カードファイト!! ヴァンガード StarSong   作:バビロン@VG

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後日談 神に捧げる子羊達の鎮魂歌①

 

ゴーンという鈍い鐘の音が、辺りに鳴り響いた。

 

厳かな雰囲気を醸し出す、大聖堂を模した舞台。

観客席に座る生徒達は、うつろな表情をしている。

 

美しいステンドグラスの下で――

 

「お集まりの淑女の皆々様方」

 

砂時計の頭を持つ異形の悪魔が、どこからか声を出した。

タキシードを身に纏った姿。四本に伸びた腕。

 

優雅に、観客席に向かって頭を下げながら――

 

「今宵の月は実に美しいですね。親愛なる生け贄の皆様には、心より深謝します」

 

異形の悪魔――サクリファイス・グラスがそう告げた。

紳士を装った振る舞い。異様な姿と気配。

 

深淵が渦巻き、辺りを飲み込んでいく。

 

「ま、待って……!!」

 

舞台の上、倒れているマリレーンが弱々しく言う。

薄汚れた衣装。苦痛の表情を浮かべているマリレーン。

 

サクリファイス・グラスが、かすかに顔をかしげる。

 

「奇妙な事をおっしゃる。これはあなた様が望まれたこと。あなた様はこの学園で、最も優れた歌手になりたいのでしょう?」

 

欲望を見透かしたかのように、悪魔が手を伸ばす。

 

「ならば、私の儀式に協力すればその望みに近づくはずです。この学園全ての者を生け贄に捧げれば、必然的にあなた様が最も優れた歌手になれるのでは?」

 

「ふざけないで!! そんな訳ないでしょ!!」

 

怒鳴りつけるマリレーン。

サクリファイス・グラスが「ふむ」と声を漏らす。

 

「失礼。どうやら少々すれ違いがあったようですね。ですが、すでに契約はなされています。どうかご容赦を」

 

観客達に向き直るサクリファイス・グラス。

その手を広げると、紅紫色の魔力がその身体から迸る。

 

悪魔の足元から、マゼンタピンクの液汁が溢れ出た。

 

「や、やめて……! お願いだから……!」

 

絶望的な表情。

観客席に向かって、手を伸ばしているマリレーン。

 

その目から涙が落ちて――

 

「誰か、助けてーッ!!」

 

マリレーンの叫ぶ声が、舞台の上に反響した。

魔力を帯びた桃色の悪夢が、舞台から降りようとする。

 

瞬間――

 

ステンドグラスが砕け散る音が、辺りに響き渡った。

 

「!?」

 

「おや?」

 

顔をあげるマリレーンと、

僅かに上の方を向くサクリファイス・グラス。

 

きらきらと、ガラスの欠片が降り注いで――

 

「――にゃあーッ!!」

 

天井から降り落ちる影――

ロロネロルが、掛け声と共にその足を伸ばした。

 

悪魔の頭――砂時計の部分に、強烈な蹴りが炸裂する。

 

「ぐっ」

 

後ろに吹き飛ぶサクリファイス・グラス。

ステッキとシルクハットが舞台の上に転がり落ちる。

 

マゼンタピンクの液汁が、その場から消え去った。

 

「ろ、ロロネロル先輩!?」

 

声をあげて驚くマリレーン。

着地したロロネロルが、視線を向けた。

 

その紫色の瞳には、渦巻く神秘的な光が宿っている。

 

「……お昼の子」

 

ぼそりと呟くロロネロル。

そのまま油断なく、視線を戻す。

 

漆黒が蠢いて――

 

「これはこれは……」

 

頭を抑えながら、異形頭の悪魔が呟く。

タキシードについた塵を払い、悪魔が立ちあがった。

 

「天井を壊して入ってきた上、はしたなく足を伸ばして人様の顔を蹴とばすとは……。実に嘆かわしい。あなた様、さては不良の少女様ですね」

 

いかにも遺憾とした声で告げる悪魔。

両者が睨み合い、舞台の上の空気が重く張り詰めていく。

 

神秘的な気配を漂わせ、そして――

 

「お前、そもそも人じゃないのです」

 

