SDガンダム物語(ストーリー)   作:千生鉄斗羅

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お待たせしました、三璃紗(ミリシャ)編第2話です。タイトルは、語呂の良さからつけました。わかる人にはわかるタイプのヒントです。
・・・それにしても、字数がえげつない・・・(1万字を叩き出してしまいました)。


第2節 鉄板努貫(ドッカン)虎牢関

「公孫瓚殿、彼らは?」

 曹操が問う。公孫瓚の背後には、見慣れぬ三人組がいた。

「紹介しよう。私の義弟の劉備と、その仲間の関羽と張飛だ」

「ふむ、劉、か・・・。かの龍帝を想起せざるをえない姓だな」

「ああ、事実、劉備は龍帝剣を所持している」

「なんと!?」

「しかも、覚醒に至らしめたそうだ」

「そんな人材がいたとは・・・。少し、その劉備と一対一で話がしたい。すまないが、少し外に出ていてくれぬか?」

 曹操は、そう提起する。公孫瓚も司馬懿も、そして関羽も別段異論はなかった。普通に考えれば、知らない男と二人きり、しかも相手の陣地である。警戒しない方がおかしい。しかし、今回の場合、曹操は反董卓連合軍において、名門の出たる袁紹に匹敵する信頼を得ている。公孫瓚が警護役を一人もつけずに曹操の天幕に向かったことからも明らかである。寝首を書かれる心配がないのだ。もしこれが袁術であれば、警護役は一人や二人ではすまなかっただろう。

 しかし、内側は良くても、外側に誰がいるとも限らない。関羽、張飛、公孫瓚、司馬懿、その他武将たちは、曹操の天幕を取り囲む形で待機することになった。

 ここで、彼らの天幕について説明しておこう。連合軍には、袁紹、袁術、孫堅、曹操、公孫瓚といった、名だたる諸侯が集結している。この中で一番規模が小さいのは公孫瓚だが、それでもゆうに五千人を越す兵力を持っている。名門・袁家の跡取りたる袁紹となれば、その兵力は十万といったところか。総戦力は袁紹十万、袁術七万、孫堅・曹操九万、公孫瓚五千と、合計しておよそ三十五万五千の兵力である。ただし、ここには夏侯惇や紀霊のような武将、周瑜や司馬懿のような軍師はここに含まず、兵糧の炊き出しや救護班なども含んでいないため、実際にはもう少し多い。

 そんな彼らが、一ヶ所に集まって集団生活を営むのだ。天幕の数は、一つの軍につき一つ、などとはいっていられない。各軍の炊き出しおよび兵糧備蓄のための天幕が二つづつ、便所代わりの天幕が各軍三つづつ。さらに、一般兵用の宿舎が、一つあたり五百人入れるようになっているため、宿舎が計七百十。各軍の重鎮のための天幕は、各軍に一つづつ用意されており、他の天幕に比べて豪華な装飾が施されている。この装飾に、各軍の大将の性格や家柄、財力などが出ると言われており、一番煌びやか・・・悪趣味なのが袁術である。逆に、一番質素・・・悪くいえば見窄らしいのは公孫瓚だ。だが、彼の場合、連合軍結成の報を受け、即座に動いた上に、それまで実践経験はあまりなかった。そのため、天幕も急拵えで、兵力も一番少ないのだ。

 閑話休題。

「さて、劉備殿といったな。楽にしてくれていい」

「あ、ああ・・・」

 劉備は、ガッチガチに緊張していた。なにせ、相手はあの曹操だ。異国に目を向けても、彼と同等の覇気を纏った者はそうそういないだろう。それはなぜか。彼が、他を圧倒する力を持っているからだ。現時点で彼に対抗できるのは、袁紹、孫堅くらいであろう。

「ふむ・・・。確か、龍帝剣を覚醒させたとかいったな」

「えーと、まあ・・・」

「どうした、歯切れが悪いぞ」

「いや、だって、今の龍帝剣は、あの時みたいになってないんだ」

 現在、龍帝剣は、錆のとれた休眠状態にある。どういった要因で龍帝剣が覚醒したのか、劉備にもわからないのだ。

「時に、劉備よ。私はお前に、英雄の兆しを見た」

「!?」

「お前は、そう遠くない未来に、王の器となるだろう。その時、それに相応しい(おとこ)となれるか?」

「そんなこと、急に言われたって・・・」

「ハハ、そうだろうな。まあ、参考程度に聞いてくれればいいんだが、私は幼き頃、人相見の下に家出していたことがあってな」

 劉備が、驚きで目を開く。

「・・・ん? ちょっと聞き捨てならないような言葉が聞こえた気がするけれど・・・。家出?」

「ああ、ちょっと叔父上と些細なことで喧嘩をしてしまってな。それで家を飛び出したはいいが、なにせ子供だ、すぐに力尽きる。その時解放してくれたのが、許劭(キョショウ)という占い師だったんだ。彼は当然、よくなったのなら家に帰れ! といったが、私は意固地になって、嫌だと拒否した。それに彼も折れ、しばらくの共同生活が始まった、というわけだ」

