カードファイト!! ヴァンガード StarSong   作:バビロン@VG

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CollabEpisode
幕間劇 双麗織り成す四重奏①


 

澄み渡るような青い空が、天に広がっていた。

 

吹き抜ける穏やかな風に、白い雲。

さえずりながら、小鳥達が飛び立っていく。

 

さんさんと降り注ぐ、太陽の光を浴びながら──

 

「はぁー……」

 

猫の少女──ロロネロルが大きく息を吐いた。

気の抜けきった表情。ぽかぽかとした雰囲気。

 

学生寮の部屋の中、窓の外を眺める。

 

「今日は、良い天気なのです~」

 

どこか眠そうに呟くロロネロル。

ぴょこぴょこと耳が動き、尻尾が揺れる。

 

その場で大きく、身体を伸ばして──

 

「……よし!」

 

ロロネロルが、ぱんと頬を叩いた。

ぱちくりと目を開けるロロネロル。気合いの入った表情。

 

ロロネロルが部屋の中を駆けまわって──

 

「できたのですー!!」

 

嬉しそうな声と共に、

ロロネロルが可愛らしいリュックを目の前で掲げた。

 

きらきらと、その紫色の瞳が輝く。

 

「今日こそまさに、絶好のお散歩日和! こういう日はピクニックに限るのですー!」

 

いかにもご機嫌な声。

うきうきと、ロロネロルがリュックサックを背負った。

 

姿見の前、ロロネロルが髪型を整えていく。

 

「最近、ろろは世界を救いすぎたのです! 今のろろに必要なのは、こういう素敵な休日なのです!」

 

るんるん気分で話しているロロネロル。

鏡の前、機嫌よくポーズを決めていく。

 

「今日は郊外をお散歩して~♪ 森林浴の後はお弁当を食べて~♪ それからそれから、たくさんたくさん歌うので~す♪」

 

透き通るような歌声が学生寮に響いていった。

忘れ物がないかの指差し確認。ロロネロルが頷く。

 

全ての準備を整えて──

 

「よーし! ではいざ、出発なのですー!」

 

煌めく笑顔をその顔に浮かべ、

ロロネロルが部屋の扉をガチャリと開いた。

 

瞬間、巨大な南瓜の顔が目の前に現れて──

 

「ばぁぁぁ!!」

 

いかにもおどろおどろしい声が、辺りに響き渡った。

くり抜かれた南瓜で出来た顔。不気味に光る目。

 

ロロネロルが、片手をあげる。

 

「おはようなのです、アレスティエル!」

 

全く動じずに、笑顔で挨拶するロロネロル。

南瓜の顔をかぶった少女が、しばし沈黙した。

 

両手で南瓜を脱ぎながら──

 

「……驚かないの?」

 

どこか不満そうに、天使の少女がそう訊ねた。

その背中から生えた白と黒の翼。二律背反の色。

 

大天使アレスティエルが、すんとした表情を浮かべる。

 

ロロネロルが、得意そうに胸を張った。

 

「最近、ろろは大変な事がたくさんありすぎたせいか、そんじゃそこらのことでは動じなくなったのです!」

 

自信満々に答えるロロネロル。

さわさわと、アレスティエルの黒翼が揺れた。

 

「残念。せっかく、がんばって作ったのに」

 

南瓜で出来た顔を見つめているアレスティエル。

ロロネロルが指を振った。

 

「万闇節はとっくに終わったのですよ~。アレスティエルはのんびり屋さんなのです!」

 

「むぅー」

 

不満そうに、アレスティエルがむくれる。

2人に降り注ぐ暖かな日差し。和やかな雰囲気。

 

ロロネロルがアレスティエルを見上げた。

 

「それで、ろろに何か用なのです?」

 

首をかしげながら訊ねるロロネロル。

アレスティエルが「んー」と声を出した。

 

「用って訳じゃなくて。でも、今日はすごく天気が良いから。誰かと一緒に散歩したい気分だったの」

 

落ち着いた口調で、黒翼のアレスティエルが答える。

ロロネロルが「おー!」と目を輝かせた。

 

「それならちょうど良かったのです! ろろ、これから散歩に行く所なのですよ! 一緒に行くのです!」

 

「えっ、いいの?」

 

ロロネロルが迷いなく頷いた。

 

「もちろんなのです! 1人よりも2人の方が楽しいのです! デュエットだってできるのですよ!」

 

無邪気な口調。

心の底から嬉しそうに言うロロネロル。

 

アレスティエルが笑みを浮かべた。

 

