続きを書いてる途中でこの話と合わせたらキリが良いと思ったので、加筆して再投稿しました。
「あら、まだこんな所にいたのね。早くしてくださる? 我が家が裕福とはいえ掃除も出来ない役立たずをいつまでも屋敷に住まわせる訳にはいかないのよね」
そう言って此方を見下す2歳上の従妹は魔獣に踏み潰されて死んだ。
別にあの時代じゃ珍しくもない。五種族の中で最弱だった人間は定期的に搾取されるか他種族同士の争いに巻き込まれるため、むしろ煩い存在が一人いなくなって清々したぐらいの気分だ。
他にも散財が激しくてその分を私から搾取していた叔母は、身に着けていた大量の宝石が仇となり、隠れていたところを下位魔神に見つかって魂を捕食された。
最期まで私と目を合わせなかった当主の祖父母は磔にされ、その亡骸を弄ばれた。
私は彼等を囮にして魔神族の襲撃を回避した。
元より恩義も何も感じておらず、雑用をする傍らで何時でも逃げれる準備をしていたのが功を奏したのだ。
「おい、オレに近づくな化け物。また魔法と偽って変な術を掛けるつもりだろう」
人間は嫌い。あいつ等は自分の理解が及ばないものに対して酷く臆病だ。一人の時は怖がって陰口を叩くぐらいしか出来ないのに、群れた途端強気になって排斥しようとしてくる。だから人間は嫌いだ。
「やっぱりアンタ人間じゃなかったのね! そんな変な紋様してる奴がまともな訳ないじゃない!」
人間が嫌いだ。同じ種族、同じ造形なのに少し周りと違うところがあると鬼の首を取ったように騒ぎ立てるから。
「其方が時の魔力を持つという少女か。その力、人間族ひいては王国の為に存分に振るうがいい」
その癖アイツ等は同族でも平気で傷付ける。群れないと生き残れないのに、群れの中で地位を巡って醜く争うのは馬鹿でしかないと思った。
「ノルン、どこを見てるんだい。君の魔力も、君自身も――もう全て僕のモノなんだから僕以外を見たら駄目じゃないか」
人間が嫌いだ。意味不明なことを言って私を縛り付けようとする。私の身体は、意思はッ、私だけの物だ…! 上から押さえつけて従わせようとするな!
「……まったく、子供がなんて眼して睨んでるのさ。ほら、特製の野菜スープだよ。これでも飲んで機嫌直しな不良娘」
でもシスターだけは……あの人だけは私を利用するのではなく一人の子供として見てくれた。
人間に対する嫌悪感こそ無くならないが、シスターだけは例外。あの人と出会わなければ世界の全てを拒絶し〈十戒〉の皆と打ち解けることもなかったと思う。
それだけシスターから受けた影響は大きく、彼女にもらった
「
別に修道士じゃなくても良かったんです。ただシスターと繋がりを持ちたくて、何か共有できるものはないかと探したら偶々コレだったというだけ。それをあの人も分かっていましたが、子供の真似事だと思って何も言わなかったんでしょう。
結局人間嫌いは変わらなかったんですが、お陰で信仰の精神に目覚め、心に余裕ができました。……これ戒禁の相性はともかくメラスキュラさんより私の方が見た目《信仰》っぽくないですかね。
「なんで〈破滅の龍〉なんかを信仰してるのかって? そりゃあ私がそうしたいからさ。魔神族に睨まれようと自分が信じたいものを信じれないなら
説教を垂れる割には色々適当な人でしたけど、最後まで己を貫き通す生き様に私は深く感銘を受けました。
私にはあんな生き方出来ない。だからせめて彼女の意志だけでも受け継ごうと決め、遺品の中にあったロザリオを首に掛けたのです。
「……む? 結界の修復は終わったのか」