「へぇー」

「その時に、人相を見てもらったんだ。『治世の能臣、乱世の奸雄』とな。そして、短い期間ではあったが生活を共にしたことで、見様見真似で人相見の真似事ができるようになった、というわけさ」

「そんなことが・・・」

「だからまあ、ある程度は信用してもらっていい。劉備よ。お前はまだ、龍帝剣の重さを知らぬだろう。今はそれでいい。だが、必ずそれを狙う輩がいる。・・・そういう者には、絶対に渡しては駄目だ。力にのみ固執するような者にはな・・・」

 その後は、二人は当たり障りのない会話を交わし、お開きとなった。

 そして翌日。

「諸君に集まってもらったのは、他でもない。華雄を突破し、虎牢関に辿り着くことじゃ」

 取り仕切るのは、反董卓連合軍盟主・袁紹である。

「し・か・し。私の武将も討ち取られてしまっています。皆様如きに果たしてできるのやら・・・。ねぇ、兄上?」

 嫌味ったらしくそういうのは、袁術だ。この場にいる諸侯の大半は、「こいつとっとと殺したい」と思っている。それほどまでに、袁術の行動や言動には苛々させられているのだ。

「ううむ・・・。しかし、ワシも顔良と文醜を連れてきておらぬからのう・・・。人のことはとやかく言えぬ。しかし、性急に撃たねばならぬのもまた事実。誰か、良い案はあるかのう?」

「それなら、俺が出ようじゃあねェか」

 そう言うのは、江東の大将、孫堅だ。三璃紗(ミリシャ)屈指の実力者である彼ならば、華雄を打つのも容易いだろう。

「いや、それはダメだ。孫堅殿、あなたには呂布を撃ってもらわねばならない。こんなところで消耗してもらうわけにはいかんのです」

 司馬懿が、待ったをかける。孫堅は実力者であるが故に、軽々しく出すわけにはいかないと言う考えだ。

 そこに、関羽が発言する。

「ならば、私が華雄とやらを撃って参りましょうか?」

「関羽殿。確か、胡軫を討ち取ったのもお前たちだったな」

『胡軫を!?』

 一瞬にして、驚愕が場を支配する。

「お待ちなさい、胡軫といえば、鎮江将軍の胡軫ですか!?」

「ええ」

「嘘おっしゃい! 貴方達のような無名が、胡軫など討ち取れるものですか!」

「袁術! 彼の言っていることは事実だ。奴の武器である撃鋭牙(ゲキエイガ)鋭牙盤(エイガバン)を持っているのがその証拠!」

 曹操に突きつけられた証拠に、袁術は黙り込んだ。

「しかし、実を言うと、我々が敗北を重ねる要因というものが、まるっきりわかっていないのです」

 周瑜が言うには、華雄を討たんと出陣すると、なぜか味方による傷をつけて帰ってくるのだ。

「なんと・・・! ならば、私が単騎で出れば、あるいは・・・」

「いや、しかし・・・」

「任せてみるといい。劉備殿たちは、いずれも実力を秘めている。あの黄巾賊を討ったのも彼らだからな。胡軫を討ったことからも、それは明白だろう。もし帰って来なかったら、その時はその程度だったと言うまでだ」

「そんな・・・ッ!」

 劉備を、手で制す。

「確かに、劉備殿は関羽殿の実力を知っている。しかし、私を含めた諸侯は、直に関羽殿の実力を見ていない。胡軫を討ったことを疑う者だっている。だからこそ、ここで見せてやれば良いのだ」

「・・・ああ、わかった」

 劉備も、納得したようだ。曹操の鶴の一声は、諸侯に影響を与えるには十分である。

「さて、関羽殿。景気付けも兼ねて、一杯どうだ?」

 曹操は、そう言って盃を差し出す。熱燗の酒が注がれていた。

「いえ、それは華雄を討ったのちにいただくことにしましょう」

 関羽は、単身で華雄を討ちに駆けていった。

『む、誰だ貴様! この首切り華雄を知らぬか!』

『我が名は関羽! お主の首、貰い受ける! 