「ふふっ、なによそれ!」

 

純真無垢な口調。

風に吹かれ、その白い翼がかすかに揺らぐ。

 

「まぁでも、そうね。2人で過ごした方が楽しそうかも! 一緒に行きましょ、ロロネロル!」

 

「はい! ろろ&アレス、コンビ結成なのです!」

 

すっと、手を構えるロロネロル。

アレスティエルもまた、手を伸ばして──

 

ロロネロルとアレスティエルが、ハイタッチを交わした。

 

「よーし、それでは早速、出発なのですー!」

 

「おー!」

 

楽しそうに言い合っている2人。

お喋りをしながら、寮の出口に向かって歩き出す。

 

寮の外で、どこまでも続く青い空が広がっていた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

VANGUARD

StarSong

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──太陽の光が、さんさんと降り注いでいた。

 

暖かな日差しに、穏やかな陽気。

活気のある空気が、駅前に広がっている。

 

雑踏の中、コツコツという靴音を響かせて──

 

「へぇ、ここがそうなのね」

 

深くかぶった白い帽子にサングラス。

紫がかった髪を揺らしながら、綺羅星ミアがそう呟いた。

 

手に持ったスマホへと、視線を落とす。

 

『もう少しで駅に着くよ!』

 

数分前に送ったメッセージ。

アプリ内には、大きな猫のスタンプが表示されている。

 

『了解です!』

 

相手側からの返信。

可愛らしい少女のスタンプが、画面に表示されていた。

 

ミアが息を吐いて、天を見上げる。

 

「うーん、良い天気……」

 

青空を眺めているミア。

大きく伸びをすると、にっこりと微笑む。

 

紫色の瞳が、遠く空の果てへと向いて──

 

「平和ねぇ~」

 

しみじみとした言葉が、ミアの口から漏れた。

気の抜けた表情。漂うゆるい雰囲気。

 

雑踏の中、しばし緩やかに佇んでいく。

 

「……さて、それじゃあそろそろ行かないとね」

 

ミアが帽子の位置を整え、呟いた。

そのまま一歩、前へと踏み出す。

 

瞬間──

 

持っていたスマホから、軽快な音楽が流れた。

 

「げっ」

 

顔をしかめるミア。

眉間にシワを寄せ、一瞬だが指が空中を彷徨う。

 

とても嫌そうに、ミアが電話に出た。

 

「なによ、サミー?」

 

『仕事の時間だ』

 

そっけない男の声。

ミアがわざと大きく、ため息をついた。

 

「知ってるわよ。てか、今まさに仕事してるし。この街で調査しろって、サミーの指示でしょ?」

 

『そうだな。だが、今回はそれとは別件だ』

 

固く冷たい口調。

言葉の意味を理解したミアが、天を仰ぐ。

 

「嘘でしょ、二重(ダブル)ってこと?」

 

『そうだな』

 

あっさり答える電話の男。

ミアが首を振った。

 

「サミー、知らないかもだけど、私は超絶忙しいアイドル様なの。貴重なオフの日を使ってるのに、さらに仕事を増やそうって訳?」

 

『残念だが、俺達の仕事に休日の概念はない』

 

凍える吹雪のような宣言。

ミアの顔に、怒りの感情が浮かんだ。

 

「労働者として、一刻も早い労働環境の改善を要求するわ! こんな事してると、いつかストライキするわよ!」

 

『あぁ、そうだな。前向きに考えておく』

 

どうでもよさそうに言う電話の男。

ますます不機嫌そうに、ミアが顔をしかめた。

 

電話の向こう、男が咳払いする。

 

『報告だ。例の反応があった。今までと違って、今回は大物そうだ。つまり、厄介な相手という訳だな』

 

「それはそれは、労働意欲をかきたてるお言葉ね……」

 

げんなりとしているミア。

電話の男がフンと、鼻を鳴らす。

 

『お前がサボりたがるのは勝手だが、敵さんはそうも言ってくれないからな。不意打ちされたくなければ、素直に話しを聞くことだ』

 

「はいはい」

 

『"はい"は一回だ』

 

「はーい」

 

いかにもやる気なく答えるミア。

男が呆れたようにため息をついた。

 

タイピング音が響く。

 

『反応があったのは2人だ。同じ時刻、同じ場所での出現。現在は2人一緒になって移動しているようだ』

 

「なにそれ、カップルってこと?」

 

『個人の特定には至っていない。観測班曰く、データベース上に記録がないそうだ』

 

考え込むミア。

一瞬、その目が鋭くなった。

 

