カードファイト!! ヴァンガード StarSong 作:バビロン@VG
空高く、星の海が天に広がっていた。
暗い夜空に輝く、数多の星々。
名前も知らぬような小さな光。果てなき空。
神秘的な色が溶けるように、どこまでも続いていた。
──星の煌めき。
空を見上げている、一人の少女。
その紫色の瞳の中には、星の海が映っている。
暗い闇に包まれながら──
『それでは皆様、お待たせしました!』
少女の頭上で、声が炸裂した。
スピーカーを通した声が会場中に響き渡る。
集まった観客達から、歓声があがった。
『いよいよ、本日のイベントもクライマックス! 今宵のスペシャルゲストの出番です!』
盛り上げるかのように、まくしたてる声。
どよめきと熱気が地鳴りのように響き、会場を揺らした。
『デビューのきっかけは投稿した動画から! 個人投稿されたその動画は、その圧倒的な歌唱力と神秘的な雰囲気からまたたく間に話題となり、わずか数日で300万再生を突破しました!』
観客に向かって語り掛けるスピーカーからの声。
『彗星の如く現れた超新星! 星の煌めきに乗り、投稿からわずか3ヵ月でメジャーデビュー! 伝説は続き、ついに今宵、ここ幕張メッセでの初ライヴに至りました!』
大きな歓声が上がる。
拍手。熱狂。サイリウムの光。混沌とした空気。
会場の中に、星の光が降り注ぐ。
『まさに生きる伝説! 全ての才能を過去にするかのような、煌めく星の歌姫! さぁ、全ての人々にこの名を捧げましょう!』
スピーカーからの声が、途切れた。
緊張に満ちた間。おもむろに、少女が顔をあげる。
スポットライトの光が、少女の姿を照らした。
『──綺羅星(きらぼし)ミアさんです!!』
爆発するような歓声があがった。
ドレスを基調とした派手な白の衣装。
身体つきを強調するデザイン。紫がかった色の長い髪。
紫色の瞳が、観客達の方を向く。
「…………」
無言のままの少女──ミア。
微笑みを浮かべると、天を見つめた。
暗い夜に浮かぶ、星の海を。
「……ありがとう」
ぼそりと、ミアが呟いた。
持っていたマイクを、口元へと持っていく。
一瞬にして、観客達がその場で静まり返った。
ミアの方に注目している人々。
一挙手一投足を見逃さんと、固唾をのんで見守る。
艶やかな唇が動いて──
「世界で一番愛してる、あなたのために」
どこか神秘的な響きを宿した声が響いた。
観客達が魅入られたかのように、聞き入る。
腕を天へと伸ばして──
「それじゃ、一緒に楽しんでいこっ!」
弾むような声が、マイクを通して会場中に響いた。
煌めく笑顔に、明るい雰囲気。ミアがウィンクする。
会場の空気が一気にヒートアップして──
『綺羅星ミアさんで、"Falling Star"!!』
スピーカーからの声と共に、音楽が流れ始めた。
小刻みに身体を揺らしているミア。長い髪が広がる。
紫色の瞳に、神秘的な輝きが宿って──
透き通るような声が、会場へと響き渡った。
空高く、星の海が天に広がっていた。
暗い夜空に輝く、幾多の星々。
名前も知らぬような小さな光。終わりなき空。
神秘的な色が混ざるように、静かに輝いていた。
──星の煌めき。
空を見上げている、一人の少女。
その紫色の瞳の中には、星の海が映っている。
暗い闇に包まれながら──
「──ハッ!!」
鋭い声と共に、闇の中の影が蠢いた。
闇の中から伸びる一閃。殺意に満ちた攻撃。
少女が目を細めて──
「にゃっ!!」
声と共に、軽やかな身のこなしで攻撃を避けた。
先程まで少女がいた場所、石造りの壁が切り裂かれる。
闇の中から、銀髪の青年が姿を現した。
「…………」
黒い奇妙な衣装。手に持った大振りの刃。
どこかうつろな目で、青年は少女を見つめている。
制服姿の猫の少女が、困惑した表情を浮かべた。
「うぅっ、なんなのです……!」
呟く少女。
キッと、鋭い目を向けて青年を指差す。
「不審者さん! ろろに何の用なのです!」
問いかける少女。
青年が濁った目を向けた。
「……我らが悲願。その定め」
ぶつぶつと何かを呟いている青年。
闇が蠢いて、青年が再び刃を構えた。
「わわわっ、ちょ、ちょっと待つのです!」
両手を前に出して慌てている少女。
青年の姿が闇に溶け、見えなくなった。
静寂。周りの木々がざわめいて──
「ハッ!!」
再び、闇から青年が刃を突き出してきた。
「にゃあっ!!」
間一髪でそれを避ける少女。
その見た目通りの、猫のような身のこなし。
軽やかに動きながら、少女が青年を睨む。
「ろろはとっても温厚だけど……それ以上やるなら、いい加減に怒るのですよ!!」
警告するような声。
少女の耳が逆立ち、両手を構えた。
2人が睨み合う。
張りつめた空気。沈黙した空間。
空に浮かぶ満点の星空だけが、2人を見下ろしている。
「…………」
