カードファイト!! ヴァンガード StarSong 作:バビロン@VG
「――という訳で、一通り検査したんですけど、特に病気という訳じゃないみたいです!」
夕焼けの光で照らされた室内。
嬉しそうに、ミアのマネージャーがそう報告した。
椅子に座った体勢。レイカが目を細める。
「……そう」
無表情のまま、短く答えるレイカ。
ちらりと、その視線が室内のソファーに向けられる。
涙を流しながら――
「ううぅぅ……もうお嫁にいけないぃぃ……!」
ミアが、嘆くように言って身体を丸めた。
ソファーの上に横たわっているミア。
一瞬、レイカが考え込む。
「……動物病院に行った後の猫?」
ぼそっと呟かれる言葉。
マネージャーがミアの方を向いた。
「もう! ミアさんったら!」
たしなめるような口調。
ミアがびくんと、身体を縮こませた。
「あぅぅぅ……!!」
どこまでも泣き続けているミア。
諦めたように、マネージャーが息を吐いた。
夕焼けの光を受けながら、言葉を続ける。
「ただ、ミアさんすごく疲れが溜まってるみたいで。お医者さんからは過労のような状態って診断されてました」
「過労?」
眉をひそめるレイカ。
考え込むように、口元に手をあてる。
「忙しいのは認めますが、そこまで仕事を割り振ったとも思っていませんが……」
「そうなんです。それは私も不思議で……」
同調しているマネージャー。
ゾンビのような動きで、ミアが手をあげた。
「社長ー! 私はかよわい乙女なんですよー!」
情けない声での訴え。
マネージャーが「もう!」と詰め寄った。
「ミアさんったら、いつまでも寝てないで起きて下さい! 社長に失礼でしょ!」
「嫌ー! 私は一生寝て過ごすのー! 不労所得で生活するんだー!」
ぎゃあぎゃあと騒ぎ立てている2人。
レイカは無言のまま顔を伏せ、俯いている。
やがて、大きく息を吐いて――
「もういいわ」
レイカの諦めたような声が、その場に響いた。
ぴたりと言い争うのをやめる2人。
レイカの鋭い目が、ミアへと向けられる。
「綺羅星さん、あなたには少し休暇が必要なようです。数日間の静養を命じます」
「えっ、休み!?」
がばっと顔をあげるミア。
途端に、生気を取り戻していく。
レイカが頷いた。
「えぇ、仕事の調整は私がやりますので。しばらく休んでください」
「やったー! ありがとうございまーす!」
ソファーから勢いよく立ち上がり、
全身で喜びを表現するミア。
マネージャーが目を見開いて驚く。
「しゃ、社長! いいんですか!?」
「……えぇ」
小さく頷くレイカ。
椅子に背を預け、憂うような表情を浮かべる。
茶褐色の瞳を向けて――
「いずれにせよ、綺羅星さんには他に頼みたい事があります。そのためにも、今はしっかりと体調を整えてもらう必要がありますから」
「……頼みたい事?」
レイカを見つめているマネージャー。
困惑したような表情が、その顔に浮かぶ。
「そう、とても大事なことよ……」
誰に言うでもなく、小声で話すレイカ。
その鋭い目が、ミアの姿を見据えている。
コンコンと、指で机を叩いて――
「綺羅星さん。この後、少し時間を貰えるかしら」
レイカが、唐突にそう切り出した。
どこか鋭さを感じる雰囲気。真剣な表情。
ミアが、喜びの舞いを止める。
「へっ? この後ですか?」
意外そうな表情。
ミアがレイカを見つめ返す。
レイカが目線を伏せた。
「えぇ、とても大事な話がありますので」
「はぁ。別に、私はいいですけど……?」
困惑しながらも了承するミア。
不思議そうな表情で、ソファーに座り直す。
おろおろと、マネージャーが2人の間で戸惑った。
「え、えっと? 社長……?」
普段とは違う雰囲気を感じ取っているマネージャー。
事務所内の空気が、少しずつ張りつめていく。
重苦しい空気の中、レイカが口を開いた。
「マユ、あなたもよ」
「……えっ?」
「休暇。これから数日間の静養を命じます」
驚愕するマネージャー。
レイカが窓の外へと視線をそらした。
「あなた、しばらく休み取ってなかったでしょ。良い機会だから、少し休みなさい」
「えっ、で、でも、ミアさんの仕事の調整が……!」
「それは私がやります。これは命令よ」
どこか威圧的な口調。
マネージャーが口を開けたまま、黙り込んだ。
