのその覚悟が何処から来るんだ? 全員、既に上陸する気満々である。

 タケルは暫し悩んだ後で、娘二人に言い負かされて押し切られ、渋々と許可を出した。但し、と条件付きである。

 

「もし上陸しても現地住民との不用意な接触は避けること。万が一接触してしまった場合、あなた達は現地の言葉を学習してないんだから、そこも注意すること。いいね?」

 

「「分かってるよー」」

 

「取り敢えずルソン島東岸だけね。ビサヤ諸島に入ったら、あなた達の操艦が頼りになるんだから」

 

「大丈夫!」

 

「任せて!」

 

 その後『シンタ』はルソン島の東側を、時々ウパシチリ(有人ドローン)を沿岸沿いに飛ばして観測をしながら南下していく。ルソン島の東海岸沿いにはシエラマドレ山脈が南まで連なっていて平地は少く見所が無かったのかシズクとフウカは上陸せずに大人しく観測飛行に徹していた。

 ビコル半島の沿岸を通過している時には『シンタ』と『ウパシチリ』は時々現れる集落の現地住民に目撃されていたが、特に何をする事も無く航行を続けルソン島ビコル半島とサマール島の間にある現代で言うサンベルナルジノ海峡へと差し掛かる。ここからサマール海へと進入するのだ。

 このサンベルナルジノ海峡は東側から八ノット(時速十五キロメートル弱)の海流が流れ込み浅瀬や暗礁が存在する海の難所でもある。

 

「これは上空からの観測が必須だね。ルイ、はソナーに張り付いて貰うから……。イマヌエル、ウパシチリで先導してくれるかな」

 

「(了解っす。発艦準備してそのまま待機するっす)」

 

 指示を受けたイマヌエルが艦橋を出て『ウパシチリ(有人ドローン)』の発艦を行う為に格納庫へと向かう。

 

「アルトゥルは航海用レーダーで海上と沿岸を監視して」

 

「うほっ(了解です)」

 

「さて、シズクとフウカだけど……」

 

 見れば二人は既に専用の操舵席に座り、操縦桿を握ってディスプレイ・ゴーグルを着け準備万端だった。シズクとフウカが直接操艦する場合は特殊な操艦方法となる。

 二代目『シンタ』には主機として電磁推進装置が二機、そして舵がスタビライザーフィンも含めると五系統ある。この二人以外が操船する際にはコンピューターによる自動制御で舵やスタビライザー、スラスターや主機の動作が補助されるのだが、挙動は通常の船とほぼ同じになる様に設定されている。

 しかし、シズクとフウカの場合は全ての系統を二人で直接操作し普通では出来ない挙動を可能にするのだ。これはシズクとフウカ以外には真似が出来ない芸当である。

 

「「いつでも行けるよ!」」

 

 声を揃えて娘二人が返事をした。この航海での初めての直接操艦である。意気込みが凄い。

 

「し、慎重にね? 頼むよ?」

 

 二人の余りの意気込みにタケルのほうが気圧されている。

 

「それじゃー」

 

「いっくよー」

 

「「最大戦速!」」

 

「あっ、バカ!」

 

 シズクとフウカは同時に主機のスロットルを押し込んだ。勢い良く『シンタ』は加速を開始する。

 

『(ちょ、お嬢達! 自分まだ発艦してないんすけどぉ!?)』

 

 艦橋のスピーカーからイマヌエルの焦った声が響いた。

 

 前途遼遠、前途多難、先が思いやられる。この航海、無事に済むのであろうか?

 

*1
 この頃(十二世紀)のルソン島の情勢を示す歴史資料は非常に少い。中世で海洋国家として栄えたトンド王国があったのがルソン島であるが、中国で記録に現れるのが元朝以降であり十世紀頃の成立と言われているが、それもはっきりしていない。対してミンダナオ島は十世紀には既にブトゥアン王国があり現代のベトナムやインドネシア、マレー半島のある地域と交易を行っていた記録が残っている。十一世紀初めには北宋にブトゥアン王国から使節が派遣されて来たという記録が残っているのだが、トンド王国については確認できないらしい。一応トンドの物とされる十世紀頃の遺物が出土しているのだが、これについては真贋がはっきりしていない。これらから本作ではこの時期にトンドは王国または政体として、大規模なコミュニティとしては成立していないものとして扱う事にした。

