カードファイト!! ヴァンガード StarSong 作:バビロン@VG
明るい光が地上に降り注いだ。
店が立ち並ぶ、人通りの多い道。
賑やかな風景に、平和な街並み。
サングラスをかけた青年が、店の前に立っている。
「…………」
ショーウインドーを覗き込んでいる青年。
しげしげと、飾られた服を眺めている。
「うーん、けっこう高いなぁ……」
考えるように口元に手を当て、青年が呟く。
悩んだような表情。真剣な眼差し。
サングラスの奥、琥珀色の瞳が揺れた。
「でもまぁ、せっかくだ。ここは1つ贅沢に──」
青年が言いかけた瞬間。
「あのー」
青年の後ろから、声が響いた。
弾むような明るい口調。透き通るような声。
青年が振り返る。
「こんにちは!」
少女のきらびやかな声が、その場に響いた。
深くかぶった帽子に、サングラス。にこやかな笑み。
紫色の瞳が、青年を見つめている。
「あぁ、君か!」
穏やかな微笑みを、青年が浮かべた。
「いやいや、光栄だな。君みたいな有名人が、僕みたいな人間の所に来てくれるだなんて。少しはプロとしての箔も付いて来たのかな」
面白そうに話している青年。
その目を細めながら、少女を見据える。
「こんな所でなければサインでも貰いたい所だけど、そういう訳にもいかないよね?」
「そうですね。誰に見られてるか分かりませんから~」
明るく答える少女。
2人が顔を見合わせながら、笑い合った。
人々が2人の横を通り過ぎていく。
「僕の想像が間違いでなければ、用件はあのことかな」
「そうなんです! お付き合いしていただけますか?」
にこやかな笑みを崩さない少女。
その身体を近づけて、青年にささやく。
「できれば、2人きりになれる場所で」
妖しげな響きを含ませている少女。
微笑みを浮かべながら、青年を見上げる。
青年もまた、にやりと笑って──
「おおせのままに」
気取ったように、青年が頭を下げた。
2人が並んで、その場から歩き出す。
太陽の光が降り注ぐ。
無言のまま、歩き続けている2人。
コツコツという足音だけが響いていく。
人通りの多い表通りから、人気のない裏通りへ。
喧騒は遠くへ消え、辺りが静まり返っていく。
見捨てられた路地裏。薄暗い空間。
ほんの少し、空間が開けて──
「さて、場所はここでどうかな?」
青年の声が、その場に反響した。
廃墟のような雑居ビルの隙間。忘れられた地。
錆びついたファイトテーブルを、青年が手で示す。
「素敵な場所ですね!」
廃棄されているファイトテーブルを前にして、
少女が嬉しそうに声をあげた。再び笑い合う2人。
テーブルを挟んで、2人が向かい合う。
「あらためて、自己紹介させてもらうよ」
かぶっていた帽子を外す青年。
サングラスを外すと、その琥珀色の瞳が露わになる。
「僕は根津ソウジ。これでもプロファイターの端くれとして活動している。以後、お見知りおきを」
丁寧な口調。
深々と頭を下げる青年──ソウジ。
少女もまた、同じように帽子とサングラスを外す。
「私は綺羅星ミア! 世界で一番可愛いアイドルにして、煌めく星の歌姫でーす!」
自信満々な口調。
いかにも可愛らしいポーズを取る少女──ミア。
ソウジが爽やかな笑みを浮かべた。
「知ってるよ。君の歌、動画サイトで視聴したけど凄いね。なんというか、人間離れした美しさだった」
「えぇ。私はほら、天才なので!」
面白そうに言い、ウィンクするミア。
ソウジが頬をかく。
「いやいや、冗談抜きに君の歌は凄いよ。天才と持て囃されてもおかしくない。まさに、彗星の如く現れた超新星ってやつだ」
心の底からそう思っているような口調。
ソウジがにこやかな笑みを浮かべ、ミアを見据えた。
「そんな君に会えて本当に光栄だよ。それで、せっかくだから一つ聞きたい事があるんだけど、いいかな?」
「もちろん! あなたの質問なら何でも答えますよ!」
迷いなく答えるミア。崩れぬ笑顔。