「あくまで応急処置ですけどね。今はそれよりも
「それもそうだな。では行くぞ、奴との因縁に決着をつけるのだ」
「はい。……行きましょう」
見ていて下さいシスター。三千年前から続く聖戦を私が――〈十戒〉が終わらせてみせます。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
――少し時間を遡るが、グロキシニアとドロールが乗っ取り魂の蒐集を図っていた大喧嘩祭りで動きがあった。
“如何なる望みも叶える”という誘い文句に釣られる参加者たち。しかし、そんな彼等の前に第一関門である巨大迷宮が立ち塞がった。
その名も「死の罠の迷宮」
踏むと天高くまで打ち上げられる床に、突然崩れる地面。他にも
そして極めつきは砂漠の暴君アースクローラー。全長が100フィートを超える凶暴な怪物は、それ等の罠を潜り抜けてきた猛者たちですら容易く屠ってしまう。
記憶を無くしたディアンヌと合流したエリザベス、ホーク、ギルサンダーとハウザーもこれに応戦。特殊な粘液を持つ表皮に苦しめられながらもギルサンダーによく似た青年?ギルフロストの加勢によりその場を乗り切った。
そして彼らと一緒に参加していたメリオダスとアーサーの二人もまた、本来の力を取り戻したメリオダスによって此れを難なく退けていた。
「どうしたアーサー?」
そんな折、彼を拾い上げてくれたマーリンに恩返し出来ていないと嘆く騎士王に発破をかけるものの、そんなアーサーはまだ何か悩んでいるようであった。
「何か、大事なことを忘れている気がして。思い出そうにもそれが何なのか全然分からないのですッ」
「……そうか。時間はないかもしれんが必ず見つけてやれ。そう思えるお前をアイツも憎からず思っている筈だ」
「へ? それはどういう――」
そこから先は聞くのを躊躇われた。何故なら壁一枚を隔てた先にエリザベス含む仲間の気配を感じたという。
土壁を構成する魔力が邪魔して〈七つの大罪〉であるディアンヌすら感じ取れない中、その二人だけは確かに思い人がこの先にいると確信をもって告げていた。
「エリザベス、待ってろよ」
どうやって向こう側にいる皆と合流するか模索している最中、ふと鼻腔をくすぐる肉のいい香りがして其方を向く。そこにはいつの間にか丁寧に調理されたアースクローラーが置かれていて、その味に感動した二人が自分のところの料理人にすべきと軽い言い争いに発展する。
「しゃあねえな。どうしてもって言うなら戻ってやるか♬」
「! ……バン!!」
そこにいたのは〈七つの大罪〉からの脱退を表明していた
傍から見たら仲違いを起こしたと思われるいつもの
「団ちょ、エレインも一緒にいる。驚くのも無理ねえさ。俺でさえ正直状況に付いていけてねぇ…」
「そっか。好きな女にまた逢えたんだろ? ならそれで良いじゃねえか。そう辛気臭い顔すんなって」
素直に親友を祝福するメリオダス。彼にそんな言葉を掛けられてようやくバンの顔から憑き物が落ちたような笑みが零れる。
「団ちょ……ごめんな」
「行こうぜ親友。互いに守るモンの為に」
「あぁ♬」
仲直りを済ませた二人にもう恐れるものはない。目下最大の問題である土壁をどうするかの話に再び戻り、高い再生力と再生速度を持つ土塊をぶち破る案がそれぞれから提示された。
「ハンパねぇ再生力でも追いつかねぇ、どでかい風穴をぶち空ける!」
「ハンパねぇ再生速度を上回るスピードで連撃を叩き込んでやる♬」
その瞬間、二人を中心に尋常でない魔力の奔流が発生した――!
