初めての文章書きですので文法やストーリーに至らぬ点があるやも知れませんが、ご了承お願いします。
また、少ない時間を見つけて書いているのでどうしても遅筆になりますことが申し訳なく思います。
10/24改稿
「毬絵が死んだ………?」
その知らせを月森円香から聞いて私は衝撃を受けていた。
彼女は何かに怯えるように話を続けていく。
「うん……、昨晩自宅で発見されたらしくて……それで……それでっ……!」
「落ち着いて円香。………それでどうしたの?」
「……ありがとう流歌」
彼女を落ち着かせつつ話を促す。どうやら私は思いの外冷静らしい。それとも薄情なのだろうか。
二人目の友人の訃報を耳にして落ち着いているなんて……
彼女は目の前に置いておいたお茶を飲んで一息つくと言葉を続けた。
「あのね、発見された毬絵の状態が……十萌とそっくりだったらしいの!!」
十萌…奈々村十萌はつい先日亡くなった友人である。彼女はとある発作により入院していたのだが、快方に向かうことはなかった。その死体はとても印象的で、泣き叫ぶように顔を手で覆っていたらしい。
発見した看護婦に状況を確認しようとしたのだが、看護婦自身が混乱しているのか、あまり詳しくは分からなかった。
「海咲も最近様子がおかしいし、私怖いよ…」
「大丈夫よ円香。十年来の友人が一気に亡くなったんだから怖くて当たり前よ」
「流歌…」
まだ怯えている彼女を落ち着かせようと傍に移動して抱きしめてみるが、それでも円香は震えている。
彼女は気弱な性格だが、誰よりも優しくて強い子だ。早く元気になってほしい。
ふと窓を見るともう月が町を照らし始めている。九月だからまだ明るいが、この分だとあっという間に暗くなるだろう。抱きしめたままの姿勢でしばらく私はそんなことを考えていた。
「ありがとう流歌」
どうやら落ち着いたらしい。しかし変わらず顔色は悪く、今にも泣き出しそうである。
もう少しゆっくりしてもらおうと飲み物を注ぎ足そうするが
「あ、もう大丈夫だよ流歌。海咲が心配だから今日は帰るね」
本人が聞くと余計な事をと言いそうな言葉を話しながら立ち上がる。
しかし本当に大丈夫なのだろうか。今の彼女を見るととても大丈夫そうには見えない。ゆっくりとした歩調で玄関に向かう。
「毬絵のこと知らせてくれてありがとう」
「ううん、早く流歌にも伝えなくちゃと思ったから」
革靴を履き終えた彼女にお礼を言い、姿が見えなくなるまで私は見送った。
◆
毬絵の葬式は問題なく行われた。
私には母以外の身内がいないからか、親族や参列の人間が多く感じられた。
(私が死ぬ時はあまり人は集まらないだろうな)
立て続けに友人達の葬儀が行われたせいか、どうにも暗い方向へ考えが向いてしまう。
「流歌」
突如声をかけられて振り向くと海咲がいた。後ろには円香の姿も見える。円香はずっと泣いていたからか少し目が腫れているようだ。
「流歌、毬絵と十萌についてどう思う?」
「どうって?」
「立て続けに二人も死ぬなんて変でしょ。それに死因もおかしいわよ」
「確かにそうは思うけど…」
「私は十年前の事件に関係があると思うの」
海咲が言わんとすることは分かった。今回亡くなった二人と私達三人は十年前朧月島という島で神隠しにあった。そして皆その当時以前の記憶を失くしている。
海咲は二人の死の原因が失われた記憶にあると考えているのだろう。
「もしかすると、次は私達の誰かが死ぬかもしれないわ」
「海咲!」
海咲の後ろにいた円香が声を荒げた。
「そんな怖いこと言わないで」
「じゃあ円香、今回の二人の死について何か推測できるの?」
「それは…」
「他の可能性がないなら十年前のことを疑うしかないじゃない」
「でも今更十年前のことが…」
「何も分からないなら黙ってて」
海咲にきつく言われた円香は再び後ろに下がった。二人の関係は相変わらずのようだ。
