◆◇◆
ロストブルーの外へ出る。
それは、空無き大地に生きる者にとって、ただの移動ではなかった。
地上へ出る。
空を見る。
最後の国へ足を踏み入れる。
それは、地下で生まれ、地下で育ち、地下で死ぬしかない者たちにとって、伝説や夢想に近い響きを持っている。
もっとも、ロストブルーに生きる多くの者は、そんな夢をとうに捨てていた。
空など見たことがない。
本物の太陽など知らない。
風がどう吹くのかも、雨がどんな匂いをしているのかも、地平線がどこまで続いているのかも知らない。
知ったところで、何になる。
どうせ地上は自分たちを捨てた場所だ。
追い出した側の世界だ。
ならば、空など知らないままでいい。
そうやって、諦める。
だが、ソルは諦められなかった。
何度も救済の魔女へ挑み、何度も仲間を死なせ、何度もルナを失った。
王になっても届かない。
ノインを得ても届かない。
ツヴァイがいても、フューリーの呪術を積み上げても、ズィーヴァの道を使っても、アインツの叡智を借りても、勝てない。
ならば、外だ。
ロストブルーの外に、まだ何かがあるはずだ。
もっと強い力。
もっと大きな可能性。
救済の魔女を殺せるだけの何か。
その最後の可能性を求めて、ソルはロストブルーの外へ出る。
空無き大地の王が。
本物の空の下へ。
◆◇◆
出口は、王座の裏にあった。
王座と呼ぶには粗末な椅子。
ズィーヴァが盗んできた廃材を組み合わせ、半ば冗談で作ったそれ。
その奥、ひび割れた石壁の裏側に、隠された道があった。
ズィーヴァが壁を叩く。
こつ、こつ、こん。
音が違う場所を確かめると、彼女は細い針金を取り出し、壁の隙間へ差し込んだ。
「まさか王座の裏に抜け道があるとはねぇ。王様ってのは、逃げ足も大事ってことかな?」
「俺も今知った」
「王様なのに?」
「王様だからって何でも知ってるわけじゃねぇよ」
「じゃあ王様って何する人?」
「面倒事を押し付けられるやつだ」
「うわ、なりたくなーい」
ズィーヴァは軽く笑いながら、手元を動かす。
数秒後、石壁の奥で鈍い音がした。
壁の一部が、ゆっくりと沈む。
「はい、開いた」
「便利だな、お前」
「もっと褒めてもいいよ」
「調子に乗るからやめとく」
「けち」
軽口を叩くズィーヴァの表情は、いつも通りに見えた。
だが、その指先はわずかに硬い。
ロストブルーの外へ出る。
その意味を、彼女もわかっている。
ノインは無言だった。
大きな腕を組み、暗い抜け道の奥を睨んでいる。
ツヴァイはその袖を握っていた。
フューリーは不安そうに荷物を抱えている。
札、薬、魔瘴石、呪具。
必要そうなものを山ほど持ってきたせいで、小柄な彼女は荷物に潰されそうだった。
「おい、少し寄越せ」
ソルが手を伸ばすと、フューリーは首を横に振った。
「だ、大丈夫です。これは私が持ちます」
「明らかに大丈夫じゃねぇだろ」
「でも、必要なものなので……」
「必要なものなら、なおさら落とすな」
「うっ……」
結局、荷物の半分をノインが片手で持った。
本人は露骨に面倒そうだったが、フューリーが何度も頭を下げると、さらに面倒そうな顔になった。
「礼はいらねぇ。うるせぇ」
「す、すみません……ありがとうございます……」
「だから礼はいらねぇっつってんだろ」
ツヴァイがくすくす笑う。
ソルはその光景を見て、胸の奥に妙な感覚を覚えた。
仲間がいる。
そう思うたび、同時にその全員が死ぬ光景も蘇る。
ノインの腕が飛ぶ。
ツヴァイの声が途切れる。
フューリーの手が止まる。
ズィーヴァが血を吐く。
アインツが叡智の書を握り締めたまま、何も言えなくなる。
それを、何度も見た。
何度も見て、何度も繰り返した。
だからこそ、外へ行く。
このまま繰り返しても勝てないのなら、未知の手札を取りに行くしかない。
「行くぞ」
ソルの声で、全員が動いた。
アインツが先頭に立つ。
古びた外套を翻し、手にした小さな灯りを掲げる。
その灯りは、陽光結晶の光とは違った。
もっと弱く、もっと頼りなく、しかし妙に温かい色をしていた。
抜け道は狭かった。
湿った石壁。
低い天井。
腐った木材の匂い。
どこかで水が滴る音。
ロストブルーの下に、さらに古い道がある。
どれほど昔に作られたものなのか、ソルにはわからなかった。
「この道は何だ」
ソルが問うと、アインツは前を向いたまま答えた。
「避難路だ」
「誰の」
「かつて、ルグニカから追放された者たちの」
「……」