ミアが白い指を伸ばす。

 

「それって、つまり──」

 

自らの推理をぶつけるミア。

電話の男が『うむ』と同意する。

 

『おそらくはそういうことだろうな。とはいえ、油断は禁物だぞ。相手は向こう側と繋がっているファイターだ』

 

「分かってるよ。それにしても、2人かぁ……」

 

考え込む様子のミア。

不意ににっこりと、輝く笑顔を浮かべる。

 

「ねぇ、サミー? サミーもデスクワークばっかりでなまってるんじゃない? たまには私に代わって、仕事していいのよ?」

 

猫なで声を出すミア。

期待に満ちた目をスマホへと向ける。

 

ほんのわずかな間が流れて──

 

『残念だが俺がいるのはアメリカだ。日本は遠すぎるな』

 

男が、ひどく真面目な声色でそう答えた。

ミアの笑顔が崩れて、渋い表情がその顔に浮かんだ。

 

「ジョークよ。本気で答えないで」

 

呆れたように言うミア。

首を振ると、小さくため息をつく。

 

電話の男の声が続く。

 

『なんでもいいが、もう一つの任務も忘れるなよ。仕事さえすれば、お前が寝て過ごそうが歌って過ごそうが自由だ』

 

「はいはい、了解しました。また報告しますー」

 

投げやりに答えるミア。

そのまま相手からの返事を待たず、通話を切る。

 

「まったく、タイミング悪いんだから……」

 

ぶつぶつと文句を言っているミア。

スマホをしまうと、再び歩き出す。

 

爽やかな青い空の下で──

 

「まっ、いいか。とりあえずオフ会には行かないとね~。こっちだって重要な任務だし~」

 

開き直ったかのように、ミアがそう発言した。

呑気な口調。歌を口ずさみながら、歩き出すミア。

 

駅前の繁華街を抜け、少しだけ郊外の方へと進み──

 

「ここかな?」

 

店の前、スマホを片手にミアが呟いた。

こじんまりとした、小規模な個人経営のカードショップ。

 

店の看板を見て、ミアが頷く。

 

「うん、間違ってないね」

 

スマホの画面を見ながら言うミア。

躊躇することもなく、ミアが店の中へと入る。

 

カランカランという鈴の音が響いた。

 

「いらっしゃいませー」

 

レジの前に立つ黒髪の女性の声が響く。

綺麗に掃除された店内。活気のある空間。

 

賑やかで明るい雰囲気が、店内を満たしている。

 

「……へぇ」

 

きょろきょろと、物珍しそうに辺りを見回すミア。

カードの並んだショーケースを、しげしげと見つめる。

 

その姿に、店の中の視線がわずかに集まった。

 

「何かお探しですか?」

 

先程の黒髪をポニーテールに結んだ女性が、

笑みを浮かべながら丁寧に訊ねた。

 

ミアが目を細め、笑顔を浮かべる。

 

「あー、私、こういう所来るのが初めてなので~」

 

「あら、ひょっとしてヴァンガードを遊ぶのは初めて? よければ何かお手伝いしましょうか?」

 

ショーケースを示す黒髪の女性。

ミアが手を振った。

 

「カードは持ってるんですけど、私のは全部貰い物なので。こういう場所で買ったことがないんですよ~」

 

「あぁ、そうなんですね」

 

納得したように頷く女性。

ミアが陳列されたカードを見渡した。

 

「ふーん、色んなカードがあるんですね~」

 

「えぇ、ヴァンガードには全部で6つの国家があって、色んな絵柄のカードがあるんです。何か好みの物を言って頂ければ、お探ししますよ?」

 

商売人らしい笑みを浮かべている黒髪の女性。

ミアが考えるように目をつむった。

 

「そうですねぇ、うーん……」

 

思考を巡らしているミア。

やがて、諦めたように両手をあげる。

 

「特に思いつかないなぁ。私、ヴァンガードは仕事でやってるんで~」

 

「仕事で? ひょっとして、プロファイター?」

 

驚いたように聞く黒髪の女性。

その言葉に、店内の視線がさらに集まった。

 

ミアが悪戯っぽく微笑む。

 

「まさか~。あーでも、前にプロファイターの人と戦ったことはありますよ。名前忘れちゃいましたけど」

 

あっけらかんと答えるミア。

黒髪の女性がますます困惑した表情になる。

 

笑顔のまま、ミアが指を伸ばした。

 

「実は、私が探してるのはカードじゃなくて人なんです。このお店で待ち合わせをしてまして」

 

