カードファイト!! ヴァンガード StarSong   作:バビロン@VG

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第三楽章 暁に紛れし不可視の大蛇③

 

賑やかなざわめきが、会場を満たしていた。

 

晴れ晴れとした青い空。白い雲。

楽しそうな笑い声が、そこかしこから上がる。

 

サラサラとサインペンを動かして――

 

「はい、応援ありがとうね!」

 

綺羅星ミアが、輝くような笑顔を浮かべて、

サインの書かれたCDジャケットを手渡した。

 

「あ、ありがとうございます!」

 

感動したような声。

握手を交わし、女性が赤面したまま出口に進む。

 

「こちら順番ですので、並んでお待ち下さいー!」

 

列を整備しながら、マネージャーが声をあげる。

いつもと違う、ラフな格好をしているマネージャー。

 

スタッフ証を揺らしながら、列を整理していく。

 

「ねー、マユっち。あと何枚サイン書けばいいの?」

 

小さな声で訊ねるミア。

マネージャーが「へ?」と間の抜けた声を出した。

 

「えーと、そうですねぇ……」

 

ちらりと、前の方を見るマネージャー。

ミアの前には遠く先まで続く、長蛇の列ができている。

 

「……いっぱいです!」

 

マネージャーが、自信満々に断言した。

ミアの笑顔が、ほんのかすかに引きつる。

 

「……もう、これだから」

 

額に手を当てているミア。

それでもファンを前にすると、すぐに笑顔に戻った。

 

サイン会が続いていく。

 

「はい、どうぞ! ありがとうねー!」

 

愛想よくファン対応をしていくミア。

いつのまにか、青かった空は暁の色に染まり始めていた。

 

「ようやく、終わりが見えてきたかな……」

 

さすがに疲れ始めてきたミア。

弱音を吐くように、長く息を吐き出す。

 

コツコツという、ヒールの音が響いて――

 

「次の方、どうぞー!」

 

一人の女性が、ミアの前に姿を現した。

視線を向けるミア。紫色の瞳にその姿が映る。

 

ゴシックロリータファッションの女性が、静かに現れた。

 

「…………」

 

見つめ合う2人。

2つの視線が絡み合い、空中で交じり合う。

 

女性が、すっと右手を差し出した。

 

「お会いできて光栄です。あなたのファンなんです」

 

真っ白な肌に、真紅の唇。

薄い金色の髪を揺らしながら、女性が微笑む。

 

ミアの口元に笑みが広がって――

 

「こちらこそ! 応援ありがとう!」

 

にこやかに、ミアがその手を握り返した。

握手している2人。和やかな雰囲気が流れる。

 

2人の目に、一瞬だけ光が宿った。

 

「……ウフフ」

 

笑みをこぼす女性。

名残惜しそうに、ミアの手を離す。

 

「それでは、また」

 

深々としたお辞儀。

ヒールの音を響かせながら、女性が出口の方へと進んだ。

 

ふと、その目がマネージャーの方へと向いて――

 

「……まぁ!」

 

女性が、面白そうな声をあげた。

不思議そうな表情を浮かべるマネージャー。

 

女性の姿が出口の先に消えていく。

 

「なんだか、雰囲気ある人でしたね」

 

「そうだね~」

 

軽い声で答えるミア。

何事もなかったように、サイン会を続けていく。

 

空がさらに赤い色に染まって――

 

「それでは、本日のサイン会は終了となりまーす! ご来場ありがとうございましたー!」

 

マネージャーの声と共に、大きな拍手が巻き起こった。

手を振って、それに応えているミア。煌めく笑顔。

 

会場内、控え室に戻って――

 

「ミアさん、お疲れ様でした!」

 

マネージャーが、嬉しそうに頭を下げた。

着替えながら、ミアが手をあげる。

 

「おー、お疲れ様ー、マユっちー」

 

どこまでも軽い口調。

いそいそと私服に着替えているミア。

 

マネージャーが安心したように息を吐いた。

 

「今日は何事もなくて幸いでした! おかげさまで私の胃も元気なままです! ミアさん、良ければ一緒に夕飯でも行きませんか?」

 

嬉しそうにそう訊ねるマネージャー。

ミアが「あー」と声を出した。

 

「そうだね、気持ちは嬉しいし、本当に行きたいんだけどさぁ、実は先約があるんだよねー」

 

「先約?」

 

「そう。ちょっと会わないといけない人がいてさ~」

 

手をひらひらとさせるミア。

帽子を深くかぶり、顔を隠す。

 

