カードファイト!! ヴァンガード StarSong   作:バビロン@VG

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第四楽章 血塗られし森厳の姫君④

 

――宇宙に浮かぶ、煌めく星々。

 

果てのない漆黒の海。いくつもの瞬き。

無限にも続く暗闇の中、星々が静かにたゆたう。

 

闇に輝く光。相反する要素。

 

それらは複雑に絡み合い、混じり合って、波を打つ。

人の理では決して理解できぬ、超越した現象。

 

2つの星の運命が、強く結びついて――

 

「っ!」

 

2人きりの空間。ライヴハウスのステージで。

綺羅星ミアが、苦しそうに顔をしかめた。

 

息を切らしながら、盤面を眺める。

 

 

ミア ダメージ5

 

 

横になった5枚のカード。敗北の足音。

手札を片手に、顔色悪く呟く。

 

「時間かけすぎだよ、ロロ……」

 

青白い顔のミア。冷や汗が流れる。

紫色の瞳の中、渦巻く光が僅かに揺らいだ。

 

心臓が凍りつくような感覚の中で――

 

「あたしのターンッ!!」

 

照明に照らされたステージ。

叫ぶような声と共に、マユがカードを引いた。

 

蘇芳色の瞳が輝く。

 

「ペルソナライドッ!!」

 

鋭い音と共に、朱華の淑女の姿が重なった。

 

 

追想の花乙女 クロディーヌ

ノーマルユニット 〈3〉

(ツインドライブ!!) (ペルソナライド)

ストイケイア - バイオロイド 

パワー13000 / シールドなし / ☆1

【起】【(V)】【ターン1回】:【コスト】[リアガードを3枚退却させる]ことで、そのターン中、このユニットは『【永】【(V)】:あなたのプラント・トークンすべてのパワー+5000』を得て、ドライブ+1。

【起】【(V)】【ターン1回】:【コスト】[ドロップからオーダーカードを1枚バインドする]ことで、プラント・トークンを2枚まで(R)にコールする。

【自】【(V)】:このユニットがヴァンガードにアタックした時、【コスト】[【ソウルブラスト】(1)]することで、あなたのプラント・トークンを1枚選び、スタンドさせ、あなたの、ドロップとバインドゾーンのオーダーカード合計2種類につき、そのターン中、そのユニットのパワー+5000。

― 踊りましょ!私達のこれまでと、これからの為に!

 

 

「…………」

 

真剣な表情を浮かべているミア。

目線を伏せがちに、手札を構える。

 

その手に残っているカードは、5枚。

 

「クロディーヌのスキルでプラントを3体退却!! さらにドロップのオーダーを除外してプラントを2体コール!!」

 

容赦なくカードを動かしていくマユ。

緑色の光。辺りで魔力が奔流していく。

 

カードを構えて――

 

「《ホルホル・マッシュルーム》をコール!!」

 

荒々しく、場にカードが置かれた。

 

 

ホルホル・マッシュルーム

ノーマルユニット 〈1〉 (ブースト)

ストイケイア - ドリアード 

パワー6000 / シールド5000 / ☆1

【起】【(R)】:【コスト】[このユニットをソウルに置く]ことで、プラント・トークンを2枚まで(R)にコールし、「グランフィア」を含むグレード3以上のあなたのヴァンガードがいるなら、あなたのリアガードを1枚選び、そのターン中、パワー+5000。(プラントはグレード0/パワー5000/クリティカル1でブーストを持つ)

― 掘って♪潜って♪おっ宝さがし♪

 

 

「スキルでソウルに移動!! プラント2体をコール!!」

 

カードをソウルに入れるマユ。

植物の眷属が、大地より溢れ出る。

 

 

プラント

トークンユニット 〈0〉 (ブースト)

クランなし - プラント 

パワー5000 / シールドなし / ☆1

 

 

プラント

トークンユニット 〈0〉 (ブースト)

クランなし - プラント 

パワー5000 / シールドなし / ☆1

 

 

蘇芳色の瞳の中、光が躍って――

 

「《扇情の蜜》を使用ッ!!」

 

宣言と共に、カードが鈍い輝きを放った。

 

 

扇情の蜜

ノーマルオーダー 〈2〉 ストイケイア

あなたのリアガードを1枚選び、そのターン中、あなたのドロップ5枚につき、パワー+5000。あなたのドロップが15枚以上なら、そのターン中、さらにそのユニットのクリティカル+1。

― 足りないのか。ならばこれで補うがいい。

 

 

目を細めるミア。

戦況が刻一刻と悪化していく。

 

マユが左腕を伸ばした。

 

「ドロップのカードは19枚!! よってプラント1体のパワー+15000!! さらにクリティカル+1!!」

 

植物の眷属に注がれる禁断の蜜。

身をよじらせて、植物が激しい苦痛の声をあげる。

 

うっとりとした顔を浮かべて――

 

「あぁ、素敵! 命が育ち、苦しみが実ってるわ!」

 

クロディーヌが、その声に聞き入った。

魔力の粒子が舞い散り、星のように輝く。

 

金切り声のような音が、ひと際大きく戦場に響き渡った。

 

「プラントでアタックッ!!」

 

カードを横向きに動かすマユ。

植物がロロネロルへと襲い掛かる。

 

 

プラント パワー53000 ☆2

 

 

「完全ガード!!」

 

カードを出すミア。

ロロネロルが力を振り絞り、攻撃を避けた。

 

 

シャボンスプラッシュ リビェナ

ノーマルユニット 〈1〉 (ブースト)

リリカルモナステリオ - ワービースト 

パワー6000 / シールド0 / ☆1

【永】:守護者(守護者を持つカードはデッキに合計4枚まで入れられる)

【自】:このユニットが(G)に置かれた時、あなたのユニットを1枚選び、そのバトル中、ヒットされない。あなたの手札が2枚以上なら、手札から1枚選び、捨てる。

― 邪魔しちゃ、だーめ♡

 

 

手札を捨てるミア。残った手札は3枚。

ばんと、手を置くマユ。

 

憎しみのこもった視線を向けて――

 

「クロディーヌでアタックッ!!」

 

マユの声が、ライヴハウス内に反響した。

 

 

追想の花乙女 クロディーヌ パワー33000

 

 

その手がソウルのカードを抜き取る。

 

「スキル発動!! ソウルブラストすることで、プラント・トークンをスタンド!! パワー+25000!!」

 

 

追想の花乙女 クロディーヌ

ノーマルユニット 〈3〉

(ツインドライブ!!) (ペルソナライド)

ストイケイア - バイオロイド 

パワー13000 / シールドなし / ☆1

【起】【(V)】【ターン1回】:【コスト】[リアガードを3枚退却させる]ことで、そのターン中、このユニットは『【永】【(V)】:あなたのプラント・トークンすべてのパワー+5000』を得て、ドライブ+1。

【起】【(V)】【ターン1回】:【コスト】[ドロップからオーダーカードを1枚バインドする]ことで、プラント・トークンを2枚まで(R)にコールする。

【自】【(V)】:このユニットがヴァンガードにアタックした時、【コスト】[【ソウルブラスト】(1)]することで、あなたのプラント・トークンを1枚選び、スタンドさせ、あなたの、ドロップとバインドゾーンのオーダーカード合計2種類につき、そのターン中、そのユニットのパワー+5000。

― 踊りましょ!私達のこれまでと、これからの為に!

