カードファイト!! ヴァンガード StarSong   作:バビロン@VG

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後日談 神に捧げる子羊達の鎮魂歌②

 

穏やかな日差しが、天から降り注いでいた。

 

遥か彼方の宇宙に存在する惑星クレイ。

その天空を、一頭の桃色の鯨が優雅に駆けていく。

 

学園都市――リリカルモナステリオ。

 

空中を移動する鯨の背中に広がる、巨大な街並み。

数多の夢を抱いたアイドルの卵達が集まる場所。

 

そんなリリカルモナステリオの、学園広場の一角で――

 

「――下克上を起こすの!!」

 

橙色の髪をした小柄な女生徒が、

向かいに座る女生徒に向かって勢いよくそう言い放った。

 

がやがやとした雰囲気の中に、その宣言が消えていく。

 

「ふゅーん」

 

のんびりとした声で答える女生徒。

テーブル席に置かれたカップを手に取り、茶をすする。

 

小柄な女生徒――マリレーンが身を乗り出した。

 

「ちょっと、レスピーノ! 真面目に聞いてる!?」

 

「聞いてるよ~」

 

カップを置き微笑む女生徒――レスピーノ。

頬づえをつくと、向かいのマリレーンを見据える。

 

「聞いてるけど、あんまり意味分からんくてー。なにがどうなって、そうなったの〜?」

 

ゆっくりとした喋り方。

レスピーノが不思議そうに首をかしげた。

 

マリレーンが胸を張る。

 

「レスピーノ、よく聞いて! 私達は晴れて、リリカルモナステリオに入学した。ここから仁義なき熾烈なアイドルとしての戦いが始まる、そうでしょ?」

 

自信満々に話すマリレーン。

レスピーノが「そうだね〜」とスマホを見ながら言った。

 

ぐっと、マリレーンが拳を握り固める。

 

「とはいえ、今年入学した生徒達だけでも、膨大な数のライバルが存在するわ! 今の世の中、ちょっと歌が上手い程度じゃ見向きもされない! 凡百のアイドルにならないためにも、私達には話題性が必要なの!」

 

「うんうん、わかるわかる〜」

 

適当に答えるレスピーノ。

マリレーンが両手を伸ばして――

 

「だからこそ――私達には、下克上が必要なのよ!!」

 

再び、力強い声でそう宣言した。

真剣な表情。本気で言っているマリレーン。

 

のどかな空気が流れ、鳥の鳴く声が辺りに響いた。

 

「つまり、どういうことー?」

 

スマホの画面から目を離さず、訊ねるレスピーノ。

マリレーンが「ふふーん!」と不敵に笑った。

 

「単純な事よ! このリリカルモナステリオで名を上げたいなら、歌の実力を認めさせるのが一番! となれば、答えは1つ!」

 

びしっと、天に向かって指を伸ばすマリレーン。

蜜柑色の瞳をきらきらと輝かせながら――

 

「――その辺にいる先輩を、歌唱力バトルで倒す!!」

 

とてもいい笑顔で、マリレーンがそう言い切った。

お昼休みの時間。生徒達が楽しくお喋りする声が響く。

 

「あー、それで下克上なんだ〜」

 

納得したように言うレスピーノ。

「んー」と身体を伸ばすと、息を漏らす。

 

「マリちゃんって、上昇志向強めだもんね~」

 

「当然よ! あたし、この学園都市で一番のアイドルになるんだから!」

 

えっへんと、ドヤ顔を浮かべているマリレーン。

自信に満ち溢れた表情のまま、胸を張る。

 

「そのためにも、一年生のうちから伝説を作るのが当面の目標! だからこそ、今回はどこぞの先輩に犠牲になってもらうわ!」

 

「さすがマリちゃ~ん。天才的ー」

 

ぱちぱちとレスピーノが拍手を送る。

満更でもなく、それを受けているマリレーン。

 

テーブルに肘をつき、レスピーノが微笑んだ。

 

「それでそれで? 実際、どの先輩を倒すのー?」

 

なにげない質問。

フッと、マリレーンが微笑みを浮かべた。

 

「まだ考えてないッ!!」

 

とても力強く、マリレーンがそう断言した。

レスピーノが「おー」と声をあげる。

 

「なるほど~。つまり、マリちゃんが珍しく外でお昼を食べようって誘ってくれたのは、その先輩を探すため?」

 

「まさにその通りよ。さっすがレスピーノ! あなたって本当に天才ね!」

 

褒めちぎるマリレーン。

レスピーノが照れたように、はにかんだ。

 

「ぷぅ。もー、そんなからかわんといてよ~」

 

デレデレとした口調。

ほんの少し、頬が赤くなっているレスピーノ。

 

マリレーンが辺りを見回した。

 

「さーて、それじゃあ、早速始めるわよ。獲物、どの先輩にしようかしら……」

 

楽しくお喋りしている女生徒達を眺めているマリレーン。

レスピーノが広場の奥の方を指差した。

 

「なんとなくだけど、あの人とかどう~?」

 

指を伸ばすレスピーノ。

マリレーンが「んー?」と、視線を向ける。

 

視線の先、白銀の髪をした獣人の少女が微笑んで――

 

「あら、そんなことないわよ」

 

同席する別の少女達に対し、謙遜するように話した。

上品な口調。綺麗に背筋を伸ばした姿勢。

 

