カードファイト!! ヴァンガード StarSong   作:バビロン@VG

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第二楽章 絆を紡ぐ白銀の牙④

 

――抜けるような青空が広がっていた。

 

人々のざわめき。どこまでも続く長蛇の列。

あらゆる思いが渦巻き、辺りを取り巻いていく。

 

『一般の方々の入場口はこちらでーす!』

 

スタッフパスを首から下げた職員が呼びかける。

整列されていく人々。綺麗な待機列。

 

イベント会場前は、凄まじいまでの熱気に溢れていた。

 

会場内、関係者の控えスペースで――

 

「今日は、よろしくお願いしますー!」

 

ぺこぺこと、ミアのマネージャーが頭を下げていた。

周りの人間に片っ端から挨拶をしているマネージャー。

 

アイドル用の衣装を着たミアが、その横に立つ。

 

「…………」

 

マネージャーとは対照的に無言のミア。

手に持ったスマホを見て、憂うような表情を浮かべる。

 

ひそひそとしたささやき声が響く。

 

「おい、綺羅星ミアだ……!」

 

「本物だ……」

 

「わぁ、やっぱりすごい美人……!」

 

周りからの様々な声。

あらゆる視線が、ミアの方へと向けられている。

 

「はぁ……」

 

スマホの画面を見ながら、ミアがため息をついた。

壁紙に設定している画像を眺めているミア。

 

笑顔を浮かべる、2人の少女の写真を見つめる。

 

「歌わないんじゃなぁ……」

 

ぼやくような声を出すミア。

いかにもやる気なさげな雰囲気を漂わせる。

 

靴音が響いて――

 

「あなた、いつになく暗い顔ですね」

 

一人の人物が、ミアに向かって声をかけた。

顔を上げるミア。紫色の瞳を向ける。

 

スーツ姿の女性を見て――

 

「あぁ、この前の記者さん!」

 

ミアが、ぱちんと指を鳴らした。

 

「三芳野ヨウコです」

 

改めて名乗る女性――ヨウコ。

眼鏡の奥、冷たい目をミアに向ける。

 

「この前とは打って変わって、今日は随分とテンションが低いですね」

 

「まぁねぇ。だって、歌わないイベントだしさ~」

 

手をひらひらとさせるミア。

ヨウコが目を細めた。

 

「確かに、意外ですね。あなたの性格からして、こういった活動には出ない物だと思っていました」

 

「私も雇われ人だから。これも会社の付き合い、いわゆる社畜ってやつなのだよ」

 

やれやれと肩をすくめているミア。

ヨウコが呆れた表情を浮かべる。

 

「あなたのような自由奔放な社畜がいるとは思えませんが、まぁいいでしょう。イベントがんばって下さい」

 

「ありがとね~。記者さんは取材?」

 

親しげに訊ねるミア。

ヨウコが頷いた。

 

「あなたにとってはどうでもいいかもしれませんが、大規模なイベントですから。しっかりと取材する予定です」

 

淡々と答えるヨウコ。

そのまま、冷たい目を向ける。

 

「もちろん、あなたの事も諦めたわけではありませんから。いずれはあなたの事も調べ上げて見せますよ」

 

宣戦布告するような口調。

真っ直ぐにミアを見つめているヨウコ。

 

にっこりと、ミアが微笑んだ。

 

「そうだね~。期待しておくよ~」

 

あっさりとした口調。手を振っているミア。

ヨウコがむっとしたように目を細めた。

 

2人の間に、張りつめた空気が流れる。

 

「だ、ダメですよ2人とも! 今日は楽しいイベントなんですから、仲良くしないと!」

 

会話に割り込むマネージャー。

ミアが視線を向けた。

 

「マユっち、いつもよりテンション高いね」

 

「それはそうですよ! だってほら、憧れのスターの方々が、こんなに近くにいるんですよー!」

 

両手を握りしめているマネージャー。

興奮したように、熱い視線を辺りに向けている。

 

「もー、これなんだから……」

 

ミアが額に手を当てながら、呟いた。

ヨウコもまた、視線を伏せがちに息を吐く。

 

「私から言わせれば、ここにいる大多数の出演者よりも、日野宮さんの方が珍しい存在でしょうに」

 

