「タケミっちゃん! エアリスがぁ!」
「……」
「エアリスがぁ〜!」
「…………」
「エアリスがぁ!」
「聞こえてますよぉっ!」
今日も今日とて仕事です。夜勤です。おはようございました。
夜勤専の受付の上林さんは今日も今日とて缶ビール片手にお元気です。私に推しの死を語ってくれます。
私は今日も事務です。日勤の方々が間に合わなかった業務報告を淡々と纏めてます。
「今回のリメイクでは生きると思ったのにィ!」
……手伝って欲しいとは微塵も思いませんが、ほんの少し大人しくしていてほしい。
「武道さ〜ん、ひま」
……どうしてっ!
「先輩!? 今日の
「今日は日勤の坂井さんが全部終わらせちゃってて、仕事ないのよ」
いつもの♡マークを付けた名札に微妙に直ってない寝癖の黒髪の高身長男性。 仕事ねえのかよお疲れ様です。
「……良かったらこちら手伝ってくれませんか……?」
「え〜? 事務だっけか、良いよ〜。まだ手付けてないとこ回して〜。 ……てか
「あ〜、彼、今日も遅刻ですね」
「そっか〜。 あれでプログラミングできなかったらとっくにリストラなのになぁ。 面白い子だね〜」
先輩、それ、ジョークですよね、目が笑ってませんけどブラックなジョークですよね!?
「ざーす。すませーん」
んなこと言ってたら来ました。無造作金髪で丸々としたうちのパンドラボックス。
「30分遅刻だね〜。分給出ないからね〜」
まず怒ろうよ先輩。
「うぃーす」
「うぉー! もーりー! なんで遅刻したんだよさぁ飲もうよぉ!!」
上林さん、色々成り立ってないです。
「すみません。 ちょっとイベント走ってて……」
しかも理由がソシャゲ……!
「そっかぁ、んなら仕方ねえなぁ! 賄賂もあるしよぉ!」
仕方なくはないですが!? ちょっと上林さん、何酒瓶受け取ってるんですか、それ買収されてますよね。
「うーん、まあ俺は上司じゃないし理由聞けたからいいや〜」
先輩は先輩でそんな雑で良いんですか!?
「いや〜、来ないよりはマシじゃんか〜」
それは、そうですが。
「すみません、スマホのながら運転は公務員として如何かと思ったので家で周回せざるを得ませんでした」
守道くん!? まず出勤に間に合って!?
「えらいぞもーりー! んじゃかんぱーい!」
ああ……あぁ……。 ……うん! 駄目だこの人たち!
「すみません、窓口空いてますか〜?」
「んぁ? 空いてるから座って待ってろ〜。行けたら行くからよぉ!」
「上林さん、受付ですよね。行けたらじゃなくて行ってください」
「タケミっちゃんわーってるって。 んぇ、もーりー肩貸せぇ!」
「ういーっす」
……すごく今更なんだけど、あんな人が受付で大丈夫なんだろうか……。
「駄目だ駄目だ! 不安になる前に自分の仕事しなきゃ!」
「んぇ? 武道さん、そのデータならさっき守道くんがマクロ使って終わらせたよ〜」
……これだから仕事のできる不真面目はっ!
すると突然、普段は滅多に光らない黄色ランプが点灯した。
「あ〜、特務っぽいね〜。武道さん経験あったっけ?」
「いや……ないです」
「そっかぁ、まぁ中々ないし、夜勤来るようになったのも今年からだもんね」
「まあ、はい。日勤を超える限界集落だとは思いませんでしたが」
「まあ、いる人の殆どが無秩序だからね〜」
……多分それ先輩が一番言っちゃ駄目な台詞ですよ。
「ま、最初だし場馴れ的なのも込めて見学しようか。」
「は、はぁ。」
「ピンと来ないよねぇ、これやってるの県内でもうちの夜勤組だけだもん。」
……あっるぇ〜?北にある県本部は〜?
「ま、行こうか。 姐さ〜ん。 状況飲みながらでいいから教えて〜。」
……もう一人だけでもツッコミする人、欲しいなぁ……。