銀髪の少女は楽しそうに、お喋りに興じている。

 

「んー、あの人はダメね~」

 

考えた後、そう答えるマリレーン。

レスピーノが「えー? なんでー?」と訊ねる。

 

こしょこしょと、マリレーンが耳打ちした。

 

「だってあの人、なんかオーラあるじゃん。ここにいる中だと、トップクラスに強そうな気配がするもん!」

 

「そうなのー? てか、マリちゃん一番になるんでしょ? だったら最初から強そうな人と戦ってもよくなーい?」

 

「そうだけど、最初は確実に勝てそうな相手とやるの! RPGでも、いきなりラスボスと戦ったりしないでしょ!」

 

力強く断言するマリレーン。

レスピーノが「いや、そういうのもあるよ~」と話す。

 

再び、マリレーンが辺りの様子を伺い出した。

 

「いい? 最初の一戦が大事なのよ! ここできっちりと私の才能と歌唱力を知らしめるためにも、私が今探すべきは確実に勝てる相手! スライムなの!」

 

「スライム系アイドルかぁ~」

 

どこまでものんびりとしているレスピーノ。

2人は騒がしく会話を続けている。

 

くすりと、銀髪の少女が口元に微笑を浮かべた。

 

「ん? どうしたの、ペトラルカ?」

 

訊ねる金髪の少女――ライゼット。

銀髪の少女――ペトラルカが優雅にカップを持った。

 

「いいえ。面白そうな事が起きるかと思ったのだけど、それがなくなってしまったの。ちょっぴり残念だと思って」

 

目を閉じて、カップを傾けるペトラルカ。

ライゼット達はぽかんとしている。

 

がやがやと、賑やかな空気が流れる中に――

 

「あっ、見つけた! あの人にしよう!」

 

マリレーンの元気な声が響いた。

レスピーノが顔をあげる。

 

「えー、どの人ー?」

 

「ほら、あそこ! 向こうのベンチで寝ている人!」

 

指差すマリレーン。

レスピーノが身を乗り出し、視線を向けた。

 

広場の外れに設置されたベンチの上で――

 

「ふにゃー……」

 

制服を着た黒髪の猫の少女が、

だらしない体勢で横になりベンチを占領していた。

 

とても気持ちよさそうに、猫の少女は昼寝をしている。

 

「えー、あの人―?」

 

訝しむように言うレスピーノ。

マリレーンが頷いた。

 

「あたしの目に狂いはないわ! あのだらしない姿、底抜けに間抜けそうな顔! 絶対、大した事ない相手よ! 間違いない!」

 

自信満々に断言するマリレーン。

レスピーノが「そうかなー……?」と疑問を呈す。

 

がたりと、マリレーンが立ち上がった。

 

「よーし、善は急げ! 早速やってやるわよー! レスピーノ、撮影お願いねー!」

 

気合いを入れた声で言うマリレーン。

そのまま、レスピーノが止める間もなく歩き出す。

 

つかつかと、自信に満ちた足取りで少女に近づいて――

 

「こんにちはー!」

 

いかにも可愛らしい声で、マリレーンが呼びかけた。

猫の少女が、ぱちくりと目をあける。

 

「にゃ……?」

 

眠そうな表情。

目を半開きにして、猫の少女がマリレーンを見上げる。

 

にっこりと、マリレーンが大きな笑顔を作った。

 

「あの、そこの先輩! 突然ですみませんが、ちょっとお願いがあるんですけど~」

 

「……お願い?」

 

警戒したような表情。

少女の紫色の瞳が、マリレーンを見据える。

 

きゅるんと、マリレーンが可愛らしいポーズを取る。

 

「あのぉ、あたし実は入学したばかりでぇ~、まだまだ自分の歌に自信がなくて~。それで、先輩方の歌をぜひ! 拝聴させていただきたいな~って思ってるんです~!」

 

「……新入生? 歌?」

 

「はい! あたし、マリレーンって言います! ぜひ、あたしと一緒にここで歌ってくれませんか! 先輩方の胸を借りたいんです~!」

 

「一緒に、歌を……!?」

 

目を見開き、驚愕する猫の少女。

がばっと勢いよく起き上がると、ベンチから降りる。

 

猫の少女が、真剣な表情でマリレーンに迫った。

 

「ほ、本当に、歌を唄うだけなのですか!? 頭の中で声がする〜とか、世界が沈黙する〜とか、そういうのではなく!?」

 

「えっ、えぇ……。そうですけど……?」

 

少女の迫力に押された様子のマリレーン。

猫の少女が感動したように、大きく息を呑んだ。

 

その目からボロボロと、涙が零れ落ちる。

 

「うぇ!?」

 

驚愕するマリレーン。

猫の少女が感極まったようにうつむいた。

 

「うっ、うぅっ、嬉しいのですぅぅぅ……!!」

 

情けない声を出し、号泣している猫の少女。

涙を拭うと、拳をつきあげる。

 

「ようやく……ようやくなのです!! ようやく、ろろのニャンダフルスクールライフが、帰ってきたのですー!!」

 

天に向かって叫ぶ猫の少女。

はしゃいだように、喜びの舞いをその場で踊り出す。

 

引いたような表情を浮かべて――

 

(なにこの先輩、ひょっとしてヤバい人……?)

