カードファイト!! ヴァンガード StarSong   作:バビロン@VG

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第一楽章 煌めく星の歌姫④

 

明るい光が地上に降り注いだ。

 

店が立ち並ぶ、人通りの多い道。

賑やかな風景に、平和な街並み。

 

サングラスをかけた青年が、店の前に立っている。

 

「…………」

 

ショーウインドーを覗き込んでいる青年。

しげしげと、飾られた服を眺めている。

 

「うーん、けっこう高いなぁ……」

 

考えるように口元に手を当て、青年が呟く。

悩んだような表情。真剣な眼差し。

 

サングラスの奥、琥珀色の瞳が揺れた。

 

「でもまぁ、せっかくだ。ここは1つ贅沢に──」

 

青年が言いかけた瞬間。

 

「あのー」

 

青年の後ろから、声が響いた。

弾むような明るい口調。透き通るような声。

 

青年が振り返る。

 

「こんにちは!」

 

少女のきらびやかな声が、その場に響いた。

深くかぶった帽子に、サングラス。にこやかな笑み。

 

紫色の瞳が、青年を見つめている。

 

「あぁ、君か!」

 

穏やかな微笑みを、青年が浮かべた。

 

「いやいや、光栄だな。君みたいな有名人が、僕みたいな人間の所に来てくれるだなんて。少しはプロとしての箔も付いて来たのかな」

 

面白そうに話している青年。

その目を細めながら、少女を見据える。

 

「こんな所でなければサインでも貰いたい所だけど、そういう訳にもいかないよね?」

 

「そうですね。誰に見られてるか分かりませんから~」

 

明るく答える少女。

2人が顔を見合わせながら、笑い合った。

 

人々が2人の横を通り過ぎていく。

 

「僕の想像が間違いでなければ、用件はあのことかな」

 

「そうなんです! お付き合いしていただけますか?」

 

にこやかな笑みを崩さない少女。

その身体を近づけて、青年にささやく。

 

「できれば、2人きりになれる場所で」

 

妖しげな響きを含ませている少女。

微笑みを浮かべながら、青年を見上げる。

 

青年もまた、にやりと笑って──

 

「おおせのままに」

 

気取ったように、青年が頭を下げた。

2人が並んで、その場から歩き出す。

 

太陽の光が降り注ぐ。

 

無言のまま、歩き続けている2人。

コツコツという足音だけが響いていく。

 

人通りの多い表通りから、人気のない裏通りへ。

 

喧騒は遠くへ消え、辺りが静まり返っていく。

見捨てられた路地裏。薄暗い空間。

 

ほんの少し、空間が開けて──

 

「さて、場所はここでどうかな?」

 

青年の声が、その場に反響した。

廃墟のような雑居ビルの隙間。忘れられた地。

 

錆びついたファイトテーブルを、青年が手で示す。

 

「素敵な場所ですね!」

 

廃棄されているファイトテーブルを前にして、

少女が嬉しそうに声をあげた。再び笑い合う2人。

 

テーブルを挟んで、2人が向かい合う。

 

「あらためて、自己紹介させてもらうよ」

 

かぶっていた帽子を外す青年。

サングラスを外すと、その琥珀色の瞳が露わになる。

 

「僕は根津ソウジ。これでもプロファイターの端くれとして活動している。以後、お見知りおきを」

 

丁寧な口調。

深々と頭を下げる青年──ソウジ。

 

少女もまた、同じように帽子とサングラスを外す。

 

「私は綺羅星ミア! 世界で一番可愛いアイドルにして、煌めく星の歌姫でーす!」

 

自信満々な口調。

いかにも可愛らしいポーズを取る少女──ミア。

 

ソウジが爽やかな笑みを浮かべた。

 

「知ってるよ。君の歌、動画サイトで視聴したけど凄いね。なんというか、人間離れした美しさだった」

 

「えぇ。私はほら、天才なので!」

 

面白そうに言い、ウィンクするミア。

ソウジが頬をかく。

 

「いやいや、冗談抜きに君の歌は凄いよ。天才と持て囃されてもおかしくない。まさに、彗星の如く現れた超新星ってやつだ」

 

心の底からそう思っているような口調。

ソウジがにこやかな笑みを浮かべ、ミアを見据えた。

 

「そんな君に会えて本当に光栄だよ。それで、せっかくだから一つ聞きたい事があるんだけど、いいかな?」

 