ソウジの笑みがさらに大きく広がった。
「そう言ってもらえると、本当にありがたいよ。じゃあ、遠慮なく聞かせてもらいたいんだけど──」
丁寧な口調。
穏やかな笑みを浮かべたまま、ソウジが口を開く。
琥珀色の瞳が輝いて──
「君の事だよね? 終末の使徒のことを嗅ぎまわってる、愚かな雌猫ってのは」
ソウジの言葉が、その場に響いた。
張り付いたような笑み。にこやかな表情。
空気が重く、張りつめていく。
「へぇ、そういう風に言われてるんですか?」
全く動じた様子もなく、ミアが微笑んだ。
「私は可愛い可愛い、ただのアイドルなのになぁ。どうせなら地上に舞い降りた大天使とか、世界一可愛い刺客とか、そんな名前で呼んでくれません?」
きゃぴきゃぴとした口調で言いながら、
ミアがソウジの事を見返した。
ソウジが微笑む。
「君、何が目的なのかな?」
おもむろに訊ねるソウジ。
ミアがにっこりと笑みを浮かべた。
「世界平和!」
「なるほど。だから、終末の使徒を倒してまわってる?」
「その通りです!」
ピースするミア。
「私もこれがお仕事で。それで終末の使徒の事をたくさん知りたくて、色んな人に訊ねて周ってるんです!」
にこやかに話すミア。
その紫色の瞳に、ソウジの姿が映る。
「でも、皆さんシャイな人ばかりで、あんまり話してくれないんですよね。あなたが協力してくれるなら、私はとーっても嬉しいんですけど?」
軽い口調のミア。
いかにも可愛らしく、熱い目線を送る。
口元に大きく笑みが広がって──
「僕がそれを承諾すると思ったのかい? 愚かで薄汚い、背信者が」
吐き捨てるように、ソウジがそう言った。
「まぁ、そうですよね~」
面白そうに笑いだすミア。
ソウジもまた、つられるように笑い声をあげる。
2人の笑い声が、ビルの隙間に反響した。
「どうやら、君には滅びが必要なようだ」
目を細めているソウジ。
持っていた鞄から、橙色のデッキケースを取り出す。
敵意に満ちた目が、ミアの方に向けられた。
「交渉決裂かぁ。ネゴシエーターミア、これで10連敗中~」
肩をすくめているミア。
どこからか紫色のデッキケースを取り出した。
2人がカードを並べ始める。
「プロファイターを相手に、本気で勝てる気なのかい?」
カードを置きながら訊ねるソウジ。
ミアが微笑んだ。
「さーて、どうでしょうね?」
くすくすと笑っているミア。
手慣れた手つきで、カードを並べていく。
最後の1枚を置いて──
「どこまでその強がりが続くか、楽しみだよ」
ソウジが、不敵な笑みを浮かべた。
目の前に置かれたカードに視線を落とす。
骨で出来た悪魔の貌が描かれた、禍々しいスリーブ。
「さぁ、導こうか。この世界に、滅びと沈黙を」
にこやかな笑顔のまま、ソウジがそう告げた。
すっと、目の前のカードに指を置く。
輝く星の絵柄のスリーブに入ったカードを置いて──
「それじゃあ、"私達"の歌、聞かせてあげます」
透き通るような声で、ミアがそう言った。
煌めく笑み。細い指をカードの上に置く。
2人が睨み合った。
紫色の瞳と、琥珀色の瞳。
互いの視線が空中で交差する。
一瞬の静寂の後──
「スタンドアップ・ヴァンガード!!」
薄暗闇の空間に、その声が響いた。
「《グラビディア・デレン》!!」
グラビディア・デレン
ノーマルユニット 〈0〉 (ブースト)
ブラントゲート - エイリアン
パワー6000 / シールド5000 / ☆1
【自】:このユニットがライドされた時、あなたが後攻なら、1枚引く。
― 我らはこの地に、理想の世界を築く者……。
「《歌を届けるために ロロネロル》!!」
歌を届けるために ロロネロル
ノーマルユニット 〈0〉 (ブースト)
リリカルモナステリオ - ワービースト
パワー6000 / シールド5000 / ☆1
【自】:このユニットがライドされた時、あなたが後攻なら、1枚引く。
― ろろは……もっと、も~っと頑張るのです!