「待ち合わせですか?」

 

ミアが「えぇ」と頷いた。

 

「ネットで知り合った人なんで、本名は知らないんですけどね。この店で待ち合わせって事になってて~」

 

「そうなんですね。なんという方ですか?」

 

何気ない質問。

ミアがスマホを取り出す。

 

画面を見ながら──

 

「"†可憐なる黒と白の堕天使†"さん」

 

奇天烈な単語が、ミアの口から発せられた。

一瞬、店の中の空気が凍りついたように固まる。

 

「……変わった名前ですね」

 

精一杯フォローするような言葉。

ミアが肩をすくめた。

 

「そんな訳で、それらしい人を探してるんですけど、見当たらなくて。まだ来てないのかな~?」

 

「何か特徴とかを聞いたりとかは?」

 

気を取り直したように訊ねる女性。

ミアが指をくるくると回す。

 

「えーっと、ヴァンガードが好きで、よくこの店に通ってるって言ってましたね。常連さんだって」

 

「はい」

 

「高校生で、ヴァンガードの部活に入ってるとか。それでこの前、呪われた絵画を部活の先輩と一緒に除霊することになったんですって」

 

「……はい?」

 

「それで男の方の先輩──部長が大変な目にあったとかなんとか。あれ、それだとエクソシスト部になる? カードファイトの部活って聞いてたような?」

 

腕を組み、悩んだような表情のミア。

黒髪の女性の笑顔がひきつった。

 

ぽんと、ミアが手を叩く。

 

「そうそう、思い出した! デッキをいくつか持ってるけど、一番のお気に入りはアレスティエルのデッキって言ってました。大会にもそれで出たとか~」

 

ゆるい口調で話しているミア。

店内の空気が徐々にざわめいていく。

 

「……あの、横から失礼するけど」

 

ファイトスペースにいた小柄な少女が、

おそるおそるといった様子で声をかけた。

 

ミアが視線を向ける。

 

「ん? なにかしら?」

 

「ひょっとしてだけど、その子って、その、顔に──」

 

少女が言いかけた瞬間。

勢いよく、店の扉が開いて──

 

「お、遅れましたー!!」

 

元気いっぱいな声が、店中に響き渡った。

息を切らして、中へと駆けこんでくる少女。

 

肩のあたりまで伸びた、白い髪が揺れる。

 

「ご、ごめんなさいー!! 道路を渡れずに困っているお婆さんがいて、その人を手助けしてたら遅れちゃって……!!」

 

ぺこぺこと頭を下げる少女。

ミアが「んー?」と首をかしげた。

 

しんと、店内が静まり返る。

 

「……あれ?」

 

顔をあげ、きょとんとする少女。

先程の小柄な少女が、じとっとした目を向けた。

 

「ちょっと、そもそも誰に向かって謝ってるのよ?」

 

「えっ? あっ、そうでした!!」

 

驚いたように目を丸くする少女。

ポケットからスマホを取り出すと、画面を見る。

 

「あ、あの!! この中に"猫派のシンガーソングライター"さんって方はいませんかー!?」

 

再度、店の中に向かって訊ねる少女。

どこか不安そうに、店内を見渡す。

 

ゆっくりと、ミアが手をあげて──

 

「あー、それ私でーす」

 

のんびりとした声で、そう答えた。

少女が「あっ!」と声をあげて近寄る。

 

「は、はじめまして!! あのあの、あたし、いきなり遅刻しちゃって、その……!!」

 

「気にしなくていいですよ~。私もたった今、ここに来たばかりなので~」

 

手をひらひらとさせているミア。

穏やかに微笑みながら、帽子を脱ぐ。

 

サングラスを外し、紫色の瞳を向けて──

 

「はじめまして~。私、"猫派のシンガーソングライター"こと綺羅星ミアっていいます。よろしくね~」

 

ミアが、そう挨拶した。

店内に衝撃が走る。どよめく周囲。

 

「えっ、綺羅星ミア……!?」

 

「あの、アイドルの……!?」

 

ざわめいている周囲。

一気に、店中の注目が集まっていく。

 

そんな店内の雰囲気に全く気付かず、少女が口を開く。

 

「よ、よろしくお願いします! あたし、その、"†可憐なる黒と白の堕天使†"の──」

 

ほんの少し言いよどむ少女。

だがすぐに、輝くような笑顔を浮かべて──

 

「──淵導(えんどう)フランです!!」

 

顔の右半分が不気味に焼け爛れた幼い顔立ちの少女。

淵導フランが、そう挨拶した。

 

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