 

 

優雅に手をかざすクロディーヌ。

その手の中で、魔力が渦巻くように凝縮していく。

 

妖艶な笑みを浮かべて――

 

「あなたの命の輝きに、華を添えましょ!!」

 

強大な魔力が、その場で解き放たれた。

巻き起こる衝撃波。極彩色の閃光。

 

ロロネロルの目の前が、光で埋め尽くされる。

 

「ぐぅっ!!」

 

苦しそうに顔をしかめているロロネロル。

体力の限界。もはや、攻撃をかわす余力はない。

 

悔しそうに目を細め、そして――

 

「……ノーガード」

 

ミアが目を閉じて、そう宣言した瞬間。

衝撃波が、ロロネロルの姿を飲み込んだ。

 

眩い閃光。辺りが光に包まれ、何も見えなくなる。

 

「ロロッ!!」

 

悲鳴をあげるクラリッサ。

全身から力が抜け、その場でへたり込む。

 

「嘘だ、嘘だよ。ロロ……」

 

目を見開き、震えているウィリスタ。

魔力による光の渦を、2人が呆然と見つめる。

 

両手を広げて――

 

「アーッハハハハハハ!!」

 

戦場に響く笑い声。

心の底から楽しそうに、クロディーヌが天を仰いだ。

 

蘇芳色の瞳が輝いて――

 

「……ノーガードだって?」

 

確認するかのように、マユが繰り返した。

一瞬、驚いたような表情が浮かぶ。

 

やがて、その口元に笑みが広がって――

 

「ハッ!! あんたもようやく、諦めることにしたんだね!!」

 

マユが、声をあげた。

 

「そうさ!! この世の中はみんなそう!! 夢も希望も、全部が全部、絵空事だ!! こんな世界に、生きる価値なんてないのよ!!」

 

どこか悲しげな響きを含んだ言葉。

マユがミアを指差し、鋭い目を向けた。

 

白い光に照らされながら――

 

「マユっち、もう一度だけ言ってあげる」

 

無音の中、はっきりと響く声。

ミアがゆっくりと、その目を開ける。

 

神秘的な光が、瞳の中で渦巻いて――

 

「私には、カードの声が聞こえるのよ」

 

射抜くように、ミアがマユを見つめた。

全てを見透かすような、超然とした雰囲気。

 

マユが一瞬、言葉を失う。

 

ぶるぶると、拳を握りしめて――

 

「――ふざけんなッ!!」

 

吐き捨てるように、マユが声を荒げた。

 

「トリプルドライブッ!!」

 

デッキに手を伸ばすマユ。

カードがめくられていく。

 

「ファーストチェック、ドロートリガー!! パワーはプラントに!!」

 

 

晴朗の乙女 レェナ

トリガーユニット 【引】+10000

(ドロートリガー) 〈0〉 (ブースト)

ストイケイア - バイオロイド 

パワー4000 / シールド5000 / ☆1

【永】【(G)】:相手のヴァンガードがグレード3以上なら、このユニットのシールド+5000

― こんなに良いお天気なのですよ?お散歩しましょ~♪

 

 

「セカンドチェック、ヒールトリガー!! ダメージ1回復!! パワーはプラントに!!」

 

 

挽歌の妖精

トリガーユニット 【治】+10000

(ヒールトリガー) 〈0〉 (ブースト)

ストイケイア - ゴースト 

パワー5000 / シールド15000 / ☆1

― 彼らが現れたのか。その真相は分かっていない。

 

 

マユ ダメージ5→4

 

 

ダメージをドロップに送るマユ。

指を伸ばして、最後の1枚を掴む。

 

「サードチェック!!」

 

大きく言い放つマユ。

運命を決める1枚。

 

勢いよく、カードが場に叩きつけられて――

 

「……ノー、トリガー」

 

一瞬の静寂の後。

マユが、自分の場のカードを見つめた。

 

 

花めく蕾に祝福を

ノーマルオーダー 〈0〉 ストイケイア

そのターン中、元々のパワーが5000以下のあなたのユニットすべてのパワー+10000し、『【自】【(R)】:このユニットのアタックがヒットした時、このユニットを手札に戻してよい。』を与える。

― 開花を先取りする、祝福の魔法。

 

 

愕然としているマユ。

ミアが静かに、自分のデッキに手を伸ばす。

 

「ダメージチェック」

 

落ち着いた声。

さも当然のことのように、ミアがカードをめくる。

 

瞳の中で光が渦巻いて――

 

「ヒールトリガー。ダメージ1回復」

 

ミアの手の中で、カードが表になった。

 

 

ピースフルガーデン アニカ

トリガーユニット 【治】+10000

(ヒールトリガー) 〈0〉 (ブースト)

リリカルモナステリオ - ワービースト 

パワー5000 / シールド15000 / ☆1

(【治】はデッキに合計4枚まで入れられる)

― ここは、優しさで満ちた彼女の庭園。

 

 

ミア ダメージ6→5

 

 

「なっ……!?」

 

言葉を失うマユ。見開かれた瞳。

翡翠色の魔力の渦の中――

 

煌めく白い光が放たれ、戦場を照らした。

 

「あら?」

 

不思議そうに、顔を向けるクロディーヌ。

夜明けの光のような輝きが、辺りを満たす。

 

魔力の渦が大きくゆらぎ、そして――

 

光に切り裂かれるように、渦が内側から崩壊した。

 

「まぁ!?」

 

目を丸くするクロディーヌ。

きらきらとした光の粒子が宙を舞って――

 

「にゃあッ!!」

 

ロロネロルが、光の中から飛び出した。

神秘的に輝く紫色の瞳。乱れた髪と服装。

 

大きく、ロロネロルが腕を振りかぶる。

 

「プラントでアタック!!」

 

カードを動かすマユ。

植物の眷属が2人の間に割って入った。

 

 

プラント パワー60000 ☆2

 

 

「オーバートリガーでガード!!」

 

ミアが手札の1枚を投げ出す。

 

 

水界の精霊王 イドスファロ

トリガーユニット 【超】

(オーバートリガー) 〈0〉 (ブースト)

エレメンタル パワー5000 / シールド50000 / ☆1

(【超】トリガーはデッキに1枚だけ入れられる。トリガーで出たら、そのカードを除外し、1枚引き、あなたのユニットを1枚選び、そのターン中、パワー1憶!ドライブチェックで出たら、さらに追加効果が発動!)