 

マリレーンが、心の中で呟いた。

猫の少女が騒ぐ声で、辺りの視線が集まっていく。

 

(ま、まぁ、いいか。さっさとやろう……)

 

計画を実行する事に決めたマリレーン。

にっこりとしながら、指を伸ばす。

 

「そ、そうだ先輩! せっかくやるんでしたら、勝負しませんか! ここにいる観客の皆さんに、どちらの歌がより優れているか評価してもらうんです!」

 

「望むところなのです!」

 

嬉しそうに話す猫の少女。

この上なく楽しそうな表情を浮かべて――

 

「ろろ、平和に歌えるのなら、何でもやるのですー!!」

 

猫の少女――ロロネロルが、そう宣言した。

うきうきとした雰囲気。尻尾がぶんぶんと揺れる。

 

大きく、マリレーンがその場で手をあげた。

 

「よーし、それじゃあ皆さーん! ご注目ー! いまから、ライヴによる対決が始まりますよー!」

 

辺りの女生徒達に向かって呼びかけるマリレーン。

わぁっと、辺りがにわかに盛り上がりをみせる。

 

2人の前に、あっという間に人だかりができた。

 

(よーし、作戦成功!! あとはこのヘンテコな野良猫の先輩を倒せば、計画は完了よー!!)

 

心の中でほくそ笑んでいるマリレーン。

ロロネロルは、ぽやぽやとした雰囲気で微笑んでいる。

 

口元に手をあてて――

 

「まぁ」

 

目を丸くしているペトラルカ。

翡翠色の瞳を向けて――

 

「ロロが相手だなんて。あの子、大丈夫かしら……?」

 

ペトラルカが、不安そうな声でそう呟いた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

白い煙が辺りに立ち込め、香ばしい匂いが漂った。

 

がやがやかと活気のある、騒がしい店内。

昼時の時間帯。熱気を帯びた雰囲気。

 

大きな鉄板を前にして――

 

「先輩方ー! 来ていただいて光栄ですー!」

 

花園キハルが、満面の笑みを浮かべてそう告げた。

いきいきとした表情。紙エプロンを付けているキハル。

 

向かいに座るミアとマユが、微妙な表情を浮かべた。

 

「あー、うん。そうね……」

 

「お、お邪魔してます……」

 

店内の騒がしい雰囲気に押され気味なミアと、

その場で委縮して縮こまっているマユ。

 

ばっと、キハルが勢いよく手をあげた。

 

「すいませーん! スペシャル3枚くださーい!」

 

店の中に元気よく通る声。

厨房から「あいよー!!」と声が返ってくる。

 

うきうきと、キハルがヘラを持った。

 

「ここのお好み焼きのスペシャルが本当に美味しくて~、キハル、ぜひ先輩方にも食べて欲しかったんですよ~!」

 

無邪気に話しているキハル。

そのまま、熱の入った口調で語りだす。

 

こそこそと、顔を近づけて――

 

「きーちゃん、こういうタイプだったんだ。いきつけの店って言うから、てっきり超オシャレな店に連れてかれるかと思ってた……」

 

「わ、私もそうかと。意外と庶民派なんですね、花園さん。うぅ、でも、この騒がしい雰囲気、苦手です……」

 

ミアとマユが、小声で言葉を交わした。

騒がしい店内の雰囲気に吞まれている2人。

 

キハルが、にっこりと微笑んだ。

 

「先輩方はゆっくりしてて下さい! キハルがぜーんぶ、調理しますからー!」

 

「あっ、うん……」

 

「あ、ありがとです……」

 

借りてきた猫のようになっている2人。

キハルが可愛らしい笑みを作る。

 

「ぜひぜひ、楽しんでくださいねー!」

 

弾むような明るい声。

ヘラで鉄板を磨きながら――

 

(――あたしにひれ伏す前の、最後の食事をね!!)

 

心の中で、キハルが大きくそう言い放った。

熱せられた鉄板を前に、キハルがにやりと笑う。

 

(思えば、ここまで長かったわ……!!)

 

心の中で呟くキハル。

その脳内にあふれ出す過去の記憶、今までの経緯。

 

ぐっと、キハルがヘラを握りしめた。

 

(地下アイドルの端っこから始まって、必死にファンに媚びを売って……!! そうして努力した末に、ようやく掴んだメジャーデビュー……!!)

 

ぷるぷると手を震わせているキハル。

店員が「おまち~!」と銀色のカップを置いた。

 

お好み焼きの具材が、美味しそうに輝く。

 

「お~」

 

声をあげるミアとマユ。

キハルが「では、失礼します!」とカップを取った。

 

具材を混ぜ合わせながら――

 

(本当に長い道のりだった……!! でも、本当の勝負はここからよ、キハル!! ここから、あたしは華々しいアイドル界で、頂点を目指していくんだから!!)

 

心の中で、キハルの野望が燃えあがった。

手慣れた手つきで、お好み焼きを鉄板の上に広げる。

 

(そのためにも――)

 

ヘラで形を整えていくキハル。 

ちらりと、視線を前の方へと向ける。

 

緩い雰囲気を漂わせながら――

 

「おー、お好み焼きってちゃんと作るとこんな感じなんだね~。えー、すごーい、美味しそう~」

 

「本当、良い香りですね~。こんなことなら、社長も呼べば良かったですね~」

 

ミアとマユが、はしゃぐようにそう言った。

どこまでも呑気な会話。気の抜けている2人。

 

キハルがお好み焼きを取り分け、そして――

 

(まずは、この間抜けコンビを倒すところからよッ!!)