マネージャーの顔が青ざめた。

 

「み、ミアさん! まさかこっそり、ファンの人と会うとかじゃないですよね!? ダメですよ、そういうのスキャンダルですから!」

 

慌てて詰め寄ってくるマネージャー。

ミアがくすりと微笑んだ。

 

「まー、ある意味間違ってないけどさ。さっきもファンって言ってたし。だけど大丈夫、マユっちが思ってるようなやつじゃないから」

 

悪戯っぽく笑っているミア。

マネージャーが訝しむように首をかしげた。

 

軽快な音楽が流れる。

 

「噂をすれば。ハーイ、サミー!」

 

スマホを取り出して耳にあてるミア。

楽しそうな様子で電話の相手と会話する。

 

手を振って――

 

「はーい、了解。それじゃ、またねー」

 

軽い口調で言い、ミアが通話を終えた。

機嫌よく歌を口ずさんでいるミア。

 

黒のサングラスを取り出し、身につける。

 

「それじゃ、お疲れ様。またね~、マユっち!」

 

鞄を片手に、手をあげるミア。

そのまま足早に控え室から出て行く。

 

「あっ、ちょっと、ミアさん!!」

 

慌てて追いかけるマネージャー。

控え室から、勢いよく飛び出す。

 

だが廊下に出ると、ミアの姿はすでに消えていた。

 

「えぇ……?」

 

呆然としているマネージャー。

辺りを見渡しながら――

 

「ミアさんって、忍者か何かですか……?」

 

マネージャーが、ぼそりと呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぜ私(わたくし)ですの」

 

桃色の髪に、透き通るような白い肌。

吸血鬼フェルティローザが眉をひそめて、そう訊ねた。

 

ロロネロルが無邪気な笑みを浮かべ、指を伸ばす。

 

「クラリッサはレッスン! ウィリスタは生徒会のお仕事! アレスティエルは次のライヴの準備!」

 

弾むような声で言葉を並び連ねていくロロネロル。

じっと、フェルティローザを見上げて――

 

「つまり、ヒマそうなのがフェルティローザしかいなかったのです! ろろを守ってほしいのですよ!」

 

ロロネロルが、何の悪意もなくそう言い放った。

目を細めるフェルティローザ。無言の圧力。

 

ほんわかとした空気のまま、ロロネロルが返事を待つ。

 

「……はぁ」

 

深いため息を漏らすフェルティローザ。

頬に手をあてながら、憂うように口を開く。

 

「……クラリッサから聞いたのだけど、あなた、どこかの誰かに狙われてるんですって?」

 

「そうなのです!」

 

「相手はどこのどなたなの? どんな人から守ればいいのかしら?」

 

「わからないのです!」

 

元気いっぱいに答えるロロネロル。

ますます怪訝そうに、フェルティローザが眉をひそめた。

 

夕暮れの空の下、ため息の音が響く。

 

「クラリッサからどうしてもと言われたので引き受けたのだけど、早くも後悔してきたわ……」

 

小さく呟くフェルティローザ。

彫刻のように整った美しい顔をしかめる。

 

ロロネロルが、不思議そうに首をかしげた。

 

「フェルティローザ……お腹でも痛いのです?」

 

「違いますわ、失敬な!」

 

ぴしゃりとした言葉。

ロロネロルが「にゃっ!」と驚き、身じろいだ。

 

フェルティローザが再び息を吐く。

 

「もうなんでもいいですわ。ともかく、あなたを寮まで送ればいいのですね? 早く行きますわよ」

 

「はい! よろしくお願いしますなのです!」

 

ぺこりと頭を下げるロロネロル。

フェルティローザが「調子狂うわ……」と呟いた。

 

暁の色に染まった石造りの道を、2人が歩いていく。

 

「フェルティローザとお散歩~♪」

 

機嫌よく歌を口ずさんでいるロロネロル。

即興の歌には似つかわしくない、高度な歌唱力。

 

フェルティローザが日傘を傾ける。

 

「随分と元気になったのね、あなた」

 

「はい! 実は昨日、ろろは憧れのペトラルカ先輩と一緒に歌えたのです!」

 

輝くような笑顔。

きらきらとした雰囲気を醸し出すロロネロル。

 

「やっぱりペトラルカ先輩はすごい人だったのです! ろろも早く、ああいう大人なレディになりたいのです!」

 

「あなたが? ペトラルカさんのように?」

 

ロロネロルに視線を向けるフェルティローザ。

くすりと、その口元に艶やかな笑みが浮かぶ。

 