小声で呟くヨウコ。

ミアが「ん?」とその言葉に反応した。

 

「えっ、それってどういう意味? マユっちがレア?」

 

「……あなた、同じ事務所に所属しているのに、何も知らないんですか?」

 

冷たい声で訊ねるヨウコ。

ミアが不思議そうに首をかしげた。

 

二組の足音が響いて――

 

「失礼します」

 

ミアに向かって、女性の声が響いた。

視線を向けるミア。

 

「はい?」

 

「平素よりお世話になっております。芸能プロダクション"雅"の者です」

 

しっかりとした雰囲気のスーツ姿の女性。

深々と、ミアに向かって頭を下げる。

 

「あっ、お世話になってます!」

 

慌てて、頭を下げるマネージャー。

ミアはぼんやりと、女性の横の人物に目を向けていた。

 

淡い茶色の髪をした、小柄な少年。

 

控えめな微笑みを浮かべ、

どこか緊張したようにミアを見上げている姿。

少年らしくも可愛らしい衣装に、身を包んでいる。

 

スーツ姿の女性が手を伸ばして――

 

「現在活躍中の綺羅星ミア様に、ぜひご挨拶をと思いまして。こちらは弊社所属で子役をしております、足立(あだち)ハルです」

 

隣りに立つ少年を紹介した。

少年――ハルがにこやかな笑みを浮かべる。

 

「はじめまして、足立ハルと申します」

 

年齢にそぐわないような、丁寧な口調。

頭を下げると、真っ直ぐにミアを見つめた。

 

その翡翠色の瞳に、ミアの姿が映る。

 

「ほ、本物のハル君……!!」

 

感動したように息を呑むマネージャー。

ヨウコが冷ややかな目を向ける。

 

ミアが輝く笑顔を浮かべた。

 

「よろしくね! 私は綺羅星ミア、煌めく星の天才歌姫でーす!」

 

明るい声で言うミア。

膝を曲げると、目線の高さを合わせる。

 

「君、すごく若いね! いくつなの?」

 

「はい。今年で、12歳です」

 

よどみなく答えるハル。

落ち着いた口調に、柔らかな微笑み。

 

ミアが驚いたように目を丸くする。

 

「12歳!? 嘘ー、すごいしっかりしてるね!」

 

「いえ、そんなことありませんよ」

 

照れたように頬をかくハル。

ミアが手を振った。

 

「ううん、私やマユっちなんかより、ずっとしっかりしてるから! 自信もっていいよ!」

 

「……えへへ」

 

子供らしい笑み。はにかむハル。

ほんのりと、その頬が赤く染まった。

 

スーツ姿の女性が咳払いする。

 

「今後とも、何卒よろしくお願いいたします。さっ、行きますよ、ハル。他にも挨拶しなくてはならない方がたくさんおりますので」

 

「はい。それでは、今日はよろしくお願いします」

 

深々と頭を下げるハル。

にっこりと微笑むと、可愛らしく手を振る。

 

女性と共に、ハルがその場から離れていった。

 

「はぁ。本当に、天使みたい……」

 

でれでれとしているマネージャー。

ミアが腕を組み、口元に指を当てる。

 

「あんな小さい子までいるんだー。やー、芸能界ってのは本当に凄い所だね~」

 

うんうんと一人納得しているミア。

ヨウコが目を閉じた。

 

「さすが子役としての活躍が長いだけの事はありますね。そこらの大人より、よほど礼儀をわきまえています」

 

そこらの部分でちらりとミア達を見るヨウコ。

皮肉めいた口調、冷ややかな雰囲気。

 

ミアが両手を広げた。

 

「私はほら、天才歌姫だから。歌が全てだからいいの! マユっちはまぁ、ダメな大人かもだけど」

 

さらりと話すミア。

マネージャーが「うぇっ!?」と声をあげた。

 

控室の入り口に、スタッフが現れる。

 

「そろそろ会場入りの時間でーす! 皆様、ご準備のほうをお願いしまーす!」

 

大きな声がその場に響き渡る。

ばたばたと、にわかに辺りが忙しくなりはじめた。

 

「さーて、それじゃあ行こうかな~」

 

