拷問官のトキサダ先輩と事務の私   作:ND内

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第三話 特務②

 

「ふんふん、ほぉ、東口 明(とぐち あきら)くん21歳。能力を活かして実家で農業をしていると。んで、今日はなんで来たん?」

 

「それを上林さんが聞いたんじゃないんですか!?」

 

 事情もへったくれもないよこの人! さっきまでの内容絶対右から左に通り抜けてたよ! 

 

 ここは世界守衛協会(WDA) 奈良県南支部の緊急夜間窓口です。珍しく稼働してます。私が配属されてそんなに経ちませんが夜間に人が来てるのは初めて見ました。

 

「え、あ、さっきも言いましたけどうちの妹を助けてください!」

 

 ……ほら、さっきも言ったってよ。上林さん。受付対応って知ってる? 

 

 

 

 事情を伺うと、どうやら誘拐らしい。しかも近隣ではなく北部から来たそうで、こんな夜分に……お疲れ様です。

 

 警察に通報した結果、数時間後に能力者が絡んでいるので此方を紹介されたのだとか。

 

「うちは両親がおらんから、あいつには幸せになってほしくて、生活で苦労せんようにようやく仕事も安定してあいつの大学へのお金もなんとかなってきた頃やのに!」

 

 当人様も物凄く焦ってパニックになってらっしゃるって……上林さん。

 

「あーはいはい、そしたら動くからその電話した警察署の電話番号と担当警官の名前、書いてね〜」

 

 なんて事務的である。普段は酒飲むし、今も仕事がすごい雑だけど……。

 

「はいはい姐さん、ありがとうね〜。後は俺が変わるよ〜」

 

「んぉ? ときさだちん! おなしゃ!」

 

 そう言って奥に戻った。 あ、手提げ鞄から鬼殺し出してる。おい、飲むな。

 

「……はい、ありがとうございます。では今から早速動くことになります。警察機関とは別(世界守衛協会)の規定により、通報者のお兄さん本人もご同行頂くことになりますので、こちらの同意書のサインと本人確認の出来る証明書のコピーを取らせて頂きます。 宜しいでしょうか?」

 

「はい! お願いします!」

 

 ……なんで拷問担当の先輩の方が受付担当の人(上林さん)より受付対応うまくて早いんだろう。 ……適材適所ってなんだっけ? 

 

「タケミっちゃん、全部ときさだちんがやればいいんじゃって考え、顔に出てるよ」

 

「わかるならもう少ししゃんとしてください上林さん」

 

「だってお酒とゲームと推しが呼んでるんだもーん!」と泣き上戸に喚き散らす27歳。アンタ本当にそれでいいのか。

 

「ほら、武道さんと姐さんも、特務の準備ですよ〜」

 

 先輩も間の抜けたような感じでどうしてこう上林さん(酒クズ)に甘いのか……。

 

「やだやだ! めんどくさい〜!!」

 

 恥をかき捨て駄々をこねる27歳。だからアンタ本当にそれでいいのか。

 

「姐さん、帰り、コンビニ、チータラ」

 

 先輩が暗号の様な簡潔文で上林さんに語りかける。

 

「ときさだちん……それは……」

 

 え!? まさか上林さんにもそんな良心なんてものが……!? 

 

「カニカマと塩辛! それとビールとスミノフも買っていいよな!!」

 

 ……うん

 

 知 っ て た 。

 

 

 

 

 ……さぁ! やって参りました! 特務ですよ特務! 

 

 警察の方から伺った位置情報に着きましたよ! 出ました! 田舎特有の入口がかっ開いてる癖に眼前が国道でくそ入りづらい系工場! 

 

 私も勿論能力持ちですが、今回は後方で見学。 先輩方の背中を見ることにします。

 

 能力は基本的に個人個人細かく異なり、天啓が如く舞い降りてきた漢字二文字がそのまま能力名になります。

 

 ちなみに私の能力は『殴盾(ナックラー)』能力で出てきた盾で殴るスキルです。盾なのに。

 

「『在呼(アルコール)!』」

 

 おっと上林さんが能力を発動しました。職員間では情報共有されてるので勿論知ってます。この世に存在する万物を呼び出す能力。うん。字面がクソ強い。能力に酒類関係ないけど。

 

 ちなみに能力の制約で呼び出せるのは無機物に限るらしい。有機物を出すと物に応じて半端じゃないクールタイムと虚脱感に襲われるとか。おっそろし。

 

 ちなみに呼び出したものは一定時間で消える。だからお金稼ごうとしても駄目らしい。(本人が酔ってるときにその時の悲しさすっごい聞かされた)

 

 だから今呼び出してるダイヤモンドを詰め込んだガラス瓶とか言うリアルブルジョワ鈍器も時間で消える儚き夢らしい。

 

「くそぉ! これが売れたらスミノフ! スミノフゥゥ!!」

 

「なんなんだよあんた! くっそ! 楽な仕事じゃないのかよ!! 報酬に合ってねえぜ!!」

 

「ヒッヒッ……ヒエッ」

 

 ごめん上林さん。私も犯人の言う気持ちがどっちが悪役かちょっとわからないのでわからないこともないです。だって犯人さんの能力らしき飛行物体も恐怖が伝播してるのか挙動不審だし、人質だったはずの妹さんは多分あれ上林さんに震えてるし。

 

「あの、あの人にお酒を納めたほうがいいですかね」

 

「間違ってはいますが処世術としては正解だと思いますよ」

 

 ……ええ! 正解だと思いますともっ!! お兄さん! 買ってあげて! ついでに酒盛りも付き合ってあげてくださいっ!! 

 

 そんなやり取りをしていたらもう時貞先輩に拘束されていた。

 

「はーい拘束しますから、O☆HA☆NA☆SHI☆なら後でいっぱい野郎の俺としましょうね〜」

 

「誰が野郎なんかとっ!」

 

「俺だって野郎相手は嫌だよ! 壁にもなりたくない!」

 

 先輩もよくわかんないところで怒ってるし……。

 

「今日もツッコミお疲れ様です。 ……えっと、たけみちゃんさん?」

 

 もりどーくーん!! 君は私の名前を覚えてぇぇ!!

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