カードファイト!! ヴァンガード StarSong   作:バビロン@VG

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最終楽章 黄昏にたゆたう破滅の使徒②

 

白い部屋の中に、緊迫した空気が流れていく。

 

向かい合うカード。睨み合う2人。

邪悪と神秘。黒と白が互いにぶつかり合う。

 

深淵が這い上がって――

 

「俺のターンッ!!」

 

荒々しく、キョウマがカードを構えた。

 

「《ディアブロス “悪童”スティーブ》にライドッ!!」

 

叩きつけるように、カードが盤面に置かれる。

 

 

ディアブロス “悪童”スティーブ

ノーマルユニット 〈1〉 (ブースト)

ダークステイツ - デーモン 

パワー8000 / シールド5000 / ☆1

【自】:このユニットが(V)に登場した時、あなたのソウルから1枚選び、中央後列の(R)にコールし、【ソウルチャージ】(1)。

【永】【(R)】:あなたが“一気呵勢”なら、このユニットのパワー+5000。

― スタジアムでも、戦場でも、兄弟は止まらない。

 

 

「スキルでクロックハンズ・ドラコキッドをコールし、ソウルチャージッ!!」

 

カードを動かすキョウマ。

ソウルの中にカードが消えていく。

 

 

因果竜 クルーシャル・ドラゴン

ノーマルユニット 〈3〉

(ツインドライブ!!) (ペルソナライド)

ダークステイツ - アビスドラゴン 

パワー13000 / シールドなし / ☆1

【永】【(R)/(G)】:このターンに相手の、ドライブチェックかダメージゾーンチェックでトリガーユニットが出てくるなら、このユニットのパワー+10000/シールド+10000。

【自】【(R)】:このユニットがブーストされないでアタックしたバトル終了時、【コスト】[このユニットと同じ縦列の他のリアガードを1枚ソウルに置く]ことで、以下すべてを行う。

・相手のリアガードを1枚選び、退却させ、そのターン中、このユニットのパワー+5000。

・【コスト】[ドロップから【超】トリガーを1枚除外する]ことで、そのバトル中、相手は手札からグレード1以上を(G)にコールできない。

― 貴様等の因果は、既に私が掌握した。

 

 

鋭い目を向けて――

 

「ターンエンドだッ!!」

 

吼えるように、キョウマがそう宣言した。

光を放つ紅蓮色の瞳、その手に浮かぶ紋章の痣。

 

目の前の少年を、忌々しそうに睨め付ける。

 

すっと、手を伸ばして――

 

「僕のターン」

 

落ち着いた声。神秘的な気配。

静かに、手札の1枚を捨てて――

 

「ライド。《魅刻のシェヴン》」

 

どこまでも穏やかに、マコトが盤面にカードを置いた。

水に濡れたような輝きを放つ1枚。美しい姿。

 

描かれているのは、滅びゆく世界に降り立つ神の一柱。

 

「なに、あのカード……?」

 

呆然と呟くヨウコ。

キョウマもまた、警戒するような目を向ける。

 

マコトが手を伸ばした。

 

「シェヴンのスキル」

 

デッキを手に取り、カードを広げるマコト。

 

「デッキから《ギンヌンガの淵》を1枚まで探し、そのままセットオーダーする」

 

 

魅刻のシェヴン

ノーマルユニット 〈1〉 (ブースト)

ブラントゲート - ノーブル 

パワー8000 / シールド5000 / ☆1

【自】:このユニットが(V)に登場した時、あなたの山札か手札から「ギンヌンガの淵」を1枚まで探し、公開してオーダーゾーンに置き、山札から探したら、山札をシャッフルする。手札から置いたら、1枚引く。

― 導きましょう。破滅がもたらす、永遠の平穏を。

 

 

「ギンヌンガの淵……?」

 

僅かに目を細めるキョウマ。

マコトが流れるように、カードを場へと置く。

 

デッキを置いて――

 

「ゲフィオンのスキルで、1枚ドロー」

 

静かに、マコトがさらにカードを引いた。

手札6枚。マコトが手を伸ばす。

 

「《ギンヌンガの淵》の起動効果」

 

カードを横向きにするマコト。

 

「シェヴンのクリティカルを、このターン中-1」

 

「!?」

 

 

ギンヌンガの淵

セットオーダー 〈1〉

ブラントゲート

【起】【オーダーゾーン】:【コスト】[このカードを【レスト】させる]ことで、あなたのユニットを1枚選び、そのターン中、クリティカル-1。

― 白銀の大地を覆い尽くす、終焉の兆候。

 

 

目を見開くキョウマ。

観戦していたヨウコもまた、驚く。

 

女神の身体に、神秘的な青い光が宿った。

 

「自分のヴァンガードのクリティカルを下げる……!?」

 

あまりにも不合理な戦術。

理解できない効果を前に、絶句する2人。

 

細い指がカードの上に乗って――

 

「シェヴンでアタック」

 

マコトの宣言が、白い部屋の中に響いた。

横向きになる1枚。高貴な気配を漂わせている女神。

 

慈悲深い瞳が、キョウマの姿を見据える。

 

 

魅刻のシェヴン パワー8000 ☆0

 

 

「……ノーガードだ!!」

 

一瞬の間の後、宣言するキョウマ。

マコトが淡々とカードをめくる。

 

「ドライブチェック、ノートリガー」

 

 

ヴァイオレート・ドラゴン

ノーマルユニット 〈1〉 (ブースト)

ブラントゲート - スペースドラゴン 

パワー6000 / シールド0 / ☆1

【永】:守護者(守護者を持つカードはデッキに合計4枚まで入れられる)

【自】:このユニットが(G)に置かれた時、あなたのユニットを1枚選び、そのバトル中、ヒットされない。あなたの手札が2枚以上なら、手札から1枚選び、捨てる。

― 本能で、異質なる物を拒絶する。

 

 

表になった1枚を手札に加えるマコト。

攻撃が命中するが、そのクリティカルはゼロ。

 

キョウマの場に、変化は起きない。

 

「ターンエンド」

 

手札を持ちながら言うマコト。

静かすぎる立ち上がり。異様な戦術。

 

神秘的な気配が、深く戦場を飲み込んでいく。

 

「俺のターンッ!!」

 

叫ぶように言うキョウマ。

乱暴にカードを捨てる。

 

「《ディアブロス “憤怒”リチャード》にライドッ!!」

 

 

ディアブロス “憤怒”リチャード

ノーマルユニット 〈2〉 (インターセプト)

ダークステイツ - デーモン 

パワー10000 / シールド5000 / ☆1

【自】:このユニットが(V)に登場した時、【コスト】[リアガードを1枚ソウルに置く]ことで、1枚引く。

【永】【(R)】:あなたが“一気呵勢”なら、このユニットのパワー+5000。

― 暴力の中に光る知性。次男の頭脳が勝利を量産する。

 

 

場に現れるデーモンの男性。

キョウマがカードを掴む。

 

「スキルでクロックハンズをソウルに置き、1枚ドロー!! レィミーナのスキルにより、さらに1枚ドローだ!!」

 

 

黒天の雷震妃 レィミーナ

ノーマルユニット 〈2〉 (インターセプト)

ダークステイツ - ヒューマン 

パワー10000 / シールド5000 / ☆1

【自】:あなたのライドフェイズにこのカードが手札から捨てられた時、【コスト】[【ソウルブラスト】(1), このカードを山札の下に置く]ことで、1枚引く。

【自】:このユニットが手札から(R)に登場した時、このターンにあなたがペルソナライドしているなら、【コスト】[【カウンターブラスト】(1)]することで、あなたのソウルから1枚選び、(R)にコールする。コールしたら、【ソウルチャージ】(1)してよい。

― 我が手に宿れ、震天の雷よ――!

 

 

カードを抜き取るキョウマ。

山札からカードを引くと、1枚を構える。

 

「エグザージュレイトをコールッ!!」

 

ヴァンガードの裏、可愛らしい竜のカードが置かれる。

 

「スキルでソウルチャージ!! さらにドロップのミロスラヴァをソウルに置く!!」

 

 

エグザージュレイト・ドラコキッド

ノーマルユニット 〈1〉 (ブースト)

ダークステイツ - アビスドラゴン 

パワー8000 / シールド5000 / ☆1

【永】【(R)/(G)/ソウル】:あなたのヴァンガードがグレード3以上なら、このカードのグレード+2。

【自】:このユニットが(R)に登場した時、あなたのソウルにグレード3があるなら、【ソウルチャージ】(1)してよい。この効果でグレード3が【ソウルチャージ】されたら、あなたのドロップからグレード3を1枚選び、ソウルに置く。

― 魂愧の格は、見た目からでは測れない。

 

 

紅蓮色の瞳が、鈍い光を放つ。

2枚のカードがソウルへと消えていった。

 

 

タイムジャレイト・ドラゴン

ノーマルユニット 〈3〉

(ツインドライブ!!) (ペルソナライド)

ダークステイツ - ギアドラゴン 

パワー13000 / シールドなし / ☆1

【自】:このユニットが(R)に登場した時、【コスト】[手札から1枚ソウルに置く]ことで、1枚引く。

― 十二支刻獣はその力全てを偉大なる英雄に託した。

 

 

炎尾の曲芸師 ミロスラヴァ

ノーマルユニット 〈3〉

(ツインドライブ!!) (ペルソナライド)

ダークステイツ - ワービースト 

パワー13000 / シールドなし / ☆1

【自】:あなたのメインフェイズにこのユニットが手札から(R)に登場した時、【コスト】[【カウンターブラスト】(1)]することで、あなたのソウルから、あなたのヴァンガードのグレード以下の1枚選び、あなたのヴァンガードと同名を選んだら手札に加え、違うなら(R)にコールする。手札に加えたら、そのターン中、このユニットのパワー+5000。

― さぁ、次に現れるのは──!

