SDガンダム物語(ストーリー)   作:千生鉄斗羅

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大変長らくお待たせしました、天宮(アーク)編第3話です。
結構タイトル詐欺な気がしますが、許してください。


第3話 黄泉がえり・大蛇飛駆塞虫(オロチビグザム)

 九尾犬(バウンド・ドッグ)を下した一行は、悪無覇域夢山(アナハイムさん)に着々と歩みを進めていく。

「まさか、あんな強敵がいるとはな」

「ええ、予想外でした。油断さえしていなければ、多少はマシだったと思いますけどね」

「だが、いい足しにゃあなったんじゃねぇか?」

 天地は、飛駆鳥(ビクトリー)の方を見て言った。飛駆鳥(ビクトリー)は、この度の初勝利にて少々浮かれていた。

「ですが、これで終わりではないはずです。まだ、新生闇軍団は存続しているはずですから・・・・・・」

「浮かれることなく、堅実に行きたいものだ」

「ですね」

 そう言っている間に、日が暮れてきた。

 向こうから、人が走って来るのが見えた。その人物は、黄金にも橙にも見える色をしていた。ところどころに挟まる青が、補色としてさらにその輝きを際立たせている。

「・・・・・・おや? あの人はもしや・・・・・・」

 そしてその人物は、飛駆鳥(ビクトリー)にも見覚えがあった。

飛駆鳥(ビクトリー)どの!」

 その人物は、風車の百式。かつて、烈光=衛府弓銃壱(エフキュウジュウイチ)と共に旅をしていた忍者である。彼の操る花風車は、気分さえ乗れば百発百中である。気分さえ乗れば。気分さえ乗れば(大事なことなので二度表記した)。飛駆鳥(ビクトリー)は、幼い頃、父の武勇伝をよく彼から聞いたものである。

 百式は、新世大将軍の命により悪無覇域夢山(アナハイムさん)を警戒していたが、ざくれろからの連絡もあり、こうして助太刀に参上したというわけだ。

「百式さん!」

「いやはや、ご無沙汰しております。・・・・・・と、そちらは・・・・・・?」

「ああ、彼らは、閃光結晶(ビームクリスタル)鳳凰(フェニックス)に授けられたという超将軍。全部で七人居るらしいんだけど、今は四人だけ。それから、ワカとトノ。なんでも、未来から来たらしい」

「ふうむ・・・・・・。まあ、長旅で疲れたでしょう。この辺りには宿場町があります、泊まっていきましょう。超将軍の方々も、異論はありませんな?」

 もちろん、誰も異議を申し立てなかった。何せ、かなりの長旅になる。こまめに休息を取らなければ、いずれのたれ死んでしまうだろう。

 彼らが泊まった宿では、それはそれは美味な料理が提供されていた。

「これがお品書きだロン」

「しっかり読んで選ぶポン」

 独特な語尾の料理人である。

「百式さん、この人たちは?」

「ああ、彼らは、蒼天丸と紅天丸。突然現れた、スゴ腕の料理人なんだ。影舞乱夢(エイブラム)出身とは言っているが、あいにく真実かどうかわからない。まあ、鎧の形からしてそうだとは思うんだが・・・」

「・・・・・・聞き慣れぬ音がする。明らかに大自然の法則に反するような音だ」

「その通り。彼らは、"こんろ"なる謎の道具を使って料理をしているんだ。まあ、美味しいからいいんだが」

「いいんですね・・・・・・」

 そう。この二人の料理人(シェフ)は、ワカ、トノと同じく未来からやってきたのだ。この時代の天宮(アーク)には、コンロなど当然存在しない(戦車とか鉄砲、ライフルなんかが平気で存在している世界観なのにと思うかもしれないが、まああれはからくり一門のせいということで・・・・・・。そうでなくとも、コンロにはガスが欠かせない。まだ天然ガスなどは発見されていないと考えるべきであろう)。しかも、特に紅天丸の場合、姿形が明らかに変なのだ。我々の世界ではお馴染みのシェフスタイルは、やはりこの時代には存在していない。そのため、彼は変人と見られているのである。だが、その腕は折り紙つき。数ヶ月経った今では、この宿場町に欠かせない存在となった。