ロロネロルが低い声でそう言い、すっと身構えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

VANGUARD

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満点の星空の下、観客から大きな拍手が巻き起こった。

 

ひしめき合う人々。野外ライヴの会場。

熱気を帯びた空気に混じって、歓声がこだまする。

 

マイクを持ったMCが、ステージの端に現われて――

 

『ご来場の皆様方!! 本日はライヴにお越し頂き、誠にありがとうございますー!!』

 

観客達に向かって、明るい口調でそう告げた。

沸き上がる会場。再び、大きな歓声があがった。

 

ばっと、MCが勢いよくステージの方を手で示す。

 

『それでは、改めてご紹介させて頂きます!! 本日出演されるアーティストは、こちらの方々!!』

 

マイクを通して響く声。

スポットライトがステージの中央にあたる。

 

紫がかった長い髪の少女の姿が浮かび上がって――

 

『煌めく星の歌姫、綺羅星ミアさん!!』

 

MCの声と共に、少女――ミアがにっこりと微笑んだ。

色白の肌。身体のラインを強調した、ステージ用の衣装。

 

紫色の瞳が、観客達へと向けられる。

 

「はーい、よろしくね~!」

 

軽い口調で言って、手を振っているミア。

爆発するような歓声が巻き起こり、会場を揺らした。

 

MCがマイクを握りしめる。

 

『続いて、先日行われた復活ライヴの記憶も新しいこの人!! 奇跡の復活を遂げた孤高のギタリスト!!』

 

ミアの隣りの空間に、スポットライトの光が落ちる。

浮かび上がったのは、薄茶色の髪をした小柄な女性。

 

蘇芳色の瞳が煌めいて――

 

『――日野宮マユー!!』

 

MCの声と共に巻き起こった声援を、

マユがどこか緊張したように受け止めた。

 

「……ど、どうも」

 

マイクに向かって小声で言うマユ。

緊張したような雰囲気。その視線が辺りをさまよう。

 

ミアがため息をついた。

 

「もー、マユっち。いい加減、自信持ちなって~。この前のライヴだって大成功だったじゃん」

 

「み、ミアさん。そうは言っても、でも……!」

 

自信なさげな口調。

ミアが肩をすくめた。

 

「でもじゃなくて~。あと、ミアで良いって言ってるじゃん。今は同じユニットのメンバーなんだからさ~」

 

指を回しているミア。

ミアの言葉を肯定するように、会場から拍手が起こった。

 

じわりと、マユの目が潤んだ。

 

「あ、ありがとうございます……!!」

 

深々と頭を下げるマユ。

顔をあげると、観客の方へと向き直る。

 

穏やかな笑みを浮かべて――

 

「よろしくお願いします! 今日も短い時間ですが、演奏させてもらいます!」

 

マユが自信に満ちた声でそう告げた。

巻き起こる歓声。会場が大きな盛り上がりを見せる。

 

MCが指を天へと伸ばして――

 

『そして、最後はこの人! 先日メジャーデビューを果たし、綺羅星ミアと日野宮マユとでユニットを組むことになった、新進気鋭の新人! 華やぐ草原の歌妖精!』

 

仰々しく告げられる言葉。

ぱっと、スポットライトの光がステージの上を照らす。

 

金髪をツインテールにした少女が笑みを浮かべて――

 

『花園(はなぞの)キハルー!!』

 

観客達に向かって、大きく手を振った。

和風調の可愛らしい振袖の衣装。猫耳のカチューシャ。

 

少女――キハルが、マイクを構える。

 

「みなさーん、ありがとうございまーす!!」

 

響き渡るはつらつとした声。

観客のあちこちへと顔を向けているキハル。

 

きゅるんと、キハルが可愛らしいポーズを取った。

 

「こんなにたくさんの人に来て貰えて、キハルすっごい感動してます!! 今日も先輩達に負けないよう、キハル精一杯がんばっていきますねー!!」

 

きらきらとした輝き。

自信に満ちた雰囲気を漂わせているキハル。

 

会場の男性陣から、ひと際大きな歓声があがった。

 

「いやー、きーちゃんって本当に人気だよね~」

 

他人事のようにコメントしているミア。

マユがじとっとした目を向ける。

 