      鬼牙(オーガ)ッ! 百烈撃ィィィイイイッ!

『びゃあああああああああああああああああああああああああ!!』

「・・・今のは・・・」

「華雄の断末魔、かこいつァ・・・」

「・・・もしや!」

「どうした周瑜!」

「華雄を倒せなかった理由がなんとなくですがわかりました! ですがこれは、突拍子もないものであることをご了承いただきたい。司馬懿殿、あなたも同じ考えか?」

「ああ、周瑜殿。ちょうど、同じ考えのようだな」

 どうやら軍師同士、考えがあったようだ。

「では周瑜殿、まずは関羽殿の帰還を・・・っと、そろそろのようだな」

 関羽が、華雄の死体を持って帰還した。どっこいせと、関羽は死体を地面に置いた。

「見事だ、関羽殿。本当に華雄を討ち取ってくるとはな」

「どう言うことですかな? 華雄は、()()でしたが、なぜ単騎に軍勢が敗北するのです!」

 周瑜が応える。

「今ので確信が取れた。つまり、()()()()()()()()()()()()()()()と言うことです」

「・・・? 幻術の類を使っていた、と?」

「そうとしか言い切れないからな。如何に兵法を修めていようとも、幻術を使われてはひとたまりもない」

 と、これは司馬懿の言。

 つまるところ、連合軍は、ずっと自軍の兵士を董卓軍の雑兵だと思わされていたのである。だから、単騎で駆けた関羽には、通じなかった。当然だ、見せかける対象が存在しないのだから。華雄自身も、胡軫と同じくらい強かった。だが、その胡軫を三位一体とはいえ倒した人物に、果たして華雄は勝てたであろうか。まして、胡軫と違って幻術に頼るような(おとこ)が。

 答えはもう、言わずもがなであろう。

「関羽殿、先ほどの酒を」

「かたじけない」

 曹操が差し出した盃を、今度は手に取る。熱燗の酒は、まだ冷めていなかった。それほどまでに、あっさりとした攻略だったのだ。

「うっし、そんじゃあ俺たちは、虎牢関に突撃すりゃあいいってことだろ!」

 張飛が勇んだ。

「待て、張飛。ことはそう単純ではないんだ。まだ、最大の関門がある・・・!」

 公孫瓚は、拳を握りしめた。

「最大の関門って、虎牢関じゃないのか? 昨日聞いた限りだと、虎牢関しかなかったはずだけど・・・」

「ああ、確かに関は虎牢関だけだ。だが、そこに、最強の武将がいる!」

「呂布ってェ名は、お前さんたち聞いたコトあるかい?」

 呂布。史実でも原作でも、最強クラスの武将は誰かと問われたらまず真っ先に名前を思い浮かべるであろう人物だ。

 三璃紗(ミリシャ)最強、人中の呂布。彼が率いる呂布隊の脅威については、前回語った通りである。

「正直にいうと、連合軍最強級の一人である孫堅殿でも、単騎で呂布に勝てるかは怪しいところだ」

「我に新兵器があれば良いのですが、残念ながらそう都合の良いことはありません」

「そうじゃ、あの(おとこ)さえどうにかできれば、董卓打倒は容易いというのに・・・」

「じゃあよ、全員で袋叩きにするってのはどうだ?」

 袁紹の嘆きに、張飛が解決案を出す。

「でも張飛、それでみんながやられたら話にならないだろ?」

「それもそうか・・・。ってか、そもそも、呂布ってのはどんな奴なんだ?」

「そういえば、我々は華雄を倒すことにのみ意識を向け、呂布とやらについては一切考えておりませんでしたな。それほどまでに、恐ろしい相手なのですか?」

 関羽が、誰にともなく問いかけた。

「天災、といえばその恐ろしさは理解できるか?」

 答えたのは、曹操である。

「華雄に囮を差し向け、何度か呂布を討とうと試みたこともあった。だが、結果は惨敗だった。なぜか? 我らも強いとは思うが、それ以上に強いからだ。兵士を千人一気に差し向けようと、奴は奉天画戟の一振りで、軽くあしらってしまうだろうな」

