《不殺》は時を廻したい   作:暦月

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第三話 宣戦布告

 

 

 

「メリオダスを仕留めた…?」

 

 と、そんな私達の心配は杞憂に終わり、暫くすると五体満足のまま何やら上機嫌で帰ってきました。しかも食事の傍らで裏切り者のメリオダスさんを始末してきたのだという。

 

 

「如何にも。他の小うるさいハエ共々始末してやった。拍子抜けもいい所じゃよ。あれがかつて魔神族を震撼させた異端者の末路とはのう…」

 

「本当かガラン。奴をそれほど容易く倒せるとは思えんが」

 

「本当かじゃと? 《真実》のガランの言葉を信じられんのかいな」

 

「アンタの力は十分承知してはいる」

 

 

 う~ん、ガラン爺様には悪いですけど私も信じられないかなあ。勿論嘘を吐いてるとは思わないけど、思い違いや幻覚を見せられたと考える方がまだ自然だ。

 戦いから退いていたら三千年のブランクという事で説明が付くかもしれないけど、あの人に限ってそれは無いだろう。どうやら特殊な武器も持っていたみたいですし、その線は薄いかな~、なんて。

 

「…」

 

「またどっかに行くんスか?」

 

「散歩じゃよ。どうもジッとしているのが性に合わんのでなぁ…」

 

 う~ん。よく食べて、よく動く。年長者なのにガラン爺様が一番健康的な生活を送っていらっしゃる。

 

「これは私も見習わなければ!」

 

「ノルン、ちょっとデリエリを見ててくれるかい。私もその辺散歩してくるから」

 

「えっ、ちょっ…モンスピートさん!?」

 

 いきなり立ち上がったかと思うと、横にいた私にデリエリさんを預けてきました。因みに当の本人はというと、モンスピートさんに膝枕された状態で夢の世界に旅立っています。

……この二人、実は出来てるのでは。もしや年の差カップルなのでは?

 

「はわわ! 第一子は男の子? それとも…女の子!?」

 

「いきなり何を言ってるんですかあの子は」

 

「そういうお年頃なんでしょう、きっと」

 

 その後、特にやることも無いので私も舟を漕ぎ始めました。食事も運動も大事だけど、やっぱり睡眠は欠かせませんよね。

 精神年齢はもう大人だけど、肉体の方は未だ少女の域を出ないから、これも仕方な、い……

 

 むにゃあ………。

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 一方、視点は変わり……メリオダス率いる七つの大罪と、聖騎士ギルサンダー、ハウザー、グリアモール、そして元聖騎士長ヘンドリクセンがドルイドの聖地で鍛錬を行っている所まで時間は進む。

 

 そもそも王都にいたメリオダス達が何故森の賢者を頼ることになったのか。

 

 

 事の発端は十戒が復活した直後まで話は遡り、リオネス国王バルトラが自身の魔力『千里眼(ヴィジョン)』で南の新興国、王都キャメロットに極大の脅威が迫っていると予言した所から始まる。

 

 その脅威というのが十戒復活と共に長き眠りから醒めた巨獣アルビオンだった。

 メリオダス達はこれを撃退、最後は神器ロストヴェインの特性「実像分身」と『全反撃(フルカウンター)』のコンボによって、見事アルビオンを体内の核ごと吹っ飛ばした。

 

 

 詰まる所ノルンの推測は当たっており、そしてそれに引き寄せられる形でガランが強襲したのだ。

 

 

 圧倒的な武力を誇るガランに七つの大罪は為す術無く蹂躙されたが、最後のトドメを色欲の罪(ゴート・シン)ゴウセルがガランの認識を偽り事なきを得た。

 つまりはこれもノルンの読みが当たっており、ガラン本人は始末したと思い込んでいるため『真実』の戒禁が作用しなかったのである。

 

 その後、頭を強打した衝撃とゴウセルの介入により嫉妬の罪(サーペント・シン)ディアンヌが記憶障害に陥った。

 嘗ての故郷である巨人族の里を目指す道中で散歩に出ていたガランと予期せぬ再会を果たし、更にはモンスピートにも襲われ絶体絶命の危機を迎えたが、そこを元戦士長だった〈大地の牙〉マトローナに助けられ、九死に一生を得た。