「もー、ミアさん。集中して下さいってば……」

 

こそこそと話している2人。

キハルは観客に向けてファンサービスを続けている。

 

MCが咳払いをする。

 

『さてさて、皆様も良い感じに盛り上がって参りましたところ!! 焦らしていてもしょうがないので、早速始めていきましょう!!』

 

マイクに向かって叫ぶように話すMC。

視線を舞台袖へと向けながら、おもむろに手をあげる。

 

照明が落ちて、辺りが漆黒の暗闇に閉ざされた。

 

熱気の中、ざわめきの声をあげる観客達。

やがて、しんと会場内が静まり返っていく。

 

静寂と熱気が渦巻く中に――

 

『それでは!!』

 

響き渡る声。

光が暗闇を切り裂き、辺りを眩く照らして――

 

『――ライヴ開演ですッ!!』

 

ステージに浮かび上がるアイドル達の姿。

スピーカーを通し、音楽が会場を満たしていく。

 

歓声と拍手。凄まじい熱気が沸き上がり、そして――

 

神秘的な歌声が、会場中に美しく響き渡っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

太陽の光が、さんさんと降り注いだ。

 

蒸し暑い空気。じりじりとした日差しに、セミの鳴き声。

抜けるような晴天が、どこまでも広がっている。

 

冷房の効いた室内で――

 

「――それでは最後になりますが、ファンの皆様に向けてのメッセージを頂けますか?」

 

真面目な声色で、三芳野ヨウコがそう訊ねた。

眼鏡の奥、真剣な目を向けているヨウコ。

 

目の前に座るキハルが、にっこりと微笑む。

 

「はい! ファンの皆さん、いつもたくさんの応援ありがとうございます! 皆さんの声に支えられて、私達もいっぱい勇気づけられています! これからも皆さんと一緒に、素敵なライヴがやれたら嬉しいです!」

 

すらすらと答えるキハル。

模範的な回答。無邪気さを感じさせる笑み。

 

ヨウコが手元のメモ帳に、その答えを書き込んだ。

 

「ありがとうございます、花園キハルさん。新人とは思えない、素晴らしいインタビューでした」

 

「いえいえ、そんな~。キハル、まだまだですよ~」

 

照れたように言うキハル。

でれでれと、その顔を赤らめる。

 

後ろに振り向いて――

 

「そうですよね? 先輩方ー!」

 

キハルが、努めて元気よくそう訊ねた。

きらきらと煌めく姿。和やかな空気が流れて――

 

辺りが、静寂に包まれた。

 

「すぅー……」

 

事務所に備え付けられたソファー。

そこに横たわり、思い切り寝息を立てているミア。

 

「…………」

 

真剣な表情。閉じられた目。

両耳にイヤホンを付け、曲に聞き入っているマユ。

 

とても気まずい沈黙が、辺りを流れていく。

 

「え、えーと。先輩方、なんか、疲れちゃってるみたいですね……。あはは……」

 

フォローするように言うキハル。

ヨウコがため息をついた。

 

「庇う必要はありません。ああいうのを、世間一般ではダメな大人と呼びます。参考にしないように」

 

冷ややかな口調。

ヨウコがおもむろに立ち上がり、ツカツカと歩き出す。

 

だらしなく寝ているミアの前に立って――

 

「さっさと起きて下さい、綺羅星ミア」

 

ヨウコが、ミアの身体を思い切り揺さぶった。

きわめて雑な扱い。キハルがびっくりする。

 

驚いたように、その目を開いて――

 

「わぁ!? なによ急に、もー!!」

 

綺羅星ミアが、不満そうに声をあげた。

ヨウコが腕を組み、その姿を見下す。

 

「おはようございます。元気そうで何よりです」

 

皮肉めいた口調。

静かな怒りを感じさせるヨウコ。

 

状況を把握したミアの目が泳ぐ。

 

「あー……」

 

ぽりぽりと頬をかくミア。

やがてにっこりと、煌めく笑顔を浮かべると――

 

「こんにちは、記者さん! 煌めく星の歌姫、綺羅星ミアです!!」

 

いかにもわざとらしい声を出し、

ミアがその場で可愛らしいポーズを決めた。

 