メリオダスが力を溜め、バンが目に止まらぬ速さで武器を振り回す。やがてその振動は反対側にいた全員に届き、一早くそれを察知したエリザベスが急いで皆を下がらせた。
「ここから離れて!!」
「す、凄い。これが〈七つの大罪〉の
その一撃は皆との再会を果たさせるに留まらず、勢い余ってその先の壁諸共もぶち抜いて、他の参加者と〈十戒〉二人が待つゴールへと辿り着かせた。
「血が滾ってきました。祭りを始めましょう」
「どうやら役者は出揃ったみたいっス!」
各々再会できたことを喜ぶ。だがそれも束の間のこと。ここまで来れた実力者達でも身が竦むほどの威圧感が巨石の上にいる〈十戒〉から発せられ、否が応にも臨戦態勢を取らされる。
いや、むしろ皆が一定以上の強者だからこそ彼我の実力差を察せられたのだ。この場で恐れを抱いていないのはメリオダス彼一人だけである。
「それでは先ずキミたちが戦う場を用意するっスね。よろしくドロール君」
『
その瞬間、彼らの立っていた台地が盛り上がり、人の手を模した巨大なフィールドが設けられる。この御業を見て如何なる願いも叶えるというのが大言壮語でないと納得する者もいれば、当然ながら恐怖を宿した視線も少なからずある。
だが驚きはそれだけに止まらなかった。
「とっとと始めたいんで参加者はここらで打ち切りっス。ということで時間に間に合わなかったゴミ虫くんたちは迷宮から一掃しちまうっス」
「ッ…、そんな! あの化け物から感じる魔力は妖精族のモノ。それも途方もなく強大なコレは、まさか――!」
霊槍バスキアス 第九形態 『
そう唱えられると、グロキシニアの体を覆っていた蛸のような触手が形を変え迷宮全域に広がっていった。まだ探索に残っていた参加者たちは突然襲い掛かるソレに身体を串刺しにされ、致命傷を避けられた者も傷口が化膿して死に至った。
これは【
掠り傷を重症化し、毒を猛毒に変え、小さな腫瘍を増大させる。妖精王の森の植物を成長・繁殖させる一方で木々を間引き、森を維持させる妖精王ならではの魔力だった。
当然驚きを隠せないキングは霊槍バスキアスが誰に授けられたものかを思い出し、件の〈十戒〉が初代妖精王グロキシニアであることを悟った。
「随分古い呼び名っスね。今のあたしは十戒《安息》のグロキシニアっスよ」
キングは信じられなかった。初代妖精王と言えば神樹に選ばれた最初の妖精族として今も語り継がれる伝説の存在だ。直接会った事こそないが、当時を知る者達の殆どが親愛と尊敬を抱くほどの人物。それがキングの知るグロキシニアである。
故に分からない。まさか実際に生きていたばかりか、ブリタニアを支配しようとする魔神族精鋭の〈十戒〉に名を連ねているなど。
「グロキシニア様…あなたは三千年前に魔神王の手によって討たれたと聞きました。そのあなたが何故〈十戒〉に! なぜ魔神族に与しているのですか!?」
「それを知りたいなら優勝すればいい。同胞のよしみで望めば幾らでも答えてあげるっスよ~~?」
しかし当の本人によってはぐらかされた。これにはメリオダスを除く面々も衝撃を受けており、中でもこの場にいるもう一人の妖精族であるエレインは兄と同様にショックを隠せないでいた。
その後、元喧嘩祭りのチャンピオンで今は祭りの進行補佐役に収まっているタイズーから大喧嘩祭り開始が宣言された。
途中で生命反応が消えた迷宮内から滑り込みで
親友、親子ほどの年の差ペア、団員仲間、または初めて会う者などランダムに振り分けられていく。その中にはエリザベスとエレインも入っていたが、二人はマラキア暗殺団のトーラとジグモを相手に危なげなく勝利を収めた。
戦闘後に負けた二人が“退場”を食らう事態にこそなったものの、その後メリオダスとバン、そして神樹の真の力を引き出したキングと新たなゴーレムを作り出したディアンヌも試練を突破した。
