SDガンダム物語(ストーリー) 作:千生鉄斗羅
第1章 旅立ちの勇者
アーサーガンダムMk-Ⅲは、困り果てていた。
ある日、ラクロアに戦乱の炎をもたらしたサタンガンダムの軍勢。いや、こちらは何もできないのだ。
アーサーは、若き王である。父より継いだこのラクロアを荒らされるのであれば、自ら迎え撃つ覚悟を持った、正義感の強い男でもある。しかし、臣下たちによって、「今は動いてはなりませぬ」と制止をかけられている状態だ。また、腹心にして友人のマーリンガンダム曰く、
「今君が動くと、間違いなくこのラクロアは破滅する。今の君では、聖剣を制御し切ることは不可能だ」
とのことである。マーリンの予言はこれまで何度も的中しているため、その言葉を信じるアーサーだが、サタン軍はなんとかしたい。
──できれば、和平がいいんだけどな。
アーサーは、犠牲を嫌う。すでに犠牲になる覚悟を決めている者や、アーサー自身が犠牲になることはともかく、民が犠牲になるのは絶対によしとしない。
だが、サタン軍は、日に日に勢力を増している。
──どうすれば、どうすればいいんだ。
サタン軍に挑んだ者たちは、皆消息を絶っている。早く、この事態を打開したい。
そこで、アーサーは、キャメロット最長老の賢者・レビルガンタンクに、意見を仰ぐことにした。ラクロアにも、亀の甲より年の功に似た意味の諺があるのだ。
「レビル殿。此度の事態、どのように打開すればよろしいでしょうか?」
レビルは、「そうですな」と言い、書棚より一冊の本を持ち出した。
「それは?」
「スダ・ドアカの神話じゃよ。ワシらが生まれるずっと前から、語り継がれてきた。ここに、そのヒントが書いてある」
「ヒント・・・・・・?」
「そう、ヒント。えーと、どこじゃったかな・・・・・・」
頁をパラパラとめくり、目当ての章を探す。
「おお、ここじゃ、ここじゃ。アーサーよ、これを見るが良い」
「これは・・・・・・、第二十九節『予言』?」
「うむ、ここには、『いずれ悪魔がこの世を襲うであろう』と書かれておる。じゃが一方、『騎士は目覚め、悪を祓いて、黄金を呼び戻す』とも記されておる」
「騎士・・・・・・? 王宮の兵隊ではないのですか?」
レビルは、首を横に振る。
「ところがどっこい、そうでもない。この騎士とは、すなわち
「しかし、市井の者に戦わせるわけには・・・・・・」
躊躇するアーサー。レビルは、年長者として物申す。
「本当に、そう思っとるかのう?」
「と、言いますと?」
「民の中にも、サタンの暴虐を許せぬ者はおるに決まっとろう。お主の考えも、平時では最もよ。じゃが、今は綺麗事では済まされんのだ。少しでも勝ちの目があるのなら、それに賭けるしか、今のワシらにはできぬ」
アーサーは、目を閉じ、思案する。
そして、決断した。
「・・・・・・もはやこれしかないのなら。その
「わかった。実を言うと、調べはついておる。あとは、お主の許可を得るだけだったのじゃ」
「まさかの後出しジャンケン!?」
アーサーは、今日一番の驚愕を露わにした。
∀∀∀
城下町に、少年はいた。名を、シーザーガンダム。後に──というかこのあとすぐに、
彼は今、呑気に眠っていた。気持ちよさそうに、寝息を立てて。なんなら、鼻提灯を作っていた。
ここで少し、彼についての話をしておこう。
彼─シーザーは、生まれた時より、右手の甲に不思議な紋様が刻まれていた。我々の世界でいうところの、ハートの王様のような形である。もっとイメージしやすいようにいうと、『キング・オブ・ハート』の簡易版といった出立である。もっとも、この世界にシャッフル同盟が存在するわけではない。これは、偶然の一致である。
幼い頃からチャンバラごっこ(ラクロアでは、決闘ごっこという。チャンバラごっこと大差があるわけではない)が大好きで、1対多のシチュエーションが好みだった。その中で、自然と戦い方も心得ていたのである。また、あくまでゴッコ遊びなので、相手に怪我をさせるわけにもいかない。自然に、相手を傷つけずに倒すやり方も身につけていた。
そんな彼の家に、王宮の者がやって来た。
「シーザーはいるかーっ!」
その声に、飛び起きるシーザー。
この日は、彼の休日である。彼の本業は大工である。普段の疲れを取るために、休日はこうしてぐっすり眠ることにしているのだ。
だが、その安眠はこうして打ち破られた。
「うーん、一体なんです・・・・・・?」
「君が、シーザーだね?」
「ええ、そうですが、何かあったんです?」
「王がお呼びだ。早急に、城に来てもらいたい」
「えーっ!?」
彼は、驚愕した。まさか自分が王に呼ばれるとは。俺何やらかしたかなーと言うのが、正直なところである。
その旨を話すと、
「いや、罪を犯したわけではないし、それなら然るべきところに引き渡す。君の、右手の甲に関することだ。ここで話すのは少しまずいので、城に来てもらわなければならないのだ」
と返された。
「は、はあ・・・・・・」と生返事を返し、シーザーは王宮に向かうこととなった。
∀∀∀
「よく来てくれた。まあ、そこで楽にしてほしい」
アーサーは、できる限り親しみやすさを全面に出し、シーザーに語りかける。だが、シーザーはとても緊張した面持ちだ。当然だろう、まさか自分の人生で王に謁見する機会があるとは。まして、こうしてフランクに話しかけられるとは。そんな衝撃と慣れない環境から、シーザーはガチガチに緊張していたのだ。
「えーと、なぜ俺がここに・・・・・・?」