「ロストブルーは自然にできた場所ではない。最初は避難所だった。国に見捨てられ、地上で生きられなくなった者たちが、地下へ逃げた」
「それが今じゃ掃き溜めか」
「時間は、救いも腐らせる」
アインツの声は静かだった。
「最初は、ここにも秩序があった。約束があり、守るべき掟があり、地上へ戻る希望があった」
「希望ね」
「だが、地上は戻る場所ではなくなった。世界は崩れ、国は狭まり、人は余裕を失った。地下に逃げた者たちは、次第に忘れられた。忘れられた者たちもまた、自分たちが何者だったかを忘れた」
アインツは一度だけ足を止めた。
「そして、ロストブルーになった」
誰も何も言わなかった。
ソルは壁に触れる。
冷たい石。
この道を通った者たちは、何を思っていたのだろう。
逃げられると思ったのか。
また地上へ戻れると思ったのか。
子どもに空を見せたいと願ったのか。
それとも、ただ生き延びたかっただけなのか。
わからない。
だが、今のソルには一つだけわかった。
ロストブルーは、最初から掃き溜めだったわけではない。
誰かの最後の希望が腐った果て。
それが、あの地下なのだ。
◆◇◆
道は長かった。
まっすぐではない。
何度も折れ、傾き、時には崩れた壁を乗り越え、時には膝まで水に浸かって進んだ。
途中、古い標識らしきものが壁に刻まれていた。
文字は掠れて読めない。
だが、フューリーがそれを見て、そっと指でなぞる。
「……祈り、みたいです」
「読めるのか」
「少しだけ。古い呪印に近い形が混ざっています」
「何て書いてある」
フューリーは目を細める。
「――いつか、空の下へ」
その言葉に、誰もが黙った。
ツヴァイが小さく呟く。
「空って、どんなの?」
誰も答えられなかった。
ロストブルーで生まれた者は、本物の空を知らない。
ソルも知らない。
天井が崩れたあの日、穴の向こうに見えたものが空だったのかもしれない。
だが、あれは終わりの光景だった。
空を見た、とは言えない。
「上に行けばわかる」
ソルは言った。
ツヴァイはノインの袖を握る手に少し力を込めた。
「ノインも知らない?」
「知らねぇ」
「そっか」
「怖いか」
「ちょっと」
「なら下がってろ」
「やだ」
即答だった。
ノインはため息を吐く。
そのやり取りに、ズィーヴァが笑う。
「空かぁ。盗めるかな」
「無理だろ」
「わかんないよ。あたし、まだ試したことないし」
「盗めたらどうすんだ」
「ロストブルーに持って帰る」
ズィーヴァは軽く言った。
冗談のようだった。
だが、その言葉には少しだけ本気が混じっていた。
ソルは何も言わず、前を見る。
いつか、ルナに空を見せたいと思った。
青い空。
広い世界。
屋台で食べ歩いて、海を見て、笑って。
それが、ソルとルナの世界征服だった。
今、ようやく空へ近づいている。
だが、胸は少しも軽くならなかった。
嫌な予感がする。
ソルの嫌な予感は、よく当たる。
◆◇◆
出口は、瓦礫の下にあった。
アインツが古い仕掛けを外し、ノインが崩れた石を押し退ける。
その瞬間、冷たい風が吹き込んだ。
誰もが動きを止めた。
風。
地下の淀んだ空気ではない。
流れている。
どこか遠くから来て、どこか遠くへ行く空気。
ツヴァイの耳がぴんと立つ。
フューリーが目を見開く。
ズィーヴァが息を呑む。
ノインですら、わずかに眉を動かした。
ソルは風を受けながら、ゆっくりと外へ出た。
そして、初めて本物の空を見た。
広かった。
あまりにも広かった。
天井がない。
どこまでも続いている。
上を見上げても、そこには石も鉄骨も陽光結晶もない。
ただ、空がある。
かつて、ルナに見せたいと思ったもの。
ロストブルーの誰もが知らず、そして諦めたもの。
空。
「……」
言葉が出なかった。
だが、その感動はすぐに死んだ。
視線を下ろした瞬間、そこに広がっていたのは、荒廃した世界だった。
焼け落ちた村。
崩れた街道。
遠くに見える、半ば折れた塔。
黒く焦げた大地。
枯れた木々。
白骨化した竜車の残骸。
そして、風に乗ってくる死の匂い。
地上は、美しい場所ではなかった。
救いとは到底言い難い。
そこにあったのは、ただ壊れた世界だった。
「……なんだよ、これ」
ズィーヴァの声が震えていた。
フューリーが口元を押さえる。
ツヴァイはノインの背に隠れた。
ノインは黙っていた。
アインツだけは、知っていた顔をしている。
ソルはゆっくりと振り返った。
「アインツ」
「これが外だ」