向かい合う2枚のカード。
白き異星の生命体と、黒髪の猫の少女。
カードを片手に、ミアとソウジが微笑んだ。
爽やかな青い空が、どこまでも広がっていた。
空を駆ける巨大なピンクの鯨。
その背中に広がる学園都市、リリカルモナステリオ。
のどかな空気が広がるその国の中で──
「よいしょ、よいしょ……!」
少女が一人、掛け声を出しながら階段を歩いていた。
紺色の制服に、紫色の瞳。艶やかな黒い色の髪。
猫耳を伏せながら──
「これでっ、最後なのですっ!」
少女が力強く、その一歩を踏み切った。
「ふにゃー」と、大きく息を吐く少女。
背負っていたリュックを、その場に置く。
「おぉー……!!」
目を輝かせながら、少女が目の前の風景に声をあげた。
天に向かって伸びる塔の頂上。街を一望できる場所。
巨大な学園都市の姿が、少女の眼下に広がっている。
「うんうん、ここなら大丈夫そうなのです」
腕を組み、頷いている猫の少女。
満足そうな笑みを浮かべる。
「最近、人のいる所では不審者さんと遭遇する事が多すぎるのです。これはきっと、ろろが人のいる所で目を付けられているからなのです」
思いを吐き出すように、喋る猫の少女。
「つまり、誰もいないここなら、不審者さんもいないのです! 気分転換と安全性をかねそなえた、我ながら完璧な解決策なのです!」
自信満々に、猫の少女がそう断言した。
その場で伸びをする猫の少女。大きく深呼吸する。
「試験も近いですし、今日はここでゆっくりと歌うのですよ~。今のろろに必要なのは、こういった癒しの時間と──」
リュックを開く猫の少女。
可愛らしいバスケットを取り出すと、その場で開く。
綺麗に並んだスイーツが、輝く姿を見せた。
「──美味しい、お菓子なのです!」
両手をあげて、喜びを体現している猫の少女。
ぶんぶんと、その尻尾が揺れる。
「ふふふ、学校帰りにお菓子を買い食いするだなんて、ろろは悪い猫ちゃんなのです……」
悪役のような笑みを浮かべつつ、
並んだお菓子を眺めている猫の少女。
その中の1つを手に取って──
「ではでは、いただきますなのです!」
猫の少女が、目を輝かせた。
幸せそうな表情、至福の時間。
お菓子を食べようと、少女が口を開けた瞬間──
パキパキパキ……!!
何かが割れるような音が、その場に響いた。
「ほぇ?」
目を開け、きょろきょろと辺りを見回す猫の少女。
一見したところ、周りでは何も起こっていない。
「……気のせいです?」
首をかしげている猫の少女。
気を取り直したように、お菓子に目を向ける。
瞬間、床に置かれていたバスケットが宙に吸い込まれた。
「にゃっ!?」
驚き、尻尾をぴんとさせる猫の少女。
バスケットが消えた空を見上げる。
あんぐりと口を開けながら──
「な、なんなのです、あれ……!?」
猫の少女が、動揺した声を漏らした。
ぽとりと、その手からお菓子が落ちる。
少女の頭上の空に、亀裂が走っていた。
まるでガラスのように砕けていく空。
パキパキと音を立て、空間の破片が地面に落下していく。
そして、空間の隙間、亀裂の向こう側から──
「見ツケタゾッ!!」
琥珀色の目が、猫の少女の姿を捉えた。
辺りに轟く金切り声。びりびりと空気が震える。
「にゃっ、にゃっ、にゃっ……!?」
怯えた声。じわりと、涙を浮かべる猫の少女。
ひと際大きく、空間が砕ける音が響いて──
「愚カナル背信者ニ、死ノ鉄槌ヲ!!」
亀裂の向こう側より、巨大な怪物が姿を現した。