「そういえば、ここはとても安全に思える。何か、対策でも練っておられるのですか?」

 雷鳴が訊く。破悪民我夢(バーミンガム)の町に近いということもあり、闇軍団にいつ襲撃されるかわからないであろうに、なぜ住民は危機感を抱いていないのか──。それは、超将軍一行が最も気になっていたことである。

「ああ、それはですね。近頃、謎の幻獣が現れるようになったのです」

「幻獣、とな?」

「ええ、獣王殿。といっても、四聖獣の類ではありません。目撃情報をまとめて特徴を洗い出したところ、まるで人が乗っているようだとか、鍋蓋みたいなものがついてる、包丁みたいなのがついてる、まるで麒麟のようであると言ったものが挙げられました。まあ、無害と言えば無害なので、上奏はしておりませんがね、ハハハ」

 幻獣──麒麟。百式のいう麒麟とは、怒麒麟(ドッキリン)のことである。無論、彼らが知る由はないが。蒼天丸と紅天丸の兄弟は、素性の知れぬ自分たちをこの宿場町に置いてくれ、さらに料理まで作らせてくれたことに対する恩返しのために、夜な夜な現れる闇軍団の兵士たちを蹴散らしているのである。

 彼らは、うどんを食べた。お品書きを読んで「ウ〜ン」と唸っていたところ、「うどんだポン」「うどんを作るロン」と勝手に判断されてしまったがゆえである。これが、この二人の悪癖である。元とはいえ諜報部員のくせに、人の話を最後まで聞かず早とちりしてしまうのである。しかし、やはりというべきか、味は絶品。文句を言おうとしていた彼らも、思わず黙ってしまった。

 

***

 

 その夜のこと。

「おのれ、今まで煮え湯を飲まされ続けていたが、それも今日までよ! この宿場町を滅し、我ら闇軍団の面目躍如といこうではないか!」

 そう意気揚々と叫ぶのは、闇軍団は死霊武者の一人、武者怒武(ドム)である。モノアイが特徴的だった彼だが、よりにもよってその位置に、死霊武者の特徴である目玉が出現してしまっている。もちろん、きちんと前は見えているのでご安心を。

 彼は、配下の兵士五十人を引き連れて、宿場町に向かっている。

 ズカズカ歩いていると、程なくして到着した。

「ヨォシ野郎ども! 突撃じゃあ!」

 大声でそう叫んだところ。

「うるさいポーン!」

「夜なんだから静かにするローン!」

 と、怒号が飛んできた。蒼天丸と紅天丸である。翌日の仕込みをしていたのだが、闇軍団が騒音を撒き散らすので、怒って出てきたのだ。

「おのれら、いつもいつも邪魔をする武者どもか! 今日こそぶっ殺す!」

「やかましいポン!」

「お前たちの方を料理してやるロン!」

 二人は、鎧を装着した。といっても、蒼天丸の方は、エプロンのような部分が肩鎧となり、ツノが百八十度回転しただけであり、むしろ鎧変形というべきであろう。また、紅天丸の鎧は、鍋とコンロである。初見だと、度肝を抜かれること間違いなしである。

「フン、あの姿にさえなられなければこちらの勝ちだ! 者ども、かかれェーッ!」

 怒武(ドム)は、宿場町を揺るがすほどの大声で命令した。だが、それが逆に、宿泊客たちの逆鱗に触れた!