 

心の中で、大きくそう宣言した。

にっこりと笑顔を作るキハル。その手を差し出す。

 

「どうぞ、先輩方!!」

 

可愛らしい口調のキハル。

ミアとマユが割り箸を持った。

 

「ありがとねー、きーちゃん~。いただきまーす!」

 

「い、いただきます……!」

 

ぱくりと、お好み焼きを口に含む2人。

その美味しさに、同時に歓喜の声をあげる。

 

満足そうに、キハルが胸を張った。

 

(ふふん、今のうちに楽しむがいいわ……!)

 

闘争心に満ちた言葉。

キハルがミアに視線を向けた。

 

(綺羅星ミア……!)

 

お好み焼きを食べているミアを見つめるキハル。

 

(ステージ上での歌唱力は圧倒的……! 人間離れした神秘的な歌声に、整った顔立ち。性格も気さくで、ファンサービスにも余念がない……!)

 

冷静な分析。

フッと、その口元に笑みを浮かべて――

 

(だけど、普段の業務態度はまるでダメダメ。ワガママで労働意欲に欠けて、社内ニート一歩手前の存在! 事務所のトップとはいえ、付け入る隙は十分……!)

 

そう、キハルが結論を下した。

ミアは真剣な顔で、歯に付いた鰹節を取ろうとしている。

 

キハルが、ミアの横へと視線を移した。

 

(そして、日野宮マユ……!)

 

楽しそうにお好み焼きの写真を撮っているマユ。

 

(こっちも時間制限付きとはいえ、ギターの腕前はトップクラス。一度挫折してから復活したというドラマ性もあって、今もっとも勢いのあるアイドルの一人……!)

 

頬に指を当てているキハル。

ふふんと、見下したような目を向ける。

 

(とはいえ、普段は気弱で押しに弱いただの陰キャ。結局ギターだって長くは演奏できないんだから、アドバンテージはこっちにある! おそるるに足りずよ!)

 

力強く、キハルがそう断言した。

マユが「美味しいです~」と感想を言う。

 

にっこりと、キハルが微笑んだ。

 

「そう言って頂けると、キハルも嬉しいです!」

 

いかにも謙遜した口調。

内に秘めた感情を、完璧に隠すキハル。

 

銀色のカップを手に取って――

 

(今日、この最期の晩餐(ランチ)を終えたら、あんた達の時代は終わり!! このキハルちゃんこそが事務所のトップだって、格付けしてやるんだから!!)

 

キハルが腹黒い野望を抱きながら、

さらなるお好み焼き作りに着手した。

 

どこまでも平穏な時間が流れていき――

 

「まいどありー!!」

 

ガシャンというレジの閉まる音。

店員の元気な声が、辺りに響いた。

 

「ごちそうさま~!」

 

「花園さん、ありがとうございますー!」

 

店の前、頭を下げるミアとマユ。

キハルが「いえいえ~」と手を振った。

 

「そんな、大した事じゃないですよ~」

 

微笑みながら答えているキハル。

きらんと、その目が鋭く光る。

 

さりげなく、2人の前に立つと――

 

「あのー、先輩方―。まだ時間って大丈夫ですかー? キハル、実は食事以外にもやりたいことがあってぇ」

 

キハルが、甘えるような声でそう訊ねた。

ミアとマユがきょとんとする。

 

「ん? なに、きーちゃん?」

 

「わ、私は大丈夫ですよ」

 

不思議そうにキハルを見つめる2人。

キハルがきゅるんと、可愛らしく手を顔に寄せた。

 

「キハル、一個上の階のお店にも行ってみたいんですぅ。良ければ付き合ってくれませんかー?」

 

「上の階?」

 

綺麗にハモる声。

ミアとマユが天井を見上げた。

 

チーンと、エレベーターの扉が開いて――

 

「お~」

 

「ほへぇ」

 

ミアとマユが、感嘆の声を出した。

活気のあるフロア。楽しそうに遊ぶ声。

 

ショーケースがひしめく店内を前にして――

 

「どうです? ここ、キハルいきつけのカードショップなんですよー!」

 

キハルが、嬉しそうにそう言い放った。

がやがやと騒がしい店内。カードに興じている人々。

 

清潔感のあるカードショップを、キハルが手で示した。

 

「へぇ~。きーちゃん、ヴァンガードやるんだー」

 

ケースに並ぶカードを見ながら言うミア。

マユもまた、興味深そうな視線を向ける。

 

「こ、こういうお店があるんですねー」

 

新鮮な反応。

きょろきょろと辺りを見回しているマユ。

 

キハルが胸を張った。

 

「そうなんです~、キハルけっこうオタクな所があってぇ~。それで先輩方、こっちに付いてきてくれますかー?」

 

さりげなく誘導するキハル。

3人が店の奥と歩き出す。

 

ファイト用のフリースペース、その隅で――

 

「じゃーん! どうです? このお店、配信用の卓があるんですよー!!」

 

キハルの楽しそうな声が、その場に響いた。

他より小高い位置にある、仕切りに囲まれたスペース。

 

綺麗なファイトテーブルが、その中央には置かれている。

 

