また投稿時間ミスってたorz
〖〈十戒〉総員に告ぐ。グロキシニアとドロールが
ゼルドリス様……いやいや間違えた。どうも昔の癖が抜け切らず仲間に敬語を使ってしまうな。
ゴウセルの代理とはいえ今や俺も〈十戒〉の一員なのだ。いつまでも部下の気分に甘んじれぬと言葉遣いから直し、対等な立場になろうと決めたのに慣れとは厄介だな。
突然の報せに脳がフリーズするがそれも一瞬の事。ようやく16年前の借りを返せることに胸が高鳴るが、同時に今は馳せ参じれないことに忸怩たる気持ちが募る。
〖もう着いたかノルン。一応言っておくが油断するなよ〗
〖残念だがゼルドリス、彼女は今『時の牢獄』を修復していて此処にはいない。恐らくメッセージも届いてないだろう〗
〖……何だと?〗
まったく何て最悪なタイミングだ。
勿論あの時止めなかった私も悪いが、あそこでノルンの神経を逆撫でた
〖出てきたのか〗
〖声だけだ。同じ時を司る【魔力】でも能力ではノルンに分がある〗
奴を捕えている『時の牢獄』も含め、魔神王様に楯突く愚か者を収容する檻は全て「魔界の牢獄」にある。
そこへ行くには牢獄の門を開ける必要があるが、
〖その事でしたらご心配なく。三千年もの間手付かずだったせいで一回では修復し切れませんでしたが、少なくとも今すぐ破られることはないでしょう〗
〖…! ノルン! 戻ってたのか〗
と思っていたら“丁度よく”封印を終えたノルンが念話に加わってきた。……ん? 丁度?
〖聞こえていたなノルン。あの二人の事だ、簡単にはやられないだろうが俺達が行くまで持つかは分からん。お前とフラウドリンを加えた4人で対処しろ〗
〖はい分かりました〗
そこで念話は途切れた。俺はノルンの様子に違和感を覚え、まじまじと彼女を観察しその正体に気付いた。
多いのだ、当初想定していたより魔力の減りが。
流石に自衛できるだけの力は残しているようだが一回の修復でここまで削れるとは思えん。そしてタイミングを見計らったように魔界の牢獄から帰還した件と踏まえれば……自ずと答えは見えてくる。
「ノルンお前、
「やっぱりバレますよね。そうです……だから戻ってきちゃいました」
やはり『
魔力消費や世界への負荷を考慮して乱発は控えるようゼルドリスから言い含められてた筈だが、それでも尚発動したのは直接メリオダスに引導を渡したかったからか。
なれば誰にも言うまい。他にもっと上手いやり方があっただろうと叱りこそすれ、魔力を使って戻ったことを非難するには俺の気持ちが傾き過ぎてる。ここは見て見ぬふりをしようじゃあないか。
「くくっ、デリエリに知られたらまたお仕置きだな」
「いいですよ~。今なら『羽衣』も使えますし」
そこで
とにかくこれで何の憂いもなく参戦できる。半ば諦めかけていた戦意を再び滾らせ、16年――いや三千年前から続く宿敵との決着に目を見据えた。
「それじゃあ移動はお願いしますね」
そう言って俺に『
そして―――ノルンがメリオダスに『時の棺』を繰り出したのがその1秒後だ。
端から見るとワープしたように誤解されるかもだが実際は違う。俺はちゃんと彼女を運んで此処まで来たさ。ただ八十マイル*1もの距離を移動している間誰も俺を視認できなかっただけで。
斯く言う俺も、ノルンが自分の手から離れたのを腕から重さが無くなって漸く気付いたぐらいだ。ふーむ、ものの見事に出し抜かれてしまったか。
だがまあいい。当のノルンが自分も出し抜かれた事にどうやらまだ気付いていないようだしな。
メリオダスさんを一時的に封印した私は小さく安堵の息を漏らしました。後ろを振り返り、決して無事とは言えなくも仲間の動く姿を確認してホッと胸を撫で下ろします。
「遅れて申し訳ありません。すぐに回復しますね」
横槍する形で戦闘を終わらせたことに申し訳無さを感じますが、グロキシニアさんとドロールさんは気にするなと言い逆に励まされてしまいました。
急いで『
「いやあ~危なかったっス。