「うるせーっ!」

「うるさいですね!」

「やかましい!」

「今何時だと思ってんだ!」

「せっかくたっぷり寝てたのに!」

「ジャングルだってもっと静かだぞ!」

「うるさくて眠れないですぅ!」

 そう、超将軍一行である。明日に備えて熟睡しようとしていたにもかかわらず、怒武(ドム)の罵声に叩き起こされたので、怒りが頂点に達しているのだ。人が激怒する瞬間というのは、趣味を邪魔された時、三大欲求(食欲、性欲、睡眠欲)を満たしている時などである。それは、武者とて例外ではない。もちろん、臨戦体制の中であれば話は別だ。いつ襲って来てもいいように備える必要がある。だが、ここは宿場町だ。いかに常在戦場といえども、無理があろうというものだ。

「ぬう、なんだ貴様ら! と言いたいところだがしかーし! いかに超将軍とやらでも、寝起きならば大した脅威にはなるまい!」

「みくびってもらっちゃあ困るね! オイラはジャングル育ちの野生児だ、寝込みを襲われたことだって何度もあるんだぜ! 行くぞ、円従烏賊(マルジュウイカ)!」

 トノは、目が冴えていた。ジャングルは、何が起こるかわからない領域だ。円従烏賊(マルジュウイカ)が危害を加えないということはわかっているのだが、それ以外の生物についてはその限りではない。まあ、トノの場合、鈴輪利(リンリンリ)という道具を利用して沈静化を図ることができるのだが。

 鈴輪利(リンリンリ)を鳴らし、トノは叫ぶ。

 それは、大将軍の長男としてはあまりにも異質な姿への掛け声。

 それは、友と一つになり、力を最大限発揮するための姿となる掛け声。

融合強友(ユウゴウゴウユウ)!」

 ワカは、円従烏賊(マルジュウイカ)を鎧として身にまとった。

「我こそは火威獣丸(カイジュウマル)! 大将軍の長男にして、ジャングルの王なり!」

「うぬう、何がぢゃんぐるの王だ! というか、ぢゃんぐるとはそもそもなんだ! いや、そんなことはどうでもいい、者ども、やれぇい!」

『オオ!』

「兄上、大丈夫ですか?」

「任せとけ!」

 寝起きの超将軍たちは、威勢よく飛び出してきたはいいが、なにぶん装備が不完全だ。荒鬼(コウキ)はマントと盾を、雷鳴は雷砲・稲妻を忘れてしまった。獣王も鎖凄勢刃(チェーンセイヴァー)を、天地は火器類全てを、飛駆鳥は刀を、忘れている。

 また、ワカも、鬼の鎧を召喚する為の気力、装着に要する体力がないという有様であり、まともに動けるのは火威獣丸(カイジュウマル)のみなのである。

 火威獣丸(カイジュウマル)は、死霊武者二百人を一人で相手することになる。側から見れば多勢に無勢、火威獣丸(カイジュウマル)の敗北は必至である。事実、怒武(ドム)もその部下も、己らの勝利を確信していた。

「ん・・・・・な・・・・・・」

 四本の触腕が、二百の死霊武者を一撃で葬り去るのを見るまでは。

「なんだ、期待はずれだな。ああやって威勢よく叫んでた割に、大したことなさそうだね」

「貴ッ様ァ! どんなカラクリを使ったァッ!」

「そんなこと言われてもなー。見ればわかるでしょ。そうだろ、ワカ?」

「もちろんですぅ! 兄上と円従烏賊(マルジュウイカ)、二人の絆のコンビネーションは抜群、人獣一体とはまさにこのことですぅ!」

 読者諸君には、火威獣丸(カイジュウマル)が何をしたかについて種明かしをしておこう。

 円従烏賊(マルジュウイカ)の触手は、BB戦士では、理論上繋げればどこまでも伸びるという仕様だった。それを加味して、本作では、円従烏賊(マルジュウイカ)の触手は、四本全てが目視できる場所であればどこまでも伸ばすことが可能ということになっている。さらに、BB戦士のキットを見ると、円従烏賊(マルジュウイカ)の触手は、節ごとに鋭利な刃物のような造形が見られる。ここより、本作では、ノコギリの刃のような部分は、自分の意思で切るか切らぬかを選べるようになっているとする。