追加効果-あなたのドロップから1枚選び、手札に加え、あなたのユニットを1枚選び、そのターン中、クリティカル+1。

― 万物の礎たる奇跡の水よ。無尽の力を与えたまえ。

 

 

光輝いているロロネロルの姿。

拳がめり込み、植物の眷属が勢いよく吹き飛ぶ。

 

「ッ!! まだだッ!!」

 

あせったように叫ぶマユ。

残った最後のカードに、指を置く。

 

悲愴な決意をその胸に抱いて――

 

「プラントで……アタックッ!!」

 

マユの声と共に、蠢く植物の眷属が襲い掛かった。

 

 

プラント パワー50000

 

 

とんと、着地するロロネロル。

軽やかな動きでその場から跳びのいて――

 

「完全ガード!!」

 

ミアが、カードを叩きつけるように場に出した。

 

 

シャボンスプラッシュ リビェナ

ノーマルユニット 〈1〉 (ブースト)

リリカルモナステリオ - ワービースト 

パワー6000 / シールド0 / ☆1

【永】:守護者(守護者を持つカードはデッキに合計4枚まで入れられる)

【自】:このユニットが(G)に置かれた時、あなたのユニットを1枚選び、そのバトル中、ヒットされない。あなたの手札が2枚以上なら、手札から1枚選び、捨てる。

― 邪魔しちゃ、だーめ♡

 

 

「ッ!? そんな!?」

 

目を見開くマユ。

ロロネロルが攻撃を避けて、その場で身構えた。

 

紫色の瞳の中、神秘的な光が輝きを讃える。

 

「これで攻撃は終わりだね、マユっち」

 

横向きになったマユのカードを見ながら、ミアが言う。

ぎりぎりと、マユが手を強く握りしめた。

 

「ぐぅぅぅ……!!」

 

低い声で唸っているマユ。

忌々しそうに、ミアを睨みつける。

 

蘇芳色の瞳の中、光が揺らぐ。

 

「……どうしてよ」

 

影の差した顔。

震える声で、マユが呟く。

 

左腕を振り上げて――

 

「どうして、あんたばっかりそんなに輝いてるのよッ!!」

 

バンッと、マユがテーブルを勢いよく叩いた。

涙の滲んだ目。怒りに満ちた表情。

 

マユがミアを指差し、叫ぶ。

 

「あんたは天才で、あたしの持ってない物を全部持ってて!! 綺麗な姿で、きらきらとしながらステージに立ってて!!」

 

2人きりのステージ。

言葉が反響して、暗闇の中に落ちていく。

 

「あたしは!! あたしにはもう、何も残ってないのに!! あんたと違って空っぽで!! 無価値で!! 誰からも必要とされてないのに!!」

 

心が決壊したかのように、マユの言葉が続く。

 

「ずっとずっと、頑張ってきたのに!! 全部全部、なくなって!! 目を逸らして!! 大切な物を諦めて!!」

 

息を切らすマユ。

辛そうな表情。苦しそうに、頭を抱える。

 

「どうしてよ……! どうして、あたしには、何も残ってないのよ……! 皆から見捨てられて、一人ぼっちで……! あたし、あたしは……!!」

 

途切れていく言葉。

マユが声を殺して、うつむく。

 

すすり泣く音が、その場に響いた。

 

「マユっち」

 

静かに、ミアが口を開く。

 

「マユっちは、一人なんかじゃないよ」

 

穏やかな声色。

語り掛けるように、ミアがそう話した。

 

マユが目を見開き、顔をあげる。

 

「なによ……!! あんたなんかに、何が分かるって言うのよッ!!」

 

再び、怒りの炎が燃え上がるマユ。

涙を拭い、鋭い目をミアへと向ける。

 

落ち着き払った表情で――

 

「言ったじゃない。話したい事があるって」

 

冷静に、ミアが言葉を続けた。

神秘的ながらも、優しい響きの言葉。

 

マユが、訝しむように目を細める。

 

「ハッ!! 今更なによ!! あんたの話しなんて、あたしは聞きたくなんか――」

 

腕を動かし、突っぱねるマユ。

ミアがその言葉を無視して、ポケットに手を入れた。

 

紫色の瞳の中、神秘的な光が輝きを見せる。

 

「あの後、社長と話し合ったのよ。今までの事とか、社長が私を雇ってくれた理由とか。そして――」

 

言葉を切るマユ。手を取り出すと、

折り畳まれた紙をマユの方へと差し出す。

 

真っ直ぐにマユを見据えながら――

 

「――マユっちの、これからのことについて」

 

ミアの言葉が、2人の間に響いていった。

呆然としたように、紙を見つめるマユ。

 

「……は?」

 

気の抜けた声。

ふらふらと指がさまよい、差し出された紙を掴んだ。

 

四つ折りになった書類。ゆっくりと広げて――

 

「……これって」

 

大きく、マユが目を見開いた。

ぶるぶると震えだす指。驚愕の表情。

 

光の宿った蘇芳色の瞳から、涙が落ちる。

 

備え付けられた照明からの光。

白い色が瞬いて――

 

「綺羅星ミアさん、あなたにお願いがあります」

 

数刻前の事務所の風景。

レイカが、向かいに座るミアに向かって口を開いた。

 

鮮やかな夕焼けの色が、空には広がっている。

 

「お願い……?」

 

怪訝そうに訊ねるミア。

目の前に置かれた書類の束に、視線を落とした。

 

積み重なった書類。その一番上に書かれた文字。

 

「……『日野宮マユ 復活ライヴイベント』?」

 

ぼそりと、ミアが文字を読み上げた。

分厚い書類の束。いくつもの付箋が貼られた資料。

 

レイカが真っすぐに、ミアを見つめる。

 

「私と契約した時、交わした言葉を覚えていますか? あなたは基本的に自由にして構いませんが、たった一度だけ、私の都合に合わせてライヴをして欲しいと」

 

淡々とした口調のレイカ。

ミアが肩をすくめた。

 

「もちろん、覚えてますよ。あの時の社長、やけにおっかない顔で何度も念押ししてきたじゃないですか。忘れる方が無理ですよ」

 