アインツは淡々と言った。
「……」
「これが、ロストブルーの外にある世界だ」
ソルは答えなかった。
答えられなかった。
地上に出れば、何かがあると思っていた。
ロストブルーにはない力。
ロストブルーにはない知恵。
ロストブルーにはない、救い。
けれど、そこにあったのは救いではなかった。
ただ、滅びの跡だった。
「言っただろう」
アインツが続ける。
「ヴォラキアを滅ぼした黒龍ジズ。カララギを沈めたレヴィアタン。グステコを踏み均したベヒモス」
「……」
「あれは御伽噺じゃない。誇張された災害でもない。ここにあるものが、その爪痕だ」
アインツの声は、冷たくも熱くもなかった。
ただ、事実だけを並べる声だった。
「黒龍ジズが空を覆い、黒蛇ごとヴォラキアを焼いた」
風が、焦げた大地を撫でる。
「レヴィアタンが海を裂き、カララギを沈め、白鯨すら海底へ引きずり込んだ」
遠く、ひび割れた地平線が揺れて見えた。
「ベヒモスが大地を踏み砕き、グステコを潰し、大兎の群れごと呑み込んだ」
ツヴァイが、ノインの袖を握る手に力を込める。
フューリーは口元を押さえ、ズィーヴァはもう笑っていなかった。
ノインですら、言葉を失っていた。
「そして、それを招いたのが救済の魔女だ」
アインツは言った。
「魔女が、これをやった」
ソルの奥歯が鳴った。
地上に出れば、希望があると思っていた。
もっと豊かな国が、もっと大きな力が、もっと強い誰かがいると思っていた。
だが、世界そのものが壊れている。
ロストブルーは世界の掃き溜めだと思っていた。
違った。
世界がもう、掃き溜めなのだ。
ロストブルーは、その中でもさらに見捨てられた者たちの行き着く底。
最後の国からすら追い出された者たちの、終着点。
「……ふざけやがって」
ソルは呟いた。
誰に向けた言葉なのか、自分でもわからない。
救済の魔女か。
世界か。
空か。
それとも、まだどこかに希望があると思っていた自分か。
「行くぞ」
アインツが言った。
「どこへ」
「ルグニカ王都だ」
王都。
最後の国の中心。
かつて王がいた場所。
今は王なき王国の残骸。
「そこにいる」
アインツは短く答えた。
「剣聖がな」
◆◇◆
王都までの道は、沈黙に満ちていた。
地上の景色は、ロストブルーとは違う形で壊れていた。
地下には密度があった。
人の悪意と体臭と酒と薬と血が詰まっている。
息苦しいほど、生きている者たちの残骸で満ちていた。
だが地上は、空白だった。
人がいない。
声がしない。
かつて人が住んでいた痕跡だけが残り、そこに生者はいない。
崩れた家。
焼けた畑。
折れた標識。
誰かが最後まで抱えていたらしい人形。
ツヴァイがそれを見つけて、足を止めた。
小さな布人形だった。
泥に汚れ、片腕が千切れている。
ツヴァイはそれを拾い上げ、じっと見た。
「……子ども、いたのかな」
「いたんだろ」
「今は?」
「いねぇ」
それだけだった。
ツヴァイは人形をそっと道端に置いた。
ノインは何も言わなかった。
ズィーヴァはいつもの軽口を言わなくなった。
フューリーは時折、道端に残った痕跡を見て、祈るように目を閉じた。
ソルは歩き続けた。
立ち止まれば、何かが崩れそうだった。
やがて、王都が見えた。
かつては壮麗だったのだろう。
巨大な城壁。
街を囲む石造りの外郭。
遠くに見える王城。
だが、今はその全てが傷ついていた。
城壁はところどころ崩れ、門は補修跡だらけ。
王城の一部は焼け落ち、街の中には煙が上がっている。
それでも、まだ人がいた。
わずかながら、生きている者たちが。
兵士。
避難民。
子ども。
老人。
負傷者。
祈る者。
最後の国。
その名に相応しいほどの威厳は、もうない。
だが、それでもそこは最後の砦だった。
「……ここが、王国」
ズィーヴァが呟く。
その声には、失望とも畏怖ともつかない色があった。
「案外、ボロいね」
「ボロいな」
ソルは短く答えた。
ロストブルーと何が違うのか。
そう思いかけて、すぐに違うと気付く。
ここには、まだ守られている者たちがいる。
ロストブルーは、守られなかった者たちの場所だ。
その差は、決定的だった。
◆◇◆
ラインハルト・ヴァン・アストレアは、王都の外縁にいた。
赤い髪。
青い瞳。
端正な顔立ち。
そこに立っているだけで、周囲の空気が整うような存在感。
荒廃した世界の中で、その男だけが壊れていなかった。
瓦礫の街。
煤けた城壁。
傷ついた兵士。
疲れ切った民。