冷たいクーラーの風が、その場を通り過ぎる。

 

「そのセリフ、言うのが30分遅いですね。インタビューならもう終わりましたよ」

 

空調に負けないくらい冷たい声。

ヨウコの鋭い視線が、ミアの姿を貫いた。

 

「ソウデスカ」

 

笑顔を浮かべたまま、片言のような声を出すミア。

ポーズを解くと、どさっとソファーに座り直す。

 

「も~。マユっちもきーちゃんも、記者さんが来てるなら起こしてよ~……」

 

頬づえをつき、足をぷらぷらとさせるミア。

ヨウコが呆れたように息を吐いた。

 

「いい大人が小学生みたいな事を言わないで下さい」

 

「そんなぁ、記者さんったら冷た~い。一緒に一晩を過ごした仲じゃない~」

 

馴れ馴れしい口調。

キハルが「えっ!?」と口元を押さえ、顔を赤らめる。

 

ヨウコの目がさらに鋭くなった。

 

「誤解を招くような言い方はやめるように」

 

「は~い」

 

手をひらひらとさせているミア。

キハルだけが、慌てたように2人を交互に見る。

 

ミアの目が、マユの姿を捉えた。

 

「あっ! てか、マユっちもサボってるじゃん! 記者さん、なんでマユっちの方には何も言わないのよー!」

 

騒がしく非難するミア。

ヨウコが「あぁ」と呟く。

 

「日野宮さんは別に。と言いますか、どうせ今の彼女には何を聞いても意味がないですから」

 

「へ? なにそれ、どういう意味?」

 

きょとんとするミア。

キハルもまた、同意するようにこくこく頷く。

 

呆れたように、ヨウコが2人を見た。

 

「あなた達、同じ事務所所属なのに知らないんですか? まぁ、どうしてもと言うのでしたら構いませんけど」

 

そう言って、マユへと近づくヨウコ。

ぽんぽんとその肩を叩く。

 

「え……?」

 

目を開くマユ。

ヨウコを見上げながら、イヤホンを外す。

 

「どうも、日野宮マユさん。先日のライヴに関して、インタビューをさせて頂きたいのですが」

 

「ライヴ……」

 

呟くマユ。

ミアが横からひょっこりと現れる。

 

「あ、さっきから真剣に何聞いてるのかな~って思ったら、昨日のライヴ音源じゃん。どしたのよ、マユっち?」

 

片耳にイヤホンを付けるミア。

不思議そうな視線をマユへと向ける。

 

じわりと、蘇芳色の瞳に涙が浮かんで――

 

「うっ、うぅぅぅ……!!」

 

ぽろぽろと、マユの目から涙が零れた。

ミアとキハルがぎょっとする。

 

「ちょ!? マユっち、なにごと!?」

 

「日野宮先輩!? どうしたんです!?」

 

あわあわとしている2人、

対照的に、全く動じていないヨウコ。

 

涙を拭いながら――

 

「わ、私の演奏、ミスばかりなんですぅぅぅ……!」

 

マユが、情けない声でそう声を漏らした。

「えっ?」という表情になるミアとキハル。

 

マユがぐすんと鼻を鳴らす。

 

「コードチェンジが少しモタついてるし……! 歌い出しのタイミングと呼吸のリズムが悪いんですぅ……! 他にも、気になるところがたくさんあってぇ……!」

 

ぐずぐずとした口調。

ミアとキハルが互いに顔を見合わせた。

 

「……そうだったっけ?」

 

「……寸分違わない完璧な演奏だったと思いますけど」

 

小声で話している2人。

ヨウコがため息をついた。

 

「気にしないで下さい。日野宮さん、元々現役だった頃からこんな感じですよ。ライヴの後は自分にダメ出しをして落ち込んでいるので、インタビューしないんです」

 

「そ、そうなの? ていうか、本当にそんなにミスあった? 全然気づかなかったんだけど……」

 

自信なさげに言うミア。

ヨウコが小さく肩をすくめた。

 

「さぁ? 少なくとも、他の誰かに理解された事はありませんから。天才ギタリストの彼女には、常人には理解できない判定基準があるというのが定説です」

 