*2
 このカガヤン川の流域はフィリピン最大の平野であり、肥沃な土地が広がるここは稲作やトウモロコシの栽培などが行われていて現代のフィリピンでは重要な農業地帯となっている。ちなみに世界遺産のコルディリェーラの棚田群はこの上流のコルディレラにあり、紀元前から棚田の造成が行われて来たと言われる。

*3
 正直なところ、中世、特に十四〜十五世紀より以前のフィリピン諸島、ボルネオ、ニューギニア、オセアニア関連の詳細を調べていたら時間がいくら有っても足りずに筆が止まります。それこそ専門の論文を漁ったり、学者に取材でもしないと詳細を調べるなどとても無理です。故にある程度と言うか最低限について調べたら「自分、素人物書きで、この話はエンタメで歴史書じゃないんで」を言い訳にさせて頂き執筆を進めたいと思います。執筆する為に調べるのか、調べる為に執筆するのか。それなりの説得力を持たせたい為に調べてるいのですが……。ホント本末転倒に陥りそうです。

*4
 さて、ここで種無しバナナは遺伝子が三倍体で偶然によって生れたのは良く知られている事である。ただその栽培の歴史は種無し品種のグロス・ミッチェルが千八百三十五年にフランス人植物学者によって()()()()()()()カリブ海の植物園に持ち込んだ事から、同じく種無し品種であるキャベンディッシュが千八百三十四年頃に()()()()()()()()イギリスに持ち込まれた事から始まる訳であるが、これらは生食用バナナ、所謂トロピカルフルーツとしてのバナナであるのだ。

 ではプランテンはどうなんだ、となる訳である。プランテンの方が主食として用いられていた分、中世での生産量はこちらの方が多かったと思われる。

 このプランテンも栽培種は三倍体であり果実は種を持たない。生食バナナもプランテンも、両方とも東南アジア原産であり、ただ染色体が生食バナナはAAAであるのに対してプランテンはAABとなっている違いがある。

 ここで、ちょっと考えれば分かると思うが、生食用のフルーツとしてのバナナは西()()()()()()で語られている事に気付くのではなかろうか。

 つまり、彼らが『発見・認知』したのが上記の年代であり、実際にはそれ以前より三倍体の種無しバナナや種無しプランテンが東南アジアやインド、アフリカ、オセアニアでは栽培されていなかったという()()()()()()()()。とは言え栽培されていたという明確な証拠も無いのである。

*5
なお調理用バナナ(プランテン)は、きちんと調理された物は、芋みたいで美味しかったです。

*6
地図、要ります?




 皆様、毎度おなじみ、後書きの愚痴曝しでございます。でも後書きで吐き出すのは今回限りで止めます。(偶に割烹で毒と共に吐き出すかも知れません)

 さて、今話から東南アジア関係の話が始まった訳なんですが。
 東南アジアと言えばバナナって事で、バナナ関係を調べてたらですね、wikipediaなんかは種無しバナナの発見がまんま西洋史観を元に書かれてるんですよ。
 そんで色々と調べると「いや、それ現地では以前から栽培されてたんじゃねーのかよ!」って言いたい事がボロボロと。
 歴史ものの小説で、現地で栽培物のバナナをヒロインっぽいのが食って「うわ、種がある」て言って、主人公が「それは三倍体が云々……。それより三倍体のオレのバナナを云々」ドヤりながら南国の空の下で盛ってんじゃねーぞ、ゴルァ! とか書きたい気もしなくもなくもないですが。
 野生種は確かに全種で種があるんだけど、なーんか調べれば調べる程、栽培種は古くから種無しが主流だったんじゃないかって思われてくるんですわ。
 ただね、明確に文献として残っていないのが何とも……。もーね、色々と調べて疲れて面倒臭くなって途中で関係するプロットをバッサリ無くしました。
 娘二人とゴリラさんチームが現地住民に分けてもらった調理用バナナ(勿論、種無し)を『生』で食して微妙な顔をするってだけなんですけどね。

 どうでも良いことですが、東南アジアの地図を見てたらボルネオ島がミジンコにしか見えなくなってしまいました。
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