「そんなにやべえってのかよ・・・!」

「そうだ。だから俺らァ、華雄以上に策を練らなきゃなんねェってコトさ」

 一同は、唸った。いくら考えても、呂布に対する過大評価もあるとはいえ、「ああすればいいのでは?」「否、それでは向こうがこう仕掛けてくるだろう」というような議論が絶えなかったのだ。

 だが、何時間もギャアギャア言い続けるわけにはいかない。落とし所として、二手に分かれ、一方が呂布を相手にし、もう一方が虎牢関そのものを攻め落とす、というところまでは話が進んだ。

「では、どう分けるかというところじゃが・・・」

 袁紹がそう言ったとき。

「袁紹様ァ!」

 見張に当たっていた袁紹軍の兵士が、勢いよく陣中に駆け込んできた。

「どうした・・・?」

「不審な人物が、突如倒れた姿で出現しましたもので・・・」

「それで、どうすれば良いかわからず、駆け込んできた、ということか」

「は、はい曹操様・・・」

 曹操は、何かを閃いたようだ。

「それでは、気分転換も兼ねて見に行ってみようじゃないか。議論が停滞しているのはあまり好ましくないのでな」

「そりゃァいい。俺も、そいつらがどんな奴なのか、少し興味がある」

 というわけで、諸侯たちは、謎の人物を見ようと、発見者の兵士についていった。

 そこにいたのは、工具箱を持った者と、三日月のような鍬形の者であった。

「確かに、これは奇怪ですねぇ。どこからきたのやら」

「その前に、大丈夫なのか? 生きてるのかどうか・・・」

 そう言って、劉備が駆け寄ると。

「う、う〜ん、ここは?」

 バイザーのようなものを装着している方が、目を覚ました。

「お、よかった。君は誰なんだ?」

「ン〜? 最近の天宮(アーク)の武者には見えないけどな〜・・・。神槍丸みたく影舞乱夢(エイブラム)かな? ホントに・・・って、ありゃま知らない人。僕は、努貫丸(ドッカンマル)。気軽にドンちゃんって呼んでね」

「俺は劉備。こっちは関羽で、こっちが張飛。後ろにいるのは、反董卓連合軍のみんななんだ」

「董卓・・・?」

 どうやら、ドンちゃんには何やら思い当たる節があるようだ。

「確か・・・そうだ、天馬(ペガサス)の国の本で見たんだ。大人気みたいだから・・・って、劉備? おかしいな、僕の知ってる劉備は僕とは違う種族のはずなんだけど・・・」

 ちなみに、天馬(ペガサス)の国とは、武者◯伝において天宮(アーク)出身者が呼ぶ日本のことである。

「ぺ、ぺがさす・・・? それに、違う種族って・・・」

「ということは、また堕悪(ダーク)闇軍団か叛多亜(ハンター)武者か、はたまた破異-武立闘(ハイブリット)か・・・。どっちにしろ、これは大変なことになりそうだ・・・。ってそうだ、起きろ鉄板丸(ブリキマル)!」

 三日月の鍬形の人物──鉄板丸(ブリキマル)は、その声に呼応してか、目を覚ました。

「! ここはどこだ努貫丸(ドッカンマル)殿!」

「よかった、メンテナンスの必要はなさそうだな・・・」

「うむ、今のところどこにもガタは見受けられませぬ」

「でもまあ一応、異常がないかは後で確認しとこう。異常があったら、いざという時に困るからね」

 その会話を聞いた張飛は、もはや何が何だかわからないようだ。

「なあ、あいつらは一体何の話をしてるんだ? 俺にゃあさっぱりわかんねーぜ」

 もっともそれは、この場にいるほぼ全員がそうだったが。周瑜は、技術者としての側面をのぞかせ、興味深そうに鉄板丸(ブリキマル)を観察している。彼は、直感的に、鉄板丸(ブリキマル)が自分たちとは違う種族・・・いや、生物ですらないということに気づいたのである。

「すまない、ドンちゃん殿。彼は、もしかして絡繰の体なのでしょうか?」

「その通り! こう見えて鉄板丸(ブリキマル)はNEO鉄機武者といってね、簡単にいうとロボットなんだ。最初の鉄機武者からだいぶ進化したんだけど、その時点で完成していたし、何なら三段変形までできたそうだ。今の技術が劣ってるってわけじゃないけど、なんかこう、ビックリ箱みたいで面白いよね」