 

 

 それを受けて《嫉妬》を追っていた七つの大罪は、暴食の罪(ボア・シン)マーリンの提案により途中で進路変更を行った。

〈十戒〉に対抗するため嘗てメリオダスから奪った“力”を蘇らせるべく、それを求めてドルイドの聖地イスタールまで来たというのがこれまでの流れだ。

 

 ドルイドの長ジェンナとザネリから“力”を取り戻す試練を受けたメリオダスは見事それに合格し、今は修練窟にて仲間達と共に鍛錬を行っている最中だった。

 

 

 そんな中、この地で再会したヘンドリクセンにメリオダスが声を掛ける。

 

「話は聞いたぜ。ギル坊やハウザー達を救ってくれたんだってな」

 

「…はい」

 

 二人の会話は数日前の激闘を感じさせないほど穏やかで、自責の念に駆られながらも友を救うと決めた男と、それを許す者とで新たな絆の繋がりを築いた。

 

 

「そう言えばメリオダス殿、復活した魔神族の中に明らかな人間族の少女が混じっていたのですが、あれは一体…」

 

「ノルンか。あいつは魔神族と人間のハーフだ。俺が最後に見た時は十戒入りしてなかったが、どうやら〈四大天使〉を一人で抑えたことが魔神王に認められたらしいな」

 

「なッ――! あんなに幼い少女が四大天使様を!? それは本当なのですか!」

 

 

 信仰する女神族の中でも特に高い能力を有し、その武功を認められ最高神から恩寵を賜った四人の女神族、それが〈四大天使〉だ。

 一人で十戒2~3人分とされており、そんな女神族側の最高戦力が少女一人に抑え込まれるなど俄かには信じ難かった。

 

 

「別に驚くことじゃねえさ。ノルンが本来の実力を発揮すれば俺や他の〈十戒〉ですら手に負えねえ。一番厄介なあいつを如何に抑えれるかで戦局が決まると言っても過言じゃない」

 

「そ、それほどとは…」

 

 

 だが他ならぬメリオダスがそう言うのであれば疑うべくも無いだろう。

 何故かは分からぬが三千年前の聖戦にも詳しいようだし、その人柄を知っている身としては彼がこの状況で冗談を言わないぐらい重々承知しているからだ。

 

 

 その後、ヘンドリクセンの件でメリオダスとキングに一悶着あったものの、当人達の間で一応の収束を見せた。

 そして、刻一刻と約束の時が迫る。

 

「さてさてさーて。そろそろ俺の“力”を戻してくれっかな」

 

「ったく、本当ならダメじゃ言いたいところだが…仕方ない。少し離れておれ」

 

 

 そう言って呪文を唱えると、修練窟で見た女神の琥珀が頭上に出現した。ただし、サイズ感は大分異なっている。

 

 

「で、でけえ! 本当に同じ琥珀なのか!?」

 

「ここにメリオダス殿の力が?」

 

「入れるのにずいぶん苦労したぞい」

 

 危ないからとメリオダス以外の者を下げると、遂に“力”の解放が始まった。

 

ビシッ

 

『『 !!? 』』

 

 その瞬間、周辺一帯を光閉ざす闇が覆う。

 

 

「な、なんだぁ? 急に夜になったぞ!?」

 

「夜の闇ではない。琥珀から解き放たれたメリオダスの“力”じゃ」

 

「こ、これが全部…?」

 

 

 最後に、ただそこに在るだけの“力”を本来の宿主(メリオダス)に移し、此れにより嘗ての英雄が力を取り戻した――!

 

 

ドッ

 

ズゥアアァァ……!!

 

 

『『『 !!! 』』』

 

 

 復活の報せはエジンバラにいた〈十戒〉達にも伝わった。突如として強大な魔力が出現し、しかもそれが大穴に残っていた魔力の残滓と酷似しているとなると、候補はたった一人しかいない。

 

「この魔力はまさか…」

 

「間違いない、奴だ…!」

 

 やはりガランが仕留めたというのは何かの誤解だったと全員の認識が為される中、力を取り戻したメリオダスはというと普段と異なる不敵な笑みを浮かべていた。

 

 

「くっくっく…これだ…! 我が力、確かに返してもらったぞ」

 

「……っ」

 

「メリオダス?」

 

「おい、なんかヤバくねえか」

 

 その正気でない様子に、万が一の事態が頭を過り場に緊張が走る。

 

「なーんつって」

 

ズコオッ!!