だが祭りが順調だったのはここまで。
事態が大きく動いたのはゴウセルとジェリコ、そしてエスカノール&ホーク組との対決でだった。同じ〈七つの大罪〉といっても日が出てない状態のエスカノールと闘級30しかないホークに勝ち目など無い。
そもそもが仲間を傷つけたくないエスカノールは参加辞退を申し出るが、十戒がそれを許す筈もなく対戦相手の中で唯一ゴウセルだけが標的を見定めていた。
「本来なら魔力を使うまでもないが、
「や…やめてゴウセル君。僕はキミと戦いたくなんて…!」
嘆願虚しくゴウセルの『
だがそれはゴウセルが見せる悪夢。一生覚めることのない催眠をかけて勝負は決した……かに思われた。
誤算だったのはエスカノールが抱く想いの大きさ。仲間を蹴落としてまで心を手に入れようとする今のゴウセルでは決して理解できない感情に彼の思惑は崩された。
マーリンの存在を太陽に見立てて昼の姿に覚醒したエスカノールと、所詮は疑似的な変化だと見破ったゴウセルとの技のぶつかり合いにまで発展する。
「心を弄んだ大罪を、その身を以て贖いなさい!」
「受けて立つ…!」
エスカノールの持つ神器――神斧リッタの特性は「
「夜に太陽!? これは…エスタロッサ級の魔力っスよ」
「ありえない!」
誰もが息を呑む魔力の爆発。だがゴウセルもただ黙ってやられるつもりは無い。神器を解放した上で放つ彼の大技『
二人同時に放った最大攻撃。最後に立っていたのは……
「俺の勝ちだ」
ゴウセル。だがそんな彼の傍にジェリコが駆け寄り、勝負の行方よりエスカノールが示した「心」の行く先を見ろと言う。
意味が分からないゴウセルだったが、彼女の示した先――
「どうしてだ。何故あんな真似をした」
「たとえ…キミに心が無くたって、キミは僕の……〈七つの大罪〉の仲間だ。だから…そんなゴウセル君を弄んだ彼らを、絶対許せなかった」
心が無いと言いつつそれを弄んだという矛盾を指摘するが、当のエスカノールは笑うばかりだった。
「ぬかったッ…よもや攻撃の矛先が我らに向いていたとはドンッッ―――!!?」
そしてエスカノールの攻撃をもろに食らったグロキシニアとドロールの眼前に、物凄い勢いで一つの影が降り立った。影はタイミングをずっと図っていたのだ。その為に仲間にも作戦を伝えず、祭りを楽しむふりをして絶好の機会を窺っていた。
「待っていたぜこの時を。お前ら二人を確実に討てるチャンスをな」
「メリオダスっ」
「さあ始めようぜ、祭りの本番をよ」
幾ら一騎当千のメリオダスと言えども正面から二人同時に相手すれば敗北は必至。だからこそエスカノールが力を解放したのを見て
「確かに我々でもあなた相手は苦戦を強いられる。ですがあなたも致命的なミスを犯した」
それは足枷にしかならない
「これで全員人質。逆らえば皆殺しです」
斬ッ!!
「その前にてめぇを倒す」
だが英雄はそんな脅しに屈しない。隙を晒すどころかもう一つギアを上げ、瞬く間に残る二腕も寸断した。
追撃と合わせて戦闘不能に近い状態まで追い込まれるが、『
「待っててねドロール君。すぐに回復させるから二人で一気に逆転を「諦めろ」――ッ、」
「お前らに勝機はねぇ」
本来なら……この作品が原作を辿った話であれば勝つのは
しかし現実は非情だ。当代の《不殺》はそれすらも許さないとばかりに3人の戦いに割り込むと、かつての恩人であったメリオダスに容赦なく魔法を発動した。
「神器っ――『
乱入者――十戒ノルンの指が首筋に触れ、そしてメリオダスから一切の音が消失した。
使ってみたい時間の系統は?
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