少女を見つめている青年。
何の光も宿っていない濁った目。暗い視線。
風が吹いて──
「審判の刻」
青年の口から無機質な声があがった。
びくりと身体を震わせる少女。怯えた目。
暗い闇の中、その身体がうねるように動いた。
「──世界に、滅びと沈黙を」
青年が間合いを詰め、刃を少女に向かって突き出した。
空気を裂きながら迫る白銀の刃。少女が目を見開く。
その紫色の瞳に神秘的な光が宿って──
鈍い音が、その場に響いた。
「…………」
沈黙している青年。
その青白い顔には、何の感情も浮かんでいない。
その手から力が抜けて──
「ごふっ」
息が抜けるような音が、青年の口から漏れた。
金属音を響かせて、大振りの刃が地面に落ちる。
どさりと、青年がその場に倒れた。
「…………」
拳を握り固めている少女。
先程までとは一変して、冷たく落ち着いた佇まい。
紫色の瞳が、渦巻くような輝きを帯びている。
「…………」
青年を見下ろしている少女。
しばしの刻、沈黙が流れて──
「……はぁぁぁ」
気が抜けたように、少女が深々と息を吐いた。
握られた拳をさすりだす少女。
その瞳から、神秘的な光が消える。
「うぅっ、まさか、またしても必殺のろろパンチを使うことになるなんて……」
眉を下げながら呟く少女。
へなへなと、その場にへたり込む。
涙を浮かべながら──
「最近、ろろの周りには不審者が多すぎるのです!! ろろはただ、みんなと歌いたいだけなのに、どうしてなのですー!!」
嘆くような大きな声が、その場に響き渡った。
暗い闇の中。
2人の人間が、向かい合うように立っていた。
間に置かれたテーブル。並べられた数枚のカード。
ぶるぶると、その指を震わせながら──
「ダメージチェック……!!」
青年の手の中で、カードが表になった。
「ノー、トリガー……!!」
絶望したような声。
持っていたカードがその手から落ちる。
──大振りの刃を持つ、銀髪の青年のカードが。
断空の魔刃 トランスローター
ノーマルユニット 〈3〉
(ツインドライブ!!) (ペルソナライド)
ダークステイツ - ヒューマン
パワー13000 / シールドなし / ☆1
【起】【(V)】【ターン1回】:【コスト】[グレード0を【ソウルブラスト】(6)]することで、【ソウルチャージ】(6)し、あなたのユニット6枚選び、そのターン中、パワー+10000。
― 待っていた。俺が全力を出せる瞬間を。
青年 ダメージ5→6
ダメージに置かれた6枚目のカード。
青年が愕然としたように、並んだカードを見つめる。
口元に笑みを浮かべながら──
「私の勝ちね」
青年と対峙していた少女の言葉が、その場に響いた。
どこか神秘的な、不思議な声色をした少女。
深くかぶった帽子の奥で、紫色の瞳が揺れる。
「うっ、がっ……!!」
苦しそうに頭を抱え、青年がその場で膝をついた。
崩れ落ちる青年。地面にスマホが落ちる。
イヤホンが外れて、暗闇の中に音声が流れた。
『……終了してから2時間が経ちますが、いまだ興奮冷めやらぬといった状態です!! 以上、ライヴ会場からでした!!』
ニュースサイトからの音声。
薄暗い公園の中に、その声が大きく響いていく。
街灯の光が、少女の場のカードを照らしていた。
みんなに響け ロロネロル
ノーマルユニット 〈3〉
(ツインドライブ!!) (ペルソナライド)
リリカルモナステリオ - ワービースト
パワー13000 / シールドなし / ☆1
【起】【(V)】【ターン1回】:【コスト】[【カウンターブラスト】(1)]することで、あなたのオーダーゾーンから表の曲を1枚選び、歌う。(曲の能力を発動させ、その能力を終えたら裏にする)
【自】【(V)】:このユニットがアタックした時、あなたの裏のオーダーゾーンが2枚以上なら、オーダーゾーンから表の曲を1枚選び、歌い、そのバトル中、相手は手札から守護者を(G)にコールできない。
― 心を込めて!ろろの全力で歌うのですよ!
「そんな、そんな馬鹿な……!!」
自分の両手を見つめている青年。
目を見開いて、混乱したように口を開く。
「俺は沈黙をもたらす、終末の使徒の一員……!! 誰にも負けない力を授けられたはずなのに、どうして、どうして……!!」
うわごとのような言葉。
わなわなと震えながら、涙を浮かべている青年。
フッと、少女が息を吐いた。
「沈黙をもたらす、終末の使徒」
歌うような、どこか神秘的な響きの声。
少女が近づき、青年を見下ろした。
輝くような笑顔を浮かべて──
「その話し、詳しく聞かせてもらえないかな?」
少女──綺羅星ミアが、弾むような声を出した。
落ち着いた口調。にこやかに、微笑んでいるミア。
星の海の下で──
ミアの紫色の瞳が、神秘的な光を帯びて輝いた。
VANGUARD
StarSong