「それはな、右手の甲をみればわかる」
言われるがままに、シーザーは右手に目をやる。紋章が、光った。
「これに何か、関係が・・・・・・?」
「そう。それは、
「え? ・・・え? 俺が?」
「そう、君だ」
シーザーは驚愕した。
「え? 俺? 嘘でしょ!? だって俺、自分の記憶に少し違和感を持つような、一般的に頭がおかしいとされるような
「それでも、神話にはそう書かれている」
「そんなぁ・・・・・・。よしんば俺がそれだとしても、戦いは──」
「幼い頃からチャンバラをよくやってたんだろう? それで十分だ。あまり人死には出したくない。それに、今私が出ると、どうも最悪の未来に繋がるようでな。エクスカリバーも満足に使いこなせん」
「だから、自分では戦わない・・・・・・ということですか?」
「おい貴様、無礼だぞ」
衛兵が口を挟むが、
「いや、いい。口を挟まないでくれ。もしかすると彼は、マーリン以来の友人になってくれるかもしれん人材だ。同い年くらいというなら、初だ」
と制止。マーリンは確かに友人ではあるのだが、その実年齢がわかっていない。自分と同年代のような姿ではあるのだが、時折レビルと話す姿は、まるで老人会のようにも見える。
──彼は、一体何者なんだろうな。
それが、アーサーの感じたことである。そして、王族というだけあり、世間からは隔絶されているというのは自明の理である。一応友人と言える者はいるにはいるのだが、貴族たちなので、自分に取り入って好待遇を得たいだけというのが透けて見える。そう、本音で語り合えぬのだ。だからこそ、心のどこかでそういう存在を求めていた。
──できれば、同性で。
外界とはあまり関わらず育ったために、女性免疫というものが絶望的にない王であった。
それはそれとして。
「え、俺が・・・・・・友人に?」
「そう。そして、騎士となってラクロアを救ってほしい。・・・・・・いや、それだとなんか狡いな。会って間もないが、友情を利用するようで嫌だ」
「真面目なんですね」
「いや、融通がききにくいだけだ。この話は一度置いて、ラクロアを救ってくれるか?」
アーサーは、再度、問う。
「でも、悩んでるんです」
「何に?」
「記憶、です」
そう、シーザーは、ここ数年の間、自分ではない何かの、しかし己にも見える何かの記憶を夢として知覚していた。黄金の体を持つ、
「それと、故郷の彼女」
「な・・・・・・、か、彼女・・・・・・?」
故郷には、クレオパトラという彼女がいる。幼馴染で、所謂クラスのマドンナというやつだ。遠距離ではあるが、週に1回手紙を送り合い、交際している。もう少ししたら、プロポーズするつもりでいる。
「ええ。もうとても可愛くて、彼女のことならどれだけでも話せます」
アーサーは、密かに嫉妬してしまった。自分にあるのは許婚で、交際などしたこともない。詰まるところ、羨ましいのだ。しかし、決して寝取ってやろうとか、嫉妬を表に出そうとか、思ったわけではない。ガンタンクは、若い頃、具体的には50年前、異国にいたことがあるという。そこの言葉に、「人の恋路を邪魔する奴は、馬に蹴られて死んでしまえ」「人を祝福できなければ、自分に祝福などこない」というのがある。それを思い出したのだ。
だから、
「そうなのか。それは、一度会ってみたいものだ」
と言うに留めた。
「つまり、その娘と結婚する前に死んでしまうかもしれないことが不安だ、と、そう言うことなのか?」
「ええ、恥ずかしながら」
この頃になると、緊張も解けてきたようだ。
「それなら、心配はいらない。こちらで、鎧を用意しているのだが、これの性能は折り紙付きだ。伝説の神器には及ばないだろうが、きっと力になり、お前を守ってくれる」
「そう、ですか。・・・・・・わかりました。やります!」
シーザーは、覚悟を決めた。だがそれは、ラクロアを守るという大義ではない。彼女のクレオパトラにいいところを見せたい、そして故郷の友人を守りたい。そういう、小さな覚悟であった。
「しかし、そうは言っても一人では心許ない。サタン軍の兵力は、凄まじいと聞く」
そこに、レビルが意見する。
「それならば、ワシも同行しよう。
「と、言いますと・・・・・・?」
「経験不足じゃ。これはなにも、戦いの経験ではない。今まで生きてきて積み上げた経験、年季の差じゃ。こう見えてワシも、戦い方は心得ておる」
「ですが、レビル殿。あなたはもう高齢の身。老体に鞭を打つのは・・・・・・」
「良い、アーサーよ。もしこの戦いでワシが死ぬならば、それは天命よ。受け入れるしかないのじゃ」
「しかし・・・・・・」
アーサーは、ガンタンクが出るのをなんとしても止めたいのだ。
「良いか、アーサーよ。異国には、『亀の甲より年の功』という言葉がある。ワシの知恵は、戦いに関することが多い。このまま腐らせるのは忍びないのじゃ。それに、ワシも、見てみたい。伝説が成就する、その刻を・・・!」
結局、アーサーは、折れた。レビルは、シーザー──
その二日後、シーザーは正式に
そして、その日のうちに、仲間となる人物を探しに出かけたのである。
次回を待て! BY TETORA SENNARI
いかがでしたか?
本作では、
また、賢者ガンタンクの本名も、本作ではレビルとしています。
最後の表記は、コミックワールドを参考にしました。ラクロア編、
次回は、仲間との邂逅を描く予定です。
どうぞ、お楽しみに。
感想、評価をよろしくお願いします。