 ここまで言えば、もうお分かりだろう。

 そう、火威獣丸(カイジュウマル)は、四本の触手で、一本あたり五十の死霊武者を一瞬にして切り捨てたのである。

「な、なんだとォ!? 斯様な武者が存在しておったとは・・・・・・! ええい小癪な!」

「そうやって虚勢を張ってはいるけどさ、もうお前一人だぜ? どうするつもりだい? ま、オイラは逃げも隠れもしないけどさ」

 と、火威獣丸(カイジュウマル)怒武(ドム)を挑発する。

「貴ッ様ァ〜ッ! 許せん! もはや、ただでは済まさんぞ!」

 どうやら怒武(ドム)の沸点は、想像以上に低かったようだ。あっという間に血が上り、一心不乱に刀を抜き放ち、火威獣丸に襲いかかる。

 だが。

「全く、馬鹿の一つ覚えじゃないんだから」

 怒武(ドム)の四肢は、円従烏賊(マルジュウイカ)の触腕によって大の字に戒められ、身動き一つ取れなくなってしまった。一気に切り裂くようなことはしておらず、相当意地が悪い。

 そもそも、殺そうと思えばいつでも殺せるのだ。殺し切らないのは、良心が痛むからではない。

火威獣丸(カイジュウマル)殿、感謝するロン」

「でも、拘束は解いてほしいポン」

『あやつは、我らの手で直接討たねばならないポン(ロン)!』

 そう、毎晩のように迷惑を被っている、蒼天丸・紅天丸兄弟にとどめを譲るためである。

「よーしわかった。じゃあ、大将軍の長男として、これだけは命令しておこう」

 火威獣丸(カイジュウマル)は、少しずつ戒めを解く。

「絶対に」

 少しずつ、怒武(ドム)の体の自由が戻ってくる。

「トドメを刺すんだ」

 怒武(ドム)の戒めが、完全に解かれた。

「よくもこの俺をコケにしてくれたなあ! 今こそ逆襲してやる!」

 棍棒を構え、火威獣丸(カイジュウマル)に攻撃を仕掛けようとする。

 だが。

『強ッ! 大ッ! 合ッ! 体ッ!』

 蒼天丸と紅天丸は、心と体を一つに融合させた。その姿はまさに、麒麟そのものであった。ジラフ、と英語で呼ばれる、動物園やサバンナにいるキリンではない。朱雀、青龍、玄武、白虎。その中央に位置するとされる聖獣の姿である。キリンビールの絵を思い浮かべてみると、想像しやすいだろう。

 これぞ、蒼天丸と紅天丸の最強の姿、努麒麟(ドッキリン)である。

「なんだありゃあ・・・・・・。ホントに武者だってのかよ・・・・・・」

 代表して、天地が思わずつぶやいた。ワカと火威獣丸(カイジュウマル)は一切動揺していないところから、すでに慣れていることがわかる。

 これまで(七人の超将軍編まで)に登場した武者の中で、四足歩行形態になれるのは、武者精太(ゼータ)、武者荒烈駆主(アレックス)、千生大将軍/雷帝千生神将軍、頑駄無(ガンダム)真駆参(マークスリー)、新世大将軍、やや変則的な形ではあるが(シシ)頑駄無(ガンダム)の六人である。当代では、真駆参(マークスリー)と新世大将軍、千生のみであり、滅多にお目にかかれない。まして、戦闘ならば尚更だ。それゆえ、超将軍と飛駆鳥(ビクトリー)には奇特に映ったのだ。