大きく伸びをするミア。

全く緊張感なく、のそのそと歩き出す。

 

「み、ミアさん! ちゃんと打ち合わせ通りにやって下さいね! 取材の人とかも来てるんですから!」

 

「大丈夫だって~。任せておいて、マユっち~」

 

軽い声で答えるミア。

そのまま、ミアが控室から出て行った。

 

残されるマネージャーとヨウコ。

 

「うぅ、大丈夫でしょうか……」

 

不安そうに、マネージャーが呟く。

鋭い目を向けて――

 

「今のうちに、何かやらかした時のことを想定した謝罪文を考えておいた方がいいと思いますよ」

 

ヨウコが、冷たい声でそう言い切った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大きな歓声が、会場内を渦巻いていた。

 

アイドルのトークイベントに、宣伝映像。

煌めくスポットライト。飛び交う歓声。鳴り響く拍手。

集まった人々が、楽しい時間を過ごしていく。

 

そんな盛り上がりを見せる、会場の一角で――

 

『――というのが、ヴァンガードのルールです!』

 

普及協会のスタッフが大きく観客に向けて話した。

マイクを通した声。モニターに映った盤面。

 

スタッフが、大きな笑顔を浮かべた。

 

『惑星クレイの分身にライドして、仲間と共に戦う! それがヴァンガードの醍醐味です! 皆様もこの機会に、ぜひ遊んでみてください!』

 

並べられた複数のファイト用テーブル。

そしてそこに集まった、数十人もの人々。

 

ティーチングイベントが、そこでは行われていた。

 

『さて、では今回は特別に、皆さんと同じくヴァンガード初心者という御二方にも参加してもらいましょう!』

 

期待を煽るように、スタッフがそう言った。

テーブルに着席していた人々が、にわかにざわめく。

 

腕を伸ばして――

 

『足立ハルさんと、綺羅星ミアさんです!』

 

大きく、その言葉が響き渡った。

驚くようなどよめきが広がり、会場内を揺らす。

 

ステージ上に、2人の姿が現れて――

 

「や~、どうも~」

 

ミアが、愛想のいい笑顔を浮かべて手を振った。

輝く笑み。楽しそうな表情のミア。

 

「皆さん、こんにちは」

 

その後ろで控えめな微笑みを浮かべているハル。

集まった人々に向かって頭を下げる。

 

歓声と拍手が巻き起こった。

 

『あらためまして、子役として活躍中の足立ハルさんと、今最も人気のあるシンガーソングライターの綺羅星ミアさんです!』

 

盛り立てるように話すスタッフ。

会場内の空気が沸騰し、再び大きな歓声があがった。

 

「イェーイ、ありがと~!」

 

両手をあげ、歓声にこたえているミア。

可愛らしくポーズを決めて、キメ顔を浮かべる。

 

「よろしくお願いします」

 

丁寧に挨拶しているハル。

その顔に浮かぶ、控えめな笑み。落ち着いた様子。

 

2人がファイトテーブルの前に立った。

 

『足立さんに綺羅星さん。お二方は、ヴァンガードをやったことがないと聞きましたが?』

 

マイクを向けるスタッフ。

ハルが微笑みを浮かべて、頷いた。

 

「はい。興味はあったんですけど、仕事が忙しくて。それで今までやる機会がなかったんです。でもいつか、やってみたいなって思っていました!」

 

すらすらと答えるハル。

模範的な回答。打ち合わせ通りの言葉。

 

『なるほど! 綺羅星さんはどうなんでしょうか?』

 

スタッフがマイクをミアへと向けた。

 

「あ、私?」

 

自分を指差すミア。

どこか悩むように、口元に手を当てる。

 

「やったことないっていうか、私って歌姫なので世間の事に疎いんですよね~。この前もプロファイターの人に会ったんですけど、それもよく知らなくて~」

 

長々と話し出すミア。

思い切り、話が脱線しそうになる。

 

スタッフがマイクを引っ込めた。

 

『そうなんですね! ぜひ、今日は楽しんでもらえればと思います!』

 

無理やり話しを終わらせるスタッフ。

横のハルが苦笑いを浮かべる。

 

スタッフが観客に向き直った。

 

