新選組の人斬り役   作:薩摩一兵卒

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ちょっと落語調かも


二振り目

 

明治3年

 次の者、高台寺党改め御陵衛士盟主伊東甲子太郎殺害の件、處刑とす。

新選組一番隊及び諸士調役兼監察

大石鍬次郎

明治三年拾一月三日

明治政府 大蔵省官氏 三浦安

 

時は明治、新時代の幕開けで御座ます。新選組が仕えていた幕府は政権を朝廷に返し、これによって佐幕派は朝敵となったのです。新選組もその例にもれず、鳥羽伏見の戦いでは敗走。甲州勝沼の戦い直後に永倉新八・原田左之助及び五名の隊士が離隊、確実に新選組の衰亡は音もなく少しずつ近づいてきたのであります。慶応4年新選組三番隊組長 斎藤一、会津に残留し、明治2年戊辰戦争では残る新選組最後の精神的柱であった土方歳三が討ち死をいたしました。これにより新選組は戊辰戦争後、事実上の消滅となったのは皆様が知る通りでございます。

しかし、歴史は残酷にもこの後も歩みを止めようともしません。勝者が前時代の敗者にする仕打ちは古今東西、どの国も一貫として残虐なものであると共通しております。フランス革命後の王太子が革命派に行われた仕打ちがその最たる例でありましょう。無論、この明治という新しい時代を切り開いた日本でも例外ではありません。特に新選組という維新志士から恨みを大量買いする程の組織に所属していた者にとってはその世は地獄といっても差し支えないでしょう。新選組の人斬り役を担っていたこの大石鍬次郎もその地獄による悲劇に遭った一人であります。その一部始終をご覧くださいませ。

 

明治元年

 

「あんた、起きな!仕事の時間だよ!」

「ふぁ~、おはようさん」

「すぅすぅ....」

「おはよう、雷太郎」

「はいよ、あんたお弁当」

「ありがとう。じゃ行ってきます!」

 

 

この時、鍬次郎は既に妻をめとり、子どもも作っておりました。新選組から離れ、江戸に住まいを建て幸福のひと時を味わう、まさに人生の絶頂期であります。妻帯者となり、父親となり、これからの世は血みどろな世界ではなく、愛する人のために尽くそう、そういう心持ちだった事でありましょう。自身の培ってきた全てを使い、我が子の健やかなる未来のため、武士であったプライドなど殴り捨てよう、その心様でありました。

 

「なぁ、間違っていたらすまないが、大石殿ではないか?」

「ん?」

「俺だよ、三井丑之助だよ!」

 

鍬次郎に話しかけてきましたのは三井丑之助と名乗る男でありました。実はこの者も元は新選組隊士であり、鍬次郎とも信頼関係の深い間柄と言われております。

 

「三井殿か!」

「久しぶりだな!御母堂は息災か?」

「はい、先日無事に喜寿を迎えまして」

「そうか、それはめでたき事であるな!」

「して、三井殿は何処へ向かおうとされて?」

「うむ、実は俺が懇意している政官様がな、士官にならないかと誘ってな。どうだおぬしも一口乗らぬか?」

 

士官というのは皆さま存じの通り、この時代でいうところの公務員でございます。安定した給与に確率した地位、今の鍬次郎にとっては喉から手が出る千載一遇の好機であります。うまく事が進めば、家庭が楽になる、それが鍬次郎にとってどんな夢のある話でありましょうか。かくして、鍬次郎はこの甘言にのることとなりますが、それは彼にとって新たな地獄の幕開けでもありました。

 

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