「はいしんよう?」

 

ミアとマユが声を揃えて訊ねる。

キハルが指を伸ばした。

 

「そうなんです! ライヴ配信の時とかに使うスペースでぇ、ここでファイトすると目立つんですよー! キハル、配信者やってた時代はよく使ってたんですー!」

 

きゃぴきゃぴとした声。

ミアとマユが「ふーん……」と反応を返す。

 

キハルが桃色のデッキケースを取り出した。

 

「それでそれでぇ、綺羅星先輩と日野宮先輩! ぜひ、ここでキハルとファイトしてくれませんかぁ? キハル、お二方とヴァンガードしたいんですぅ!」

 

きらきらとした表情。

期待に満ちた目で、キハルが2人を見つめた。

 

「えっ、私と?」

 

自分を指差すミア。

少しだけ困惑した表情がその顔に浮かぶ。

 

「別に、私はいいけど~。てか、マユっちも? 残念だけど、マユっちはヴァンガードやってないよ」

 

「うぇっ!?」

 

素の声が出るキハル。

驚いたように、マユを見る。

 

「そ、そんなはずは!? 日野宮先輩、ライヴの前とかよくカードに話しかけてるじゃないですか!?」

 

「へっ?」

 

目を丸くするミア。

マユがびくりと身体を震わせる。

 

もじもじと、どこか気まずそうに――

 

「えっ、えっと、その……。い、一応、ヴァンガードのカードは持ってます……」

 

マユが、申し訳なさそうにデッキケースを取り出した。

真紅色のデッキケース。それを見たミアが驚愕する。

 

「ちょ、ちょっと、マユっち!? そのデッキ、まだ持ってたの!?」

 

本気で驚いた様子のミア。

マユが「ひぃん」と情けない声を出した。

 

「ご、ごめんなさい、ミアさん! で、でもその。このカードを見てると、なんだか励まされてるみたいで、勇気が出てくるんですぅ……!」

 

自信なさそうに言うマユ。

デッキケースの中、1枚のカードを取り出す。

 

紅華の淑女が描かれたカードを、マユが掲げた。

 

 

追想の花乙女 クロディーヌ

ノーマルユニット 〈3〉

(ツインドライブ!!) (ペルソナライド)

ストイケイア - バイオロイド 

パワー13000 / シールドなし / ☆1

【起】【(V)】【ターン1回】:【コスト】[リアガードを3枚退却させる]ことで、そのターン中、このユニットは『【永】【(V)】:あなたのプラント・トークンすべてのパワー+5000』を得て、ドライブ+1。

【起】【(V)】【ターン1回】:【コスト】[ドロップからオーダーカードを1枚バインドする]ことで、プラント・トークンを2枚まで(R)にコールする。

【自】【(V)】:このユニットがヴァンガードにアタックした時、【コスト】[【ソウルブラスト】(1)]することで、あなたのプラント・トークンを1枚選び、スタンドさせ、あなたの、ドロップとバインドゾーンのオーダーカード合計2種類につき、そのターン中、そのユニットのパワー+5000。

― 踊りましょ!私達のこれまでと、これからの為に!

 

 

ぐるりと、ミアが目を回す。

 

「勘弁してよ……」

 

心の底から疲れた声。

マユが「ごめんなさいー!!」とミアに謝る。

 

キハルが手を振った。

 

「あ、あのー? 先輩方ー? それでその、キハルとのファイトは……?」

 

おそるおそる訊ねるキハル。

ミアがため息をつき、首を振った。

 

「……まぁ、繋がりは解けてるはずだし、いいか。もー、心臓に悪いわよ、まったく……」

 

ぶつぶつと呟いているミア。

つかつかと、ファイトテーブルの前に立つ。

 

「お待たせー、きーちゃん。ごめんね、ちょっと色々あってさ~。とりあえず、ファイトなら相手になるよ~」

 

軽い口調。

手をひらひらとさせているミア。

 

キハルの顔に笑顔が戻った。

 

「本当ですか! やったー!!」

 

全身で喜びを表現するキハル。

うきうきとしながら、ミアの向かいに立つ。

 

「キハル、本当に嬉しいですー! 綺羅星先輩、お手柔らかにお願いしますねー!」

 

「こちらこそ~。まぁ、私そんなに強くないから~」

 

デッキを取り出すミアとキハル。

それぞれ、目の前にカードを並べていく。

 

2人の様子に気付いて――

 

「おっ、配信卓のファイトだぞ」

 

「あれ誰? 有名な人?」

 

「どこかで見たような……」

 

ファイトスペース内で、ざわめきが起こった。

集まっていく視線。にわかに、辺りが活気づく。

 

にやりと、口元に微笑を浮かべて――

 

(よーし、作戦成功よ!!)

 

心の中で、キハルが大きく笑みを浮かべた。

イメージ上、悪そうな表情になっているキハル。

 

(まんまとのってきたわね!! でも、あたしが実はヴァンガードではショップ大会で優勝するほどの、超凄腕とは知らないでしょ!!)

 

自信満々な思考。

キハルがテーブルにデッキを置いた。

 

(まずはここでこの2人を倒し、あたしの凄さをわからせる!! そうして優位を得ることで、じわじわと事務所内での地位を確立していくんだから!!)