『さて、それでは続けましょう。いよいよ皆様の分身を選ぶ時間です! 目の前にあるティーチング用のデッキから、それぞれ好きな物を一つ選んでください!』

 

呼びかけるように話すスタッフ。

人々が目の前のデッキに目を向けた。

 

 

天輪聖竜 ニルヴァーナ

ノーマルユニット 〈3〉

(ツインドライブ!!) (ペルソナライド)

ドラゴンエンパイア - フレイムドラゴン 

パワー13000 / シールドなし / ☆1

【起】【(V)】【ターン1回】:【コスト】[手札から1枚捨てる]ことで、あなたのドロップからグレード0を1枚選び、(R)にコールする。

【自】【(V)】:このユニットがアタックした時、【コスト】[【カウンターブラスト】(1)]することで、そのターン中、【オーバードレス】能力を持つあなたのユニットすべてとこのユニットのパワー+10000。

― 天輪よ、祈りを運び、世界を照らせ。

 

 

重力の支配者 バロウマグネス

ノーマルユニット 〈3〉

(ツインドライブ!!) (ペルソナライド)

ダークステイツ - ヒューマン 

パワー13000 / シールドなし / ☆1

【自】【(V)】:このユニットがアタックした時、【コスト】[【カウンターブラスト】(1)]することで、あなたのソウルの枚数により以下すべてを行う。

・5枚以上-1枚引く。

・10枚以上-そのバトル中、このユニットのパワー+10000/クリティカル+1。

・15枚以上-あなたと相手は自分のリアガードすべてをソウルに置く。あなたのソウルから2枚まで選び、(R)にコールし、そのターン中、それらのユニットのパワー+10000。

― どっちかが潰れるまでだ!それが戦いって奴だろ?

 

 

怪獣の創造者 アルキテ

ノーマルユニット 〈3〉

(ツインドライブ!!) (ペルソナライド)

ブラントゲート - ヒューマン 

パワー13000 / シールドなし / ☆1

【自】【(V)】:「怪獣」を含むあなたのリアガードが登場した時、【コスト】[オーダーゾーンからそれと同名のカードを1枚山札の下に置く]ことで、そのターン中、そのユニットのパワー+10000。

【自】【(V)】:このユニットがアタックした時、あなたのオーダーゾーンに研究があるなら、【コスト】[【カウンターブラスト】(1)]することで、以下すべてを行う。

・あなたのオーダーゾーンに研究が3枚以上なら、「怪獣」を含むあなたのリアガードを1枚まで選び、オーダーゾーンに置く。

・あなたの山札の上から7枚見て、「怪獣」を含むユニットカードを1枚まで選び、(R)にコールし、山札をシャッフルする。

― 大丈夫、ぼくがきみを完璧として創ったから。

 

 

天道の大賢者 ソルレアロン

ノーマルユニット 〈3〉

(ツインドライブ!!) (ペルソナライド)

ケテルサンクチュアリ - ジャイアント 

パワー13000 / シールドなし / ☆1

【自】【(V)】:あなたのバトルフェイズ開始時、【コスト】[【ソウルブラスト】(1)]することで、あなたはノーマルユニットかトリガーユニットのどちらかを宣言し、自分の山札の上から1枚公開する。宣言されたカードタイプが公開されたら、そのターン中、このユニットは『【永】【(V)】:あなたのユニットすべてのパワー+5000。』を得る。

【自】【(V)】:このユニットがヴァンガードにアタックした時、【コスト】[【カウンターブラスト】(1)]することで、あなたの山札の上から2枚見て、1枚選び、(R)にコールするか、捨て、残りを山札の上か下に置く。

― 未知に惑う者達に、我らが智慧で路を示そう!

 

 

森厳なる薔薇の主 グランフィア

ノーマルユニット 〈3〉

(ツインドライブ!!) (ペルソナライド)

ストイケイア - ワービースト 

パワー13000 / シールドなし / ☆1

【起】【(V)】【ターン1回】:【コスト】[【ソウルブラスト】(1)]することで、あなたの(R)のプラント・トークンすべてをプラント・ゲージにし、ノブレスローズ・トークンを1枚中央後列の(R)にコールし、あなたのプラント・ゲージすべてをそのユニットに置く。

【自】【(V)】:このユニットがアタックしたバトル終了時、【コスト】[ノブレスローズ・トークンかプラント・ゲージを、1枚以上、合計5枚までドロップに置く]ことで、あなたのリアガードを1枚選び、このコストでドロップに置いたカード1枚につき、そのターン中、パワー+5000。3枚以上置いたら、そのユニットを【スタンド】させる。

― 我が愛しき薔薇よ!共に美しき大地を護ろう!