「……社長?」
確かめるように訊ねるミア。
ほんの少し、その目に疑念が宿る。
マネージャーがレイカに詰め寄った。
「あ、あのっ、社長! 気持ちは嬉しいのですけど、私、社長のお手伝いを……」
「いいから。悪いけど、席を外してくれるかしら。私は綺羅星さんと2人で話さなければいけないの」
はっきりとした声で話すレイカ。
マネージャーから視線を外す。
真っ直ぐにミアの方を向いて――
「もう帰りなさい。後の事は、全部私がやるから」
レイカが、静かにマネージャーにそう告げた。
どこか冷たさを感じる言葉。突き放すような声。
夕焼けの光が、部屋の中を赤く染めていく。
「……わかりました」
振り絞るような声。
マネージャーが落ち込んだように、頭を下げた。
「……社長、失礼します」
「えぇ。お疲れ様、マユ」
ミアを見つめながら答えるレイカ。
マネージャーが一瞬、複雑そうな表情でミアを見る。
コツコツという靴音が響いて――
ばたんと、社長室の扉が閉まる音が響いた。
「……ふぅ」
額に手を当て、息を吐くレイカ。
普段の姿らしからぬ、悩んだ表情を見せる。
「……どうしたんですか、社長?」
ソファーに座りながら、ミアが手を広げた。
「今朝から思ってたんですけど、今日の社長ちょっと変ですよ。何だか集中してないし、それに――」
指を伸ばすミア。
ほんの少しだけ、鋭い目を向ける。
「マユっち、ちょっと可哀想でしたよ。もっと労ってあげても良かったんじゃないです?」
「……あなたには関係ありません」
冷たく答えるレイカ。
目を伏せがちに、ぼそりと付け加える。
「時間がないんです、私達には……」
消え入るような声。
ミアが不審そうに、目を細めた。
室内の空気が重く、沈み込んでいく。
「……それで、私に頼みたいことって?」
静かに、ミアがそう訊ねた。
夕焼けの光が差し込む部屋。2人きりの空間。
外を走る車のクラクションが、やけに大きく聞こえる。
「…………」
沈黙しているレイカ。
やがて意を決したように、口を開く。
「……いつか、話す必要があると思っていました」
視線をそらし、緊張したように話しているレイカ。
デスクの横の引き出しを開ける。
中に入っていた物を机の上に置いて――
「綺羅星ミアさん、あなたにお願いがあります」
レイカの茶褐色の瞳が、夕焼けの色に照らされた。
夕焼けが沈み始め、辺りは暗くなり始めていた。
駅前の繁華街。雑踏の中。
スマホを持ちながら――
「……はぁ」
スーツ姿の小柄な女性――ミアのマネージャーが、
どこか落ち込んだように息を吐いた。
雑踏の中、マネージャーがとぼとぼと歩いていく。
「……社長、ミアさん」
先程の事務所での会話を、マネージャーが思い返す。
重苦しい雰囲気。鋭い視線。冷たい間。
「大丈夫、かな……」
心配そうな口調。
ぎゅっと、持っていた鞄の紐を掴む。
頭を振って――
「だ、大丈夫に決まってますよね! 社長は、本当に、優しい人ですから!」
マネージャーが、自分に言い聞かせるようにそう言った。
どこか無理をした感じの明るい声。引きつった笑み。
雑踏の中、マネージャーは一人取り残されている。
「……はぁ」
再びのため息。
マネージャーが肩を落とした。
首を振って――
「……もうやめよ、悪い事考えるのは」
ぼそりと、マネージャーの口から言葉が漏れた。
雑踏の中にかき消される声。落ち込んだ表情。
俯きながら、マネージャーが歩き出す。
「こうやって考えちゃうのは、あたしの悪い癖だ……。今日はマッサージの日だし、色々考えるのはその後でいいでしょ……」
ぶつぶつと呟いているマネージャー。
人々とすれ違いながら、道を歩いていく。
やがて、辺りから人の気配が少なくって――
薄暗い細い路地が、目の前に開けた。
「……いつ来ても、辺鄙な場所」
ぼやくように話すマネージャー。
諦めたように、路地へと足を踏み入れる。
薄暗い裏路地に、靴の音だけが響いた。
「…………」
怯えるような事もなく、慣れた様子のマネージャー。
スマホを手に、どこか気だるそうに歩いていく。
廃墟のような建物の前に差し掛かった瞬間――
「す、すみません!!」
唐突に、慌てた声がその場に響いた。
マネージャーがスマホから顔をあげる。
「……えっ?」