 

 

体勢を整えていくキョウマ。

その指がカードの上で踊って――

 

「リチャードでアタック!!」

 

憤怒に満ちた声で、キョウマがそう宣言した。

 

 

ディアブロス “憤怒”リチャード パワー18000

 

 

「ノーガード」

 

間髪入れずの宣言。

目を閉じ、盤面さえ見ていないマコト。

 

キョウマがデッキの上を掴む。

 

「ドライブチェック!!」

 

猛々しい宣言。

その瞳の中で、眩い光がうねり――

 

「ゲット、クリティカルトリガーッ!!」

 

キョウマの手の中で、カードが表になった。

 

 

フリンティ・スラッシャー

トリガーユニット 【☆】+10000

(クリティカルトリガー) 〈0〉 (ブースト)

ダークステイツ - ヒューマン 

パワー5000 / シールド15000 / ☆1

― 手足が全て武器になる。つまりはここからがもう一撃。

 

 

美しい暗殺者が描かれたカード。

ばっと、キョウマが手をかざす。

 

「効果は全て、ヴァンガードだッ!!」

 

威圧的な声で宣告するキョウマ。

闇が蠢き、深淵がさらに広がりを見せる。

 

漆黒がマコトを貫き、場に2枚のカードが置かれた。

 

 

恩寵湛えし聖なる杯

ノーマルオーダー 〈3〉

【レガリスピース】(レガリスピースはデッキに合計1枚だけ入れられ、ファイト中に合計1回だけ使える)

グレード3でペルソナライドを持つあなたのヴァンガードがいて、このターンあなたがライドしていないならプレイできる!

ペルソナライドを発動させる。(1枚引き、このターンあなたの前列のユニットのパワー+10000され、あなたはペルソナライドしたことになる。)

― 星の何処か。始原の青は杯を満たし、探求者を待つ。

 

 

柩機の竜 エンバイロ

トリガーユニット 【前】+10000

(フロントトリガー) 〈0〉 (ブースト)

ブラントゲート - サイバードラゴン 

パワー4000 / シールド15000 / ☆1

【永】【(G)】:相手のヴァンガードがグレード3以上なら、このユニットのシールド+5000。

― 因果を歪めろ。好きにはさせるな。

 

 

マコト ダメージ0→2

 

 

「…………」

 

無言のままでいるマコト。

いかにも興味なさそうに、戦況を眺めている。

 

手札を片手に、キョウマが腕を伸ばした。

 

「ターンエンドッ!!」

 

不機嫌そうに叫ぶキョウマ。

忌々しそうに、マコトの姿を睨みつける。

 

フッと、短く息を吐いて――

 

「僕のターン」

 

マコトが、山札から1枚を引いた。

何の迷いもなく、その指がカードを選んで捨てる。

 

古い紋章が描かれたスリーブのカードを掴んで――

 

「ライド。《魅牢のスルーズ》」

 

マコトの場で、女神の姿が重なった。

 

 

魅牢のスルーズ パワー10000

 

 

闇の中に降臨する女神。慈悲深い微笑。

ヨウコが身体を震わせる。

 

「また、知らないカード……!!」

 

怯えた声色で話すヨウコ。

マコトの指がデッキの上に置かれた。

 

「スルーズのスキル」

 

神秘的な声が響く。

 

「互いにデッキから2枚引き、2枚を選んで捨てる。さらにその後、互いにソウルチャージ2」

 

 

魅牢のスルーズ

ノーマルユニット 〈2〉 (インターセプト)

ブラントゲート - ノーブル 

パワー10000 / シールド5000 / ☆1

【自】:このユニットが(V)に登場した時、あなたと相手は2枚引き、手札から2枚選び、捨てる。その後、あなたと相手は【ソウルチャージ】(2)。

― 美しき静寂。それこそが、争いのない世界。

 

 

「互いに、だと……!?」

 

わずかに困惑したように言うキョウマ。

マコトがカードを2枚引き、2枚を捨てた。

 

「さぁ、早く引きなよ、バフォルメデス」

 

手を差し出し、促すマコト。

キョウマが舌打ちして、カードを引いて捨てる。

 

さらに2枚のカードが、互いのソウルに吸い込まれた。

 

「俺の手札の質やソウルの数を高めてくれるとは……随分と余裕だな!!」

 

皮肉めいた口調。

手札を構えているキョウマ。

 

マコトがカードを見せつける。

 

「手札から捨てられたハビタブルゾォンのスキルで、1枚ドロー」

 

 

討究の鎌刃 ハビタブルゾォン

ノーマルユニット 〈2〉 (インターセプト)

ブラントゲート - サイバロイド 

パワー10000 / シールド5000 / ☆1

【自】:あなたのライドフェイズにこのカードが手札から捨てられた時、【コスト】[【ソウルブラスト】(1), このカードを山札の下に置く]ことで、1枚引く。

【自】:このユニットが(R)に登場した時、このターンにあなたがペルソナライドしているなら、【コスト】[【カウンターブラスト】(1)]することで、あなたの山札からセットオーダーを1枚まで探し、公開して手札に加え、山札をシャッフルする。そのターン中、あなたのオーダーを合計2回までプレイでき、次にプレイするセットオーダーのコストを払わずプレイできる。

― 見えるか?あれが俺達の求めた新天地だ。

 

 

カードを山札に戻すマコト。

さらに1枚を引くと、手を伸ばす。

 

「ギンヌンガのスキル。スルーズのクリティカル-1」

 

 

ギンヌンガの淵

セットオーダー 〈1〉

ブラントゲート

【起】【オーダーゾーン】:【コスト】[このカードを【レスト】させる]ことで、あなたのユニットを1枚選び、そのターン中、クリティカル-1。

― 白銀の大地を覆い尽くす、終焉の兆候。

 

 

カードを横向きにするマコト。

女神の身体に、神秘的な青い光が宿った。

 

「また、クリティカルを……!!」

 

冷や汗を流しながら呟くヨウコ。

その戦略の異常性が、さらに際立っていく。

 

異様な雰囲気を漂わせながら――

 

「《黄昏のオレステイア》をコール」

 

マコトの場に、さらなるカードが置かれた。

 

 

黄昏のオレステイア パワー8000

 

 

ヴァンガードの裏に現れた1枚。

描かれているのは、翼を広げる白い梟の姿。

 

すっと、指を乗せて――

 

「オレステイアのブースト、スルーズでアタック」

 

マコトが、2枚のカードを動かした。

 

 

魅牢のスルーズ パワー18000 ☆0

 

 

青白い光に包まれている女神。

まるで幻であるかのような空虚な姿。儚い気配。

 

銀色の瞳が、闇を見据えて――

 

「オレステイアのスキル」

 

マコトが、静かに宣言した。

 

「ソウルブラストすることで、相手はデッキの上から2枚を捨てなければならない」

 

「!?」

 

 

黄昏のオレステイア

ノーマルユニット 〈1〉 (ブースト)

ブラントゲート - ノーブル

パワー8000 / シールド5000 / ☆1

【自】【(R)】:このユニットがブーストした時、【コスト】[【ソウルブラスト】(1)]することで、そのバトル中、このユニットのパワー+5000し、相手の山札を上から2枚ドロップゾーンに置く。

― 陽が沈み、運命が終わりを告げる。

 

 

目を見開くキョウマ。

その山札から2枚が、闇へと消えていった。

 

一瞬、辺りの空気が静まり返る。

 

「ノーガードでいいんだよね?」

 

訊ねるマコト。

キョウマは唖然としたように、黙り込んでいる。

 

呆れたように、マコトが息を吐いた。

 

「ドライブチェック、ノートリガー」

 

淡々と、カードをめくるマコト。

表になった1枚を見せつける。

 

 

討究の鎌刃 ハビタブルゾォン

ノーマルユニット 〈2〉 (インターセプト)