「そうねぇ。あなたが幽霊(ゴースト)になるくらい時間をかければ、なれるかもしれないわね」

 

「にゃ!? どういう意味なのです!?」

 

つっかかるロロネロル。

フェルティローザが手を広げた。

 

「さぁ。別に、深い意味はなくてよ」

 

面白そうに微笑むフェルティローザ。

ロロネロルが不満そうな表情を浮かべた。

 

2人が歩き続ける。

 

「そういえばフェルティローザ、いつもの妹さん達はどこに行ったのです?」

 

辺りを見回すロロネロル。

フェルティローザが目を閉じる。

 

「級友(あなた)と帰る事を告げたら、ものすごく驚かれた上に"邪魔してはいけませんわ!"とか言い出して、皆散っていったわ」

 

どこか憮然とした様子のフェルティローザ。

ロロネロルが頷いた。

 

「フェルティローザ、幽霊以外の友達少ないですからね」

 

「ちょっと、聞き捨てなりませんわよ!」

 

怒りに燃えるフェルティローザ。

わなわなと震えながら、ロロネロルを睨みつける。

 

「ふふん、さっきのおかえしなのです!」

 

べーっと、ロロネロルが舌を出した。

ますます怒りを深めるフェルティローザ。

 

子供のような言い争いが始まった。

 

「おこちゃま猫女!!」

 

「インドア吸血鬼!!」

 

ぎゃあぎゃあと言い合っている2人。

路地裏から出て、表の広場へと出た瞬間――

 

からんと、何かが落ちる音が響いた。

 

「!!」

 

尻尾をぴんと伸ばして、

ロロネロルが勢いよく振り返った。

 

視線の先では、子供達が空き缶を蹴って遊んでいる。

 

「…………」

 

紫色の瞳を向け、その光景を眺めているロロネロル。

夕暮れの時間。楽しそうに遊んでいる子供達。

 

「……ロロネロル?」

 

呼びかけるフェルティローザ。

ロロネロルが振り返って、微笑んだ。

 

「なんでもないのです! ちょっと驚いちゃっただけなのです!」

 

恥ずかしそうに言うロロネロル。

フェルティローザが大きく息を吐いた。

 

「何を怖がってるのよ。リリカルモナステリオは魔法の結界で守られているのだから、そう怯えることないでしょ」

 

「はい! ともかく、早く帰ろうなのです!」

 

足早に歩きだすロロネロル。

フェルティローザが「ちょっと!」と怒りの声をあげる。

 

「まったく、本当に憶病なんだから……」

 

ぶつぶつと不満を漏らしているフェルティローザ。

ロロネロルの後ろを歩きながら、日傘を揺らす。

 

「あなた、そんなことで次の試験は大丈夫なのかしら? ただでさえ座学は苦手でしょうに」

 

「試験!? 座学!?」

 

フェルティローザの言葉に驚くロロネロル。

ぴんとなる尻尾。驚愕の表情。

 

頭を抱えながら――

 

「さ、最近ずっと不審者さん達の相手をしていたせいで、すっかり忘れていたのです! ど、どうしよう!?」

 

ロロネロルが、嘆くようにそう叫んだ。

この世の終わりを告げられたかのような顔。

 

うるうると、その目が潤んでいく。

 

「まったく、呆れかえりますわ……」

 

フェルティローザの冷たい言葉が突き刺さる。

ますます、追い詰められたような表情になるロロネロル。

 

2人が寮の前まで辿り着いた。

 

「はぁ……なんということなのです……」

 

すっかり意気消沈しているロロネロル。

フェルティローザが頬に手を当て、その姿を見つめる。

 

顔をあげて――

 

「でも、やるしかないのです! ろろは絶対に諦めないのです!」

 

決意を新たに、ロロネロルが拳を握り固めた。

そのままフェルティローザの方に視線を向ける。

 

「送ってくれてありがとなのです! 正直に言うと心細かったから、助かったのです! ありがとう、フェルティローザ!」

 

ぺこりと頭を下げるロロネロル。

無邪気な笑顔に、本心からの言葉。

 

フェルティローザが顔をそらした。

 

「……別に、大した事してなくてよ」

 

目をつぶりながら話すフェルティローザ。

ほんの少し、間をあけて――

 

「……まぁでも、もしあなたがまた一人で帰るのが怖いと言うのでしたら、いつでも送ってさし上げますわ」

 

ぼそりと、フェルティローザが付け加えた。

かすかに、その頬が赤く染まる。

 