「もちろん! あなたの質問なら何でも答えますよ!」

 

迷いなく答えるミア。崩れぬ笑顔。

ソウジの笑みがさらに大きく広がった。

 

「そう言ってもらえると、本当にありがたいよ。じゃあ、遠慮なく聞かせてもらいたいんだけど──」

 

丁寧な口調。

穏やかな笑みを浮かべたまま、ソウジが口を開く。

 

琥珀色の瞳が輝いて──

 

「君の事だよね? 終末の使徒のことを嗅ぎまわってる、愚かな雌猫ってのは」

 

ソウジの言葉が、その場に響いた。

張り付いたような笑み。にこやかな表情。

 

空気が重く、張りつめていく。

 

「へぇ、そういう風に言われてるんですか?」

 

全く動じた様子もなく、ミアが微笑んだ。

 

「私は可愛い可愛い、ただのアイドルなのになぁ。どうせなら地上に舞い降りた大天使とか、世界一可愛い刺客とか、そんな名前で呼んでくれません?」

 

きゃぴきゃぴとした口調で言いながら、

ミアがソウジの事を見返した。

 

ソウジが微笑む。

 

「君、何が目的なのかな?」

 

おもむろに訊ねるソウジ。

ミアがにっこりと笑みを浮かべた。

 

「世界平和!」

 

「なるほど。だから、終末の使徒を倒してまわってる?」

 

「その通りです!」

 

ピースするミア。

 

「私もこれがお仕事で。それで終末の使徒の事をたくさん知りたくて、色んな人に訊ねて周ってるんです!」

 

にこやかに話すミア。

その紫色の瞳に、ソウジの姿が映る。

 

「でも、皆さんシャイな人ばかりで、あんまり話してくれないんですよね。あなたが協力してくれるなら、私はとーっても嬉しいんですけど?」

 

軽い口調のミア。

いかにも可愛らしく、熱い目線を送る。

 

口元に大きく笑みが広がって──

 

「僕がそれを承諾すると思ったのかい? 愚かで薄汚い、背信者が」

 

吐き捨てるように、ソウジがそう言った。

 

「まぁ、そうですよね~」

 

面白そうに笑いだすミア。

ソウジもまた、つられるように笑い声をあげる。

 

2人の笑い声が、ビルの隙間に反響した。

 

「どうやら、君には滅びが必要なようだ」

 

目を細めているソウジ。

持っていた鞄から、橙色のデッキケースを取り出す。

 

敵意に満ちた目が、ミアの方に向けられた。

 

「交渉決裂かぁ。ネゴシエーターミア、これで10連敗中~」

 

肩をすくめているミア。

どこからか紫色のデッキケースを取り出した。

 

2人がカードを並べ始める。

 

「プロファイターを相手に、本気で勝てる気なのかい?」

 

カードを置きながら訊ねるソウジ。

ミアが微笑んだ。

 

「さーて、どうでしょうね?」

 

くすくすと笑っているミア。

手慣れた手つきで、カードを並べていく。

 

最後の1枚を置いて──

 

「どこまでその強がりが続くか、楽しみだよ」

 

ソウジが、不敵な笑みを浮かべた。

目の前に置かれたカードに視線を落とす。

 

骨で出来た悪魔の貌が描かれた、禍々しいスリーブ。

 

「さぁ、導こうか。この世界に、滅びと沈黙を」

 

にこやかな笑顔のまま、ソウジがそう告げた。

すっと、目の前のカードに指を置く。

 

輝く星の絵柄のスリーブに入ったカードを置いて──

 

「それじゃあ、"私達"の歌、聞かせてあげます」

 

透き通るような声で、ミアがそう言った。

煌めく笑み。細い指をカードの上に置く。

 

2人が睨み合った。

 

紫色の瞳と、琥珀色の瞳。

互いの視線が空中で交差する。

 

一瞬の静寂の後──

 

「スタンドアップ・ヴァンガード!!」

 

薄暗闇の空間に、その声が響いた。

 

「《グラビディア・デレン》!!」

 

 

グラビディア・デレン

ノーマルユニット 〈0〉 (ブースト)

ブラントゲート - エイリアン 

パワー6000 / シールド5000 / ☆1

【自】:このユニットがライドされた時、あなたが後攻なら、1枚引く。

― 我らはこの地に、理想の世界を築く者……。

 

 

「《歌を届けるために ロロネロル》!!」

 

 

歌を届けるために ロロネロル

ノーマルユニット 〈0〉 (ブースト)

リリカルモナステリオ - ワービースト 

パワー6000 / シールド5000 / ☆1

【自】:このユニットがライドされた時、あなたが後攻なら、1枚引く。

― ろろは……もっと、も~っと頑張るのです!