「うーむ、中々興味深い。そちらの技術、機会があれば学ばせてもらいたいものです」

「それは嬉しい。でも僕の本職は鎧マイスターだからね、それこそ伝説の『からくり一門』じゃないとかつての鉄機武者は造れないだろうね」

 からくり一門。本小説においては、飛天、大牙、爆流が該当する。駄舞留精太(ダブルゼータ)を祖とする技術者集団で、彼らこそが天宮(アーク)という武者の世界観にミサイルだのバズーカだの戦車だのを持ち込んだ元凶である。原典、即ちコミックワールドや設定などから考察するに、周瑜はこのからくり一門の技術の一部を受け継いでいるのではないかという見方もできるが、本作では天宮(アーク)(伝説の大将軍編〜七人の超将軍編)と三璃紗(ミリシャ)(三国伝)が同じ時間軸に位置するため、彼が末裔であるという解釈はなされない。

「どういうことです?」

「僕たちは、からくり一門といえば教科書で見る偉人なんだよ。歴史の表舞台から、だいぶ前に姿を消しちゃったんだ。高すぎる技術を受け継げるものがいなくなったからとも言われてるんだ」

「ふむ、ますます興味深いな」

 周瑜の目は、とても輝いていた。今まで体感したことのない技術、聞いたことのない言葉。興奮しないわけがない。

「ところで、僕から一つお願いがあるんだけど、いいかな?」

「それは?」

「食料がなくてね、できれば分けてくれると助かるんだけど・・・」

「・・・」

「もちろん、協力できることがあったらなんでもする」

「ふむ・・・。袁紹殿、よろしいかな? 彼らに董卓攻略の協力を請うというのは」

 周瑜が、そう提言した。

「ううむ・・・まあ、戦力はいくらあってもよいからのう。よかろう、好きにするがいい」

「ありがとうございます」

 こうして、努貫丸(ドッカンマル)鉄板丸(ブリキマル)が仲間になった。

 

∀∀∀

 

 努貫丸(ドッカンマル)鉄板丸(ブリキマル)は、一番戦力が少ない劉備の指揮下に入ることになった。鉄板丸(ブリキマル)は、「修行のしがいがある!」と大変喜んでいた。その関係で、周瑜はよく劉備の天幕にお邪魔するようになった。努貫丸(ドッカンマル)と技術者の会話をするためだ。この交流は、のちに開発される「天雷火砲」に多大な影響を与えることになる。ネタバレにはなってしまうが、本作の天雷火砲は、原作より威力が高くなっているが、その原因がこれである。

 それはともかく、この二人が信用に足る人物であることは、短い期間の交流で証明された。

 したがって、彼らも虎牢関攻略に一枚噛むことになったのである。

「と言ってもね〜、僕にできることといえば、それこそ鎧の修繕くらいだよ。でもまあ、鎧を使えるからいけるか・・・?」

「なあ、その鎧って一体どんなモノなんだ?」

 劉備が尋ねる。

「ああ、普段は自走工具箱『呼突誇工具(コツコツール)にまとめてあるけど、いざという時には岩機圧付(ジャッキアップ)して戦うんだ」

「へぇー。それじゃあ、いつも身に付けてるのは・・・」

「そう、整備用の工具だよ。これさえあれば、大概のネジはバラせるんだ。さらに、右足にはレンチが、左足にはマイナスドライバーが仕込んであるからね、どんな鎧でもバッチ来い! ってやつだ」

「なんだかよくわかんないけど、凄いな!」

「ふっふっふ、ありがとう」

 さて。

「諸君、我々は、ドンちゃんと鉄板丸(ブリキマル)の加入により、戦術に大きな幅ができた。そこで、虎牢関攻略に際して、次のような策を立てさせてもらったのでな、総員傾注!」

 司馬懿が、周瑜と共同で建てた策は、以下のようなものである。

 まず、以前より考えていた軍を二つに分けるというのは継続。呂布隊への囮として、孫堅軍、曹操軍を当てることにしたのだ。

 また、虎牢関は、その門戸が開かれない可能性もある。兵士たちで丸太を持ち、ヴァゴーン! と門を突き破るのもありだが、そんなことをすれば呂布が勘付いてこちらに向かって来かねない。そこで、努貫丸(ドッカンマル)に、スマートに分解してもらい、突撃ィー! というわけである。