呆れたようにそう答えるミア。

とんと、レイカが書類の束を指で叩いた。

 

「それがこのライヴです。綺羅星ミアさん、あなたには"マユの前座"として、ライヴをやっていただきます」

 

鋭い声色。

茶褐色の瞳を向け、レイカがそう宣言する。

 

2人の間から、しばし音が消えた。

 

「私が前座?」

 

言葉をくりかえすミア。

くすりと、どこか楽しそうに笑みを浮かべる。

 

「今をときめく天才歌手で、シングル曲のトップチャートをひた走るこの私が、マユっちの前座なんですか?」

 

からかうような口調。

確かめるように、ミアがレイカを見つめる。

 

寸分の迷いもなく、レイカが頷いた。

 

「その通りです」

 

どこまでも冷静な声。

再び、2人が無言で互いを見つめ合った。

 

事務所の外、車のクラクションの音が響いていく。

 

「らしくないですね、社長」

 

長い沈黙の末、ミアが口を開いた。

 

「社長の企画はいつだって完璧に計算されてて、話題性と反響が生まれるように洗練された、本当に素晴らしいものばかり」

 

歌うように話しているミア。

指を伸ばしながら、いたずらっぽく微笑む。

 

「なのに、この企画はそうじゃありません。イベントを大きく成功させたいなら、私がメインをはるのが妥当なはずです。てか、マユっちってアイドルだったんですか? 今もステージに立てるんです?」

 

疑問を呈していくミア。

レイカは無言のまま、腕を組んで黙り込んでいる。

 

ミアの顔から笑みが消えた。

 

「教えて下さいよ、社長。私みたいな素人がちょっと考えただけでも、この企画は穴だらけです。社長の勝算、聞かせてくれませんか?」

 

鋭い響き。真剣な表情のミア。

紫色の瞳が、射抜くようにレイカの姿を見据えた。

 

燃えるような暁の色が、2人の姿を照らしていく。

 

「……勝算ですって?」

 

フッと、息を吐くレイカ。

普段とは違う、感情の宿った声色。

 

座っていた椅子に背中を預けて――

 

「そんなもの、ある訳ないでしょう」

 

実にあっさりとした口調で、レイカがそう答えた。

ミアが目を丸くする。

 

「えっ?」

 

「あなたの言っていることは全て正しいわ。こんな企画、誰がどう見ても馬鹿げてるわよ。病気で半分引退状態のアーティストのため、現役トップアイドルを利用するなんて」

 

くっくっと、レイカが喉を鳴らして笑う。

 

「計算するまでもない、素人だってもう少しマシな企画を考えるわ。もしこれをマユが提出してきたとしたら、秒で却下するわね」

 

愉しそうに手をひらひらとさせるレイカ。

ミアがぽかんと、その姿を見つめる。

 

レイカが息を吐き、首を振った。

 

「勝算も正当性も、なにもありはしないわ。本当に本当に、馬鹿馬鹿しい。どうしようもない計画……」

 

書類の束を見つめているレイカ。

夕焼けの色が、憂うような顔を照らす。

 

両手を広げて――

 

「でもね、例えどんなに不合理であったとしても、全く勝算がなかったとしても。このライヴだけは必ずやらないといけないのよ」

 

レイカが、静かにそう言い切った。

決意に満ちた表情。真剣に話しているレイカ。

 

ミアがおもむろに、口を開いた。

 

「……なぜ?」

 

理解できない様子のミア。

レイカがにやりと、笑みを浮かべる。

 

遠い過去に思いを馳せながら――

 

「それが、私がマユとした約束だからよ」

 

レイカが、静かに答えた。

そのままゆっくりと、レイカが話し始める。

 

マユの過去、今までの経緯について。

 

「…………」

 

無言で話しに聞き入っているミア。

レイカの話す声だけが、部屋の中に響いていく。

 

夕焼けが沈み、辺りに夜の暗闇が訪れた。

 

「――だから、あの時に私は心に誓ったのよ。なにがなんでもマユを表舞台に戻すと。あの華々しいステージに、再び立たせてあげるとね」

 

長い言葉の果て、レイカがそう結び終えた。

黙り込んでいるミア。無言の空間。

 

外からの雑踏の音が、やけに大きく響く。

 

「……つまり」

 

額に指を当てるミア。

疑うような目を向けて――

 

「社長が私を雇ったのって、マユっち復活のために利用しようって、そういう思惑があったんですか?」

 

ミアが、そう訊ねた。

レイカが頷く。

 

「えぇ、その通りです」

 

冷淡なまでにきっぱりとした声。

ミアが「ぐぅっ」と、声を詰まらせた。

 

「言い切らないで下さいよ、傷つくなぁ……」

 

うじうじと視線を伏せているミア。

レイカが冷たい目を向けた。

 

「事実ですから。それに、あなただって事務所を探していたでしょう。お互いの利益を見据えた、良い契約だったと思いますが」

 

「それは、そうですけど……」

 

複雑そうな表情のミア。

レイカが疲れたように息を吐く。

 

「あなた程、話題性持っていたアーティストはいませんでしたから。あなたを引きずり込めば、嫌でもうちに注目が集まります。ひいてはマユの話題にもつながる」

 

考えをまとめるような口調。

とんとんと、レイカが書類の束を指で叩く。

 

「それがどんなに馬鹿げたアイディアであろうと、これが最もマユに注目が集まる手法ですから。私はそのために全力を尽くしただけです」

 

「……今のマユっち、演奏できるんですか?」

 

心配そうに訊ねるミア。

レイカが首を振る。

 

「まさか。元通りの演奏なんてできる訳ないでしょう」

 

「なら、どうやってライヴするんですか?」

 

「そこは抜かりありません。マユの歌唱力は今でも健在ですから。演奏部分は、最新の技術でサンプリングした過去の録音データを使います。まず――」

 

書類をめくりながら説明していくレイカ。

ミアもまた、いくつか気付いた点を指摘していく。

 

長い議論が飛び交って――

 

「……という訳で、こちらは準備ができています。後はあなたの話題性で、ともかく注目度を集めて下さい。それがあなたの役割です」

 

レイカが、全ての質問に答え上げた。

ミアがドン引きしながら口を開く。

 

「さっき、穴だらけの企画って言ったのは訂正します。並々ならぬ労力と時間をかけられた、とんでもなく馬鹿げた計画ですね……」

 

「お褒めにあずかり、光栄だわ」

 

素っ気なく言うレイカ。

ミアが諦めたように息を吐いた。

 

窓の向こう、暗い夜の闇が天に広がっている。

 

「……社長は、どうしてそこまでマユっちに肩入れするんですか?」

 