その中心にいてなお、男は英雄だった。
真実、英雄であり、英雄でしかない男。
彼はこちらに気付くと、静かに振り返った。
その視線がソルを捉える。
ソルの全身が、無意識に強張った。
――強い。
見ただけでわかる。
ノインが低く唸った。
「……なんだ、ありゃ」
ロストブルー最強の男が、そう呟いた。
その声には、珍しく警戒があった。
アインツが一歩前へ出る。
「ラインハルト・ヴァン・アストレア」
赤髪の男はアインツを見る。
そして、次にソルを見た。
「君が、ソルか」
その一人称は、若い英雄のものではなかった。
姿はまだ美しく、背筋は真っ直ぐで、声も澄んでいる。
だが、その響きには歳月があった。
世界の終わりを見届けた者の、静かな重さがあった。
ソルは目を細める。
「知ってるのか」
「噂は聞いている。ロストブルーに王が現れたと」
フェルトやズィーヴァが言えば冗談に聞こえるその言葉も、ラインハルトが言うと奇妙に重かった。
ソルは鼻で笑う。
「掃き溜めの王様なんざ、いい噂じゃねぇだろ」
「それでも、誰かが立ったということだ」
「……」
「それには意味がある」
穏やかな声だった。
敵意はない。
侮りもない。
ただ真っ直ぐに、ソルという存在を見ている。
そのことが、ソルには少し不快だった。
「ラインハルト」
アインツが言った。
「話がある」
「ああ。聞こう」
ラインハルトはすぐに頷いた。
あまりにも真っ直ぐだった。
その姿勢すら、ソルの神経を逆撫でした。
この男はたぶん、どんな相手にもこうなのだ。
貧民だろうが、王族だろうが、敵だろうが、見捨てられた者だろうが。
正しく向き合う。
だから英雄なのだろう。
だからこそ、腹が立つ。
「ロストブルーを救うために、お前の力が借りたい」
ソルは言った。
頼むというには、あまりにも硬い声だった。
命令というには、あまりにも切実だった。
ラインハルトの表情が、わずかに曇る。
「救済の魔女が来る。あの地下は終わる。俺たちだけじゃ勝てない」
ソルは真正面から言う。
「だが、お前がいれば勝てるかもしれない」
その言葉に、ノインが何も言わない。
不満げでも、怒ってもいない。
それほどまでに、ラインハルトは別格だった。
ラインハルトは静かにソルを見た。
そして、短く言った。
「――すまないが、それはできない」
その顔には、確かに申し訳なさがあった。
だが、伏せられた声とは裏腹に、その双眸には決して揺らがぬ意思が宿っている。
ソルの胸の奥が冷える。
「できない、ってか」
「私は、ここを離れられない」
「ロストブルーにもまだ生きてる奴らがいる」
「知っている」
「子どももいる。亜人も、女も、地上から追い出されて、行き場を失って、地下に逃げ込んだ奴らだ」
「それも知っている」
「なら、なんでだ」
ソルの声が低くなる。
「なんで、助けに来ない」
ラインハルトは目を伏せなかった。
逃げることも、言い訳することもなかった。
「私がここを離れれば、この国が落ちる」
「もう落ちてるだろ」
「まだ生きている者がいる」
「ロストブルーにもいる」
「そうだ」
「なら――」
「だからこそ、私は選ばなければならない」
選ぶ。
その言葉に、ソルの奥歯が鳴った。
嫌いな言葉だった。
何度も何度も迫られた地獄の名前だった。
ラインハルトは続ける。
「私は英雄と呼ばれてきた。だが、全てを救えるわけではない。私が一歩動けば、私が守っていた場所から命がこぼれる」
「……」
「私がロストブルーへ行けば、王都に残った者たちは死ぬ」
「だから、俺たちは死ねって?」
「違う」
「同じだろうが」
ソルの声が震えた。
怒りだけではない。
理解しているからこそ、震えていた。
ラインハルトは悪くない。
この男は、正しい。
誰よりも正しく、誰よりも誠実で、誰よりも英雄に相応しい。
王都を守らなければならない。
最後の国を捨てることはできない。
ここにいる生き残りを見捨てられない。
それは正しい。
正しすぎるほどに正しい。
だから、ロストブルーは救われない。
「お前が正しいのはわかる」
ソルは言った。
「お前がここを離れられないのもわかる。悪くねぇことも、わかってる」
拳を握る。
「でもな、それじゃあロストブルーは救われねぇんだよ」
「ああ」
ラインハルトは静かに頷いた。
今度は謝らなかった。
どちらにせよ、ロストブルーは救われない。
世界最強の男が。
誰よりも英雄に近い男が。
ただ、そこに立っていることしかできなかった。