 

華々しい未来をイメージしているキハル。

心の中、野望の炎を燃やしていく。

 

可愛らしい、ハートのスリーブのカードを置いて――

 

「それじゃあいきますよー、先輩ー!」

 

キハルが、ほんの少しの闘志を感じさせる声を出した。

指をカードの上に置くキハル。不敵な笑み。

 

向かいに立つミアもまた、カードに指を置く。

 

「うん、よろしくね~」

 

のほほんとした口調。

気の抜けた表情で、ミアが応える。

 

2人の視線が交わり、そして――

 

「スタンドアップ・ヴァンガード!!」

 

綺麗な声がハーモニーを奏でて、その場に響き渡った。

 

「《ワンダーラベンダー ユルシュール》!!」

 

 

ワンダーラベンダー ユルシュール

ノーマルユニット 〈0〉 (ブースト)

リリカルモナステリオ - マーメイド 

パワー6000 / シールド5000 / ☆1

【自】:このユニットがライドされた時、あなたが後攻なら、1枚引く。

― 響く歌声が、彼女だけの物語を描き出す。

 

 

「《歌を届けるために ロロネロル》~」

 

 

歌を届けるために ロロネロル

ノーマルユニット 〈0〉 (ブースト)

リリカルモナステリオ - ワービースト 

パワー6000 / シールド5000 / ☆1

【自】:このユニットがライドされた時、あなたが後攻なら、1枚引く。

― ろろは……もっと、も~っと頑張るのです!

 

 

向かい合う2枚のカード。

歌姫達の姿が、テーブルの上で表になった。

 

紫色の瞳に、神秘的な光が一瞬だけ宿って――

 

「ようやく、ろろのニャンダフルスクールライフが、帰ってきたのですー!!」

 

ロロネロルが、感動の声をあげた。

楽しそうな表情。喜びの舞いを踊っているロロネロル。

 

ミアが顔をしかめた。

 

「えぇ……。なにしてるのよ、ロロ……?」

 

困惑した表情。

誰にも聞こえないよう、小声で呟くミア。

 

カードを引いて――

 

「負けませんからね、先輩ー!」

 

キハルが、手札のカードを構えた。

可愛らしい表情。自信に満ちた様子のキハル。

 

盤面にカードが置かれていき、そして――

 

「ファーストチェック、クリティカルトリガー。セカンドチェック、クリティカルトリガー。サードチェック……クリティカルトリガー」

 

星の煌めきが、容赦なく降り注いだ。

 

 

自分仕様 エルシュカ

トリガーユニット 【☆】+10000

(クリティカルトリガー) 〈0〉 (ブースト)

リリカルモナステリオ - ワービースト 

パワー5000 / シールド15000 / ☆1

― お仕着せじゃ、物足りない。

 

 

珠玉の一曲 エドウィージュ

トリガーユニット 【☆】+10000

(クリティカルトリガー) 〈0〉 (ブースト)

リリカルモナステリオ - マーメイド 

パワー4000 / シールド15000 / ☆1

【自】【(R)】:このユニットがブーストしたバトル終了時、【コスト】[このユニットをソウルに置く]ことで、あなたのユニットを1枚選び、そのターン中、パワー+2000。

― 心弾む歌声は波紋となって。

 

 

自分仕様 エルシュカ

トリガーユニット 【☆】+10000

(クリティカルトリガー) 〈0〉 (ブースト)

リリカルモナステリオ - ワービースト 

パワー5000 / シールド15000 / ☆1

― お仕着せじゃ、物足りない。

 

 

「ぎゃああぁぁーっ!?」

 

作っていない、素の声で叫ぶキハル。

わたわたと頭を抱え、そして――

 

6枚目のカードが、無情にもダメージゾーンに置かれた。

 

 

満場一体 マリレーン

ノーマルユニット 〈3〉

(ツインドライブ!!) (ペルソナライド)

リリカルモナステリオ - エルフ 

パワー13000 / シールドなし / ☆1

【起】【(V)】【ターン1回】:【コスト】[【カウンターブラスト】(1)]することで、あなたの山札から、このユニットと同名のカードを1枚まで探し、公開して手札に加え、山札をシャッフルし、そのターン中、このユニットのパワー+10000。

【自】【(V)】:このユニットがヴァンガードにアタックした時、【コスト】[【エネルギーブラスト】(4)]することで、あなたのリアガードを1枚選び、手札に戻し、あなたの手札からグレード3以下のユニットカードを1枚まで選び、ユニットのいない(R)にコールし、そのターン中、パワー+10000。(【エネルギーブラスト】はエネルギーを4つ消費することで払える!)

― ここからがフィナーレ!一緒に最後まで盛り上がろ!

 

 

キハル ダメージ1→6

 

 

「あっ、やだ。勝っちゃった……」

 

口元を手で隠しているミア。

盤面に置かれた猫の少女のカードに視線を向ける。

 

「てか、はしゃぎすぎ。やる気出しすぎだよ、ロロ……」

 

呆れたように呟くミア。

観客達から「おー!」とどよめきが起こった。

 

キハルが膝をつく。

 

(う、嘘……!? どうしてこんなことが、あたしの身に……!? てか、なによそのふざけたトリガー!? 運が良すぎるでしょー!!)