「相変わらず仕事が早い。救援要請も先程出したばかりですが貴女には関係ありませんでしたね」
まあ私の【魔力】の性質上0.1秒でもあれば尽きることのない猶予を与えられるのと一緒ですから。
魔法を発動できた時点で無限に
「フラウドリンさんもごめんなさい。勝負はできませんが最後のとどめだけはお譲りします」
敵対してもあの人に救われたのは事実。だから彼を看取る時はせめて苦しまないようにと騙すような形になった
「それは良いが……どうやら当人はそれを望んでいないようだぞ」
「…? それはどういうキャッ――!」
突如後ろで轟音と砂埃が立ち、その原因を追った先にいた彼を見て目を疑いました。だってそれは…たった今封印したばかりのメリオダスその人だったんだから。
「一体どうして!? 自力で解いたにしても早過ぎる。そもそも
いた。私が魔法を使った場所に、空に逃げたのとは別のメリオダスさんが居たのだ…! 二人目のメリオダスさんは何故か身体が透けていて、まるで時が止まったかの如く微動だにしない。
いや待ってください。メリオダスさんが2人? これと同じ光景を最近見たような……
「神器ロストヴェインの特性「実像分身」だ。 奴め、わざと掛かったふりをしてノルンの注意が逸れるのを待っていたな」
「恐らく実体化した分身を表面に纏って貴女の攻撃を躱したのでしょう。彼が無策で私達の前に姿を現すわけないとは思っていましたが……とんだ隠し玉もあったものだ」
そうだ。私は逆行した世界で一度それを確認している。あの時は全身を顕現させていた為そういうモノだと認識していましたが、予想以上に使い道に幅があるんですね。
と、そんな事を考えていたら次々と分身が作られ、あっという間に空がメリオダスさんで埋め尽くされてしまいました。
「ええっ…!! ど、どれが本物!?」
「落ち着くっスよ。全部叩き落とせばいい話っスから。あたしに『
「あぁ、招集される前に時間を巻き戻したらしい」
「フラウドリンさん!?」
酷いっ…さっきは黙ってくれるって言ったのに。これが大人のやる事ですか! って言ったら顔を逸らされました。解せません。
「なら10倍速でいいっスよ。それぐらいだったら魔力消費も抑えられるっスよね」
「では皆同じ速度にしよう。そうすれば会話に支障をきたすことも無い」
別に『
加速した皆さんはそれこそ破竹の勢いで大量のメリオダスさんを落としていきます。あの分身、数を出すほど弱くなってたんですね。
その光景を最初は複雑な面持ちで見ていました。でも分身を生み出すより速いペースで蹂躙されていく恩人の姿に、堪らず目を背けてしまった時私は気付いたんです。
あぁ、本当は彼を殺したくないんだって。でも今更メリオダスさんの助命を願い出るには彼のしでかした事が大きくて、結局は直視しないという心の防衛反応が咄嗟に出てしまったんです。
そうして万を超えるメリオダスさんが為す
「本物のメリオダスさんは何処に行ったの」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
消えたメリオダスの謎。その答えは意外な所にあった。
ドロールが人質を閉じ込めた岩の手掌の中にて、大会の参加者達は脱出の手段について模索していた。
「てめえら! 皆でメリオダスの加勢に行くぞ!」
「行ってどうする。表に出たって団ちょの足を引っ張るのが関の山だ」
バンの顔は苦渋に満ちていた。彼だけではない。戦闘を生業とする他の〈七つの大罪〉やリオネスの聖騎士なども〈十戒〉相手に自らの力不足を痛感していた。
「バンの言う通りだよ。相手は今までの敵とは次元がまるで異なる。正直……現状で太刀打ちできるのはメリオダス以外にいない」
その後は
「〈十戒〉は目覚めさせるべきではなかった。奴らはもはや天変地異そのものと言っても過言ではない!」
「……」
水晶を取り出して戦況を確認したギルフロストの言葉に、操られていたとはいえ封印を解いた元凶であるヘンドリクセンは沈痛な面持ちで頭を垂れた。