今までずっとあった疑問。

何気なく、ミアがそれをぶつける。

 

レイカがフッと、小さく笑った。

 

「別に、大したことじゃないわ……」

 

過去を思い返すような目。

企画書の中、マユの写真を眺めながら――

 

「私は、マユの音楽の大ファンなのよ」

 

レイカが、ぽつりとそう告げた。

たった一言。だが、それで十分な程の響き。

 

ミアが目を細めた。

 

「……そうですか」

 

短く答えるミア。

考え込むように、そのまま口を閉じる。

 

2人の間に、しばし沈黙が流れた。

 

「それで、綺羅星さん」

 

ゆっくりと、レイカが口を開いた。

 

「この企画、あなたは協力してくれるのでしょうか?」

 

「……どういう意味です?」

 

訊ね返すミア。

レイカが目を閉じた。

 

「はっきりいって、この企画はあなたにとって全くメリットがありません。マユより下の扱いになるうえ、もしイベントが失敗となればあなたの経歴にも傷がつく可能性があります」

 

淡々と事実を挙げ連ねていくレイカ。

 

「あなたはトップアイドルです。事務所の方針とはいえ、こんな扱いは屈辱的でしょう。正直に言うと、私があなたを呼び出したのは交渉をするためです」

 

「交渉?」

 

「えぇ。契約の時の口約束だけで、無理やりこんな企画に巻き込む訳にもいきませんから」

 

さっと、一枚の紙を取り出すレイカ。

契約の書類が机の上へと置かれる。

 

「あなたにはしかるべき待遇と報酬を提供します。まずはこちらの提示を確認してもらい、そこから擦り合わせを――」

 

レイカがそう言いかけた瞬間。

ミアが右手をあげて――

 

「あー、別にいいですよ~。私、普通にやるんで」

 

気の抜けた声で、そう答えた。

ぴたりと、レイカの動きが止まった。

 

「……なんですって?」

 

「だから、普通にやりますって。マユっちのためなんですよね? じゃあ、別に断る理由ないんで~」

 

手をひらひらとさせ、笑っているミア。

レイカが目に見えて困惑する。

 

「あなた、話しを聞いてましたか? これはあなたのアイドルとしての今後にも影響するような事です。そんなに、あっさりと決めて……!」

 

諭すように話すレイカ。

くすりと、ミアが面白そうに微笑む。

 

「社長ったら、真面目ですね~。そこは『ありがとうございます』って言って受けちゃえばいいのに。私の事、利用したいんでしょ?」

 

「いえ、ですが……!」

 

判断に迷っているレイカ。

がたりと、ミアがその場から立ち上がる。

 

「まぁ、今日はこれくらいにしましょうよ。私も疲れちゃったし。明日にでも、マユっちと一緒にまた3人で話し合いましょう~」

 

悪戯っぽくウィンクするミア。

持っていた企画書を折り畳み、ポケットに入れる。

 

「綺羅星さん……」

 

ミアを見つめているレイカ。

ミアがのんびりと、帰り支度を進めていく。

 

帽子をかぶり、サングラスをかけると――

 

「それじゃあ、社長。お疲れ様です!」

 

にっこりと、ミアが片手をあげた。

レイカが「え、えぇ……」と困惑しながら返事をかえす。

 

ミアが機嫌よさそうに歩いて、ドアノブを掴んだ。

 

「……ねぇ、社長」

 

思いついたかのような声。

レイカに背中を向けながら、ミアが口を開く。

 

「どうして、私がこんなにあっさり協力してくれるのか、不思議なんですよね?」

 

「……そうですね」

 

慎重に答えるレイカ。

ミアが肩をすくめた。

 

「私にとっては単純なんですけどね~。まぁ、でも、そっか。この話って社長には話してなかったんでしたっけ?」

 

確認するかのように訊ねるミア。

レイカは無言のまま、ミアの言葉を待っている。

 

背中を向けたまま――

 

「じゃあ、社長に一つ、私の秘密を教えてあげますね」

 

そう、ミアが話した。

神秘的な声色。不可思議な響きを含んだ言葉。

 

「……秘密?」

 

混乱したように言うレイカ。

ミアがフッと息を吐く。

 

ゆっくりと、振り返って――

 

「本当の事を言うとですね、私――」

 

楽しそうな口調のミア。

先程まで隠れていた表情が露わになる。

 

煌めくような笑みを浮かべて――

 

「アイドル活動には、あんまり興味ないんです」

 

ミアが、静かにそう宣言した。

記憶の光景が揺らぎ、目の前が暗転する。

 

2人きりのステージが、目の前に広がって――

 

「……ウソだ」

 

ぽつりと、マユが言葉を漏らした。

その手に持った一枚の書類、レイカの企画書。

 

自らの名前が記された書面を、呆然と見つめる。

 

「ウソなんかじゃないよ」

 

穏やかに答えるミア。

手札を片手に、目をつぶる。

 

「その企画、社長が作ったんだよ。他にも色んな書類がたくさん。打ち合わせだけで、夜までかかったくらいなんだから」

 

語り掛けるような声。

歌うように、ミアが言葉を紡いでいく。

 

「社長、マユっち復帰のために奔走してたんだよ。私みたいな得体のしれない歌手まで呼び寄せて、やれることは何だってやって……」

 

「……レイカ」

 

闇に溶けていく言葉。

マユの指が震えて、書類を握りしめる。

 

『必ずあなたをステージの上に戻して見せます!』

 

いつかどこかで聞いた言葉。

忘れていた記憶が、マユの中に蘇った。

 

優しく微笑みながら――

 

「だから、マユっちは一人じゃない。皆、マユっちのことが大好きで、大切に思ってる。かけがえのない、大事な人なんだよ」

 

ミアが静かに、そう告げた。

静まり返るステージ。白い光に照らされた場所。

 

マユがうつむきながら、口を開く。

 

「……なによ、それ」

 

かすれた声が響く。

 

「バカじゃないの、こんな、意味の分からない企画……! あたし、もう何年もステージに立ってないのよ……! 演奏だってまだできない、何もできないのに……!」

 

震えている指。

顔を伏せたまま、マユが続ける。

 

「いっつも、あたしの出す企画には文句つけるくせに……! こんなバカみたいな、ふざけた企画を……! あたし、あたしなんかのために……!」

 

言葉が途切れる。

ぽたぽたと、涙がこぼれて床へと落ちた。

 

蘇芳色の瞳に宿る光が、不安定に揺れる。

 

遠い彼方の星、漆黒の夜空の下で――

 

「……あら?」

 

クロディーヌが、ふと声をあげた。

何かに気付いた様子。自らの手を見つめる。

 