「そう。オイラたちの時代の、頼れる武者さ」

 火威獣丸(カイジュウマル)は、誇らしげに言った。

 怒麒麟(ドッキリン)は、怒武(ドム)を睨みつけた。

「げっ」

『逃すか!』

 嗎をあげ、怒武(ドム)に狙いを定め、怒麒麟(ドッキリン)は駆け出した。

『くらえ、必殺ッ! 蒸麒獣麟(ジョウキジュウリン)ッ!』

「ごひゃあああああ!?」

 全力の突撃に加え、さまざまな武装の総攻撃を喰らった怒武(ドム)は、ついに蒸発した。こうして、宿場町に、静かな夜が帰ってきたのである。

 翌朝、超将軍たちは宿場町を発った。

「彼らは、多分オイラたちが大将軍の子だとわかってて、あえて触れなかったんだと思う。そうでなくとも、今の大将軍は新世大将軍、初代から数えても五代目の治世だ。下手なことを言ったら混乱が起こるってわかってたんだろうね」

 トノは、二人の気遣いに感謝した。

 

∀∀∀

 

「新世大将軍を連れて参りました」

「よくやった、信長よ。下がれ」

「はっ」

 呪術師遮光(シャッコー)は、満足そうに真駆参(マークスリー)を見た。

「フハハ、大将軍も形なしか。神将軍も、もはや我が手中にあり。恐るるに足らぬわ」

 そう言って、結晶(クリスタル)に手を触れて──気づいた。これは偽物であると。

「おのれ信長ッ! 贋物を掴むとはどう言うことだ、それでも第六天魔王かッ!」

 遮光(シャッコー)は激怒した。新世大将軍その人を絶対に殺さねばならぬと、改めて決意した。三璃紗(ミリシャ)での目論見はなかなかうまくいかず、それゆえに焦っている部分はある。だが、怒っても事態は変わらない。信長は、そもそも人相を知らないのだ。間違いがあっても不思議ではない。

 それよりも、一つ気がかりなことがあった。死霊武者が、立て続けに破られるという出来事があったのだ。死霊武者の『目』から、遮光(シャッコー)は情報を得ることができる。

頑駄無(ガンダム)軍団か・・・・・・。厄介な相手だ」

──まずは、閃光結晶(ビームクリスタル)を持つ超将軍どもを始末するか。

 彼らが悪無覇域夢山(アナハイムさん)に向かっていると言う情報は、すでに掴んである。手始めに、大蛇飛駆塞虫(オロチビグザム)を差し向けることにした。

「もし大蛇飛駆塞虫(オロチビグザム)が失敗したら──その時は、貴様に屠ってもらおうか」

 斬首(ザンネック)の面を装着させた千生──千力の方を見て、遮光(シャッコー)はほくそ笑んだ。

 

∀∀∀

 

 宿場町を出て数分、超将軍たちは違和感を感じた。前方に、小高い丘のようなものが見えるのだ。

「あれ、こんなところに丘なんてあったかな」

「・・・・・・遠回りをした方がいいんじゃねぇか? なんだか嫌な予感がする」

「同感だ。あれからは、何か良くないものを感じる」

 獣王らの意見によって、彼らはこの丘のようなものを避けて通ろうとした。だが、丘は、獣王の言葉を聞くや否や、即座に動き出した。

「ギシャアアアアアッ!」

「うわっ、動きやがったぞこいつ」

 丘からは、八本の首がじゃえているのが認識できた。

「まさか、これが父上の戦ったっていう、大蛇飛駆塞虫(オロチビグザム)!」

 飛駆鳥(ビクトリー)の叫びに呼応するかのように、大蛇飛駆塞虫(オロチビグザム)は、キシャアアアと声を上げた。そして、本能のままに暴れ出した。

「もしや、理性を失っているのか・・・・・・。畜生に堕ちるとは下品な!」

 そう言って、雷鳴は雷砲稲妻を展開し、即座に発射する。しかし、その一撃は、かすり傷すら与えることはできなかった。

「な、なに・・・・・・ッ」

「そんなあ、父上の嘘つきッ!」

 飛駆鳥(ビクトリー)は憤った。烈光から聞いた話では、大蛇飛駆塞虫(オロチビグザム)最強破壊銃(グレートバスターキャノン)の一撃で粉砕されたということだった。ならば、同種の武器である雷砲稲妻でも一撃で粉砕できないと筋が通らないと考えたのである。なお、大蛇飛駆塞虫(オロチビグザム)戦終了後、飛駆鳥(ビクトリー)は、「よく考えれば、最強破壊銃(グレートバスターキャノン)は三人の武器が一つになったもので、雷砲稲妻は条件が違ったんだよな。雷も落ちてなかったし」と振り返ることになる。