「あっ、あの! そこのお姉さん!」
一人の小柄な少女が、マネージャーへと駆け寄った。
高校生くらいの少女。ストリート風のファッション。
水色の髪が、夜風に吹かれて揺れる。
「た、助けてください! 友達が、そこで!」
廃墟の入り口を指差す少女。
半開きの鉄の扉が、ぎいぎいと音を立てている。
「お、落ち着いて下さい。何があったんですか!?」
ただならぬ雰囲気の少女を前に、
慌てているマネージャー。
ぐすんと、小柄な少女が鼻を鳴らす。
「と、友達と中で探検してて……そしたら、急に、その友達が苦しそうに倒れちゃって。そ、それで、ボク、助けを……!」
ぽろぽろと涙を流している少女。
マネージャーが真剣な表情を浮かべる。
「分かりました。すぐに救急車を……!」
「あっ、待って待って! それはダメ!」
必死になって止める少女。
訝しむマネージャーに向かって、少女が続ける。
「その友達、親が凄く厳しくて! 夜にこんな所で遊んでたってバレたら大変なんです!」
「そんなこと言っても、今はそういう状況じゃ――」
「お願いします! お姉さん、ボクと一緒に友達をここまで運んでくれませんか! 一人じゃ無理なんです! タクシーで病院に行くので!」
懇願する少女。
一瞬、マネージャーが考え込むように黙り込む。
やがて、決心したようにマネージャーが頷いた。
「わかりました。ただ、危険な状況だと思ったらすぐに救急車を呼びますから。いいですね?」
「は、はい! ありがとうございます!」
頭を下げる少女。
足早に、廃墟の入口へと駆けていく。
「こっちです! 建物の奥!」
手を振っている少女。
マネージャーが少女を追いかけ、建物へと入った。
がらんとした埃っぽい空間が、目の前に現れる。
「……ここ、ライヴハウス?」
ぽつりと呟くマネージャー。
暗闇の中、足元をスマホの光で照らす。
「こっちこっち! ステージのあるフロア!」
声を張り上げ、呼びかけている少女。
マネージャーが急いでそちらへと向かう。
勢いよく、扉を開いて――
「助けにきましたよ! どこにいますか!?」
マネージャーが、叫ぶように問いかけた。
見棄てられた小規模なライヴハウス。暗い空間。
しんと、辺りは不気味に静まり返っている。
「……あれ?」
きょろきょろと辺りを見回すマネージャー。
先程までの少女の姿は見当たらない。
そして、何よりも不自然なのは――
「どうして、ステージに光が……?」
誰もいないはずのライヴハウス。
ステージの上を、眩いスポットライトが照らしていた。
「これ、どういうこと……?」
目を細めながら、呆然としたように
その光景を眺めているマネージャー。
後ろの扉が、勢いよく閉まる。
「ひゃっ!?」
悲鳴をあげるマネージャー。
困惑した表情。肌から血の気が引いていく。
くすくすとした忍び笑いがその場に響いて――
「いやぁ、思ったより上手くいったねー」
影になっている場所から、少女が姿を現した。
愕然とした表情を浮かべるマネージャー。
小柄な少女――磐井シアンが、微笑んだ。
「ちょっぴり不安だったけど、ボクってけっこう演技派なのかな? 意外な才能だね、バディ!」
楽しそうな声が反響する。
右手に持っているカードに語り掛けているシアン。
おそるおそる、マネージャーが口を開く。
「あ、あなた、いったい……!?」
怯えた目を向けているマネージャー。
身体を震わせながら、返事を待つ。
その口元に笑みを浮かべて――
「ボクは磐井シアン。世界を滅ぼす、終末の使徒の一人」
シアンが、大仰な口ぶりでそう告げた。
迷いのない軽やかな足取り。靴音が響く。
「騙しちゃって悪いけど、これも救世主様の命令なんだよね。そういう訳で、ボクと付き合ってもらうよ!」
真っ白なデッキケースを取り出すシアン。
状況が理解できず、マネージャーが言葉を失う。
ステージの上に立って――
「さて、野良猫さんはちゃんと来てくれるかな?」
シアンの赤銅色の瞳が、妖しい光を帯びて輝いた。
夜の闇が、辺りを包み込んでいた。
月が浮かぶ空。漆黒に輝く星の海。
がやがやという雑踏の音が、辺りに響く。
事務所の入っているビルから出て――
「…………」
綺羅星ミアが、辺りを見回した。
深くかぶった帽子にサングラス。顔を隠しているミア。