 

 結局それが冗談だと分かり、迫真の演技に空気が弛緩する中、彼の変化に気付いた者は額に汗を流し、戦慄した。

 

 

「マーリン、俺を〈十戒〉の元に転送(とば)せるか」

 

「は!?」

 

「可能だ」

 

 そして復活早々、まさか過ぎる提案に全員が詰め寄る中、話を持ち掛けたマーリンだけは冷静に転送後の話を突き付けた。

 

 

「ただし一度転送すると、再びここに戻すまでに10秒間のタイムラグが発生する。つまり団長殿は10秒間一人で凌ぎ切らねばならん。それでもやるか?」

 

「おうっ、やるやる」

 

「軽いな!!」

 

「メリオダス殿っ、ギルの言う通りです! 奴等の力は強大過ぎる!」

 

 全員で説得するが、メリオダスの意思は変わらない。横でマーリンが早くも呪文を唱え始めている。

 

「ほんの挨拶に行くだけだって」

 

 ヒュッ――

 

「あ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よっ!」

 

 

 そして、次の瞬間には敵地のど真ん中に送られた。

 

 

10

 

 

「メリオダス!」

 

 何人かが戦闘態勢に入り、モンスピートとデリエリはノルンを後ろに隠した。

 

「待てい! 全員手を出すな。殺し損ねた獲物じゃ、儂がとどめを刺す…」

 

 周囲に静止を呼び掛けたガランが、自身の膝元ぐらいの身の丈しかないメリオダスにゆっくり近付いていく。

 

 そしてその顔を、兜が変形する程の力で殴られた。

 

 

 

 

ドコォッ

 

 勢いよく後ろに吹っ飛ばし、更には自分で殴り飛ばしたガランを追い越すと頭を掴んで思いっ切り地面に叩きつけた。

 その衝撃で地面が蜂の巣状に陥没し、攻撃を受けたガランも決して少なくないダメージを負う。

 

 

 

 

「お主、この前と少し変わったか?」

 

 紊粗断!!

 

 武器を辺り一面に振り回す。字面だけ見ると本当にそれだけなのだが、秘めたる力はエジンバラの丘が半壊するほどの威力を誇る。

 

 

「少し戻っただけさ」

 

 

 だがその攻撃も当のメリオダスには届かず、いつの間にか構えた武器の上に乗ったと思うと今度は強烈な膝蹴りを食らわせた。

 

 

 

 

「ぶごっ、」

 

 尚も猛攻は続き、つい数日前はいいようにやられていたのが、今度はガランが蹂躙される側に回っていた。とは言え、七つの大罪くらいなら一撃で沈められるメリオダスの攻撃を何発も喰らって原型を留めている辺り、ガランも十分化け物である。

 

 

 

 

「ごはっ!?」

 

 殴った衝撃で宙に飛ばされ、それに自らの足で追い付くと強烈なバックドロップを浴びせ再びガランを弾き飛ばした。

 

 

「それにしても、メリオダスは本当に感情を捨て去ることが出来たのか? いつもと変わらんように見えたが…」

 

「いいや。捨ててはおらんぞ」

 

「ザネリ…!? 感情を捨てとらんとはどういうことじゃ! それではまた怒りに呑まれて暴走する危険がッ」

 

 メリオダスの試練を担当していた双子の妹のザネリからそんな事を告げられ、ダナフォールの二の舞になることを恐れたジェンナが慌てた様子で詰め寄る。

 

「今奴の中に存在するのは、荒れ狂い全てを破壊する烈火の如き〈憤怒〉ではなく、静かに全てを呑み込む深海の如き〈憤怒〉だ」

 

「なっ、それはつまり――」

 

「メリオダスは完全に怒りを支配(コントロール)している」

 

 

 

「はあ、はあっ…! こうでなくては」

 

 得物を杖代わりに、独り言をつぶやく。

 

「こうでなくてはっ、つまらんよなァ!!!」

 

 全身に打撲傷を負ったガラン。最早勝敗は誰の目にも明らかだが、それで戦意が衰えることはなくむしろ猛り立たせ、尚も襲い掛からんと再び大地から膝を離した。

 

 それを見て背中の神器(ロストヴェイン)に手を掛けると――素早く収めた。

 

 

 ブシャアァァッ…!