「勘違いなさらないで! 私、あなたの怯える顔を見るのが楽しいだけですから! 別にあなたの事が大事とかそういう訳じゃ――」

 

早口に話しているフェルティローザ。

再び、ロロネロルへと視線を戻す。

 

フェルティローザの前には、誰もいない。

 

「……ロロネロル?」

 

辺りを見回すフェルティローザ。

寮の前、不気味なまでに静まり返った空間。

 

暁色に燃える空だけが、目の前に広がっている。

 

「ちょっと、そういう冗談は嫌いですわよ!」

 

怒ったように呼びかけるフェルティローザ。

再度辺りを見回すが、ロロネロルの姿はどこにもない。

 

大きく目を見開いて――

 

「……嘘でしょ?」

 

フェルティローザが、絶句しながらそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カランカランという、鈴の音と共に扉が開いた。

 

人通りの少ない裏路地。

そこにぽつんと佇む、寂れた雑貨店。

 

薄暗い店内には、怪しげな雰囲気が漂っている。

 

「…………」

 

周りを取り囲む多くの人形。

様々な雑貨小物。用途の分からない品々。

 

コツコツというヒールの音が響いて――

 

「いらっしゃいませ」

 

ゴシックロリータファッションの女性が、

店の奥の暗闇から姿を現した。

 

「こんばんは」

 

穏やかに微笑み、挨拶する少女――ミア。

それぞれの瞳が真っ直ぐに向かい合う。

 

女性が両手を合わせた。

 

「こんなに早く招待に応じてくれるだなんて、嬉しいわ」

 

にっこりと笑いかける女性。

怪しい小物に囲まれながら、目を細める。

 

「お客様には飲み物を用意しなくちゃね。ウフフ、あなたは何がお好みかしら? 紅茶? それともコーヒー?」

 

「おかまいなく。お喋りに来た訳じゃないので」

 

目をつぶりながら答えるミア。

女性がますます楽しそうに笑みを広げた。

 

「それは残念だわ。今宵は素敵な夜になりそうなのに」

 

心の底から残念そうな口調。

コツコツというヒールの音が響いた。

 

黒いクロスを敷いたテーブルを間に、2人が向かい合う。

 

「まずは自己紹介からはじめましょう」

 

にこやかな笑みを崩さず話す女性。

目を細めながら、うやうやしく頭を下げる。

 

「わたくしは千住(せんじゅ)ヒナコ。終末の使徒の一員です」

 

薄暗い空間に響く声。

ゴスロリファッションの女性――ヒナコが微笑む。

 

「ですが、あまり堅苦しいのは好きではありません。気軽に"ヒナポン"とか"ヒナピー"とかって呼んで下さると嬉しいわ」

 

くすくすとした笑い声。

真っ赤なルージュを塗った唇が艶やかに動く。

 

ミアがサングラスを外した。

 

「私も自己紹介した方がいい? ヒナっち」

 

「いいえ。あなたの事はよく知っていますから」

 

機嫌よく答えるヒナコ。

梔子色の瞳が、ミアへと向けられる。

 

「終末の使徒を倒してまわる、哀れなる異教徒。幾たびの穢れと罪(カルマ)を積み重ねた、黒い羊……」

 

手を伸ばし、うっとりとした口調で喋るヒナコ。

ミアが肩をすくめた。

 

「羊じゃなくて猫なんだけどなー。どうして誰も、そういう風に呼んでくれないのかなぁ……」

 

ぶつぶつと不満そうに呟くミア。

悩ましげに、小さくため息をつく。

 

真っ赤なデッキケースを、ヒナコが取り出した。

 

「ご安心なさって。わたくし、毛並みでは人を判断しませんから。肉体なぞ所詮は器。わたくし達の本質は星の果てにある。そうでしょう?」

 

面白そうにそう語るヒナコ。

ミアが、どこからか紫色のデッキケースを取り出した。

 

「まぁ、そうね。分からなくもないかな」

 

同調するように頷くミア。

ヒナコが嬉しそうに顔をほころばせた。

 

2人がカードを取り出し、テーブルの上に置く。

 

「満月の夜、星の海。闇の中に浮かぶは煌めく光……」

 

カードを並べながら、呟くヒナコ。

ミアはやや怪訝そうにその言葉を聞いている。

 

ヒナコがカードを手に微笑んだ。

 

「わたくしの分身も、開幕が待ちきれないようですわ」

 

ライドデッキの1枚。

裏向きのカードに視線を向けているヒナコ。

 