一見円香が海咲の言いなりになって渋々従っているように見えるが、実際にはお互いのことを大切に思っているのは間違いない。
「そんなわけで十年前の事件について詳しく調べようと思うんだけど、流歌も一緒に調べない?」
「事件について?」
「そう。流歌も気になるでしょ?事件以前の記憶について」
事件以前の記憶‐‐‐実は私には断片的な記憶がある。それは一つの旋律、そして土俵を取り囲む不気味な仮面をつけた人々。
土俵の中には同じく仮面をつけた巫女が舞い、その周囲に囲う様に幼い巫女達が楽器を奏でている。
その儀式は次第に激しさを増し狂気じみていく。小さい巫女達の奏でる音も荒々しくなり最高潮を迎えようとしていた。
しかし中心の巫女が突如悶え始め、勢いよく振り上げた顔の仮面が‐‐‐
いつも記憶はここで途切れており、そこから先がどうしても思い出せない…
「流歌?」
顔を上げると海咲が覗き込んでいた。
「あ、昔の記憶だよね?それは私も凄く気になるわ」
「だったら一緒に調べましょ?私達が朧月島を出るときに撮った写真を覚えてるわよね?まずは両親に写真について聞いてみるわ」
「じゃあ私はお母さんの遺品を探してみるね。」
「よろしくね」
私のお母さんは事件のあった島出身で、神隠し事件後までずっと島に住んでいた。だけど、八年前に亡くなるまでの間に昔のことを聞いてもついに何も語ってはくれなかった。姓を四方月から水無月へと変えたことからお父さんも関係しているとは思うのだけど…
「じゃあこれから円香と一緒に両親に聞き込みするわ」
「私も!?」
「当たり前じゃない。それとも円香も二人のようになってもいいの?」
「うぅ~」
円香もなんだかんだで手伝ってくれるようだ。
「お互い何か分かったら連絡しましょ」
「ええ、帰り気を付けてね」
「ありがと。円香行くわよ」
すたすた去っていく海咲とこちらに手を振りながら立ち去る円香。
「お母さんの遺品…」
そう呟いて私も帰宅するのだった。
◆
翌日私達は自宅で資料を漁っていた。流歌と別れた日にさっそく両親に尋ねたが、神隠しについては大したことは分からなかった。
元々麻生家が朧月島に所縁があるらしく、時々島に観光に行っていたりしていたそうだ。しかし私を連れて島に行った際に私が島特有の病気にかかったらしく、そのまま現地の病院に入院させていたらしい。神隠しに遭ったのは入院中とのこと。発見された後は他の子と一緒に強制退院して本土に連れ戻したらしく、身寄りのいなかった円香を引き取ったのもこの時だとか。
私達の経緯は分かったが、肝心の神隠しについては未だ情報が足りない。
「朧月島について何かわかった?」
「何十年か前までは閉鎖的な島だったらしいけど、今は朧月神楽というお祭りで観光客が集まってたらしいよ」
円香は少し古そうな観光案内の本を開いて見せてきた。
「結構古そうな本ね」
「七十年代の本だよ」
「十年近く前のじゃない。そんな古い本当てになるの?」
「新しい本だと朧月島が載ってないの。あの島が今は無人島なのは海咲も知ってるじゃない」
「そういえばそうだったわね」
原因は分からないが、朧月島に今は人が住んでいないらしい。当時の島を知る手がかりは両親が持っていた一枚の写真だけである。その写真には朧月館という建物の中で並ぶ私・円香・流歌・鞠絵・十萌が写っている。この朧月館という建物が私達が入院していた病棟の名前らしい。
一体島で何があったのだろうか。現段階で分かっているのは島が今無人島だということと、朧月館が失われた記憶の手がかりだということだけ。
(この調子で十年前のことが分かるのかしら…)
ふと目の前の姿見に映る自分に注目する。
(早く記憶を取り戻さないと鞠絵達のようになってしまう。これ以上友人を失ってしまうわけにはいかない。何としても鞠絵達の死の謎を解かなければならない)
姿見を注視しつつ決意する--その時だった。
ぐにゃり
「きゃっ」
思わず両手で顔を覆ってしまう。
(今のは何?何が起きたの?)