「ヒートアップ!」「融合強友ッ!」

 ワカは鬼の鎧を装着し若神丸(ワカマル)に、トノは円従烏賊(マルジュウイカ)を纏い火威獣丸(カイジュウマル)となった。火威獣丸(カイジュウマル)は、暴れる獣を沈静化させるための鈴輪利(リンリンリ)という道具を持っている。だが、彼はそれを使う可能性を排除していた。説得の通じるタイプではないと即断したのである。

「ワカ、合わせろよ!」

「了解ッ!」

 砕巌頑(サイガンガン)をバットがわりに、若神丸(ワカマル)火威獣丸(カイジュウマル)を天高く打ち上げた。そして、火威獣丸(カイジュウマル)は、左腕から触腕を伸ばし、大蛇飛駆塞虫(オロチビグザム)に突き刺した。

「!?」

「ワイヤーアクションだ!」

 急速に触腕を短縮し、右手に持った戯斬銀(ギザギン)で全力で斬りつけた。八本ある首のうち、三本が斬り落とされた。

「やった!」

「いや、油断するのはまだ早い」

 火威獣丸(カイジュウマル)の危惧は的中し、なんと大蛇飛駆塞虫(オロチビグザム)は、落とされた首を再生し始めた。

「なんだってんだこりゃあ・・・・・・」

「チッ、全部一気に切らなきゃいけねえってことかよ!」

「厄介な・・・・・・」

 超将軍たちは、その恐るべき再生能力に戦慄した。

「これって私の出番ある?」

『ない!』

「トホホ・・・・・・」

 百式は、自らが力不足であるという確認を行い、「では私は、闇軍団の動向を探るべく悪無覇域夢山(アナハイムさん)へ先行します!」と一行から別れた。道中の闇軍団を倒してくれれば御の字だが、百式は自分で開拓した最短ルートを通るため、一切闇軍団に出くわすことなくたどり着けるのだ。なお、このルートは、闇軍団こそいないが和平前の円従烏賊(マルジュウイカ)がうじゃうじゃいる。そのため、トノでもない限り武者が無傷で渡ることは不可能である。百式は曲がりなりにも忍者なので、気配を消すことに長けているのだ(・・・・・・隠密行動に向かなそうな色なのに)。

「・・・・・・さて、どうしたものか」

「こういう奴の相手をしている暇なんざねえわけだが、果たしてどうするべきか・・・・・・」

 荒鬼(コウキ)は、早く悪無覇域夢山(アナハイムさん)に急ぎたいのである。したがって、道中の敵は無視したいのが本心である。RPGで言えば、スライムは無視してボス戦だけやろうとしているようなものである(一応、地上最強編のボスの一人なのだが)。

「こういう時は、大体全部の首を落とせばいい・・・・・・」

 若神丸(ワカマル)はそう言って、兄の方を見る。しかし、円従烏賊(マルジュウイカ)の鎧は、目に涙を浮かべていた。

「でもオイラじゃ、ちょっと厳しいかもしれない。いや、オイラはいいんだ。でも、円従烏賊(マルジュウイカ)が震えている。さっきの攻撃で殺しきれなかったというのと、野生の勘なんだろう。『こいつは強すぎる、自分には勝てそうもない』──そういう思念が伝わってくる。だから、オイラには無理だ」

