「♪〜♪〜〜♪♫〜♪」
学校の窓辺でご機嫌に鼻歌を歌う俺。嬉しいことがあったのかというとそうでもない
ただ歌っているのが好きなだけ。でも人前で歌うの苦手だ。誰かに歌を聞かれていると、なんだかむずかゆくなる。幸い、今は放課後で教室には人がいない。本当なら早くカラオケで歌って帰りたいのだが…
「○○君」
そう思っていると一人の女性が話しかけてきた
彼女は同じクラスのあずきさんだ。彼女は学級委員長も努めていて、成績優秀で品行方正。高嶺の花という言葉が一番似合う人。真面目でクラスの人から信頼が置かれている
そんな彼女が、あまりクラスで浮かない俺に話しかけてきた理由とは―――そう、学生なら一度は経験する清掃だ。しかも二人だけで
だが幸いなことに、そこまでハードなことはしない。せいぜい床を掃いたり、黒板をキレイにする程度だ
「掃除、始めよっか!」
「うん。じゃあ、あずきさんは黒板をキレイにしてくれる?俺は床を掃くから」
「うん、オッケー!」
分断して俺たちは掃除を始める
パッパッっと床を箒で掃くと、ケシカスやらシャー芯やら汚いものがたくさん集まる
勉強の成果だと言われれば何も言えない。まぁ反論するつもりはないからなんとも言えないが
―と、そこで俺は地面に落ちている折り疂まれた紙を見つけた。いつもなら無視して捨ててしまうのだが、今日はなぜか気になってしまって、その中を見てしまう
その中身は女子の赤裸々に綴られた恋のメモみたいなものがたくさん書かれているものであった
クラスでもイケメンのやつの名前や、有名なタレントの名前が書かれていた
人の恋路を邪魔するのは野暮かと思い、その紙についたゴミを取り払い、近くにあった机に置こうとしたところ…
偶然その紙に自分の名前が書いてあることに気づいた
(なんだ?なんで俺の名前が…いやでも俺とは限らないか。普通の名前だし)
そう思うことにして紙を近くにあった机に置いた
その時、あずきの少し苦しそうな声が教室に響く。黒板をキレイにしているあずきの方を見ると、背伸びをして必死にチョークを消そうとしている。どうやら高くて届かないところがあるようだ
俺はほかの黒板消しを手に取って、その届かない場所を消してあげる
「よっ…これで大丈夫?」
「あ、ありがとう…」
「ゴミとかが出たらまとめておいてくれ」
「う、うん」
そういって俺は再び掃除に戻る
しばらくして掃除は終わり、ゴミ捨てに行こうと思ったところ、あずきが止め、ゴミ捨てに行きたいと申し出た。話を聞くと、俺の方が頑張っているから、休憩してほしいとのことだった
女の子に行かせるのもどうかと思ってしまうが、あずき本人が行きたいと申しているんだ。断る権利は俺にはない
「じゃ頼むわ。俺は掃除ロッカーとか整理しておくから」
「行ってくるね」
「おう、いってらっしゃい」
ゴミ箱を持って教室から退出するあずき
俺は言った通りあずきが使ったものなどを含め、清掃道具をロッカーにしまって少し整理する
気分が乗っていれば近風にロッカーを整理するほどの気分になれる。そして、少し楽しくなって歌を口ずさみ始めた
「♪~♪~♪♪~♪」
放課後で人がいないことをいいことに、すこし声を出して歌い始める
やっぱり歌を歌うことは好きだ。だけど、こうやって歌えるのは誰もいないから
そう思っていたのだが…
「いい歌声だね」
「うわぁぁぁぁっ?!」
突然声をかけてきたのは、ゴミ箱を持ったあずきであった
―人に聞かれていた。とても恥ずかしい。こんなに粗末な歌を誰かに聞かせるなんて…
そうやって一人で悶えていると、あずきは軽めに歌い始める
その声はとてもきれいで、南米に住む美しい鳥、ケツァールの鳴き声の様であった
――いつまでもその歌声を聞きたい。彼女がこんなにきれいな声で歌うことを知らなかった
そうしてあずきは歌い終わると、口を開いてこういった
「人前で歌ったの初めてだなぁ~」
「とてもきれいだったのに、初めてなんだ」
「うん。君の歌声に感化されちゃった。さっ、一緒に帰ろ?」
「一緒に―って俺と?」
そうやって答えると、君以外誰もいないよとほほ笑んで笑う
俺のようなさえない人間が、高嶺の花のあずきと一緒に帰るなんてと、少し心の中で思うお、それはどうやら口に出ていたようで、あずきはまたフフッと笑う
「君はさえない人じゃないよ。君が気づかないだけで、クラスの人は結構君に信頼を置いてる。だって、君は些細なことでも助けてくれるもん。それに優しい。裏では結構人気あるんだよ?」
そんなことをいうあずき。俺は嘘だと思った―――言った人があずきでなければ
学級委員長でまじめな彼女が嘘をつく意味がない。それに人気があるなんてこと思ってもみなかった
あまり人とはしゃべらないし、社交的ではない。だから人気など自分には関係ないと思っていたのだ
「帰ろ?」
そう言って顔を傾げる彼女に俺は負け、返事を返した
「あぁ」
「やった!いっつも君早く帰っちゃうから〜一緒に帰ってみたいなーって思ってたんだ〜普段は何してるの?」
「早く帰る時は大抵カラオケに行ってる」
「へぇーそうなんだ!今度一緒にカラオケに行こ!君の歌声もっと聞きたいからさ」
他愛のない2人の会話は、次第に教室から遠ざかっていき、やがて教室には、夕焼けと1枚の紙だけが残る
そこにどこから来たのかも分からない風が紙を浮かせ、紙は広がり書かれていることがよく見えるようになってしまう
そんな紙のど真ん中に彼女の綺麗な字で丁寧に書かれた1文が目に留まる
『○○君と一緒に帰ることが出来ますように〜AZKi』
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