――その瞬間、ソルは悟った。
英雄には頼れないのだと。
◆◇◆
沈黙を破ったのは、アインツだった。
「なら、別のものを渡せ」
ラインハルトの表情が、わずかに変わる。
「別のもの?」
「ああ」
アインツは叡智の書を抱えたまま、静かに言った。
「以前、俺はお前に頼んだ」
ラインハルトの目が、わずかに細くなる。
「ああ」
「だが、お前は拒んだ」
「拒むしかなかった」
「わかっている」
アインツは頷いた。
「俺では足りなかった。俺は知っているだけの男だ。導くだけの男だ。ロストブルーを救いたいと願いながら、自分では王になれなかった男だ」
ソルは、アインツを見る。
何の話だ。
そう問おうとして、声が出なかった。
アインツは続ける。
「だが、今は違う」
その視線が、ソルへ向く。
「こいつがいる」
「……」
「ソルは強くない。お前には届かないし、救済の魔女にも届かない。何度も敗れ、何度も折れかけ、それでも諦めなかっただけの男だ」
「褒めてんのか、それ」
ソルが言う。
アインツは答えない。
「だが、こいつはロストブルーの王だ」
ラインハルトは、ソルを見る。
それから、ノインを。
ツヴァイを。
フューリーを。
ズィーヴァを。
彼らはまだ、何も成していない。
だが、誰もソルから離れていない。
アインツは、ラインハルトへ向き直る。
「なら、もう一度頼む」
「……」
「【憂鬱の魔女因子】を、ソルに託せ」
ソルの眉が動いた。
「憂鬱……?」
知らない名だった。
いや、魔女因子という言葉は知っている。
だが、憂鬱。
それが何なのか、ソルは知らない。
アインツは、ソルを見ずに言った。
「亡き神龍ボルカニカが最後まで抱えていた、最後の魔女因子だ」
「最後の……?」
「勇者の力。圧縮の権能。空間も、力も、因果も、時間さえも、理屈の上では押し固めることができる」
ソルの呼吸が止まる。
「時間……?」
「ああ」
アインツは言った。
「今から過去までの距離を圧縮する。お前が今いる地点から、全てが始まる前の過去へ飛ぶ。その可能性が、憂鬱にはある」
「なんで」
ソルの声が低くなる。
「なんで、それを今まで言わなかった」
「使えないからだ」
「……」
「俺ではダメだった。ラインハルトにも使えない。こいつが使えば加護を全て失い、最後のルグニカを守る力を失う。そして俺は、希望を託すに足る器ではなかった」
アインツは静かに言った。
「だが、お前なら違う」
「勝手に決めんな」
「勝手に決める。俺は、そういう男だ」
ソルは何も言えなかった。
ラインハルトは、長い沈黙の後に言う。
「渡せない」
即答だった。
「ソルが失敗すれば、全てが終わる。救済の魔女に奪われれば、ルグニカもロストブルーも、本当の意味で終わる」
「それでも、ここに置いておけば何も変わらない」
アインツの声は硬かった。
「お前は守ってきた。だが、守っている間に世界はここまで壊れた」
ラインハルトは否定しない。
アインツはさらに言う。
「ラインハルト。お前は勝った。三大神獣を駆逐した。だが、国は救えなかった」
「……」
「俺たちは負け続けた。魔女に届かなかった。だが、ソルはまだ諦めていない」
「だから託せと?」
「そうだ」
「それだけでは足りない」
ラインハルトの声は静かだった。
だが、そこには揺るがない硬さがある。
「私は憂鬱の魔女因子の使用者ではない。守護者だ。鍵を持ち、扉の前に立ち、誰にも開けさせないための番人にすぎない」
「……」
「それを渡すということは、この国に残された最後の可能性を手放すということだ」
ラインハルトの青い瞳が、ソルへ向く。
「君が失敗すれば、全てが終わる。君が魔女に敗れれば、魔女は憂鬱すら手に入れる」
「なら、渡すなよ」
ソルは言った。
その声は、低かった。
「けど、俺にはいる」
「……」
「お前がくれねぇなら、力づくで奪う」
ノインが、ゆっくりと笑った。
ズィーヴァが息を吐く。
「王様、思い切りがよすぎ」
「黙ってろ」
「嫌いじゃないけどね」
フューリーが震える声で言う。
「ソルさん、それは……」
「止めるな」
「でも」
「止めるな、フューリー」
フューリーは言葉を飲み込んだ。
アインツはただ、叡智の書を握っている。
その顔は暗い。
まるで、この先をもう読んでいるようだった。
ラインハルトは静かにソルを見ていた。
悲しそうだった。
だが、その手は剣へ近づいていない。
まだ、抜いてはいない。
「ソル」
「なんだ」