 

 

「あ…?」

 

「今の、見えたスか?」

 

「…厄介ね」

 

 何もしてないように見えたのは単に速かっただけ。本当は刀身を覗かせた時点で攻撃を終えており、全身にダメージを受けたガランの横を悠々と通り過ぎる。

 

 

 

 

「それなら私が…」

 

「おいおい良いのかよ。魔力を回復させてる最中じゃないのか? 無駄な使用はゼルドリスに控えるよう言われてるだろ」

 

「その通りだノルン、手を出すな。今のお前にどうこう出来る相手じゃない」

 

「でもッ…」

 

「聞こえなかったのか。手を出すなと言ったんだ」

 

「くッ、」

 

 悔しそうに歯噛みし、一応命令を聞く形にはなったが、何処か危うい雰囲気を帯び始める。

 

 

 

 

「そう睨むなよ。久々の挨拶がてら話をしに来ただけだ」

 

「…する話などない。あるのはメリオダス、お前への怒りと四種族への復讐心だ」

 

「連れねえなゼルドリス。兄弟(・・)だろ? 話ぐらい聞けよ」

 

 

 

 

「戦争はとっくの昔に終わった。今じゃブリタニアはすっかり平和なもんさ。だけどお前らがまだ三千年前の続きをやろうってんなら…オレと〈七つの大罪〉が全力で叩き潰す!」

 

「話は無いと言ったはずだ」

 

「話じゃねえよ忠告だ」

 

「ッ、いい加減な事を! そもそも大戦の(・・・)切っ掛けを(・・・・・)作った(・・・)張本人(・・・)が、今更綺麗ごとを抜かしますか!」

 

「ノルン…?」

 

「どうしたのですか一体。貴女らしくもない」

 

「チッ、始まった」

 

“大戦”という言葉を訊いてから普段の様子が豹変し、その瞳に剣呑な色が漂う。

 

 

 

 

「…そうか、もう聞いていたか。それに関しては悪かったと…思ってる」

 

「ふざ、けるなァ。私からシスターだけでなく…居場所まで奪っておきながら、貴方は!」

 

 許さない、赦さない! 嘗てないほどの怒りが深く眠っていた憎悪の火を滾らせ、その狂気が復讐という選択肢に思考を走らせた。

 

 

 

 

સમયનો ડ્રેગન, જેણે રાક્ષસ રાજા સામે બળવો કર્યો, કૃપા કરીને મારી પ્રાર્થનાનો જવાબ આપો. તે શકિતશાળી સત્તા સાથે, વિશ્વાસઘાત દુશ્મન「こら止めなさいって」――がっ!?」

 

「全く…魔力を禁止されたからってそんなもの(・・・・・)に頼ろうとはね。この子、余程おたくの事を恨んでるみたいだよ」

 

「ああ、承知の上だ」

 

「そうかい。じゃあ子守も疲れるからさ、元凶にはさっさと退場願おうか」

 

 

 その言葉を合図にゼルドリスとフラウドリンが高速で接近し、前後から挟撃を仕掛けようとした。

 

 

 

 

 ヒュッ――…

 

『『!!』』

 

「ち…」

 

 

 だが10秒間の挨拶を終えて転送されたが故に、その攻撃は虚しくも(くう)をきった。魔神王の代行者はこうなる事を予期していたが、実際に目の前で逃げられ無意識のうちに舌打ちを鳴らした。

 

 

「これが呪われし魔神の…力か」

 

 そしてこの10秒で敗者になった老兵は、終ぞ着かなかった背中を地面に倒し、彼の者の実力を己の心に刻んだ。

 

「まさかここまでやりよるとは。いやあ実に愉快愉快……なわけがあるか!

 

 

ウガアァァッ!!!

 

 

 この場で唯一の敗者は怒りの咆哮を上げ、復讐を果たせなかった聖職者(アヴェンジャー)はその意識を闇へと落としていった…。

 

 

 

 

 





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