ブラントゲート - サイバロイド 

パワー10000 / シールド5000 / ☆1

【自】:あなたのライドフェイズにこのカードが手札から捨てられた時、【コスト】[【ソウルブラスト】(1), このカードを山札の下に置く]ことで、1枚引く。

【自】:このユニットが(R)に登場した時、このターンにあなたがペルソナライドしているなら、【コスト】[【カウンターブラスト】(1)]することで、あなたの山札からセットオーダーを1枚まで探し、公開して手札に加え、山札をシャッフルする。そのターン中、あなたのオーダーを合計2回までプレイでき、次にプレイするセットオーダーのコストを払わずプレイできる。

― 見えるか?あれが俺達の求めた新天地だ。

 

 

神秘的な光が、悪魔の頭上から降り注いだ。

光に包まれている悪魔。天に浮かぶ竜を睨む。

 

何一つ、キョウマの場に変化は訪れない。

 

「ターンエンド」

 

つまらなさそうに宣言するマコト。

女神を包む青白い光が消え、辺りに静寂が訪れた。

 

破滅を告げる沈黙が、重苦しく漂っていく。

 

「貴様……ッ!! その、その戦術は……ッ!!」

 

冷や汗を流しているキョウマ。

その紅蓮色の瞳の中、光が不安定に揺れる。

 

「山札をドロップに置く効果。まさか、これ……!!」

 

怯えながら分析しているヨウコ。

今までの効果が思い返される。

 

『互いにデッキから2枚引き、2枚を選んで捨てる』

 

『さらにその後、互いにソウルチャージ2』

 

『相手はデッキの上から2枚を捨てなければならない』

 

マコトが使用してきたスキル。

さらにセットオーダーによる、徹底的な点止め。

 

そこから導き出される結論は――

 

「ライブラリーアウト……!?」

 

2人の呟きが重なり、その場に響いた。

相手の山札切れを狙う戦略、ライブラリーアウト。

 

山札がゼロになったファイターは、即座に敗北となる。

 

「運命を支配していると言ったね、バフォルメデス」

 

冷たい声で話すマコト。

銀色の瞳が、キョウマの姿を見据えた。

 

「だけど――お前の運命、残り僅かみたいだ」

 

溢れ出る神秘的な気配。

纏わりついていた闇が、怯えたように退いていく。

 

キョウマの残りデッキ枚数は、29枚。

 

「貴様ァァッ!!」

 

慄いたように叫ぶキョウマ。

荒々しく、その手を伸ばした。

 

「俺のターンッ!!」

 

震える指がカードを引く。

そのまま1枚を、叩きつけるように捨てるキョウマ。

 

深淵が蠢き、鈍く胎動して――

 

「《冥焔の魔王 バフォルメデス》にライドッ!!」

 

盤面に、闇を支配する悪魔が姿を現した。

 

 

冥焔の魔王 バフォルメデス

ノーマルユニット 〈3〉

(ツインドライブ!!) (ペルソナライド)

ダークステイツ - デーモン 

パワー13000 / シールドなし / ☆1

【自】【(V)】:このユニットがヴァンガードにアタックした時、【コスト】[グレード3のリアガードを2枚ソウルに置く]ことで、1枚引き、あなたのソウルのグレード3のカード3枚につき、そのバトル中、このユニットのパワー+10000。

【永】【(V)】:あなたのソウルのグレード3の枚数により、このユニットは以下すべてを得る。

・3枚以上-グレード3以上のあなたのユニットすべてのシールド+5000し、『ブースト』を与える。

・6枚以上-このユニットがアタックしたバトルでは、相手は手札から(G)にコールする際、3枚以上同時にコールしない限りコールできない。

― 喜べ。汝に冥府の劫火と燃える栄誉をくれてやろう。

 

 

紅蓮色の瞳の中、光がさらに強く輝く。

 

「言ったはずだッ!! 全ての運命は、俺が支配しているとッ!!」

 

必死な形相で叫ぶキョウマ。

冷や汗の浮かんだ顔に、動揺しきった心。

 

自らを鼓舞するかのように――

 

「貴様のふざけた戦術もッ、この世界もッ!! 全て劫火で燃やし尽くしてやるッ!!」

 

キョウマの虚勢が、部屋の中に響き渡った。

微動だにしないマコト。落ち着き払った目。

 

キョウマの指が、カードを掴んだ。

 

「クルーシャル、ゼイルモート、ブベツー、タイムジャレイトをコールッ!!」

 

一気にカードを場へと出すキョウマ。

その盤面が全て埋まる。

 

 

因果竜 クルーシャル・ドラゴン

ノーマルユニット 〈3〉

(ツインドライブ!!) (ペルソナライド)

ダークステイツ - アビスドラゴン 

パワー13000 / シールドなし / ☆1

【永】【(R)/(G)】:このターンに相手の、ドライブチェックかダメージゾーンチェックでトリガーユニットが出てくるなら、このユニットのパワー+10000/シールド+10000。

【自】【(R)】:このユニットがブーストされないでアタックしたバトル終了時、【コスト】[このユニットと同じ縦列の他のリアガードを1枚ソウルに置く]ことで、以下すべてを行う。

・相手のリアガードを1枚選び、退却させ、そのターン中、このユニットのパワー+5000。

・【コスト】[ドロップから【超】トリガーを1枚除外する]ことで、そのバトル中、相手は手札からグレード1以上を(G)にコールできない。

― 貴様等の因果は、既に私が掌握した。

 

 

影に潜む死神 ゼイルモート

ノーマルユニット 〈3〉

(ツインドライブ!!) (ペルソナライド)

ダークステイツ - ヒューマン 

パワー13000 / シールドなし / ☆1

【起】【(R)】:【コスト】[【カウンターブラスト】(1), このユニットがソウルに置く]ことで、あなたの山札の上から2枚見て、1枚まで選び、(R)にコールし、残りをソウルに置く。

― 誰にも訪れる死。それは魂を浄化する崇高なる儀式。

 

 

デザイアデビル ブベツー

ノーマルユニット 〈1〉 (ブースト)

ダークステイツ - デーモン 

パワー8000 / シールド5000 / ☆1

【自】【(R)】【ターン1回】:あなたのターンにあなたの、他のリアガードがあなたのヴァンガードの能力でソウルに置かれた時、【コスト】[【カウンターブラスト】(1)]することで、あなたの手札から1枚選び、ユニットのいない(R)にコールし、あなたのソウルが10枚以上なら、さらに1枚引く。(このユニットが他のユニットと同時にソウルに置かれても使える)

― 嫌いな奴は徹底的に追い落とす。

 

 

タイムジャレイト・ドラゴン

ノーマルユニット 〈3〉

(ツインドライブ!!) (ペルソナライド)

ダークステイツ - ギアドラゴン 

パワー13000 / シールドなし / ☆1

【自】:このユニットが(R)に登場した時、【コスト】[手札から1枚ソウルに置く]ことで、1枚引く。

― 十二支刻獣はその力全てを偉大なる英雄に託した。

 

 

「タイムジャレイトのスキルで、手札にあるもう1枚のタイムジャレイトをソウルに置き、1枚ドローッ!!」

 

 

タイムジャレイト・ドラゴン

ノーマルユニット 〈3〉

(ツインドライブ!!) (ペルソナライド)

ダークステイツ - ギアドラゴン 

パワー13000 / シールドなし / ☆1

【自】:このユニットが(R)に登場した時、【コスト】[手札から1枚ソウルに置く]ことで、1枚引く。

― 十二支刻獣はその力全てを偉大なる英雄に託した。

 

 

カードを引くキョウマ。

その手に残ったカードは2枚。

 

紅蓮色の瞳が、鈍い輝きを見せて――

 

「世界に、滅びと沈黙をッ!!」

 

キョウマが、カードの上に指を置いた。

 

「タイムジャレイトでアタック!!」

 

カードを動かすキョウマ。

悪魔の口から呪詛の言葉が漏れ、劫火が踊る。

 

 

タイムジャレイト・ドラゴン パワー21000

 

 

「ガード」

 

マコトがカードを盤面へと投げ出した。

 

 

崩壊星の導き手

トリガーユニット 【治】+10000

(ヒールトリガー) 〈0〉 (ブースト)

ブラントゲート - サイバーフェアリー 

パワー5000 / シールド15000 / ☆1

― どうせ全部、壊れちゃうんだよ。

 

 

「ゼイルモートのブースト、クルーシャルでアタック!!」

 

畳みかけるキョウマ。

闇が深まり、劫火がさらに大きく燃え上がった。

 

 

因果竜 クルーシャル・ドラゴン パワー26000

 

 

「ガード」

 

淡々と、マコトがカードを選んでいく。

 

 

柩機の竜 エンバイロ

トリガーユニット 【前】+10000

(フロントトリガー) 〈0〉 (ブースト)