その目を細めて――

 

「そう。そうなのね……」

 

クロディーヌが、ぼそりと呟いた。

ひらりと舞うように、攻撃をかわすクロディーヌ。

 

天の彼方、遠くへと視線を向けて――

 

「素敵な時間はあっという間、そろそろ終わりみたいね!」

 

どこか寂しそうに、クロディーヌがそう言った。

その手の中で、膨大な魔力が奔流する。

 

両手を広げて――

 

「美しい命の輝き!! そのどこまでも続く生命の賛歌を!! 最期の一滴まで楽しみましょ!!」

 

クロディーヌが無邪気な笑みを浮かべた。

響き渡る笑い声。向かい合う猫の少女。

 

紫色の瞳、神秘的な光が輝いて――

 

「私のターン!!」

 

ミアが、大きく宣言してカードを引いた。

最後に残された2枚。希望の欠片。

 

迷いなく、カードを構えて――

 

「《六花ふらくたる》をセットオーダー!!」

 

煌めく1枚が、場に置かれた。

 

 

六花ふらくたる

セットオーダー/曲 〈3〉 リリカルモナステリオ

(セットオーダーはプレイ後、オーダーゾーンに置く)

【自】:このカードがオーダーゾーンに置かれた時、あなたのオーダーゾーンの裏のカードを1枚選び、表にしてよい。

【自】【オーダーゾーン】:この曲が歌われた時、あなたのリアガードを、あなたの裏のオーダーゾーンと同じ枚数選び、【スタンド】させる。あなたのヴァンガードを1枚選び、この効果で【スタンド】させたユニット1枚につき、そのターン中、パワー+10000。

― 妖精達のチークダンス もう少しだけ眺めていたいの

 

 

美しい雪景色が描かれた1枚。

ロロネロルの身体が白銀の輝きに包まれる。

 

「さらにロロネルのスキル! 《茜色らんうぇい》を歌って、このターン中クリティカル+1!!」

 

 

茜色らんうぇい

セットオーダー/曲 〈2〉 リリカルモナステリオ

(セットオーダーはプレイ後、オーダーゾーンに置く)

【自】:このカードがオーダーゾーンに置かれた時、相手のヴァンガードがグレード3以上なら、1枚引く。

【自】【オーダーゾーン】:この曲が歌われた時、あなたのヴァンガードを1枚選び、そのターン中、クリティカル+1。

― お星さまの絨毯を さくりさくりとステップ踏んで

 

 

カードを裏向きにするミア。

透き通るような歌声が戦場に響いた。

 

指を伸ばして――

 

「ヴァルシュブランでアタック!!」

 

鋭く、ミアが宣言した。

横向きになる2枚のカード。

 

ロロネロルが身構える。

 

「ガード!!」

 

涙声のまま、マユが手札の1枚を投げ出した。

 

 

挽歌の妖精

トリガーユニット 【治】+10000

(ヒールトリガー) 〈0〉 (ブースト)

ストイケイア - ゴースト 

パワー5000 / シールド15000 / ☆1

― 彼らが現れたのか。その真相は分かっていない。

 

 

攻撃を防ぐマユ。

照明の光が不安定に瞬く。

 

暗い影が差して――

 

「マリルゥでアタック!!」

 

ミアがさらに、カードを動かした。

 

 

淀みない進行 マリルゥ パワー28000

 

 

「ガードッ!!」

 

必死になってカードを選ぶマユ。

拒むように、2枚のカードが場に置かれる。

 

 

晴朗の乙女 レェナ

トリガーユニット 【引】+10000

(ドロートリガー) 〈0〉 (ブースト)

ストイケイア - バイオロイド 

パワー4000 / シールド5000 / ☆1

【永】【(G)】:相手のヴァンガードがグレード3以上なら、このユニットのシールド+5000

― こんなに良いお天気なのですよ?お散歩しましょ~♪

 

 

深淵誘い

トリガーユニット 【☆】+10000

(クリティカルトリガー) 〈0〉 (ブースト)

ストイケイア - ゴースト 

パワー5000 / シールド15000 / ☆1

― 軍艦だろうが、捕えられれば一溜まりもない。

 

 

集中した表情。

ロロネロルが歌を口ずさみ、クロディーヌを見据えた。

 

張り詰めた空気。視線がぶつかり合って――

 

「ロロネロルでヴァンガードにアタック!!」

 

ミアの指が、カードを動かした。

紫色の瞳に宿る光が、鋭い音を奏でる。

 

「スキルで《六花ふらくたる》を歌い、リアガードを4体スタンド!! さらにロロのパワー+40000!!」

 

 

みんなに響け ロロネロル

ノーマルユニット 〈3〉

(ツインドライブ!!) (ペルソナライド)

リリカルモナステリオ - ワービースト 

パワー13000 / シールドなし / ☆1

【起】【(V)】【ターン1回】:【コスト】[【カウンターブラスト】(1)]することで、あなたのオーダーゾーンから表の曲を1枚選び、歌う。(曲の能力を発動させ、その能力を終えたら裏にする)

【自】【(V)】:このユニットがアタックした時、あなたの裏のオーダーゾーンが2枚以上なら、オーダーゾーンから表の曲を1枚選び、歌い、そのバトル中、相手は手札から守護者を(G)にコールできない。

― 心を込めて!ろろの全力で歌うのですよ!

 

 

六花ふらくたる

セットオーダー/曲 〈3〉 リリカルモナステリオ

(セットオーダーはプレイ後、オーダーゾーンに置く)

【自】:このカードがオーダーゾーンに置かれた時、あなたのオーダーゾーンの裏のカードを1枚選び、表にしてよい。

【自】【オーダーゾーン】:この曲が歌われた時、あなたのリアガードを、あなたの裏のオーダーゾーンと同じ枚数選び、【スタンド】させる。あなたのヴァンガードを1枚選び、この効果で【スタンド】させたユニット1枚につき、そのターン中、パワー+10000。

― 妖精達のチークダンス もう少しだけ眺めていたいの

 

 

裏向きになる1枚。

ぐっと、ロロネロルが姿勢を低く構えた。

 

その瞳の中、神秘的な光が渦巻いていく。

 

 

みんなに響け ロロネロル パワー64000 ☆2

 

 

「うっ、うっ……!!」

 

涙を流し、すすり泣いているマユ。

ぶるぶると全身を震わせながら――

 

「ノー、ガード……!!」

 

うつむいた格好のまま。

マユの言葉が、その場に静かに響いた。

 

ロロネロルが大地を踏みしめ、弾丸のように飛び出す。

 

「古の精霊達よ、私に力を!!」

 