「私に勝つつもりか」
「勝てるかどうかじゃねぇ」
「なら、何のために」
「お前に見せる」
ソルは黒いマフラーを握る。
「俺が、何を背負ってるのかを」
◆◇◆
最初に動いたのは、ノインだった。
獣の咆哮。
ロストブルー最強の男が、地面を砕いて踏み込む。
その一撃は、岩壁を粉砕する。
その爪は、鋼を裂く。
その牙は、魔獣ですら怯ませる。
だが、ラインハルトは動かなかった。
いや、動いたのだ。
ただ、ソルには見えなかった。
次の瞬間、ノインの拳は空を切り、巨体が地面へ叩きつけられていた。
「――ッ!」
ツヴァイが叫ぶ。
ノインはすぐに起き上がる。
だが、その表情から余裕が消えていた。
「……なんだ、今の」
ノインの声に、初めて本気の困惑が混じる。
ラインハルトは言った。
「やめないか。君を傷つけたいわけじゃない」
「舐めてんじゃねぇぞ、英雄」
ノインが再び踏み込む。
ズィーヴァが同時に動いた。
正面からノイン。
死角からズィーヴァ。
足元にはフューリーの呪印。
アインツの指示で、タイミングは完璧だった。
ソルも術式を展開する。
不可視の砲撃を複数の角度から撃ち込む。
これまで何度も救済の魔女へ挑むために磨いてきた連携。
ロストブルーの王と仲間たちの総力。
だが、ラインハルトはそこにいた。
呪印は発動する前に無効化された。
ズィーヴァの刃は届く前に弾かれた。
ノインの拳は受け流された。
ソルの〝バン〟は、剣を抜くまでもなく逸らされた。
「……は?」
ズィーヴァが呟く。
その声は、今まで聞いたことがないほど乾いていた。
フューリーが次の術式を展開する。
拘束。
妨害。
重圧。
瘴気によるマナ撹乱。
だが、効かない。
ラインハルトはただ一歩踏み出す。
それだけで術式が崩れる。
フューリーが膝をついた。
「な、なんで……」
「相性が悪い」
アインツが低く言った。
「いや、相性以前の問題か」
ソルは歯を食いしばる。
出し惜しみなどしている場合ではない。
「――〝ビッグバン〟!」
不可視の砲撃ではない。
圧縮した瘴気を一点に束ね、破裂させる黒い爆ぜる星。
ロストブルーで何度も救済の魔女へ撃ち込み、そのたびに届かなかった技。
だが、それでも、今のソルが放てる大技の一つだった。
黒い光が走る。
大気が軋み、地面が裂け、王都の外縁に積もった瓦礫が吹き飛ぶ。
それを、ラインハルトは斬った。
抜いた剣の軌跡すら、ソルには見えなかった。
ただ、結果だけがあった。
黒い破滅が二つに割れ、左右へ逸れ、遠くの荒野を抉る。
ラインハルトは、その場に立っていた。
一歩も退いていない。
「……ふざけんな」
ソルは呻いた。
胸の奥が焼ける。
悔しさでは足りない。
怒りでも足りない。
憎悪と絶望と、それでも認めざるを得ない圧倒的な差が、喉の奥で黒く渦巻いていた。
「まだだ」
ソルは魔瘴石を握り潰す。
フューリーが顔色を変えた。
「ソルさん、それ以上は――」
「止めるな」
黒い瘴気が溢れる。
ただ撃つのではない。
爆ぜさせるのでもない。
周囲の大気ごと、瘴気を重ね、魂を削り、圧縮し、成形する。
黒い球体。
光を呑み、音を歪め、そこにあるだけで世界の一部を腐らせるような瘴気の塊。
ソルの掌の先に、黒い星が生まれた。
「――〝アトモスフィア〟」
それは、ソルが積み上げてきた呪術と瘴気操作の果てだった。
フューリーから学んだ術。
ノインとの戦いで得た間合い。
ツヴァイから盗んだ身のこなし。
ズィーヴァから学んだ目端。
アインツに叩き込まれた読み。
何度も死んで、何度も戻って、何度も敗れて、それでも手放せなかった全て。
その全てを、黒い一撃に変える。
「これで――」
ソルは歯を食いしばる。
「終われぇぇぇぇぇぇッ!!」
黒星が放たれた。
空気が死んだ。
音が潰れた。
王都の外縁が、一瞬で夜に沈んだように暗くなる。
ラインハルトは、その黒い星を見た。
そして、剣を振った。
たった、それだけだった。
――黒い星が割れた。
アトモスフィアが、斬られた。
空間ごと裂かれた瘴気の塊が、左右へ崩壊し、遅れて凄まじい衝撃が周囲を叩く。
ノインが踏ん張り、ツヴァイを庇う。
ズィーヴァが地面を転がる。
フューリーの呪具が砕ける。
アインツの外套が風に煽られる。
ソルだけが、動けなかった。
届かない。
ビッグバンでも。
アトモスフィアでも。
届かない。
「……なんでだよ」
声が漏れた。
「王になった」
ラインハルトは何も言わない。