ブラントゲート - サイバードラゴン 

パワー4000 / シールド15000 / ☆1

【永】【(G)】:相手のヴァンガードがグレード3以上なら、このユニットのシールド+5000。

― 因果を歪めろ。好きにはさせるな。

 

 

いともたやすく防がれていく攻撃。

悪魔がわずかに気圧されたように、後ろに引き下がる。

 

ばんと、勢いよく手を叩きつけて――

 

「バフォルメデスで、ヴァンガードにアタックだッ!!」

 

キョウマの声が、空気を震わせた。

 

「スキルでクルーシャルとタイムジャレイトをソウルに入れ、1枚ドローッ!! そしてパワー+20000し、ガードするには3枚同時にコールしなければならないッ!!」

 

 

冥焔の魔王 バフォルメデス

ノーマルユニット 〈3〉

(ツインドライブ!!) (ペルソナライド)

ダークステイツ - デーモン 

パワー13000 / シールドなし / ☆1

【自】【(V)】:このユニットがヴァンガードにアタックした時、【コスト】[グレード3のリアガードを2枚ソウルに置く]ことで、1枚引き、あなたのソウルのグレード3のカード3枚につき、そのバトル中、このユニットのパワー+10000。

【永】【(V)】:あなたのソウルのグレード3の枚数により、このユニットは以下すべてを得る。

・3枚以上-グレード3以上のあなたのユニットすべてのシールド+5000し、『ブースト』を与える。

・6枚以上-このユニットがアタックしたバトルでは、相手は手札から(G)にコールする際、3枚以上同時にコールしない限りコールできない。

― 喜べ。汝に冥府の劫火と燃える栄誉をくれてやろう。

 

 

悪魔の瞳が輝き、薄紫色の炎が辺りを飲み込んだ。

舞い散る劫火の欠片。地獄のような光景が広がっていく。

 

 

冥焔の魔王 バフォルメデス パワー41000

 

 

天にたゆたう細身の竜が、その目を細めて――

 

「ノーガード」

 

どこまでも冷静なまま。

マコトが静かに、そう宣言した。

 

キョウマが闇に向かって、手を伸ばす。

 

「ツインドライブッ!!」

 

威圧的な口調。

紅蓮色の瞳が、強い光を放つ。

 

カードが表になっていき――

 

「ファーストチェック、クリティカルトリガーッ!! 効果は全てバフォルメデスへッ!! セカンドチェック、クリティカルトリガーッ!! 同じく効果はバフォルメデスだッ!!」

 

キョウマの場に、2枚のカードが置かれた。

 

 

フリンティ・スラッシャー

トリガーユニット 【☆】+10000

(クリティカルトリガー) 〈0〉 (ブースト)

ダークステイツ - ヒューマン 

パワー5000 / シールド15000 / ☆1

― 手足が全て武器になる。つまりはここからがもう一撃。

 

 

ステムディヴィエイト・ドラゴン

トリガーユニット 【☆】+10000

(クリティカルトリガー) 〈0〉 (ブースト)

ダークステイツ - ギアドラゴン 

パワー4000 / シールド15000 / ☆1

【自】【(R)】:このユニットがブーストしたバトル終了時、【コスト】[このユニットをソウルに置く]ことで、あなたのユニットを1枚選び、そのターン中、パワー+2000。

― 時を穿つ、必滅の弾丸が放たれる。

 

 

「ダブルクリティカル……!!」

 

目を見開くヨウコ。

闇が地面を飲み込み、炎が天へと舞い上がった。

 

薄紫色の劫火が、竜の身体を覆い貫き、飲み込む。

 

「ダメージチェック、ノートリガー」

 

マコトの場に、カードが並んでいった。

 

 

討究の鎌刃 ハビタブルゾォン

ノーマルユニット 〈2〉 (インターセプト)

ブラントゲート - サイバロイド 

パワー10000 / シールド5000 / ☆1

【自】:あなたのライドフェイズにこのカードが手札から捨てられた時、【コスト】[【ソウルブラスト】(1), このカードを山札の下に置く]ことで、1枚引く。

【自】:このユニットが(R)に登場した時、このターンにあなたがペルソナライドしているなら、【コスト】[【カウンターブラスト】(1)]することで、あなたの山札からセットオーダーを1枚まで探し、公開して手札に加え、山札をシャッフルする。そのターン中、あなたのオーダーを合計2回までプレイでき、次にプレイするセットオーダーのコストを払わずプレイできる。

― 見えるか?あれが俺達の求めた新天地だ。

 

 

黄昏のオレステイア

ノーマルユニット 〈1〉 (ブースト)

ブラントゲート - ノーブル

パワー8000 / シールド5000 / ☆1

【自】【(R)】:このユニットがブーストした時、【コスト】[【ソウルブラスト】(1)]することで、そのバトル中、このユニットのパワー+5000し、相手の山札を上から2枚ドロップゾーンに置く。

― 陽が沈み、運命が終わりを告げる。

 

 

ヴァイオレート・ドラゴン

ノーマルユニット 〈1〉 (ブースト)

ブラントゲート - スペースドラゴン 

パワー6000 / シールド0 / ☆1

【永】:守護者(守護者を持つカードはデッキに合計4枚まで入れられる)

【自】:このユニットが(G)に置かれた時、あなたのユニットを1枚選び、そのバトル中、ヒットされない。あなたの手札が2枚以上なら、手札から1枚選び、捨てる。

― 本能で、異質なる物を拒絶する。

 

 

マコト ダメージ2→5

 

 

残り1ダメージまで追い詰められるマコト。

「ハッハッハッ!!」と、キョウマが高笑いする。

 

「見たかッ!! これこそが、俺の導いた運命ッ!! やはり貴様は、ここで俺に倒されるのだッ!!」

 

確信に満ちた表情。

余裕を取り戻しているキョウマ。

 

マコトが、その目を細める。

 

ターンエンドの宣言を受けて――

 

「僕のターン」

 

静かに、それでいて迫力のこもった声。

ゆっくりと、マコトがカードを引いて捨てる。

 

顔をあげて――

 

「バフォルメデス、教えてあげるよ」

 

おもむろに、口を開くマコト。

キョウマが「あぁ?」と柄悪く答える。

 

マコトの指が、カードを掴んだ。

 

「例えお前が、どんなに運命を操ろうと――」

 

冷淡な響き。

銀色の瞳が、キョウマの姿を見据える。

 

古の紋章が描かれたスリーブのカードを構えて――

 

「蟻は、竜には勝てないんだよ」

 

マコトの全身から、殺気が溢れた。

凄まじい威圧感。恐怖で息を呑むキョウマ。

 

流れるように、カードを振りかざして――

 

「ライド。魅惑竜――」

 

マコトの場に置かれる1枚。

美しい輝きを讃える、銀色の鱗を持つ細身の竜の姿。

 

神々しい光が、天から降り注いで――

 

「――ファナ・ラ・フィア」

 

細身の竜が、盤上へと降臨した。

溢れ出る神秘的な気配。青白い波動。

 

美しい咆哮が轟き、大気が震えていく。

 

 

魅惑竜 ファナ・ラ・フィア パワー13000

 

 

「ファナ・ラ・フィア……」

 

ぼうっとしたように呟くヨウコ。

まるで見とれるような視線を、盤面のカードへ向ける。

 

銀色の瞳に、渦巻く光が宿った。

 

「ハビタブルゾォンのスキルで、1枚ドロー」

 

 

討究の鎌刃 ハビタブルゾォン

ノーマルユニット 〈2〉 (インターセプト)

ブラントゲート - サイバロイド 

パワー10000 / シールド5000 / ☆1

【自】:あなたのライドフェイズにこのカードが手札から捨てられた時、【コスト】[【ソウルブラスト】(1), このカードを山札の下に置く]ことで、1枚引く。

【自】:このユニットが(R)に登場した時、このターンにあなたがペルソナライドしているなら、【コスト】[【カウンターブラスト】(1)]することで、あなたの山札からセットオーダーを1枚まで探し、公開して手札に加え、山札をシャッフルする。そのターン中、あなたのオーダーを合計2回までプレイでき、次にプレイするセットオーダーのコストを払わずプレイできる。

― 見えるか?あれが俺達の求めた新天地だ。

 

 

カードを戻すマコト。

手札の中から一枚を選ぶ。

 

「《暁のアンティゴネ》をコール」

 

マコトの前列に、カードが置かれる。

描かれているのは、襲い掛かる獰猛な鹿の姿。

 

 

暁のアンティゴネ パワー10000

 

 

鋭い視線を向けて――

 

「登場時スキルで、相手の山札から2枚をドロップへ」

 

マコトが、冷たくそう宣言した。

 

「ぐっ……!!」

 

苦しそうな表情のキョウマ。

デッキのカードがドロップに消えていく。

 