 諸侯全員で頭を突き合わせるよりも、専門家に任せた方が良い。袁紹にも、田豊、沮授という軍師がいるのだが、彼らには顔良・文醜と共に本国の守りを任せている。

「なるほどね。だったら、鉄板丸(ブリキマル)についてだけど、一つ補足しておこうかな。彼の鎧は、あくまで拘束具だ」

『!?』

「そう。俺は、どうもパワーが想定より大幅に強いようでな。だからこうして、普段はこの鎧で制限をかけている、というわけだ」

「ほーう? ンでしたら、鎧を外して戦えば良いのでは?」

「いいが、どうなっても知らんぞ? 以前制限解除(リミッターアウト)規制解除活性化形態(アクティベイトモード)で戦った時は、危うく町一つを壊滅させかけたぞ」

「な・・・!」

 袁術は、ブルリと震え上がった。

「ただまあ、もしこちらに呂布のようなものが来たならば、遠慮なく制限解除(リミッターアウト)させてもらおう」

「了解した。できれば、そんなことがないように全力は尽くさせてもらうがな」

 こうして、虎牢関攻略は開始された。

 

(タァマシイ)ィィィイイイイイ!!!!!!

 呂布は、曹操・孫堅を相手にし、血が滾っていた。どちらも、当世最強核と謳われる存在だ。それと、二人同時に戦える。戦闘狂にとって、こんなに嬉しいことが果たしてあるだろうか、いや、ない。

「むう、前評判以上の強さ・・・ッ!」

「こいつァ、歯応えがありそうだぜ・・・!」

「フハハハハ、滾るッ! 激るぞッ! もっと楽しませろッ!」

 曹操は炎骨刃で、孫堅は虎錠刀で、それぞれ呂布の奉天画戟と切り結ぶ。

 その連携は、まるで長年共に歩んだ戦友のようであった。

 呂布の背後の岩陰には、陳宮が黒焦げで倒れていた。実は、この戦いの前に、陳宮は火計を仕掛けようとしていた。だが、それを読んでいた司馬懿によって火を送り返され、この始末、というわけだ。

「やらせはせん!」

「なんの!」

 張遼の攻撃を捌くのは、関羽。

「貴様のような野武士に、俺が倒せるか!」

「燕人・張飛翼徳様を知らねえたァ、どういうことだ!」

 高順と矛を交えているのは、張飛である。ちなみに、燕人・張飛というのは、彼の出身がかつて燕と呼ばれていた場所であることに起因する。彼の名は、確かに地元では有名だが、三璃紗(ミリシャ)全域ではそれほど有名ではないということも追記しておこう。

 張遼は、先ほど関羽が瞬殺した華雄と違い、幻術や物量作戦に頼らずとも、強い。呂布隊自体が、強者の集団だからだ。両者とも、自分が押されているという事実を、肌で感じていた。

 他の武将は、一体何をしているのか?

 夏侯兄弟は、合体技で雑兵どもを蹴散らしていた。その際、夏侯惇は左目に矢をくらい、左目を喪った。

 連合軍最長老の黄蓋は、貂蝉と戦っていた。尚香がいれば彼女が貂蝉の相手をしていただろうが、生憎彼女は江東で留守番中である。しかし、貂蝉はとても若く、その上、耽美・・・いや、直接表現させてもらおう。エロい。黄蓋は、戦士としての顔とエロジジイとしての顔を交互にのぞかせていた。というか、鼻の下を伸ばしながら攻撃していた。当然ながら、そんな状態の者が戦いに勝てるわけがない。すぐに陣までぶっ飛ばされた。孫策が後を引き受けたが、彼には、大喬というそれはそれは美しい恋人(のちの嫁)がいたため、黄蓋のようにはならなかった。いや、実を言うと、その姿に心を奪われそうになったのは事実だ。しかし、大喬の姿を思い浮かべることで、貂蝉の美貌に打ち勝ったのである。ちなみに、貂蝉は、その美貌で戦いに勝とうなどとは微塵も思っていないことを明記しておく。

 

 

 一方で、こちらは虎牢関。

「・・・よし、扉は無効化できた!」

 ドンちゃんの工具によって、虎牢関の役割は完全に失われた。もはやこれでは、ただの門である。

「突撃せよ!」

 司馬懿の号令によって、呂布隊との戦闘に参加していない者達は、一斉に城内に雪崩れ込んだ。董卓は、もはや無防備である。倒すことなど容易い、そう踏んでのことだった。

 しかし。

「・・・なん、だ、あれは・・・!」

 驚愕に歪む周瑜の顔。

 そこにいたのは、確かに董卓だ。だが、様子がおかしい。まるで、屍体のようであった。

「あれが、董卓なのであろう!?」

 鉄板丸(ブリキマル)も、戸惑いを隠せない。密偵を放って、董卓の人相書きを入手していたが、それと比べてあまりにも静かなのだ。

「・・・ぐ」

 董卓は、呻き声をあげた。次の瞬間、董卓は巨大化変形し、まるで恐竜の如き姿になった。

「何が、起こってるってんだよ・・・」

 劉備がいうが、しかし立ち向かわぬわけにはいかない。

「司馬懿さん、俺が先陣を切るッ!」

「わかった、では指揮は貴殿に任せるものとする!」

「ありがとう。・・・全員、あの董卓と思しき怪物に、攻撃をッ!」

 劉備は、宣言通り先陣を切り、董卓? に立ち向かった。

星ッ! 龍ッ! 斬ッ!