 

 

それぞれのデッキの一番上のカード。

人々が悩むような目を、それらに向ける。

 

『最初は好きな絵柄で選んで良いと思いますよ! ルールを覚えていく内に、自分にあったデッキを探したりするのも、また楽しみの一つです!』

 

明るく呼びかけるスタッフ。

ステージ上の2人に視線を向ける。

 

『ちなみに、お二方は選ぶとしたらどれですか?』

 

決められた流れに沿った質問。

スタッフが再びマイクを向けた。

 

「僕は……えっと、これにします」

 

少しだけ悩むような様子を見せ、ハルがデッキを選んだ。

 

 

天輪聖竜 ニルヴァーナ

ノーマルユニット 〈3〉

(ツインドライブ!!) (ペルソナライド)

ドラゴンエンパイア - フレイムドラゴン 

パワー13000 / シールドなし / ☆1

【起】【(V)】【ターン1回】:【コスト】[手札から1枚捨てる]ことで、あなたのドロップからグレード0を1枚選び、(R)にコールする。

【自】【(V)】:このユニットがアタックした時、【コスト】[【カウンターブラスト】(1)]することで、そのターン中、【オーバードレス】能力を持つあなたのユニットすべてとこのユニットのパワー+10000。

― 天輪よ、祈りを運び、世界を照らせ。

 

 

『おぉ、ドラゴンエンパイアのニルヴァーナデッキですね! ちなみに、選んだ理由は?』

 

「えっと、その……」

 

恥ずかしそうな表情。頬を染めるハル。

 

「やっぱり、その。ドラゴンって、かっこいいなぁって」

 

控えめな口調で、ハルがそう答えた。

翡翠色の瞳を伏せがちに話しているハル。

 

人々から、暖かな笑い声と歓声があがった。

 

『なるほど! やっぱりハル君も男の子なんですねー』

 

微笑ましい答えに、笑顔を浮かべているスタッフ。

そのまま、横のミアへと視線を向ける。

 

『綺羅星さんはどうですか?』

 

事前に決めた流れ通りの質問。

スタッフが答えを待つ。

 

紫色の目を向けながら――

 

「あー、そうですねー」

 

ミアが、軽い口調でそう言った。

その声を聞き、スタッフが嫌な予感を覚える。

 

しばし考えるような仕草を見せた後――

 

「この中にはないかな!」

 

ミアが、あっさりとそう答えた。

衝撃を受けるスタッフとハル。ざわめく観客。

 

戸惑ったような空気が、辺りに流れる。

 

「き、綺羅星さん。ここは、ストイケイアのグランフィアを選ぶ所で……!」

 

こそこそとささやくハル。

事前の打ち合わせで決めていた流れを取り戻そうとする。

 

「あー、そうだったね。だけどさ、私って猫派なのよ~。だから今思うと、ちょっと違うかな~って」

 

悪びれることもなく、ミアが手をひらひらとさせた。

ハルがあんぐりと口を開けたまま、固まる。

 

混沌とした空気が流れる中――

 

『――そうなんです! 今回、皆様に見て頂いているデッキはほんの一部分! 世界には様々なデッキが存在しています! ぜひ、自分好みのデッキを見つけて下さいね!』

 

冷や汗を流しながら、スタッフの女性がそう言い放った。

アドリブでごまかすスタッフに、戸惑ったままのハル。

 

微笑みを浮かべたまま――

 

「そだねー。私も、猫のデッキを探すとするよ~」

 

能天気に、ミアがそう話した。

スタッフの睨むような視線が向けられる。

 

腕をあげて――

 

『それでは皆さん! 引き続き、ティーチングファイトを進めていきたいと思います!』

 

スタッフが、強引にイベントを進めていった。

 

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