「《宵のアルケスティス》、《薄暮のメーデイア》をコール」

 

さらに盤面に置かれる2枚。

鋭い牙を持つ獅子と、水中を漂う鯨が描かれたカード。

 

マコトが手を伸ばす。

 

「メーデイアのスキルでファナ・ラ・フィアにパワー+5000。さらに自身をレストして、互いにソウルチャージ」

 

 

薄暮のメーデイア

ノーマルユニット 〈1〉 (ブースト)

ブラントゲート - ノーブル

パワー8000 / シールド5000 / ☆1

【自】【(R)】: このユニットが(R)に登場した時、あなたの他のユニットを1枚選び、そのターン中、パワー+5000。

【起】【(R)】:【コスト】[このユニットを【レスト】させる]ことで、あなたと相手は【ソウルチャージ】(1)。

― 全ての命に等しく降り注ぐ、無慈悲な施し。

 

 

カードをレストさせるマコト。

再び、互いがデッキの上のカードをソウルに置いた。

 

じりじりと、その運命が削れていく。

 

「ギンヌンガのスキル。レストすることで、リアガードのアルケスティスのクリティカル-1」

 

 

ギンヌンガの淵

セットオーダー 〈1〉

ブラントゲート

【起】【オーダーゾーン】:【コスト】[このカードを【レスト】させる]ことで、あなたのユニットを1枚選び、そのターン中、クリティカル-1。

― 白銀の大地を覆い尽くす、終焉の兆候。

 

 

吼え猛る獅子が、青白い光に包まれる。

 

「ヴァンガードじゃない……!?」

 

目を見開くヨウコ。

今までとは違う戦術に、強烈な違和感を覚える。

 

白い指がカードの上に置かれて――

 

「ファナ・ラ・フィアでアタック」

 

透き通るような声が、その場に響いた。

天にたゆたう細身の竜。神々しくも神秘的な姿。

 

美しい咆哮が天を衝く。

 

「そのスキルにより――」

 

マコトが、キョウマのデッキを指差した。

 

「攻撃対象を、相手の山札に変更する」

 

「!?」

 

驚愕するキョウマ。

青白い光が、キョウマの山札に憑りつく。

 

影に潜む深淵が、光の中へと引きずり出された。

 

 

冥焔の魔王 バフォルメデス パワー0

 

 

「な、なんだ、このスキルは……ッ!?」

 

唖然としながら呟くキョウマ。

マコトが冷たい目を向ける。

 

「お前の山札はパワー0のノーマルユニットとして扱い、お前のヴァンガードの名前とグレードと種族を得る……」

 

淡々とした説明。

すっと、マコトが指を伸ばす。

 

「さらにオレステイアのスキル。ソウルブラストし、パワー+5000。相手の山札から2枚ドロップへ」

 

 

黄昏のオレステイア

ノーマルユニット 〈1〉 (ブースト)

ブラントゲート - ノーブル

パワー8000 / シールド5000 / ☆1

【自】【(R)】:このユニットがブーストした時、【コスト】[【ソウルブラスト】(1)]することで、そのバトル中、このユニットのパワー+5000し、相手の山札を上から2枚ドロップゾーンに置く。

― 陽が沈み、運命が終わりを告げる。

 

 

コストを支払うマコト。

キョウマの山札から、さらにカードが墓地に置かれた。

 

天に佇む細身の竜。光が放たれ、大気が震える。

 

 

魅惑竜 ファナ・ラ・フィア パワー31000

 

 

「うっ、ぐうっ……!!」

 

悩んだように唸り声をあげているキョウマ。

その指が手札の上で彷徨った。

 

紅蓮色の瞳が、妖しげな光を放って――

 

「――ガードだッ!!」

 

追い詰められながら、キョウマがカードを盤面に出した。

 

 

フリンティ・スラッシャー

トリガーユニット 【☆】+10000

(クリティカルトリガー) 〈0〉 (ブースト)

ダークステイツ - ヒューマン 

パワー5000 / シールド15000 / ☆1

― 手足が全て武器になる。つまりはここからがもう一撃。

 

 

ステムディヴィエイト・ドラゴン

トリガーユニット 【☆】+10000

(クリティカルトリガー) 〈0〉 (ブースト)

ダークステイツ - ギアドラゴン 

パワー4000 / シールド15000 / ☆1

【自】【(R)】:このユニットがブーストしたバトル終了時、【コスト】[このユニットをソウルに置く]ことで、あなたのユニットを1枚選び、そのターン中、パワー+2000。

― 時を穿つ、必滅の弾丸が放たれる。

 

 

フリンティ・スラッシャー

トリガーユニット 【☆】+10000

(クリティカルトリガー) 〈0〉 (ブースト)

ダークステイツ - ヒューマン 

パワー5000 / シールド15000 / ☆1

― 手足が全て武器になる。つまりはここからがもう一撃。

 

 

ガード値の合計は45000。

マコトが「へぇ」と感心したような声を出す。

 

「少しは勘が戻った? まぁ、でも――」

 

デッキに手を置くマコト。

銀色の瞳が光を放って――

 

「運命は、変わらない」

 

マコトの低い声が、その場に響いた。

 

「ツインドライブ。ファーストチェック、フロントトリガー。前列のパワー+10000」

 

 

柩機の竜 エンバイロ

トリガーユニット 【前】+10000

(フロントトリガー) 〈0〉 (ブースト)

ブラントゲート - サイバードラゴン 

パワー4000 / シールド15000 / ☆1

【永】【(G)】:相手のヴァンガードがグレード3以上なら、このユニットのシールド+5000。

― 因果を歪めろ。好きにはさせるな。

 

 

カードを見せつけるマコト。

キョウマが「ぐっ!!」と声を詰まらせる。

 

さらに1枚、マコトがカードを掴んで――

 

「セカンドチェック、ドロートリガー。パワーはファナ・ラ・フィアへ」

 

無情なる宣告が、キョウマへと降りかかった。

 

 

アメリオレート・コネクター

トリガーユニット 【引】+10000

(ドロートリガー) 〈0〉 (ブースト)

ブラントゲート - ワーカロイド 

パワー4000 / シールド5000 / ☆1

【永】【(G)】:相手のヴァンガードがグレード3以上なら、このユニットのシールド+5000。

― 換装完了。導電率、ググット高メテオキマシタ。

 

 

魅惑竜 ファナ・ラ・フィア パワー51000

 

 

「なァッ!?」

 

身を仰け反らすキョウマ。

竜の身体が輝き、白い波動が暗闇を吹き飛ばす。

 

巻き起こった衝撃波が、悪魔の身体を刺し貫いた。

 

「ぐァァッ!!」

 

悲鳴をあげるキョウマ。

倒れそうになる身体を、必死になって支える。

 

銀色の瞳が、鈍い輝きを見せて――

 

「ファナ・ラ・フィアのスキル」

 

マコトが、静かに口を開いた。

 

「アタックがヒットしたので、相手の山札を上から7枚ドロップに送る」

 

息を呑むキョウマ。

ヨウコが「なっ!?」と驚愕する。

 

弾かれるように、カードが闇へと消えていった。

 

「うっ、がっ……!!」

 

唸り声をあげ、額に手を当てているキョウマ。

ヨウコが自らの身体を抱きしめる。

 

「ヒットはしたけど、デッキはヴァンガードじゃない……つまり、あの攻撃ではダメージは入らない……!!」

 

怯えながら呟くヨウコ。

ここまで1点も、マコトはダメージを与えていない。

 

逆転のための僅かな可能性さえも、残さずにいる。

 

「アルケスティスでヴァンガードにアタック」

 

カードを動かすマコト。

すっと、その手をかざす。

 

「スキルにより、相手のヴァンガードの列全てのユニットにアタックする」

 

 

宵のアルケスティス パワー23000 ☆0

 

 

「クリティカルゼロの、縦列攻撃……!!」

 

震えながら話すヨウコ。

キョウマが忌々しそうに舌打ちする。

 

「ノーガードだ……!!」

 

苦しそうな声色。

ぜいぜいと荒い息を吐き、宣言するキョウマ。

 

戦場を、薙ぎ払うような衝撃が襲った。

 

「アルケスティスのスキル」

 

銀色の瞳を向けているマコト。

 

「アタックがヒットしたので、相手の山札から1枚をドロップへ。2回ヒットしたので、2枚ドロップに送る」

 

「ッ!!」

 

 

宵のアルケスティス

ノーマルユニット 〈3〉

(ツインドライブ!!) (ペルソナライド)

ブラントゲート - ノーブル

パワー13000 / シールドなし / ☆1

【永】【(R)】:このユニットがアタックする際、相手の、縦列1つのユニットすべてとバトルする。

【自】【(R)】:このユニットのアタックがヒットした時、相手の山札を上から1枚ドロップゾーンに置く。

― 跪け。己が滅びを受け入れよ。

 