「確かに余計なことをしてくれたものだ。ヘンドリクセンに……勿論お前もだ
「げっ! 何であんたが此処にいるのよマーリン!」
「待てっ、ビビアンだと!?」
その名はヘンドリクセンと結託して王国を混乱に陥れた罪人のものだった。
マーリンとは師弟関係にあり、リオネスの戦いで彼女に完全敗北し逃亡した女魔導師。それがギルフロスト改めビビアンの正体だった。
彼女の存在に殊更大きな反応を見せたのはギルサンダーだった。しかしそれも当然だろう。何せ彼女とヘンドリクセンは彼の想い人であるマーガレットを人質に取り、彼とメリオダスを戦わせるようけしかけた張本人なのだから。
「ギルサンダーも言いたいことは分かるが抑えろ。団長殿を助けたいならな」
「っ、出来るのかマーリン!」
「それを説明しようにも時間がない。ゴウセル、私の考えを皆に伝えろ」
「……了解だ。『
ヘンドリクセンとの最終決戦にも使われたゴウセルの魔法。彼の手から発射された光がその場にいた全員の頭を貫き透過し、言葉にせずとも情報が脳にインプットされる。
今回伝えられたのはメリオダスから教えられた〈十戒〉各員の能力、戒禁、そしてメリオダスが置かれている状況とそこから救い出す作戦の計4つだった。
刷り込まれる情報の一つ一つが彼らの持つ常識を覆すに値するものだったが、中でもノルンの【魔力】は殊更衝撃が過ぎた。
「…! 思い出した、彼女はっ」
「時を支配する魔力ですって? 何よこれ反則じゃない」
「しかも要求される「魔力」の桁がおかしいよ。魔神族以外は抵抗すら出来ないでしょこんなの」
実際は魔神族であってもノルンの力に抗えるのは極一部に限られる。
メリオダスも魔力に直接作用する『
今はノルンを欺き上空に逃げた場面が映し出されており、しかしいつ彼女が仕掛けるか全く予想できない面々は顔に緊張を浮かべてマーリンに向き直った。
アーサーだけは様子が異なり、食い入るように水晶の中のノルンを見つめているが、誰もその様子に気付くことはない。
「どうやら覚悟は決まったようだな。良い顔が揃っている」
作戦は極めて単純だ。ロストヴェインの「実像分身」で敵の視界を遮り、誰にも気付かれぬまま本物のメリオダスを見つけ
「一応言っておくが奴らに――特に《不殺》に感付かれたらその時点で我々の敗けだ。光をも超える速さで接近され、触れられたら即詰みの魔法を叩き込まれる」
支配された時の前では距離など意味を成さない。
万が一知覚できたとしてもそれは『断魔の羽衣』を纏っているということだ。攻撃しても先ずダメージは与えられないばかりか、その分のエネルギーが跳ね返って逆に負傷するか自滅するかの2択になるだけ。どちらにせよ見つかった時点で終わりである。
「当然目立つから全員を連れていくことは出来ない。定員は3名だ。と言っても私はこの様だから『
「ちょっと勝手に決めないでよ! そもそも私が祭りに参加したのはギルがいるからで、そうでなきゃあんな怪しい祭りッ――「協力したらギルサンダーとのデートを取り付けるが」 やるっ、やるわ! その言葉忘れないでよね!」
即答だった。愛する男を手に入れるために王国を乗っ取ろうとした女の執念が〈十戒〉の恐怖に
十年後に色欲の名を彼女が継いでいたとしても妙に納得できるのは何故だろうか。
「……」
「あー、その~……ドンマイ優男」
哀れ。生贄にされたギルサンダーに、ハウザーとヘンドリクセンまでもが憐憫の目を向けた。
「これで残る枠は2人だけだ。誰が
「私に行かせてください」
「不死身なら殺されることはあっても死にはしねえよなぁ♫」
「わ、私も……くっ、」
何度も言うが時間は掛けられない。覚悟を問うた時点でマーリンは既に誰を連れていくか決めており、バンとエリザベスが申し出た次の瞬間にはメリオダスで埋め尽くされたバイゼル上空……の更に上から身を放り出された。
「事前に、声掛けろっつーの!」