小さく、その場で息を吐く。
「……テンション下がるなぁ」
先程までのレイカとの会話を思い返すミア。
どこか落ち込んだような、暗い雰囲気を漂わせる。
「まぁ、仕方ないか。社長の頼みだしね。それに……」
言葉が途切れるミア。
脳裏に、マネージャーの顔が浮かぶ。
夜空を見上げながら――
「……他ならぬ、マユっちのためだもんね」
ぽつりと、ミアが言葉をこぼした。
事務所前の道路。雑踏の中にいるミア。
星の海が、静かに天を覆っている。
「……じゃ、今日はもう帰ろうかな」
小声で呟くミア。
再び息を吐くと、その場で大きく体を伸ばす。
帰宅しようと、一歩を踏み出した瞬間――
「……ん?」
ほんの一瞬、不穏な気配をミアが感じ取った。
視線を向けるミア。人々が行き交う姿に注意を払う。
特に何も起こっていない光景を見て――
「……向こうの方か」
ぼそりと、ミアが呟いた。
ポケットに忍ばせてあるデッキケースに指を当てるミア。
軽快な音楽が流れた。
「ほら、やっぱり」
スマホを取り出すミア。
画面に表示されている『サミー』の文字。
指を動かして、アイコンをスライドする。
「ハイ、サミー」
『仕事の時間だ』
「言われなくても、分かってるよ」
呆れたように答えるミア。
電話の相手が『なんだと?』と訊ねた。
『こちらの情報より早く何か掴んだのか? それとも、向こうからの接触でもあったか?』
「どっちも外れ。そういう訳じゃないよ」
『なら、どういう訳だ?』
食い下がってくる声。
ミアがわざとらしく、大きく息を吐いた。
「理屈じゃないよ。女の勘ってやつ」
『女の勘だと……?』
口ごもる電話からの声。
ミアの脳裏に、上司が頭を悩ませている姿が浮かんだ。
電話の男性が、フンと鼻を鳴らす。
『まぁいい。観測チームから、異常な数値が発生したとの報告を受けた。おそらく、また向こうとの繋がりができている』
「またかぁ。最近、連続で起こってない?」
疑問を口にするミア。
電話口の男性が『ハッ』と声をあげる。
『どこかの誰かが、繋がってる連中を片っ端から倒してまわってるせいじゃないか? 相手も必死なんだろう』
「それはそれは、迷惑な人もいたもので」
他人事のような口調のミア。
目をつぶりながら、ゆっくりと首を振る。
電話口からの声が続く。
『今はまだ人物の特定までは至っていない。反応があった場所の座標を送る。次の情報が入るまで待機しろ』
送付されてくるデータ。
何気なくそれを見たミアが、ほんの少し目を見開いた。
「ん? なにこれ、随分近いね」
『なに?』
「本当に近いよ。今私がいる所から、せいぜい4、5ブロック程度しか離れてないんだけど?」
地図データを眺めながら話しているミア。
男性が一瞬だけ沈黙した後、真剣な声を出す。
『お前は相手に顔が割れている。偶然とは思えないな。分かってて、誘い込まれている可能性がある』
慎重な口調。張りつめた空気。
電話の向こう、カタカタというタイピング音が響く。
『少し待て。近くに他の人員がいないか確認する。単独での行動は危険だ』
冷静に呼びかける男性。
ほんの少し、考えるような仕草を見せてから――
「あー、いいよ。とりあえず行ってみるから」
軽い口調で、ミアがそう言った。
男性が『おい!』と怒るような声を出す。
『正気か!? リスクが高すぎるだろう! いいから、こちらの命令を待て!』
「そうは言っても、このままだと永遠にターゲットが見つからないじゃん。危険でも何でも、行動しないとさ」
スマホに向かって喋るミア。
地図座標を確認すると、頷く。
「とりあえず見てくるから。また報告するね、サミー」
『ちょっと待て!! おい、シドウ――』
喚くような声が途切れる。通話を終えるミア。
帽子の位置を直して――
「さて、行こうかな」
何の迷いもなく、ミアがそう言って歩き出した。
夜の道。人混みの中を進んでいくミア。
煌びやかな光に照らされながら、靴音を鳴らす。
「…………」
まるで見えない何かに誘われるかのように。
導かれるままに歩みを進めていくミア。
やがて、こじんまりとした裏通りに入って――
「……そろそろかな」
ミアが小声で呟いた。
サングラスを外し、帽子を脱ぐミア。
細い路地を進んだ先で――