 

さらに2枚、キョウマの山札が削れていった。

失われていく運命。深淵が姿を保てず、崩壊していく。

 

キョウマのデッキ枚数は、残り10枚。

 

「バカな……ッ!! こんな、こんな……ッ!!」

 

屈辱に打ち震えているキョウマ。

ヨウコもまた、真っ青になりながら息を呑む。

 

「たった1ターンで、14枚もデッキを……!!」

 

恐怖に苛まれたように呟くヨウコ。

マコトが退屈そうに、短く息を吐いた。

 

「ターンエンド」

 

響き渡る宣言。

辺りがしんと、静まり返る。

 

「これで分かっただろう、バフォルメデス」

 

冷たい空気の中、マコトが口を開いた。

溢れ出る神秘的な気配。鋭い殺気。

 

銀色の瞳が、鈍い光を放って――

 

「運命は、お前には微笑まない」

 

低い声が、その場に響いていった。

白い部屋の中、闇が徐々に崩壊し、消えていく。

 

薄れゆく深淵を背にして――

 

「黙れ……ッ!!」

 

振り絞るような声。

ぶるぶると、拳を震わせているキョウマ。

 

紅蓮色の瞳が、マコトへと向けられて――

 

「お前に、俺の何が分かるーッ!!」

 

怒りの絶叫が、辺りの空気をびりびりと震えさせた。

荒々しく息を切らすキョウマ。消え行く闇。

 

その手を構えて――

 

「俺のターンッ!!」

 

運命を掴まんという気迫に満ちて。

勢いよく、キョウマがデッキに手を伸ばした。

 

引いた1枚を、そのまま振りかぶる。

 

「ペルソナライドーッ!!」

 

悪魔の姿が、その場で重なり合った。

 

 

冥焔の魔王 バフォルメデス

ノーマルユニット 〈3〉

(ツインドライブ!!) (ペルソナライド)

ダークステイツ - デーモン 

パワー13000 / シールドなし / ☆1

【自】【(V)】:このユニットがヴァンガードにアタックした時、【コスト】[グレード3のリアガードを2枚ソウルに置く]ことで、1枚引き、あなたのソウルのグレード3のカード3枚につき、そのバトル中、このユニットのパワー+10000。

【永】【(V)】:あなたのソウルのグレード3の枚数により、このユニットは以下すべてを得る。

・3枚以上-グレード3以上のあなたのユニットすべてのシールド+5000し、『ブースト』を与える。

・6枚以上-このユニットがアタックしたバトルでは、相手は手札から(G)にコールする際、3枚以上同時にコールしない限りコールできない。

― 喜べ。汝に冥府の劫火と燃える栄誉をくれてやろう。

 

 

「クルーシャル、ミロスラヴァ、マルニガルをコール!!」

 

手札のカードを、キョウマが叩きつける。

 

 

因果竜 クルーシャル・ドラゴン

ノーマルユニット 〈3〉

(ツインドライブ!!) (ペルソナライド)

ダークステイツ - アビスドラゴン 

パワー13000 / シールドなし / ☆1

【永】【(R)/(G)】:このターンに相手の、ドライブチェックかダメージゾーンチェックでトリガーユニットが出てくるなら、このユニットのパワー+10000/シールド+10000。

【自】【(R)】:このユニットがブーストされないでアタックしたバトル終了時、【コスト】[このユニットと同じ縦列の他のリアガードを1枚ソウルに置く]ことで、以下すべてを行う。

・相手のリアガードを1枚選び、退却させ、そのターン中、このユニットのパワー+5000。

・【コスト】[ドロップから【超】トリガーを1枚除外する]ことで、そのバトル中、相手は手札からグレード1以上を(G)にコールできない。

― 貴様等の因果は、既に私が掌握した。

 

 

炎尾の曲芸師 ミロスラヴァ

ノーマルユニット 〈3〉

(ツインドライブ!!) (ペルソナライド)

ダークステイツ - ワービースト 

パワー13000 / シールドなし / ☆1

【自】:あなたのメインフェイズにこのユニットが手札から(R)に登場した時、【コスト】[【カウンターブラスト】(1)]することで、あなたのソウルから、あなたのヴァンガードのグレード以下の1枚選び、あなたのヴァンガードと同名を選んだら手札に加え、違うなら(R)にコールする。手札に加えたら、そのターン中、このユニットのパワー+5000。

― さぁ、次に現れるのは──!

 

 

スチームスカラー マル二ガル

トリガーユニット【治】 +10000

(ヒールトリガー) 〈0〉 (ブースト)

ダークステイツ - ギアロイド 

パワー5000 / シールド15000 / ☆1

(【治】はデッキに4枚までしか入れられる。)

― 新薬を混ぜ合わせたの!効き目もきっと最高よ!

 

 

キョウマの盤面が全て埋まる。

全てを投げ出す一手。勝負に出たキョウマ。

 

残りのデッキ枚数は8枚。

 

「お前如きにッ!! この俺の覚悟がッ!! 背負うものがッ!! 分かってたまるかァァァッ!!」

 

深淵に、キョウマの魂の叫びが反響する。

残存する闇が渦巻き、悪魔の背から這い上がった。

 

悪魔の脳裏に、過去の光景が浮かび上がる。

 

『君主様……! 君主様……!』

 

悪魔の前、ひれ伏している異形の者達。

やせ細った身体。寂れた雰囲気。

 

老いた異形の悪魔が、すがるような目を向ける。

 

『君主様……今年は作物が育ちません……。街では疫病も流行っています……。どうか……どうか何卒、お力添えを……!!』

 

震える声での懇願。

神に祈るかのように、悪魔を見上げる。

 

『……学者を呼べ。医者もだ』

 

低い声で答える悪魔。

老いた異形の者が、首を振る。

 

『もう、この国にはほとんど、そのような者は残っておりません……。老いた者や迫害された者、力なき者しか、ここには、もう……!!』

 

『…………』

 

黙り込む悪魔。

しばしの沈黙の後、悪魔が群衆に背を向ける。

 

『……我が、なんとかしよう』

 

静かな返答。

振り返ることなく、悪魔が歩き出す。

 

悪魔が、その手を強く握りしめた。

 

「ミロスラヴァでアタックッ!!」

 

カードを動かすキョウマ。

闇に向かって、その手を伸ばす。

 

 

炎尾の曲芸師 ミロスラヴァ パワー31000

 

 

「ガード」

 

つまらなさそうに、マコトがカードを選んだ。

 

 

柩機の竜 エンバイロ

トリガーユニット 【前】+10000

(フロントトリガー) 〈0〉 (ブースト)

ブラントゲート - サイバードラゴン 

パワー4000 / シールド15000 / ☆1

【永】【(G)】:相手のヴァンガードがグレード3以上なら、このユニットのシールド+5000。

― 因果を歪めろ。好きにはさせるな。

 

 

弾かれる攻撃。

闇が揺らぎ、さらに小さくなっていく。

 

漆黒が渦巻いて――

 

『君主様、なんという姿にッ!?』

 

驚愕の声が、やけに大きく響いた。

ざわめいていく民衆。小さな悲鳴が上がる。

 

ボロボロに傷ついた姿を晒しながら――

 

『黙れ……ッ!!』

 

悪魔が、息も絶え絶えにそう答えた。

荒い息遣いの悪魔。燃える紅蓮色の瞳。

 

疲れたように、悪魔がその場に座り込む。

 

『いったい、何が……!?』

 

どよめいている群衆。

忌々しそうに、悪魔が顔を逸らした。

 

『我が領土は狭く、瘴気による影響で気候も悪い……。このままでは、我らが生き延びることさえ難しいのだ……。だからこそ、我は他の領土に侵攻を――』

 

『そ、そんな!! なんという無茶を!!』

 

心配するような叫び声。

悪魔がぎろりと、鋭い目を向ける。

 

『黙れと言っているだろうッ!!』

 

吼えるような口調。

びくりと、集まっていた民衆が身体を震わせた。

 

悪魔が顔に手を当てる。

 

『クソッ……!! 化け物どもめ……!!』

 

吐き捨てるような言葉。

先刻まで対峙していた、魔の者達の姿が思い起こされる。

 

人形を統べる不気味な館主に――

 

 

ダイアフルドール・マスター アンドロルド

ノーマルユニット 〈3〉

(ツインドライブ!!) (ペルソナライド)

ダークステイツ - ヒューマン 

パワー13000 / シールドなし / ☆1

【起】【(V)】【ターン1回】:【コスト】[【カウンターブラスト】(1)]することで、あなたのソウルから「ダイアフルドール」を含む〈ワーカロイド〉を、相手のヴァンガードのグレードと同じ枚数まで選び、(R)にコールする。3枚以上コールしたなら、そのターン中、このユニットのドライブ+1。