 

 

向かい合う2枚のカード。

白き異星の生命体と、黒髪の猫の少女。

 

カードを片手に、ミアとソウジが微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

爽やかな青い空が、どこまでも広がっていた。

 

空を駆ける巨大なピンクの鯨。

その背中に広がる学園都市、リリカルモナステリオ。

 

のどかな空気が広がるその国の中で──

 

「よいしょ、よいしょ……!」

 

少女が一人、掛け声を出しながら階段を歩いていた。

紺色の制服に、紫色の瞳。艶やかな黒い色の髪。

 

猫耳を伏せながら──

 

「これでっ、最後なのですっ!」

 

少女が力強く、その一歩を踏み切った。

「ふにゃー」と、大きく息を吐く少女。

 

背負っていたリュックを、その場に置く。

 

「おぉー……!!」

 

目を輝かせながら、少女が目の前の風景に声をあげた。

天に向かって伸びる塔の頂上。街を一望できる場所。

 

巨大な学園都市の姿が、少女の眼下に広がっている。

 

「うんうん、ここなら大丈夫そうなのです」

 

腕を組み、頷いている猫の少女。

満足そうな笑みを浮かべる。

 

「最近、人のいる所では不審者さんと遭遇する事が多すぎるのです。これはきっと、ろろが人のいる所で目を付けられているからなのです」

 

思いを吐き出すように、喋る猫の少女。

 

「つまり、誰もいないここなら、不審者さんもいないのです! 気分転換と安全性をかねそなえた、我ながら完璧な解決策なのです!」

 

自信満々に、猫の少女がそう断言した。

その場で伸びをする猫の少女。大きく深呼吸する。

 

「試験も近いですし、今日はここでゆっくりと歌うのですよ~。今のろろに必要なのは、こういった癒しの時間と──」

 

リュックを開く猫の少女。

可愛らしいバスケットを取り出すと、その場で開く。

 

綺麗に並んだスイーツが、輝く姿を見せた。

 

「──美味しい、お菓子なのです!」

 

両手をあげて、喜びを体現している猫の少女。

ぶんぶんと、その尻尾が揺れる。

 

「ふふふ、学校帰りにお菓子を買い食いするだなんて、ろろは悪い猫ちゃんなのです……」

 

悪役のような笑みを浮かべつつ、

並んだお菓子を眺めている猫の少女。

 

その中の1つを手に取って──

 

「ではでは、いただきますなのです!」

 

猫の少女が、目を輝かせた。

幸せそうな表情、至福の時間。

お菓子を食べようと、少女が口を開けた瞬間──

 

パキパキパキ……!!

 

何かが割れるような音が、その場に響いた。

 

「ほぇ?」

 

目を開け、きょろきょろと辺りを見回す猫の少女。

一見したところ、周りでは何も起こっていない。

 

「……気のせいです?」

 

首をかしげている猫の少女。

気を取り直したように、お菓子に目を向ける。

 

瞬間、床に置かれていたバスケットが宙に吸い込まれた。

 

「にゃっ!?」

 

驚き、尻尾をぴんとさせる猫の少女。

バスケットが消えた空を見上げる。

 

あんぐりと口を開けながら──

 

「な、なんなのです、あれ……!?」

 

猫の少女が、動揺した声を漏らした。

ぽとりと、その手からお菓子が落ちる。

 

少女の頭上の空に、亀裂が走っていた。

 

まるでガラスのように砕けていく空。

パキパキと音を立て、空間の破片が地面に落下していく。

 

そして、空間の隙間、亀裂の向こう側から──

 

「見ツケタゾッ!!」

 

琥珀色の目が、猫の少女の姿を捉えた。

辺りに轟く金切り声。びりびりと空気が震える。

 

「にゃっ、にゃっ、にゃっ……!?」

 

怯えた声。じわりと、涙を浮かべる猫の少女。

ひと際大きく、空間が砕ける音が響いて──

 

「愚カナル背信者ニ、死ノ鉄槌ヲ!!」

 

亀裂の向こう側より、巨大な怪物が姿を現した。

 

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