ばっさりと言い切るヨウコ。

ミアとキハルがますます怪訝な表情になる。

 

「うぅ……へたくそなあたしをゆるして……」

 

すがるように言っているマユ。

悲愴な声が、部屋の中に響いていった。

 

ヨウコが首を振り、鞄を肩にかける。

 

「では、私はこれで失礼します。昨日のライヴ、とても良かったですよ。あなた達の今後、期待していますから」

 

頭を下げるヨウコ。

踵を返し、つかつかという靴音が辺りに響く。

 

扉の前で立ち止まって――

 

「あぁ、そうそう」

 

振り返るヨウコ。

ソファーに座っているミアの方を向く。

 

「くれぐれも身体には気を付けて下さいね、綺羅星さん」

 

ヨウコが、無表情にそう言った。

一瞬、目を丸くするミア。すぐに微笑む。

 

「なーに、心配してくれるの~? 記者さん」

 

にんまりとしながら訊ねるミア。

ヨウコが鼻で笑った。

 

「まさか。妹があなたのファンだからですよ。それにあなた、放っておくと無茶ばかりしそうですから」

 

「えー、本当かな~? 記者さんったら、ひょっとして照れちゃってる~?」

 

からかうように言うミア。

ヨウコが呆れたように、目を細めた。

 

「それだけ言えれば十分ですね。それでは」

 

淡々とした口調。

ヨウコがドアノブを掴み、扉を開ける。

 

ばたんという音が響き、ヨウコが去っていった。

 

「お疲れ様~」

 

手をひらひらとさせているミア。

キハルもまた、ホッとしたように息を吐いた。

 

しばし、その場に穏やかな空気が流れていく。

 

「さーて、それじゃあ私は帰ろうかな~」

 

身体を伸ばしながら言うミア。

泣いているマユの肩を叩く。

 

「ほら、マユっちも! てか、全然ミスなかったって! そんなに泣く事ないじゃん!」

 

「うぅぅ……ミアさぁぁん……!」

 

どこまでも情けない声を出すマユ。

ミアが「しょうがないなぁ~」と呆れるように言った。

 

ぱっと、キハルが手をあげる。

 

「あ、あの! 先輩方、ちょっといいですか!」

 

意を決したように言うキハル。

ミアとマユが「ん?」と視線を向ける。

 

緊張したような表情で、キハルが口を開いた。

 

「キハル、偉大な先輩お2人とユニットを組めたこと、本当に感激してます! な、なのでその、お話しを聞きたくて! よければ一緒にご飯とかいきませんか!」

 

唐突な誘い。

顔を赤らめながら、訊ねるキハル。

 

ミアとマユが視線を交わし、そして――

 

「私は構わないよ~」

 

「いいんですか……こんな私で……」

 

軽い声と暗い声が、同時にその場に響いた。

ぱっと、キハルの顔が目に見えて明るくなる。

 

「本当ですか! ありがとうございまーす!」

 

きゃぴきゃぴと、可愛らしく喜んだ顔になるキハル。

嬉しそうな様子でスマホを取り出す。

 

「早速、予約しちゃいますね! キハル、この辺りに行きつけのお店があるんです!」

 

うきうきとした口調。

キハルがスマホを耳にあて、電話をかけはじめた。

 

ミアがそっと、マユに耳打ちする。

 

「きーちゃんってさ、本当に行動力の化身だよね……」

 

「花園さん、まだ10代ですから……。あの生き生きとしたフレッシュさ、私にはあまりにも眩しすぎます……」

 

「あー。それ、ちょっとわかるかも……」

 

キハルとは対照的な、陰鬱とした雰囲気。

根本的には根暗なミアとマユの意見が一致する。

 

通話を終えて――

 

「先輩方、お待たせしました! 予約も大丈夫だったので、早速いきましょうー! ゴーゴー!」

 

元気よく、キハルが2人に向かって言った。

ミアとマユが「う、うん」と、その勢いに押される。

 

蜜柑色の瞳を向けながら――

 

「キハル、先輩方と仲良くなれたら嬉しいです!!」

 

キハルが、にっこりと微笑んだ。

 

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