【自】【(V)】:このユニットがアタックされた時、あなたのバインドゾーンから「ダイアフルドール」を含む〈ワーカロイド〉を1枚まで選び、(G)にコールし、そのバトル中、シールド+5000。

― 物語の終幕を、華やかな悲鳴で飾ろう。

 

 

魔石を守る、虹の魔竜を統べる存在。

 

 

魔宝竜 ドラジュエルド

ノーマルユニット 〈3〉

(ツインドライブ!!) (ペルソナライド)

ダークステイツ - アビスドラゴン 

パワー13000 / シールドなし / ☆1

【起】【(V)】【ターン1回】:【コスト】[【カウンターブラスト】(1)]することで、【ソウルチャージ】(2)。【ソウルチャージ】されたカードすべてがそれぞれ異なるグレードなら、1枚引いてよい。

【自】【(V)】:このユニットがヴァンガードにアタックした時、【コスト】[それぞれ異なるグレードを【ソウルブラスト】(4)]することで、相手のヴァンガードを1枚選び、そのターン中、パワーを1になるまで増減させ、相手のヴァンガードがグレード3以上なら、このユニットのクリティカル+1。(その時点のパワーが1になり、その後は増減できる)

― 敗北を恥じることのない。我に敵わぬのは道理故。

 

 

圧倒的なまでの力の差。

命を失う直前での、かろうじての敗走。

 

彼らを打ち破る手立ては、万に一つもない。

 

『このままでは……ッ!!』

 

ぎゅっと、悪魔が拳を握りしめる。

貧しい土地。貧しい民。死にゆく命。

 

民がすすり泣く音だけが、その場に響いていく。

 

『なぜだ……ッ!!』

 

誰に言うでもなく、言葉をこぼす悪魔。

灰色の空を眺めながら――

 

『なぜ、運命は我らにこのような仕打ちを……ッ!!』

 

悪魔が、憎しみに満ちた声を漏らした。

溢れ出る殺意。身体の中から沸き立つ憤怒。

 

憎悪の闇が、深まっていく。

 

「クルーシャルでアタックッ!!」

 

キョウマが大きく宣言する。

暗闇が渦巻き、悪魔が低い咆哮をあげた。

 

 

因果竜 クルーシャル・ドラゴン パワー36000

 

 

「アンティゴネでインターセプト」

 

すっと、カードを動かすマコト。

銀色の瞳が光を放つ。

 

「そのスキルにより、シールド+25000。さらに退却した事により、相手のデッキの上から2枚をドロップに送る」

 

「ぐッ!?」

 

 

暁のアンティゴネ

ノーマルユニット 〈2〉 (インターセプト)

ブラントゲート - ノーブル

パワー10000 / シールド5000 / ☆1

【自】【(R)】:このユニットが(R)に登場した時か(G)から退却した時、相手の山札を上から2枚ドロップゾーンに置く。

【永】【(G)】:相手のヴァンガードがグレード3以上なら、このユニットのシールド+25000。

― 唯そこに在る、限りない絶望。

 

 

キョウマの攻撃が防がれる。

さらに2枚のカードが、山札から消えた。

 

漆黒の闇が、その視界を飲み込んで――

 

『あぁ、かわいそうに!』

 

絶望の闇の中、その声が響いた。

滅びゆく小国の宮殿。音もなく現れた存在。

 

禍々しい気配を漂わせた巫女が、悪魔の前に立つ。

 

『な、なんだ、貴様は……ッ!?』

 

驚き、訊ねる悪魔。

巫女がくすくすと、笑いをこぼす。

 

『そんなこと、どうでもいいじゃありませんか』

 

どこか神秘的な響きを宿す音。

唖然とする悪魔の前、巫女が手を差し伸べる。

 

『ねぇ。あなた、運命を変える事に興味はありますか?』

 

『……なに?』

 

『運命ですよ。万物が従う不変の因果、絶対的なる導き。その運命を、あなたが抱く不憫で憐れなる魂の道を、変えたいとは思いませんか?』

 

深淵よりも、さらに深い闇。

言葉が奇妙な魅力を伴い、心の隙間に入り込んでいく。

 

『な、何を、訳の分からない事を……ッ!?』

 

混乱したように言う悪魔。

そんなことできる訳が、と言いかける。

 

心を読んだように――

 

『できるんですよ。私達、ギーゼの使徒は』

 

巫女が、静かにそう答えた。

びくりと震え、大きく目を見開く悪魔。

 

白い肌に、妖艶な笑みが浮かぶ。

 

『それに、今のままでは、あなたも、あなたの領民も、この呪われた地で全て朽ち果て、滅びてしまいますよ?』

 

『ッ!!』

 

顔をしかめる悪魔。

警戒するように、その紅蓮色の瞳を巫女に向ける。

 

『貴様……何が目的だッ!?』

 

荒々しく訊ねる悪魔。

異様な緊張感の中、巫女が微笑んだ。

 

『私、仲間が欲しいのです』

 

巫女の口が、言葉を紡ぐ。

 

『運命を変えるため、遠く離れた異なる星へと赴く、魂の同志が。そのために、私は様々な国を巡っているのです』

 

滔々と語る巫女。

悪魔が腕を薙ぐように動かした。

 

『ならば、なぜ俺を選ぶッ!? この国には、もっと強い力を持つ者がいくらでもいるだろうッ!?』

 

理解できず、声を荒げる悪魔。

巫女が面白そうに笑った。

 

『簡単な事ですよ』

 

すっと、その手を差し伸べる巫女。

 

『あなたから、とても強い怒りと無念を感じたからです。運命を変えるには、強い意志の力が必要なのですよ。とてもとても、強い意志がね……』

 

その顔に浮かぶ、不気味な薄笑い。

芝居がかったように、巫女が天を仰いだ。

 

『自らを犠牲にすることさえ厭わない、強靭な意志。それが同志となる条件なのです。それがなければ耐えられませんから。私の呪法――時空間強制憑依(ディフライド・イル)には、ね』

 

『時空間強制憑依(ディフライド・イル)……?』

 

聞いたことのない言葉。

悪魔が困惑するように、その目を細めた。

 

深碧色の瞳が、深淵を見つめて――

 

『さぁ、どうしますか?』

 

透き通るような声で、巫女がそう訊ねた。

親し気な口調とは裏腹の、張りつめた空気。

 

惨憺たる死の気配が、色濃く辺りを漂う。

 

静寂の中、深淵が蠢いて――

 

『……いいだろう、手を貸してやる』

 

悪魔が、静かに頷いた。

悲愴なまでの強い決意。君主としての覚悟。

 

巫女が、その手を握り合わせる。

 

『素晴らしい!』

 

嬉しそうな声が響く。

闇の中、楽しそうな笑い声が反響した。

 

禍々しい気配が強まって――

 

『これで私達、"お友達"ですね!』

 

巫女の口から、場違いな程に明るい声が放たれた。

いつまでも響き続ける狂気の笑い、運命の夜。

 

ノイズが走ったように、過去の記憶が揺らいで――

 

「俺は……勝つんだ……ッ!!」

 

決意を込めた声。

紅蓮色の瞳が、目の前の少年の姿を見据える。

 

「必ずだ……ッ!! この戦いに勝って……ッ!! 領地を……ッ!! 民を……ッ!!」

 

振り絞るような叫び。

紅蓮色の光が、さらに強く輝きを増していく。

 

カッと、両目を見開いて――

 

「運命をッ!! 変えるんだよォォォーッ!!」

 

キョウマの叫びが、びりびりと空気を震わせた。

凄まじい気迫。深淵が溢れ、神秘的な気配を退けていく。

 

悪魔が咆哮をあげ、薄紫色の劫火がうねり狂った。

 

 

冥焔の魔王 バフォルメデス パワー58000

 

 

全身全霊の力を込めた攻撃。

闇が加護を与えるかのように、悪魔の身に付き纏う。

 

「ウオオオォォォッ!!」

 

咆哮をあげている悪魔。

劫火が巨大な柱となり、細身の竜へと迫る。

 

天に浮かぶ竜がわずかに目を細め、そして――

 

「完全ガード」

 

マコトが、手札から大量のカードを場に出した。

 

 

ヴァイオレート・ドラゴン

ノーマルユニット 〈1〉 (ブースト)

ブラントゲート - スペースドラゴン 

パワー6000 / シールド0 / ☆1

【永】:守護者(守護者を持つカードはデッキに合計4枚まで入れられる)

【自】:このユニットが(G)に置かれた時、あなたのユニットを1枚選び、そのバトル中、ヒットされない。あなたの手札が2枚以上なら、手札から1枚選び、捨てる。

― 本能で、異質なる物を拒絶する。

 

 

宵のアルケスティス

ノーマルユニット 〈3〉

(ツインドライブ!!) (ペルソナライド)