「……ここだね」
潰れたライヴハウスを、ミアが見上げた。
崩れた外観。とっくの昔に破棄され、忘れ去られた地。
半開きの扉が、低い音を立てて揺れている。
「…………」
スマホを取り出すミア。着信はない。
少しだけ考えると、首を振った。
「ま、なるようになるか」
気楽な口調。覚悟を決めるミア。
中に入ろうと、前へと踏み出した瞬間――
くぐもった悲鳴が、店の奥から響いて消えた。
「!!」
目を見開くミア。
素早く、扉を掴んで中へと駆けこんだ。
真っ暗闇のエントランスを通り抜けて――
「そこまでよッ!!」
勢いよく、扉を開けてミアが中へと呼びかけた。
さっと、胸ポケットに手を入れるミア。
中の物を取り出そうとして――
「……えっ?」
目の前の光景を見て、ミアが固まった。
狭いライヴハウスのステージ。外付けの照明の光。
ファイトテーブルを挟んで――
「う、嘘でしょ、バディ……!?」
ストリート風のファッションをした少女――
磐井シアンが、驚愕の声をあげた。
シアンの前には、6枚のカードが並んでいる。
タイムスタンピング・ドラゴン
ノーマルユニット 〈3〉
(ツインドライブ!!) (ペルソナライド)
ダークステイツ - ギアドラゴン
パワー13000 / シールドなし / ☆1
【自】【(V)】:このユニットがヴァンガードにアタックした時、【コスト】[【カウンターブラスト】(1)]することで、あなたのバインドゾーンに同名がないあなたのリアガードを1枚選び、バインドする。相手のヴァンガードがグレード3以上なら、1枚ではなく、それぞれ別名を2枚選んでよい。
【自】【(R)】:あなたのリアガードがこのユニットの効果でバインドされた時、そのカードは元々のグレードが3以上なら、そのターン中、このユニットは『トリプルドライブ』を得て、パワー+10000し、違うなら、あなたの山札からそのカードのグレード+1を1枚まで探し、(R)にコールし、そのターン中、パワー+10000し、山札をシャッフルする。
― 時空間を侵し、存在証明を脅かす者に鉄槌を!
「ど、どうして……!?」
よろめいているシアン。
目に涙を浮かべながら、食って掛かる。
「ぼ、ボク達は、同じ使徒のはずでしょ!? あなたをこっちと繋げたのも、ボク達に協力してもらうためなのに! な、なのにどうして……!?」
言葉が途切れるシアン。
赤銅色の瞳から、光が消えていく。
対面の人物が、口を開いて――
「うるさいのよ、負け犬」
威圧的な口調で、そう告げた。
酷く冷酷な声。殺気に満ちた言葉。
水色の髪の少女を、鋭く睨みつけながら――
「あたしは、あんた達の命令に従う気はない」
吐き捨てるように、その人物がそう口にした。
シアンが驚きながら手を広げる。
「それがおかしいんだって! 救世主様は、ボクとあなたで協力して、あの野良猫さんを倒せって――」
「だから」
ぎりっと、歯を食いしばる音。
蘇芳色の瞳に怒りの色が宿って――
「うるさいって、言ってんのよッ!!」
シアンの前の人物が、近くの壊れたアンプを蹴り上げた。
巻き起こる大きな破壊音。シアンが身をすくめる。
怯えきったシアンに向かって――
「さっさと消えろッ!!」
叫ぶような怒声が、辺りの空気を震わせた。
シアンの顔が恐怖で歪み、そして――
「ふ、ふわああああああん!!」
シアンの口から、悲鳴のような声が上がった。
ばたばたとカードを回収していくシアン。
そのまま、一目散に出口へと駆けていく。
「おっと……」
さっと、出口の前からどくミア。
シアンが横を通り過ぎていく。
ばたんと、扉が音を立てて閉まった。
「……ふん、口ほどにもない」
呆れたように呟かれた声。
2人きりの空間。見棄てられたライヴハウス。
ミアが、ステージに向かって歩き出した。
「…………」
真っ直ぐに、相手の姿を見据えているミア。
いつになく真剣な表情がその顔に浮かんでいる。
ステージにあがり、2人が向かい合った。
「……あんたか」
ミアの事を睨み返している人物。
冷たい口調。殺気に満ちた雰囲気。
その蘇芳色の瞳には、妖しい光が宿っている。
相手を見据えているミア。
おもむろに、その口を開いて――
「……マユっち」
向かいの人物――日野宮マユに向かって、口を開いた。