手を伸ばし、魔力を手繰り寄せているクロディーヌ。

蔦が地面から溢れ、ロロネロルへと迫った。

 

目を細めて――

 

素早く、ロロネロルが攻撃をかわしていく。

 

「猫ちゃん!!」

 

嬉しそうな声を出すクロディーヌ。

複雑な術式を操りながら、楽しそうな笑みを浮かべる。

 

ロロネロルがひと際大きく、飛び上がった。

 

天に浮かぶ蒼白い月。

輝く星々の海を背景にして――

 

「にゃああぁぁッ!!」

 

ロロネロルが、勢いよくその脚を振り下ろした。

神秘的に渦巻く瞳の輝き、白銀の光。

 

フッと、クロディーヌが一瞬、微笑んで――

 

ロロネロルの強烈な踵落としが、炸裂した。

隕石が落下したような衝撃。地面が砕け、沈み込む。

 

腕が伸びて――

 

「ダメージチェック……!!」

 

小さく響く声。

ミアの前、2枚のカードが表になっている。

 

 

自分仕様 エルシュカ

トリガーユニット 【☆】+10000

(クリティカルトリガー) 〈0〉 (ブースト)

リリカルモナステリオ - ワービースト 

パワー5000 / シールド15000 / ☆1

― お仕着せじゃ、物足りない。

 

 

珠玉の一曲 エドウィージュ

トリガーユニット 【☆】+10000

(クリティカルトリガー) 〈0〉 (ブースト)

リリカルモナステリオ - マーメイド 

パワー4000 / シールド15000 / ☆1

【自】【(R)】:このユニットがブーストしたバトル終了時、【コスト】[このユニットをソウルに置く]ことで、あなたのユニットを1枚選び、そのターン中、パワー+2000。

― 心弾む歌声は波紋となって。

 

 

カードをめくっていくマユ。

最後の1枚を指で挟んで――

 

「ノー、トリガー……」

 

運命を告げる宣言。

震える指からカードがこぼれる。

 

美しい華の淑女が描かれた1枚が、場に落ちた。

 

 

追想の花乙女 クロディーヌ

ノーマルユニット 〈3〉

(ツインドライブ!!) (ペルソナライド)

ストイケイア - バイオロイド 

パワー13000 / シールドなし / ☆1

【起】【(V)】【ターン1回】:【コスト】[リアガードを3枚退却させる]ことで、そのターン中、このユニットは『【永】【(V)】:あなたのプラント・トークンすべてのパワー+5000』を得て、ドライブ+1。

【起】【(V)】【ターン1回】:【コスト】[ドロップからオーダーカードを1枚バインドする]ことで、プラント・トークンを2枚まで(R)にコールする。

【自】【(V)】:このユニットがヴァンガードにアタックした時、【コスト】[【ソウルブラスト】(1)]することで、あなたのプラント・トークンを1枚選び、スタンドさせ、あなたの、ドロップとバインドゾーンのオーダーカード合計2種類につき、そのターン中、そのユニットのパワー+5000。

― 踊りましょ!私達のこれまでと、これからの為に!

 

 

マユ ダメージ4→6

 

 

静まり返る戦場。

植物の眷属と蔦が枯れて、崩れていく。

 

左腕を天に向かって伸ばしながら――

 

「あぁ……とても、素晴らしかった……!」

 

クロディーヌが、小さく呟いた。

地面に横たわり天を仰いでいるクロディーヌ。

 

ロロネロルが息を切らしながら、その姿を見下ろす。

 

「やった、のです……!!」

 

言葉を絞り出すロロネロル。

その瞳に宿っていた光が消えていく。

 

クロディーヌが微笑んだ。

 

「あなたとの戦い、とても楽しかったわ……。本当に、綺麗な輝きだった……」

 

しみじみとした口調のクロディーヌ。

夜空を眺めながら、息を吐く。

 

「願わくば、もっと長く……あの子と一緒にいられたら……。そうしたら、あなたとも、もっと踊る事が……」

 

途切れる言葉。

ハッと、クロディーヌが何かに気付いた。

 

その目を見開いて――

 

「……セレネシス」

 

クロディーヌの口から、言葉が漏れた。

ロロネロルが視線の方向へと、振り返る。

 

遠い夜空の果て、月の前にぽつんと浮かぶ一つの影。

 

「ほぇ……?」

 

気の抜けた声。

まじまじと、ロロネロルが視線を向ける。

 

空より、小さな金色の光が降りてきて――

 

金色の繭の妖精が、くすくすと笑い声をあげた。

 

 

ルナコクン

ノーマルユニット 〈0〉 (ブースト)

ストイケイア - インセクト 

パワー5000 / シールド5000 / ☆1

【永】【(G)】:このユニットのシールド+5000。

― あたしの姿、あなたにはどう見える?

 

 

「虫さん……?」

 

目の前に現れた繭の妖精を見て、呟くロロネロル。

繭の妖精が楽しそうに、その場で舞い踊った。

 

にっこりと、繭の妖精が微笑んで――

 

光が弾け、辺りが白い光に包まれた。

 

「にゃあ!?」

 

声をあげるロロネロル。

眩い光に、その目がくらむ。

 

「こ、今度はなんなのですー!!」

 

うんざりしたような声。

白い光の中、ロロネロルが身を守る。

 

光が雪のように溶けていき、そして――

 

「……うにゃ?」

 

ロロネロルが目を開け、辺りを見渡した。

崩壊した街並み。えぐれた大地に、瓦礫の山。

 

妖精とクロディーヌの姿が、いつのまにか消えていた。

 

「なっ……!!」

 

絶句するロロネロル。

空を見るも、月の前にいた影もまたいなくなっている。

 

血の気が引いて――

 

「に、逃げられたのです!!」

 

青い顔で、ロロネロルが叫んだ。

あたふたと慌てているロロネロル。

 

辺りを探そうと、一歩を踏み出した瞬間。

 

「……あれ?」

 

奇妙な感覚が、ロロネロルの身体を貫いた。

ぐらぐらと揺れる地面。視界がぐるぐると回り出す。

 

平衡感覚が乱れ、そして――

 

「あっ……!」

 

小さな声と共に、ロロネロルがその場に倒れ込んだ。

どさりという音。地面から伝わる、冷たい感覚。

 

横たわったロロネロルが、口を開く。

 

「ろろ、身体が……動かないの……です……」

 

うつろな目をしているロロネロル。

視界がちかちかと点滅して、暗くなっていく。

 

「ロローッ!!」

 

遠くから自分を呼ぶ声。

ロロネロルの耳がぴくりと動いた。

 

「クラリッサ……ウィリスタ……」

 