「仲間も集めた。呪術も学んだ。何度も死んだ。何度もやり直した。ロストブルーも変えた。ここまで来た」
ソルの拳が震える。
「なのに、魔女にも勝てねぇ。英雄にも勝てねぇ」
胸の奥で、何かが黒く沈んでいく。
「まだ、足りねぇのかよ」
ラインハルトは、静かにソルを見る。
「ソル。君は――」
「黙れ」
ソルは遮った。
「黙れよ、英雄」
その声には、明確な敵意があった。
ラインハルトがわずかに目を伏せる。
ソルは笑った。
乾いた笑いだった。
「忌々しいな」
「……」
「それだけの力があって。それだけの才能があって。世界に選ばれて、英雄で、誰よりも強くて」
ソルの目が暗く沈む。
「なのに、お前はロストブルーを救わない」
「救わないのではない」
「ああ、そうだろうよ」
ソルは吐き捨てる。
「救えないんだろ。知ってるよ」
わかっている。
わかっているからこそ、憎かった。
ラインハルトが悪なら、どれほど楽だっただろう。
傲慢で、薄情で、ロストブルーなど知ったことではないと笑う男なら、心置きなく憎めた。
だが、違う。
この男は正しい。
正しく、優しく、誠実で、英雄だ。
だからこそ、ロストブルーは救われない。
「この滅んだ世界で、一体何を守るって言うんだ」
ソルは言った。
声が震えていた。
「何も守れてねぇだろうが。俺も、お前も」
ラインハルトは、否定しなかった。
沈黙した。
その沈黙は、肯定だった。
長い沈黙の後、ラインハルトは言った。
「私は守れなかった」
静かな声だった。
「黒龍を斬った。レヴィアタンを斬った。ベヒモスも止めた」
赤い髪が、風に揺れる。
「勝つことはできた。斬ることもできた。だが、救えなかった」
「……」
「ヴォラキアも、カララギも、グステコも、私の剣が届いた時にはもう手遅れだった」
ラインハルトの青い瞳は、空ではなく、遠い地平を見ていた。
「私は最後の英雄などと呼ばれている。だが、最後とはつまり、次がないということだ」
ソルは何も言わなかった。
「私は、どこかで諦めていたのかもしれない。勝つことはできる。守ることもできる。だが、救うことはできないのだと」
その言葉は懺悔ではなかった。
自己嫌悪でもない。
ただ、長い年月の果てに辿り着いた絶望だった。
世界最強の男が、静かに抱え続けた敗北だった。
「――だが、君は違う」
「何がだ」
「君はまだ諦めていない」
ラインハルトの視線が、ソルの背後へ向く。
ノインがいる。
ツヴァイがいる。
フューリーがいる。
ズィーヴァがいる。
アインツがいる。
全員が傷ついていた。
全員が敗北を知っていた。
それでも、誰一人としてソルから離れていない。
「お前ら、下がってろ」
ソルは言った。
だが、誰も動かなかった。
ノインが血を吐きながら立ち上がる。
「命令すんな、小僧」
「お前こそ座ってろ。役に立たねぇ」
「今のは聞き捨てならねぇな」
ツヴァイが震えながらもノインの横に立つ。
「ノインが立つなら、私も立つ」
「お前は下がってろ」
「やだ」
フューリーが膝を震わせながら呪印を描く。
「ソルさん、これ以上は本当に危険です。でも……貴方が立つなら、私も」
「だから下がれって言ってんだろ」
「聞けません」
ズィーヴァが唇の血を拭う。
「ほんと、馬鹿な王様だねぇ。逃げるなら一番に逃げるって言ったのにさ」
「なら逃げろ」
「今さら? 無理無理。あたし、盗み逃げするタイミングは見極める方だけど、今じゃないってことくらいわかるよ」
アインツは叡智の書を閉じた。
それは、未来を閉じる音だった。
「ソル。お前は王ではないと言い続けるが」
「……」
「少なくとも、こいつらはそう思っていない」
ソルは何も言えなかった。
ラインハルトは、その光景を見ていた。
ソルが命令しているのではない。
ソルが従わせているのでもない。
彼らは止め、叱り、支え、それでもソルが立つなら共に立つ。
この男は、人を従えているのではない。
人を立たせている。
ラインハルトは、そこに王を見た。
王冠も血筋もない。
玉座も国旗もない。
ただ掃き溜めの地下で、壊れかけた者たちがそれでも明日を見ようとする中心にいる男。
英雄ではない。
化け物でもない。
ただの人間。
ただの兄。
ただの王。
「……そうか」
ラインハルトは呟いた。
「希望は、生まれていたんだな」
「あ?」
「君こそが、世界が選んだ新たな希望なんだろう」
「知るか」
ソルは即座に吐き捨てた。
「俺は世界なんてもんの希望じゃねぇ。英雄でも救世主でもねぇ」