天雷ッ! 白! 爪! 弓!

 五芒星をくぐり放った斬撃と、その残り香を通過した周瑜の矢は、確かに董卓に当たった。だが、その装甲が硬すぎるのか、まるで効果がない。

 こちらに気付いた董卓は、彼らに向けて火球を放つ。

「劉備殿たちをやらせるなーッ!」

『ハイハイハイハイハイッ! 我ら、兵士の盾ッ! ・・・グワーッ!』

 それは、スクラムを組んだ兵士たちによって防がれたが、彼らはその威力に耐えきれず、吹っ飛ばされてしまった。

「大丈夫か、みんな!」

『兵士一同、一切問題ありません!』

『安心して董卓打倒に注力されたし!』

「どんな訓練をしたんだ・・・」

 その耐久力に、周瑜は軽く引いていた。

「そこを退かれよッ! 制限解除(リミッターアウト)ッ!」

 鉄板丸(ブリキマル)は、その体を守る鎧(力を抑制する拘束具)を装着したままで勝てる相手ではないと判断し、即座に制限解除(リミッターアウト)した。

規制解除活性化形態(アクティベイト・モード)ッ!」

 鉄板丸(ブリキマル)は、木鍛刀(ボクタントウ)を構えた。

「食らうがいいッ! 頑駄無(ガンダム)流・機王派ッ! 断ッ! 突ッ!

 木刀であるにも関わらず、炎を纏い超絶威力を発揮する木鍛刀(ボクタントウ)。その一撃は、董卓の足元に地割れを起こしてしまうほどだ。さらに、制限解除(リミッターアウト)しているため、通常時より威力は倍増されている。

 だが。

「なん、だと・・・ッ!」

 董卓には、傷ひとつついていなかった。

「馬鹿な・・・。董卓があのような力を持っていたなど、聞いたこともないぞ・・・」

 司馬懿は、華麗に攻撃を回避、受け流しつつ分析を始めた。

「考えられる要因は、元より董卓があのような存在だったか、あるいは外的要因に依るものか・・・」

 ちなみに、董卓軍の雑兵たちは、虎牢関の内側にも当然いる。もっとも、所詮は雑兵であるため、司馬懿にとっては(さし)たる問題ではない。

「・・・まさか、あの暴竜こそが董卓の本性であり、我らが見ていたものはまやかしだったか・・・? いや、ありえない話ではないが・・・」

 そこで、ふと一つの可能性を考えついた。

「そういえば、董卓には李儒という軍師がいたな・・・。前線に出る軍師は珍しいとはいえ、あやつが何もしないとは考えにくいが・・・。ううむ、奴の差金か?」

 その時、司馬懿の眼前に、李儒が音もなく、突如現れた。

「フハハ、貴様といえども見通すことはできぬか!」

「なっ、李儒!?」

「私が何かをした・・・。及第点をくれてやろう、司馬懿仲達!」

「ならばどうする? お前が私を殺すというのか?」

「それも及第点だ。なぜならば、お前を殺すのは()()()()()()()()()()!」

 李儒の言葉と共に現れたのは、紅に光る羽、左腕を包む外套、そして全体的に悪魔のような雰囲気を纏った者であった。

「まさか、貴様は・・・!」

「やっと会えたな、我を切り捨てし者よ!」

「フハハ、自分同士で殺し合うがいい!」

 李儒から伸びる影は、まるで司馬懿を嘲笑っているかのようであった。

「李儒、貴様はまさか・・・」

「気付いたところで、どうにかできるわけではあるまい。ここで貴様が死ねば、障害が一つ減るのでな。ついでに董卓で龍の子孫を殺せれば、万事円満に進むといったところだ!」

「な、どういう意味だ!?」

「貴様が知るものではない! 己の闇を切って捨てた、お前にはな!」

「死ぬがいい、我が半身ッ! 殲獄波動ッ!