「へぇ、あなたもカードの声が聞こえるの?」

 

静かに、ミアがそう訊ねた。

頷くヒナコ。

 

「えぇ、もちろんです」

 

迷いのない口調。

白い指を伸ばして、カードを並べていく。

 

「今宵の月も啼いています。血に飢えた赤い三日月。天に選ばれた哀れなる生贄。舞台の幕が上がり、殺戮の果てに血の滴る臓物を喰らい尽くす……」

 

ささやくような声。

ヒナコの口元に大きな笑みが広がって――

 

「そう、メガロノヅチが言っています」

 

ヒナコの言葉が、その場に響いた。

一瞬の間。ミアが顔をあげる。

 

「……えっ?」

 

気の抜けた声。

困惑した表情を浮かべているミア。

 

ヒナコが蛇の描かれたスリーブのカードを置いた。

 

「ウフフ、そう慌てないで。南瓜の馬車は到着しました。すぐに、あなたの大好きな殺戮劇が始まりますよ」

 

語り掛けるような口調。

ますます、ミアが戸惑った表情を浮かべる。

 

頬をかきながら――

 

「……まぁ、いっか」

 

ミアが、諦めたようにそう呟いた。

手早く残りのカードを並べていくミア。

 

煌めく星のスリーブに入ったカードが置かれる。

 

「それじゃ、はじめちゃう?」

 

あっさりとした口調で訊ねるミア。

ヒナコが「えぇ」と迷いなく頷いた。

 

2人が向かい合う。

 

「さぁ、迷い足掻く黒猫さん。今宵の仮面舞踏会、わたくしとワルツを踊りましょう」

 

歌うような声を出すヒナコ。

その口元に不気味な笑みが広がった。

 

梔子色の瞳が、一瞬妖しげに輝く。

 

「仮面舞踏会ねぇ」

 

フッと息を吐くミア。

ヒナコに視線を向け、にやりと微笑んだ。

 

「参加したいところだけど、あいにく羽根付きの仮面は家に置いてきちゃったのよね~」

 

どこかからかうような声。

ミアがいかにもわざとらしく、肩をすくめた。

 

ヒナコが嗤う。

 

「いいえ、この舞踏会に仮面なんて必要ありませんわ」

 

きっぱりとした言葉。

「え?」と、ミアがわずかに驚いた。

 

薄暗闇の中、両手を広げて――

 

「だって、わたくし達はもう既に、仮面をかぶっているじゃありませんか。そうでしょう?」

 

ヒナコが、訊ねるようにそう答えた。

不気味なまでに穏やかな声。向けられる梔子色の瞳。

 

ミアが、その目を細める。

 

「…………」

 

黙り込んでいるミア。流れる静寂。

辺りの空気が、冷たく張りつめていった。

 

ヒナコが手を伸ばす。

 

「時間です。舞台の幕をあげましょう」

 

楽しそうに笑うヒナコ。

白い指がカードの上に置かれる。

 

ミアもまた、手を伸ばして――

 

「……うん、そうだね!」

 

にっこりと、明るい笑顔を浮かべた。

星の描かれたスリーブのカードに、指を置くミア。

 

紫色の瞳を向けて――

 

「踊りたいって言うなら、私達が踊らせてあげるよ」

 

ミアが、不敵な笑みを浮かべた。

高らかな声。自信に満ちた雰囲気。

 

鋭い視線を、ヒナコへと向ける。

 

「素敵。忘れられない夜にしましょうね」

 

一分の動揺なく、ヒナコが答えた。

余裕を感じさせる態度。梔子色の瞳が揺れる。

 

薄暗い闇の中、空気が重く沈んでいって――

 

「スタンドアップ・ヴァンガード!!」

 

2人の声が、重なり響き渡った。

 

「《砂塵の双銃 バート》!!」

 

 

砂塵の双銃 バート

ノーマルユニット 〈0〉 (ブースト)

ドラゴンエンパイア - ヒューマン 

パワー6000 / シールド5000 / ☆1

【自】:このユニットがライドされた時、あなたが後攻なら、1枚引く。

― 俺の愛銃が火を吹くぜ!

 

 

「《歌を届けるために ロロネロル》!!」

 

 

歌を届けるために ロロネロル

ノーマルユニット 〈0〉 (ブースト)

リリカルモナステリオ - ワービースト 

パワー6000 / シールド5000 / ☆1

【自】:このユニットがライドされた時、あなたが後攻なら、1枚引く。

― ろろは……もっと、も~っと頑張るのです!

 

 

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