友人の名前を口にするロロネロル。

辺りの光景がぼんやりと、崩れていく。

 

「早く……!! こっち……救護……急げ……!!」

 

誰かの叫ぶような声。

ばたばたと、にわかに辺りが騒がしくなりだした。

 

全身から力が抜けていき、そして――

 

「ろろ……ちょっと、休むのです……」

 

星空の下、身体を丸めながら。

ロロネロルがそう言い残し、意識を失った。

 

紫色の瞳から、神秘的に渦巻く光が消えて――

 

「……私の勝ち」

 

ぼそりと、ミアが呟いた。

見棄てられたライヴハウスのステージ。向き合う2人。

 

よろよろと、マユが顔をあげる。

 

「……ミア、さん?」

 

頭を抑えているマユ。

痛みに顔をしかめながら、ミアの方を見つめる。

 

「わ、私……!! なん、で……!? あ、あんな……酷いこと、ミアさんに……!!」

 

混乱しきった様子のマユ。

ミアがゆっくりと、息を吐いた。

 

「……いいよ、気にしなくて」

 

目を伏せがちに答えるミア。

マユが「うぅ……!!」と苦しそうに唸る。

 

「わ、私……さっきの子に連れられて、それで、カードを……。そ、それで……気が付いたら……頭の中で、声が……!」

 

頭を抱えているマユ。

ミアは息を切らしながら、その場に佇んでいる。

 

企画書を持ちながら――

 

「わ、私、私は……!!」

 

ふらふらとしているマユ。

最後の気力を振り絞って、前を向く。

 

蘇芳色の瞳。涙の浮かぶ目を向けて――

 

「ごめんなさい、ミアさん……!! ごめんなさい……!!」

 

マユが、ミアに向かってそう言った。

心の底から後悔した表情。深い悲しみの目。

 

ミアが目を閉じて、顔を伏せる。

 

「……いいって」

 

疲れ切った様子のミア。

マユが「うぅっ」と声を詰まらせた。

 

マユの身体が大きく、その場でふらついて――

 

「……レイカ」

 

そう、最後に言い残して。

力尽きたように、マユが後ろ向きに倒れて気絶した。

 

一筋の涙が、頬をつたって落ちていく。

 

「………」

 

一人きりになったミア。

荒く息を吐きながら、照明を見上げる。

 

そして――

 

頭が割れるような衝撃が、ミアを襲った。

 

「ッ!!」

 

きーんという鈍い耳鳴り。

かつてない程の痛みが、ミアの身体を貫く。

 

「うっ、ぐっ……!!」

 

苦悶の声を漏らすミア。

頭を抑えながら、その場にしゃがみこむ。

 

痛みがより一層、激しさを増していった。

 

「……ああぁぁっ!!」

 

耐え切れず、悲鳴をあげるミア。

そのまま、崩れ落ちるように床に倒れた。

 

ポケットに入れていたスマホが、転がり落ちる。

 

「ま、まずい……かも……!!」

 

冷や汗を流し、青白い顔になっているミア。

絶え間なく続く痛みに耐えかね、身体を丸める。

 

軽快な音楽が流れた。

 

「ッ!! さ、サミー……!!」

 

ミアの前に落ちているスマートフォン。

着信画面には『サミー』という文字が表示されている。

 

ぷるぷると、ミアが手を伸ばした。

 

「わ、私……は……!!」

 

鋭い目つき。必死になっているミア。

頭の中の血管が、ドクドクと音をたてて脈打つ。

 

最後の力を振り絞って――

 

ミアの白い指が、スマートフォンの端に触れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!!」

 

何かに気付いたように、カナタが顔をあげた。

開かれたスーツケース。畳まれた衣類と、荷物。

 

窓の外、漆黒の星空がどこまでも遠く続いている。

 

「……ミア?」

 

妹の名前を口にするカナタ。

きょろきょろと、辺りを見回す。

 

「なんか、声が聞こえたような……気のせい?」

 

一人呟いているカナタ。

薄暗い部屋の中、時計の針の音だけが響く。

 

「…………」

 

考え込んでいるカナタ。

どこか得体のしれない不安感が、煙のように心に纏わりつく。

 

息を吐いて――

 

「……よし」

 

カナタが、決心したようにスマホを取り出した。

通話アプリを起動すると、猫のアイコンを選ぶ。

 

指を伸ばし、通話をかけようとした瞬間――

 

ガチャリと、鍵が回って扉が開く音がした。

カナタの指が空中で止まる。誰かが廊下を歩く音。

 

ホッとしながら、カナタが口を開いた。

 

「ちょっとミア! 連絡もなしに、こんな時間までどこにいたのよ! お姉ちゃん、心配したんだから!」

 

どこか拗ねたような口調。

カナタが廊下へと通じる扉に視線を向ける。

 

扉の向こうからの返事はない。

 

「……どうしたの? ミア?」

 

呼びかけるカナタ。

しんとした空間。不気味なまでの沈黙が流れる。

 

カナタが扉の方へと向かっていく。

 

「ちょっと、お姉ちゃん本気で怒ってる訳じゃないよ。何か遅くなった理由があるんだったら、ちゃんと話しを――」

 

扉を開けるミア。

玄関へと通じる、細い廊下が目の前に広がって――

 

倒れているミアの姿が、視界に入った。

 

「ミアッ!?」

 

悲鳴のような声が響く。

慌てて、ミアへと駆け寄るカナタ。

 

倒れているミアを、抱き起こした。

 

「……お姉、ちゃん」

 

紙のように白くなった顔。

苦しそうな息遣いのミアが、視線を向ける。

 

カナタが困惑しながら訊ねた。

 

「ちょっと、どうしたのミア!? 何があったのよ!?」

 

「大丈夫、だよ……。ちょっと、疲れただけで……」

 

うつろな目をして答えるミア。

息も絶え絶えに、弱々しく首を振る。

 

カナタが目を見開いた。

 

「そんな訳ないでしょ!! すぐ救急車呼ぶから!!」

 

凄まじい剣幕のカナタ。

震える指で、スマホを操作する。

 

「もしもし!? 救急をお願いします!! 妹が――!!」

 

電話に向かって叫んでいるカナタ。

その姿を、ミアはぼんやりと見上げている。

 

凍えるような寒さを感じながら――

 

「大丈夫……大丈夫だから……」

 

うわごとのように、ミアがそう呟いた。

ちかちかと瞬く視界に、暗転していく世界。

 

不意に、全てが遠くなるような感覚がして――

 

「……お姉ちゃん」

 

漆黒の闇の中、ミアが意識を失った。

 






第四楽章 血塗られし森厳の姫君 FIN


 
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