 火威獣丸(カイジュウマル)は、そう言い切った。

「せめて、不思議の鎧があれば・・・・・・」

 若神丸(ワカマル)も、鎧の出力不足に歯噛みする。いや、正確には違う。鎧の性能は変わらない。だが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のである。ワカは、本来の時空では珀神丸(ビャクシンマル)大将軍と名乗っており、相応の力を持つ。また、不思議の鎧と呼ばれるカブトムシ(どちらかというと、タイムボカンシリーズのメカブトンか)の形をした鎧を纏い、神武兜(カブト)頑駄無(ガンダム)となることもできる。どちらも、鬼の鎧と比べて力の許容量が増えている。要するに、今のワカにとって、鬼の鎧は武具であり拘束具でもあるという状態なのだ。この鎧は、ある人物から受け取ったものなので、壊すわけにはいかないのである。

「・・・・・・だったら、俺がやる!」

飛駆鳥(ビクトリー)!?』

「あれだって、父上が倒したっていうんだろ!? 父上にできて、息子の俺にできない道理はない! 俺が引きつけるから、みんなは早く悪無覇域夢山(アナハイムさん)に!」

「無茶を言うな! いいか飛駆鳥(ビクトリー)、お前はまだ若いんだ! それで討ち死にしたらどうするってんだ!?」

九尾犬(バウンド・ドッグ)を倒した実力は認めよう。だが、大蛇飛駆塞虫(オロチビグザム)は何倍も強い。お前を残していけるか・・・・・・」

 天地らは、難色を示す。当然だ、彼は大将軍の第一子、世継ぎである。そもそもこんなところにいること自体本来は異常事態である。その上、自ら死地に殴り込むとは・・・・・・。それに、衛府弓銃壱(エフキュウジュウイチ)は、大蛇飛駆塞虫(オロチビグザム)を一人で倒したわけではない。仲間と協力して、初めて倒せたのだ。

「・・・・・・だったら俺も残るぜ」

荒鬼(コウキ)殿」

「とっとと悪無覇域夢山(アナハイムさん)に行きたいのは俺も同じだからな。だったら、協力して倒した方が早えだろ?」

「なら、俺もだ。こう言う若い奴は、なんだかんだほっとけないんでな。それに、無駄に体力を使いすぎて全員戦闘不能ということは避けておきてえ。最大火力を誇る雷鳴殿、遠距離も近距離もこなせる獣王殿、それにワカとトノは休んどいてくれ」

「・・・・・・そうと言われては、従わざるを得ませんね。任せましたよ」

 雷鳴と獣王は、引き下がった。四人は、物陰に隠れた。

「・・・・・・で、飛駆鳥(ビクトリー)。策はあるか?」

「全員で、一気に全部叩っ切る!」

「だと思ったぜ。だが、あの首がどう動いてくるか・・・・・・」

 天地がそう言った瞬間、二本の首が荒鬼(コウキ)と天地を襲った。

「ンだと!?」

「チッ、離しやがれ!」

荒鬼(コウキ)殿! 天地殿!」

 二人をとらえた首を飛駆鳥(ビクトリー)は切りつけたが、その傷は即座に癒えてしまう。そのまま締め上げられ、荒鬼(コウキ)と天地は気絶してしまった。

飛駆鳥(ビクトリー)!」

「助太刀はいらない! うあああ!」

 冷静さを保てなくなった飛駆鳥(ビクトリー)は、大蛇飛駆塞虫(オロチビグザム)になりふり構わず刀を振り下ろす。しかし、いくら首を切り落としても即座に再生されるため、キリがない。ついに飛駆鳥(ビクトリー)も、大蛇飛駆塞虫(オロチビグザム)の首に捕まってしまった。

「・・・・・・くっそお」

 身動き一つ取れないこの状況。どう打破するか、締め上げられる痛みに耐えながら思考を巡らせた。

 その時、頭の片隅に、母方の祖父にあたる人物、轟天頑駄無(ガンダム)との会話が思い出された。

──良いか飛駆鳥(ビクトリー)、戦いの中でどうしようもできなくなる状況が来ることがあろう。その時はこう叫ぶとよい。

 そこで告げられたのは、奇しくも父が轟天から鎧を借り受ける時と同じ掛け声だった。

──そうだ、今こそあの言葉を叫ぶ時だ・・・・・・!