「静かにしろ。このまま落ちてすれ違いざまに団長殿を回収する。万が一にでも魔法を感知されると拙いからここからは
文句を言う暇があるなら本物を探せ。マーリンの注意で二人の意識が下にいるメリオダス達に切り替わった。
(どこ? どこにいるのメリオダス様)
(必ず見つけてやるからな団ちょ)
片や親友。片や想い人である大切な存在を感じ取るのに難しい理屈はいらない。
理屈はないが…他の誰でもなくこの二人を選んだのには選ばれたなりの理由がある。そしてマーリンはこの二人なら必ずメリオダスを見つけてくれると信じていた。
「「 いた! あそこだ / です!! 」」
二人が同時に指さした先。ちょうど真下にいる一人を本物のメリオダスだと断定した。
「はっ、何とも好都合じゃ――バンっ、気付かれたっ!!」
重力に任せ、あと10mを切ったところだった。マーリンから今まで聞いたことない大声が発せられ、それと同時に物凄い勢いで何かが迫っていることに漸く気付いた。
「てめえドレファスか! 悪いが何言ってるか分かんねえっつーの」
〈七つの大罪〉の中でもスピードに秀でたバンですら姿を追うのがやっと。辛うじて正体が二大聖騎士の一人であるドレファスと、狙いが自分たちに向けられていることに気付くがエリザベスを庇うので精一杯だった。
腕の中でエリザベスが驚愕に声を上げるのと、メリオダスがバン達の存在に気付いたのは同時だった。
(クソっ、駄目だ。こいつを剝がさねえことにはあのビビアンとかいう女が近付けねえ!)
その間もドレファスの猛攻に身体を晒し、傷を負い続け、その度に怪我が治るのを繰り返しながら残り5mの距離まで差し迫った。
(一か八か、やるしかねえ!)
『
『
無差別に力を吸い取るためノルンに気付かれたら終わりの状況で使うには自殺行為だが……なんと彼はこの土壇場で改造し、半径数メートル以内の者のみに限定して発動したのだ。
「バン! エリザベス!?」
「メリオダス様っ」
「掴まれ団ちょ――!!」
これによりバンを襲っていたドレファスから「武力」が吸い取られ、突然の変化に戸惑っている間に隙を突いたバンとメリオダス、そしてエリザベスの手が重なった。
「
身体に力が入らずともノルンに施された魔法はまだ残っており、せめて一人でも討ち取ろうと剣を振るうが……あと一歩のところで逃げられフラウドリンの攻撃は虚しく空を切った。
「そうですか。……まさかお仲間がいたとは」
メリオダスさんに逃げられた時の状況をフラウドリンさんから聞いた私は、誰にも明かしませんが深い衝撃を受けると共に助け出した者達に感銘を受けたです。
人間とは弱い種族だ。魔神族どころか小さな事故一つで簡単に命を落とす。
故に人間とは死に臆病で、五種族の中で最も生き汚い存在だと思ってる。
けどその人達は紛れもなく人間で、本来は忌み嫌われるはずの
「私の落ち度です。皆さんに任せきりにせず私自身が動いてればよかったのです」
何と勇敢な魂。なんと高潔な方々なのでしょう。例え人間族だろうと尊敬に値する人達へは惜しみない称賛を送るべきだとシスターは言っていました。
願わくば三千年前に会えていれば…と思うのは私がまだ人間への未練を残しているからなのでしょうか。
「だから……もう一度やり直しましょう。
ごめんなさい勇気ある人達よ。叶うならばやり直した先の未来でも生きることを、大変勝手ではありますが祈らせてください。
「『
世界よ巻き戻れ」
そうして私は一人、
どうあがいても逃れられない負けイベント感。
case1.不意を突いて逃げる……失敗。
case2.分身を撒いて逃げる……成功?
ちなみに、原作と違って余裕があったにも関わらずドロールが人質を殺さなかったのはノルンが来たからです。
本人は気にしないと言いますが、妖精族と巨人族の同胞を殺してしまうのは彼女の前だと憚れるのでした。
※誤字報告ありがとうございます。
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