 

涙目になっているキハル。

ぷるぷると、悔しさに震える。

 

「あー……いや、運が良かったみたい~。なんかごめんねー、きーちゃん……」

 

申し訳なさそうに言うミア。

心配そうに、崩れ落ちているキハルを見つめる。

 

キハルが立ち上がって――

 

「ま、まだです!! さすがは偉大なる綺羅星先輩!! ですがキハル、諦めません!!」

 

泣きそうになりながら、再びその闘志を燃やした。

沸き上がる観客。ぱちぱちと拍手が起こる。

 

びしっと、キハルがマユを指差した。

 

「次です!! 日野宮先輩、お願いします!!」

 

「えっ!? わ、私ともやるんですか!?」

 

キハルが頷く。

 

「もちろんです!!」

 

微妙に震えている声。

虚勢を張りながら――

 

(ここで帰ったら、あたしのプライドがズタボロのままじゃない!! せめて、この気弱なクソザコスライム先輩でも倒さないと、やってられないわよ!!)

 

イメージ上、キハルが激しく地団駄を踏んだ。

歓声が上がる中、マユがおずおずとテーブルの前に立つ。

 

「うぅ……大丈夫でしょうか……」

 

不安そうな声。

自らのカードを眺めているマユ。

 

ミアが小声でささやく。

 

「マユっち、あれからファイトしたことあるの?」

 

「い、いえ。実は一回もなくて……。ソラ君の動画はよく見てるので、ルールは分かるんですけど……」

 

渋い表情になるミア。

キハルが勢いよくデッキをシャッフルし、横に置く。

 

「さぁ、先輩! お願いします!」

 

にじみでている闘争心。

キャラ崩壊を起こしつつあるキハル。

 

血を流す一輪の花が描かれたスリーブのカードを置き――

 

「わ、わかりました! 精一杯、がんばります!」

 

マユが、覚悟を決めたように前を向いた。

その蘇芳色の瞳に、キハルの姿が映る。

 

2人がカードを掴み、そして――

 

「スタンドアップ・ヴァンガード!!」

 

再び、戦いの幕が上がった。

 

「《ワンダーラベンダー ユルシュール》!!」

 

 

ワンダーラベンダー ユルシュール

ノーマルユニット 〈0〉 (ブースト)

リリカルモナステリオ - マーメイド 

パワー6000 / シールド5000 / ☆1

【自】:このユニットがライドされた時、あなたが後攻なら、1枚引く。

― 響く歌声が、彼女だけの物語を描き出す。

 

 

「《バイオロイドの少年 ロロワ》!」

 

 

バイオロイドの少年 ロロワ

ノーマルユニット 〈0〉 (ブースト)

ストイケイア - バイオロイド 

パワー6000 / シールド5000 / ☆1

【自】:このユニットがライドされた時、あなたが後攻なら、1枚引く。

― 僕でも、皆を守れるのなら……!

 

 

表になるカード達。

観客達からワァッと歓声が上がった。

 

マユを指差して――

 

「本気で行きますからね、先輩!!」

 

キハルが、鋭い目を向けてそう宣言した。

集中した表情。真剣な様子のキハル。

 

2人がカードを盤面に出していき、そして――

 

「ふぇぇ」

 

マイクを持ったマリレーンが、

恐怖に怯えた表情で目の前を見上げた。

 

緑色の魔力が溢れ出て――

 

「アーッハハハハ!!」

 

朱華のバイオロイドが、高らかな笑い声を響かせた。

 

「まぁまぁ!! こんな所に迷い込んでしまうだなんて、あなたったらいけない子ね!! それとも、私と遊びたかったのかしら!!」

 

その顔に浮かぶ妖艶な笑み。

マリレーンが「いえ、その……」と泣きながら震える。

 

空の果て、バイオロイドが天を仰いだ。

 

「あぁ、やっぱり楽しいわ!! こうしてあなたと一緒になって踊るのは!! さぁ、共に絶望に抗う姿を、存分に眺めましょう!!」

 

響き渡る狂喜の声。その両手から魔力が迸る。

術式を手繰り寄せるバイオロイド――クロディーヌ。

 

緑色の光が、幻想的に宙を舞って――

 

「クアドラプルドライブ!!」

 

マユが鋭く宣言し、カードをめくっていった。

 

「ファーストチェック、クリティカルトリガー! 効果は全てクロディーヌに! セカンドチェック、クリティカルトリガー! これも同じくクロディーヌに! サードチェック、クリティカルトリガー!! フォースチェック、オーバートリガー!!」

 

 

憧憬の乙女 アラナ

トリガーユニット 【☆】+10000

(クリティカルトリガー) 〈0〉 (ブースト)

ストイケイア - バイオロイド 

パワー4000 / シールド15000 / ☆1

【自】【(R)】:このユニットがブーストしたバトル終了時、【コスト】[このユニットをソウルに置く]ことで、あなたのユニットを1枚選び、そのターン中、パワー+2000。

― はい!もう一輪プレゼント♪

 

 

深淵誘い

トリガーユニット 【☆】+10000

(クリティカルトリガー) 〈0〉 (ブースト)

ストイケイア - ゴースト 

パワー5000 / シールド15000 / ☆1

― 軍艦だろうが、捕えられれば一溜まりもない。

 

 

憧憬の乙女 アラナ

トリガーユニット 【☆】+10000

(クリティカルトリガー) 〈0〉 (ブースト)

ストイケイア - バイオロイド 

パワー4000 / シールド15000 / ☆1

【自】【(R)】:このユニットがブーストしたバトル終了時、【コスト】[このユニットをソウルに置く]ことで、あなたのユニットを1枚選び、そのターン中、パワー+2000。

― はい!もう一輪プレゼント♪

 

 

天恵の源竜王 ブレスファボール

トリガーユニット 【超】

(オーバートリガー) 〈0〉 (ブースト)

ストイケイア - ネイチャードラゴン 

パワー5000 / シールド50000 / ☆1

(【超】トリガーはデッキに1枚だけ入れられる。トリガーで出たら、そのカードを除外し、1枚引き、あなたのユニットを1枚選び、そのターン中、パワー+1憶!ドライブチェックで出たら、さらに追加効果が発動!)