血に濡れた手で、黒いマフラーを握る。
「俺はただ――あいつらの太陽でありたいだけだ」
ラインハルトは、目を伏せた。
その顔に、ほんのわずかな笑みが浮かぶ。
けれどそれは、喜びではない。
どこか救われたような、ひどく痛ましい表情だった。
「なら、それでいい」
「何がだ」
「世界の希望などという言葉は、大きすぎたのかもしれない」
ラインハルトは言った。
「私にも、君にも」
ソルは黙る。
「君は世界を救わなくていい。君の妹を救え。君の仲間を救え。君が失いたくないものを救え」
風が吹く。
壊れた王都の空を、乾いた風が流れていく。
「その先に世界が残るなら、それで十分だ」
◆◇◆
憂鬱の魔女因子は、王城の地下に安置されていた。
そこに辿り着くまで、ラインハルトは何も言わなかった。
ソルも何も言わなかった。
和解したわけではない。
許したわけでもない。
ソルはラインハルトを憎んでいる。
その力を憎んでいる。
その正しさを憎んでいる。
そのくせ救えなかったという事実を憎んでいる。
ラインハルトもまた、ソルの全てを正しいとは思っていない。
奪い、殺し、繰り返し、壊れかけながらも進むソルの道は、英雄が肯定できるものではない。
だが、それでも。
ラインハルトは認めた。
ソルがまだ諦めていないことを。
仲間たちがソルを王と信じていることを。
そして、ラインハルト自身にはできなかった救いの形が、そこにあるかもしれないことを。
地下の最奥。
白い石で作られた祭壇の上に、それはあった。
小さな、黒い核。
だが、それを見た瞬間、ソルの魂が軋んだ。
圧縮。
沈降。
停滞。
時間すら、押し固められているような重さ。
それが、憂鬱の魔女因子。
亡き神龍ボルカニカが最後まで抱えていた、勇者の力。
「持っていくといい」
ラインハルトは言った。
ソルは彼を見る。
「いいのかよ」
「よくはないのだろうね」
ラインハルトは即答した。
「君が失敗すれば、世界は終わる。君が救済の魔女に敗れれば、憂鬱の魔女因子も奪われる。そうなれば、ルグニカも、ロストブルーも、本当の意味で終わりだ」
ラインハルトはそこで一度言葉を区切った。
「だが、ここに置いておけば、何も変わらない」
ラインハルトは、憂鬱の魔女因子を見る。
「私は守ってきた。守ることしかできなかった。そして、守っている間に世界はここまで壊れた」
「……」
「ソル。私は君のやり方を正しいとは思わない」
「俺もお前のことは嫌いだよ」
「ふっ、そうか」
ラインハルトは静かに頷く。
「だが、君はまだ諦めていない。届かなくても、敗れても、失っても、まだ手を伸ばしている」
「……」
「君は英雄ではない。だが、王だ」
ソルは眉をひそめる。
「少なくとも、彼らはそう信じている」
ラインハルトの視線が、ソルの背後へ向く。
ノイン。
ツヴァイ。
フューリー。
ズィーヴァ。
アインツ。
誰も否定しなかった。
「ならば私は、その王に託そう」
ラインハルトは、祭壇から憂鬱の魔女因子を取り上げた。
その手が、わずかに震えた。
魔女因子を使えば、ラインハルトは加護を失う。
ゆえに彼には使えない。
世界最強の英雄は、最後の鍵を持っていながら、自分では扉を開けられない。
その事実が、ひどく滑稽で、ひどく残酷だった。
ラインハルトはそれをソルへ差し出す。
「持っていくんだ、ソル」
ソルは受け取る。
手の中に落ちたそれは、小さいくせに、世界より重かった。
「私はここに残り、ルグニカを守る。君は、君の救いたいものを救え」
ソルは憂鬱の魔女因子を握り締めた。
「言われなくてもそうする」
ソルは踵を返す。
ノインたちも続く。
アインツが最後に一度だけ、ラインハルトを見る。
ラインハルトは、壊れかけた王国の地下で、ただ静かに立っていた。
最後の英雄。
化け物を狩る化け物。
勝つことはできたが、救うことはできなかった男。
その男は、もう一度だけソルの背に声をかけた。
「ソル。希望は、生まれていたんだな」
もう一度、ラインハルトは噛みしめるように告げた。
ソルは振り返らない。
「知るかよ。俺は、ロストブルーに帰るだけだ」
そうして、空無き大地の王は地上を後にする。
憂鬱の魔女因子を携えて。
敗北を抱えて。
憎悪を抱えて。
それでも、まだ諦めずに。
英雄は来ない。
英雄は、来られない。
だから、王が帰る。
妹と別れるために。
仲間と誓うために。
過去へ飛び、すべての因果をゼロから別つために。
◆◇◆