 巨大な右腕から放たれる、暗黒のエネルギー波。司馬懿は、牙翼の大剣で切り払った。

「防ぐか・・・。さすが、やりおる」

「いつの間に、そのような力をつけたというのだ・・・ッ!」

「我が与えたのだよ、力をッ!」

 司馬懿は、あることに気付いた。

「・・・もしや貴様、()()()()()()()?」

「だったらどうする? 情でも移ったか?」

「戯けたことを。私は奴のことを、伝え聞いた噂でしか知らん。しかし、明らかに我らと違う気配がした。・・・もう一度問うぞ。()()()()()()?」

「貴様のことだ、粗方気付いているのだろう?」

「無論だ。あやつを知っており、あのような力を与えたと豪語し、あまつさえ龍の子孫──劉備殿のことであろうな、彼をそのように呼ぶ・・・。まさか、貴様は、G記に記された・・・」

「フハハ、厄介な頭脳よな。まあ、及第点だ。だが、そこまで解っているというのならば、貴様に生きていてもらうわけにはいかぬな! 合わせろ!」

「御意」

 李儒は、怪腕の男と共に、掌にドス黒いエネルギーを溜め始めた。司馬懿の周囲の空間は歪み始め、もはや回避も叶わぬ状況だ。

闇潰・・・

黒星(コクセイ)・・・

──万事窮す、か・・・!

 司馬懿が死を覚悟した、まさにその時!

〽︎戦に漕ぎ出す武者人生は──嗚呼大津波ッ! 刕王超刃大津波(トウオウスーパーブレードウェーブ)ッ!

鉄斬刀(テツザントウ)獣翼射出(ジュウヨクリフトオフ)ッ! 閃光放て(ビーム・ファイア)ッ!

「何ィ!?」

「何奴!?」

「・・・君たちは」

 二つの攻撃によって、司馬懿は命を救われた。

「大丈夫か?」

 片方は、赤い鎧を身に纏い、身長の倍はあろうと思われる巨大な刀を構えていた。

「どうやら、烈風殿の話は本当だったようだな」

 もう片方は、青い鎧を身に纏っているように見え、こちらは身長に匹敵するであろう巨大なレンチを構えていた。背中には、鉄機と書かれた巨大な扇のような槍を背負っていた。

 果たして、その正体は!?

 

次回を待て!




いかがでしたか?
というわけで(どういうわけで?)武者◯伝3より、鉄板丸(ブリキマル)努貫丸(ドッカンマル)の登場です。三国志演義から大幅に逸脱することが決定しました。
さて、本文について。私は、渡辺仙州先生の三国志を拝読させていただいておりましたので、「お、ここ好きやな」という場面はそりゃあもういくつもあります。その中で、「華雄を瞬殺する関羽」があります。これ、書いてみたいと思ってたんですよ。まあその代わりに、「呂布と馬上で矛を交える関羽&張飛」は泣く泣くカットしましたが。
あと、黄蓋をエロジジイにしてしまったのは、申し訳ありません。ですが、考えてみてください。貂蝉キュベレイですよ。三国創傑伝ではクシャトリヤでしたが、どちらも色気というものがえげつないわけですよ。男が、平静を保ったままで戦えますか!? いや、戦えません(おそらく)。じゃあなんで孫策はいいんだよと思われるでしょうが、それはまあアスラン方式で。
今回司馬懿の前に登場した謎の人物は、設定が独自のものとなっておりますが、キット自体は存在します。司馬懿と関係があり、モチーフがデスティニー。・・・もはや、ネタバレになっている気もしますが、まあいいでしょう。
董卓に関しても、創傑伝の暴竜形態になってもらいました。ただし、身も心もプロヴィデンスなのかと言われるとそうではなく、あくまで董卓プロヴィデンスガンダムの意匠を持った董卓ザクだと思ってくだされば大丈夫です。
今回のラストで登場した二人の人物は──名前を言わずとも、おそらく皆様お解りでしょう。「あ、あいつやな」とニヤニヤしてくだされば幸いです。
ちなみに、現在の時系列は、ラクロア編は始まってすらなく、天宮(アーク)編は原典で言うところの伝説の大将軍編終了直後です。だいぶ時間が離れておりますが、こうでもしないと赤壁の戦いで天宮(アーク)編と足並みを揃えられんのです。李儒=◼️◼️◼️を実現するためにも、ここまでずらさねばなりませんでした。
さて次回は、董卓打倒まで行きたいと思います。
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