ブラントゲート - ノーブル

パワー13000 / シールドなし / ☆1

【永】【(R)】:このユニットがアタックする際、相手の、縦列1つのユニットすべてとバトルする。

【自】【(R)】:このユニットのアタックがヒットした時、相手の山札を上から1枚ドロップゾーンに置く。

― 跪け。己が滅びを受け入れよ。

 

 

薄暮のメーデイア

ノーマルユニット 〈1〉 (ブースト)

ブラントゲート - ノーブル

パワー8000 / シールド5000 / ☆1

【自】【(R)】: このユニットが(R)に登場した時、あなたの他のユニットを1枚選び、そのターン中、パワー+5000。

【起】【(R)】:【コスト】[このユニットを【レスト】させる]ことで、あなたと相手は【ソウルチャージ】(1)。

― 全ての命に等しく降り注ぐ、無慈悲な施し。

 

 

ガード制限の条件を満たすマコト。

手札から1枚を捨てる。

 

神秘的な波動が放たれ、劫火が跡形もなく消え去った。

 

「あっ……!! がっ……!!」

 

茫然と声を漏らすキョウマ。

燃え尽きたように、その顔から表情が消える。

 

見下した視線を向けて――

 

「終わりだね」

 

確かめるように、マコトがそう言った。

一瞬の静寂。闇が散らばり、消えていく。

 

マコトが腕を伸ばした。

 

「僕のターン」

 

カードを引くマコト。

手札に残っていた1枚を構える。

 

神秘的な気配が強まって――

 

「ペルソナライド」

 

細身の竜の姿が重なり、輝いた。

 

 

魅惑竜 ファナ・ラ・フィア パワー23000

 

 

すっと、手を伸ばすマコト。

自らのヴァンガードの上に指を置く。

 

銀色の瞳が、わずかに光を纏って――

 

「ファナ・ラ・フィアでアタック」

 

マコトの宣言が、その場に響いた。

横向きになる1枚。神秘的な姿の細身の竜。

 

美しい咆哮が、世界を揺らしていく。

 

「完全ガードだッ!!」

 

投げつけるように、キョウマがカードを場に出した。

 

 

リキューザルヘイト・ドラゴン

ノーマルユニット 〈1〉 (ブースト)

ダークステイツ - アビスドラゴン 

パワー6000 / シールド0 / ☆1

【永】:守護者(守護者を持つカードはデッキに合計4枚まで入れられる)

【自】:このユニットが(G)に置かれた時、あなたのユニットを1枚選び、そのバトル中、ヒットされない。あなたの手札が2枚以上なら、手札から1枚選び、捨てる。

― 理想だけでは意味がない。力なき正義に価値はない。

 

 

「俺は……俺は……ッ!! 必ず……ッ!! 運命を……ッ!! 変えるんだ……ッ!!」

 

懇願するような口調のキョウマ。

闇の障壁が現れ、細身の竜の波動を防ぐ。

 

「この呪われた定めを壊し……ッ!! 領地を……ッ!! 貧しい民を……ッ!! 俺のこの手で、救って、みせ……ッ!!」

 

息も絶え絶えに言うキョウマ。

まるで神にすがるかのように、その腕を天へと伸ばす。

 

闇の中、運命を掴もうと伸びた手に向かって――

 

「ファナ・ラ・フィアのスキル」

 

冷たい声が、無情にも投げかけられた。

 

「ペルソナライドしているなら、ヒット時のスキルは攻撃がヒットしていなくても発動する」

 

 

魅惑竜 ファナ・ラ・フィア

ノーマルユニット 〈3〉

(ツインドライブ!!) (ペルソナライド)

ブラントゲート - スペースドラゴン 

パワー13000 / シールドなし / ☆1

【永】【(V)】このユニットは相手のヴァンガードにアタックできない。

【永】【(V)】:このユニットがアタックする際、相手の山札を選び、バトルする。(相手の山札はパワー0のノーマルユニットとして扱い、相手のヴァンガードの名前とグレードと種族を得る)

【自】【(V)】:このユニットのアタックが相手の山札にヒットした時、相手の山札を上から7枚ドロップゾーンに置く。このターンにあなたがペルソナライドしているなら、この効果はヒットしていなくても発動する。

― 世界を無に還す、魅惑の彗星群。

 

 

目を見開くキョウマ。

悪魔の目から、細い涙が零れ落ちる。

 

神秘的な光が収束し、巨大なエネルギーの塊となって――

 

「さよなら、バフォルメデス」

 

マコトの声と共に、巨大な光が悪魔の身体を貫いた。

 

「あぁぁあぁあぁぁあぁぁッ!!」

 

悪魔の慟哭が戦場に響き渡る。

だがその叫びさえも、光に飲み込まれ消えていった。

 

衝撃が巻き起こり、世界が白い色に染まっていく。

 

「きゃあああ!!」

 

「な、なに!?」

 

戦いを見守っていた生徒達の口から上がる悲鳴。

アレスティエルが飛び上がる。

 

「ロローッ!!」

 

戦場に向かって叫ぶアレスティエル。

神秘的な波動によって、その声がかき消された。

 

世界が眩い光に包まれ、そして――

 

光が消えた時、その場には何も残っていなかった。

穏やかに広がる地平。静寂に包まれた大地。

 

闇の一欠片さえ、その場には残っていない。

 

「…………」

 

天にたゆたう細身の竜。

神秘的な気配を漂わせながら、しばし佇む。

 

銀色の瞳が瞬き、そして――

 

竜の姿が、薄れるようにしてその場から消えていった。

何もない大地に、不可思議な光の粒子が降り注ぐ。

 

神秘的な気配が遠ざかって――

 

気を失ったキョウマが、その場に倒れ込んだ。

どさりという鈍い音。力尽きた姿。

 

ぱらぱらと、キョウマのカードが床に落ちていった。

 

 

キョウマ デッキ枚数0

 

 

「僕の勝ち」

 

退屈そうに、その姿を見下ろしているマコト。

キョウマの手の甲に浮かんでいた紋章型の痣が消える。

 

運命に弄ばれるように、カードが床に落ちて――

 

蝋燭の炎が、落ちた1枚に燃え移った。

 

 

冥焔の魔王 バフォルメデス

ノーマルユニット 〈3〉

(ツインドライブ!!) (ペルソナライド)

ダークステイツ - デーモン 

パワー13000 / シールドなし / ☆1

【自】【(V)】:このユニットがヴァンガードにアタックした時、【コスト】[グレード3のリアガードを2枚ソウルに置く]ことで、1枚引き、あなたのソウルのグレード3のカード3枚につき、そのバトル中、このユニットのパワー+10000。

【永】【(V)】:あなたのソウルのグレード3の枚数により、このユニットは以下すべてを得る。

・3枚以上-グレード3以上のあなたのユニットすべてのシールド+5000し、『ブースト』を与える。

・6枚以上-このユニットがアタックしたバトルでは、相手は手札から(G)にコールする際、3枚以上同時にコールしない限りコールできない。

― 喜べ。汝に冥府の劫火と燃える栄誉をくれてやろう。

 

 

赤い炎に包まれていくカード。

ぱちぱちという音と共に、その姿が灰になっていく。

 

銀色の瞳から、光が消えて――

 

「本当、哀れな奴……」

 

小さく、マコトがそう呟いた。

ため息をつくマコト。自らのカードを片付ける。

 

神秘的な気配を纏い、そして――

 

その視線が、ヨウコとミアの方へと向けられた。

 

「ひっ!」

 

小さく悲鳴をあげ、身を縮こませるヨウコ。

ミアはいまだ気絶したまま、意識を失っている。

 

「…………」

 

無表情のマコト。

ほんの一瞬、逡巡するように目を細めると――

 

「……祈り聞く者」

 

ぼそりと、マコトがそう口にした。

気絶しているミアを、じっと見つめているマコト。

 

やがて、興味が失せたように視線を逸らすと――

 

「いや、正確には偽物の、か……」

 

ぽつりと、マコトが付け加えた。

ヨウコの頭の中、いくつもの疑問符が浮かぶ。

 

辺りを見回しながら――

 

「ここまでやっても現れないということは……エデンのやつ、本当にここにはいないのか。まったく、あいつときたら……」

 

マコトが、不満そうにそう呟いた。

ぶつぶつ言いながら、歩き出すマコト。靴音が響く。

 

しゃらんと、懐中時計が揺れる音を残して――

 

マコトの姿が、部屋の外へと消えていった。

部屋に残されたのは、気絶した2人と、ヨウコのみ。

 

先程までの騒乱が嘘のように、辺りは静まり返っている。

 

「いったい……」

 

真っ青になっているヨウコ。

重苦しい疲れが、その全身を襲う。

 

冷や汗を流しながら――

 

「なにが、どうなってるのよ……?」

 

ヨウコが、ミアの顔を眺めながらそう訊ねた。

 

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