姿見を何度も見直して確かめる。
(いきなり顔が歪んだように見えたけど、私の顔大丈夫だよね?)
訳が分からず呆然となってしまったが、姿見に映る姿はいつもの自分だ。
とにかく自分の顔が無事なようでよか‐‐
「帰ってくるの」
不意に声を掛けられて後ろを振り向くと、そこには見知らぬ少女がいた。まだ残暑が続いているというのに露出が少ない黒服を着込み平然としている。少女は言葉を続けた。
「朧月島」
朧月島に帰ってこいということだろうか。確かに朧月島に直接行けば記憶を取り戻せるかもしれない。ここで当てのない手がかりを探すよりずっといいだろう。
「海咲?」
後ろから円香に声を掛けられた。再び少女がいた所を見るが、そこには誰もいない。
そもそもここは家であり、見知らぬ少女がいるはずがない。しかし今の出来事が夢とも思えない。
「急に部屋に戻ってどうしたの?いきなりいなくなってびっくりしたよ」
「なんでもないわ。少し考え事をしていただけ」
そういえばいつの間に部屋に戻ったのだろうか。最近自分が無意識に行動している時がある。
それに常に何かを忘れている気がする。大事な何かを。
あの少女の言うとおり自分達は朧月島に帰るべきかもしれない。朧月島に行けば何か分かる気がする。
「円香」
「え?」
「すぐに朧月島に行くわよ」
「えっ!?」
---そして少女の事も調べよう。彼女は私にとって"大切なひと"の気がする。
◆
あれから私は家で手がかりを探していた。しかし島から持ち込んだ荷物というのはほとんどなく、家には最低限の物しかない。捜索して見つかったのはお母さんと当時写った1枚の写真だけである。
他に可能性があるとすれば今は誰もいないというあの島の実家だろう。まだ母の実家が当時のままなのであれば何かしらの手がかりがあるのかもしれない。
(でもあの島には近づくなとお母さんから何度も言われてた…、あの島に近づくのは私にとって良くないことだって…)
しかし現状私には他に何も手がかりがない。当時の状況を知る手段が他にないのだ。
(私は行くべきだろうか…、朧月島へ…)
心を落ち着かせようとピアノに向かう。母から遺されたものといえば家とピアノくらいのものだ。唯一の贅沢品と言えるかもしれない。
椅子に座りピアノを前にすると自然と指が動き始める。旋律を奏でながら頭に浮かぶのは鞠絵達のこと、円香達のこと、お母さんのこと、そしてお父さんのこと--
(まずは十年前私達の神隠しから始まった)
(次に本土に引っ越して姓が変わってしばらくしてお母さんが亡くなった)
(そして神隠しに遭った五人のうち二人も亡くなって…)
静かな空間にピアノの旋律だけが響き渡る。だんだんと自分の心が澄んでいく。
(姓をそのタイミングで変えたのは神隠しのときにお父さんとなにかあったの?)
(朧月島が無人島になったとき、お父さんは生きていたのだろうか?)
お父さんのことを思い出そうとするが、顔もしぐさも何もかも思い出せない。
--踊り狂う巫女を囲む幼い巫女達--
再び断片的な記憶が蘇るが、またもや同じ場所で途切れてしまう。
記憶のフィルムの終了とともに演奏も止めた。思考は未だ雁字搦めだが、ピアノのおかげで幾分か楽になったようだ。
円香から電話がかかってきたのは翌日だった。
次話からゲームのストーリーに入っていきます。