追加効果-1枚引く!あなたのユニットを1枚選び、そのターン中、クリティカル+1!あなたの前列のユニットすべてのパワー+10000!あなたのダメージゾーンの枚数が相手以上なら、あなたのダメージゾーンから1枚選び、回復する!

― 自然。その恵みは数え切れず、驚異は計り知れない。

 

 

「ふぁわわ?」

 

呆けたような声。

顔から感情が消えるキハル。

 

クロディーヌがにやりと微笑んで――

 

緑色の閃光が大地を飲み込み、全てを薙ぎ払った。

 

 

満場一体 マリレーン

ノーマルユニット 〈3〉

(ツインドライブ!!) (ペルソナライド)

リリカルモナステリオ - エルフ 

パワー13000 / シールドなし / ☆1

【起】【(V)】【ターン1回】:【コスト】[【カウンターブラスト】(1)]することで、あなたの山札から、このユニットと同名のカードを1枚まで探し、公開して手札に加え、山札をシャッフルし、そのターン中、このユニットのパワー+10000。

【自】【(V)】:このユニットがヴァンガードにアタックした時、【コスト】[【エネルギーブラスト】(4)]することで、あなたのリアガードを1枚選び、手札に戻し、あなたの手札からグレード3以下のユニットカードを1枚まで選び、ユニットのいない(R)にコールし、そのターン中、パワー+10000。(【エネルギーブラスト】はエネルギーを4つ消費することで払える!)

― ここからがフィナーレ!一緒に最後まで盛り上がろ!

 

 

キハル ダメージ3→6

 

 

ダメージゾーンに無慈悲に置かれるカード。

観戦していた人々から、再び大きな歓声が巻き起こる。

 

一瞬、ぽかんとした表情を浮かべた後――

 

「や、やったやったー! 勝ちましたよー!」

 

嬉しそうに、マユが歓喜の声をあげた。

ぴょんぴょんと、その場で跳ねているマユ。

 

つかつかと、ミアが足早に近づく。

 

「マユっち!!」

 

「へ?」

 

振り向くマユ。

ミアがぐいと、マユの肩を掴んで顔を引き寄せた。

 

2人の顔が、至近距離まで近づく。

 

「わ、わ、わぁ!! な、なんですか、ミアさん!?」

 

顔を真っ赤にして慌てているマユ。

ミアは真剣な表情で、マユを見つめている。

 

ほんの一瞬、紫色の瞳が光を放ち、そして――

 

「やっぱり、向こうとの繋がりは消えてる。なのにあれって事は、元々向こうの存在との縁が深いってこと……?」

 

ぼそりと、ミアがそう呟いた。

恥ずかしそうに、じたばたとしているマユ。

 

ため息をつき、ミアがマユの身体を離した。

 

「あー、ごめん。髪の所に虫がついてるかな~と思ったんだけど、私の勘違いだったみたい。気にしないで~」

 

「えっ、えぇ!? そんな、ミアさん!?」

 

困惑しているマユ。

ミアが目をつぶりながら手を振る。

 

「ごめんごめん。てか、マユっち、オーバーキルすぎ。さっきの私より酷くない? きーちゃん、完全に打ちのめされちゃってるじゃん」

 

「えっ? あっ、花園さん!?」

 

視線を向けるマユ。

驚いたように、息を呑む。

 

キハルは真っ白になって、その場で燃え尽きている。

 

「うぅぅ……」

 

悲愴な雰囲気。

愕然として膝をついているキハル。

 

マユが慌てたように、ミアの方を向いた。

 

「ど、どうしましょう、ミアさん!?」

 

「どうするって言われても……」

 

もごもごと口ごもるミア。

ゆらりと、キハルがおもむろに立ち上がる。

 

ぷるぷると震えながら――

 

「う、うわあああああん!!」

 

キハルの絶叫が、空気を震わせた。

びくりと、その声に驚く2人。視線を向ける。

 

2人を指差して――

 

「こ、これで終わったと思わないで下さいね!! キハル、絶対に諦めませんから!! キハルが、ナンバーワンになるんですからーッ!!」

 

キハルが、涙目になりながらそう宣言した。

ぽかんと口を開けているミアとマユ。

 

デッキを掴んで――

 

「月夜ばかりと思うなよーッ!!」

 

キハルが捨て台詞を残し、その場から走り出した。

「わあああん!!」と泣く声が、徐々に遠ざかっていく。

 

ミアとマユが顔を見合わせ、そして――

 

「きーちゃんって……面白い子だよね」

 

「……そうですね」

 

2人が互いにそう言い、頷き合った。

 

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