「・・・・・・天・来・変・幻ッ!」

 すると、はるか雲の彼方から、高速で金色の鳥が飛来した。鋼鉄迦楼羅(メタルガルーダ)である。鋼鉄迦楼羅(メタルガルーダ)は、飛駆鳥(ビクトリー)を縛る首を切り裂いて、体の自由を取り戻させた。そして、そのまま分解され、飛駆鳥(ビクトリー)の黄金に輝く鎧となった。

「おおっ、これは・・・・・・! すごい、力が溢れてくる!」

 この鋼鉄迦楼羅(メタルガルーダ)の鎧(本作ではこれ以降迦楼羅(ガルーダ)の鎧と呼称する)は、烈光・烈空・烈破の鎧と同じ性質を持つ。そのため、絶大な力を得る代わりに、消耗が激しい。短期決戦形態とでもいうべきものである。

「ようし、これなら・・・・・・!」

 飛駆鳥(ビクトリー)は、刀を拾い上げ、大蛇飛駆塞虫(オロチビグザム)に向けて構えた。そして、空に飛び上がり、すべての首を一気に切り落とすべく、自身の最も得意とする技を放った。

「飛燕・竜巻返しッ!」

 迦楼羅(ガルーダ)の鎧によって強化された飛燕竜巻返しは、まさに竜巻の如く、大蛇飛駆塞虫(オロチビグザム)の体を襲う。

 竜巻は、大蛇飛駆塞虫(オロチビグザム)の首をまとめてすべて捩じ切った。ついに、大蛇飛駆塞虫(オロチビグザム)の打倒に成功したのである。

「・・・・・・やった・・・・・・」

 そして、飛駆鳥(ビクトリー)も気絶した。迦楼羅(ガルーダ)の鎧の負担だけでなく、疲労も蓄積されたためである。

「・・・・・・しばらくはここで休みましょうか。トノ殿、円従烏賊(マルジュウイカ)に彼らを回収させてください」

 雷鳴の決断で、一行は束の間の休息を取ることになった。

 しかし、彼らは知らなかった。

 闇軍団はすでに、新たなる刺客を送り込んでいたということに。

 そして、新たな仲間もまた、こちらに近づいているということに・・・・・・!

 

次回を待て! BY TETORA




いかがでしたか?
大蛇飛駆塞虫(オロチビグザム)を題しておきながら、登場したのは後半から。しかも、セリフなし。配下の九尾犬(バウンド・ドッグ)は饒舌だったのに・・・・・・。
宿場町の(くだり)は、当然ながらオリジナルです。蒼天丸と紅点丸を出すには、ここしかないと思ったんです。
そして、肝心の大蛇飛駆塞虫(オロチビグザム)について。コミックワールドでは、飛駆鳥(ビクトリー)以外が全員自主的に戦線離脱したという展開でしたが、こちらではもっともらしく理屈をつけています。
それにしても、どうして大蛇飛駆塞虫(オロチビグザム)は再生されたときに人格を消されたんでしょうか・・・・・・?(コミックワールドでの話。残念ながら、ボンボン版ではどうだったのかは存じ上げておりません。黄虎(ジオング)も、コミックワールドじゃ一言もセリフがありませんでしたが、大人の事情でしょうか?)
荒鬼(コウキ)と天地には醜態を晒させる結果になりましたが、これ以降絶対に名誉挽回、汚名返上させます。大将軍の生まれ変わりなんですから、活躍させないと。
鋼鉄迦楼羅(メタルガルーダ)、ついに登場です。私のリサーチ不足なんでしょうけど、何気にこれも謎が多い気がします。本作では、三烈神の鎧と同じようなものということにしました。
さて次回は、ついに超将軍が揃う! 予定です。
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