今回はちょっと短め。原作の話に準拠です。
「おのれぇぇ!! おのれメリオダス! よくもこの儂に屈辱を与えてくれたな!!」
メリオダスが去った後もガランの怒りが収まることはなく、身体に纏う魔力を激しく乱しながら地面を叩き、地形を破壊した。
「今すぐ奴を捜せメラスキュラ! 放っておけば奴は再び我ら魔神族の脅威となろう!」
「またあいつに負けたいの?」
「!!! お主、今何と――」
だが自身の敗北を確信しているかのような同胞の発言に一瞬虚を突かれたが、すぐに意味を理解し頭を沸騰させながら距離を詰めようとした。
「メラスキュラの言う通りだ。今の貴様の手には余る。少し頭を冷やせ、ガラン」
しかしそれすらもゼルドリスに横から制される。メリオダスの生存が明らかになった今、徒に戦力を削ぐ真似は控えねばなるまい。
「我らの目的はブリタニアの支配。此れより各自別行動に移る」
「…っ」
「二人以上で行動、魔力の回復を図り迅速に事を為せ。他種族との戦闘、殲滅に関してはその手段を問わん」
ガランの胸中を無視したまま話は進行していき、再戦の了承も得られなかったことに奥歯をギリリと噛み鳴らした。
「メリオダスへの宣戦布告か」
「宣戦? これは戦争ではない…蹂躙だ」
「だが油断は禁物だぞ。メリオダスは説明するまでも無いが、奴には〈七つの大罪〉が味方している」
「前にも言っていたな。何者だ、そいつらは」
「そんな話どうでもよいわ!!」
どこまでも自分を軽視する場の空気に、とうとう堪忍袋の緒が切れた。モンスピートの疑問を遮り、先のゼルドリスの言葉に憤然とした様子を見せる。
「メリオダスが儂の手に余るじゃと!? 先程の戦いも儂がその気になれば奴如き――」
「ガラン」
そのまま勢い余って自らが持つ『真実』の戒禁に抵触しかけたところを、ドロールが静かに諫めた。
「貴方の気持ちは理解できる。ですが
「…っ!!」ギリッ
戒禁とは、魔神王に戦士として認められた証のようなものである。フラウドリンを除く〈十戒〉全員が此れをその身に宿しており、戒禁にはそれぞれ破ってはいけないタブーが存在する。
ガランのそれは『真実』の名の通り、彼の前で嘘をついたり、約束を守らなかった者を問答無用で石化させる。
七つの大罪のマーリンもこの呪いを受け、身体を失ってしまった。今は自身の神器アルダンに魂を移し事なきを得ているが、それ以外の方法で防ぐ術はなく、また解呪も叶わない。……まあ、何事にも例外は存在するのだが。
「ノルンはどうするの? 全快ではないようだけど魔力は回復しているみたいだし、デリエリとモンスピートに任せるか、それとも余ってるフラウドリンと組ませるのかしら」
「…そうだな。それに関しては起きたら俺から言っておく」
モンスピートに昏睡させられてから未だ目覚めず、年相応に無垢な表情を晒すノルンを話に挙げて方針が伝えられる。
「では今より我らが魔神王の名の下に、ブリタニア制圧を開始する!」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
その頃、マーリンの転送でイスタールに戻ったメリオダスは、事の顛末をその場にいた全員に話した。
挨拶と称した宣戦布告に驚愕する者や、中には挑発とも取られかねないその行為に反感を募らせる者もいる。だが当の本人が堪えた様子はなく、むしろ別の視点から話を切り込むことで今回得られるメリットまで提示してみせた。
「今やブリタニアにはたくさんの国や町がひしめいている。侵略するにはバラバラに散った方が効率的……奴等は必ずそう考える筈だ」
その読み通り、〈十戒〉は散り散りになって各地を制圧しようと動き始めた。
「正直〈十戒〉が一つに固まってる限り勝機はねえ。今のオレにもな。だから奴らを分離させ、一人もしくは二人ずつ潰していく!」
その判断を非情と思うかは人様々だ。メリオダスが提示した案はまさしく小を捨てて大を助ける事に他ならず、襲われる方からしたら見捨てられたと思われても仕方ない。
だがメリオダス――彼の言う事もまた真理であり、現状戦える戦力が本人しかいない以上、蚊帳の外に置かれている身では何も言い返せなかった。
「なるほど? 面白れえ、俺も鼻が鳴るぜ…!」
「どうやらお前も鍛錬が済んだみてーだな、ホー……ク?」
「ふっ、どうしたメリオダス。まるでブタ野郎がゲロ不味残飯を食らったような顔してよ」とーんっ
「バフバフッ(兄貴カッコイイす)」
「……」
「ふっ…」
「ようザネリ! お前がここにいるってことはエリザベスの試練も終わったのか?」
「いや無視かぁい!」
声に反応して振り返ってみれば、耳と尻尾、それに足を鱗が覆い、頭には角が生えた喋る豚……という意味の分からない生物がいた。
なんでも試練の相手であった
更には食った相手の力も使えるらしく、鼻から火を噴けば火傷し、翼を模した耳で羽ばたけば大量の汗と引き換えにほんの少しの滞空を可能にした。……正直言って、見た目が面白いくらいで大した実用性はない。
また、その後試練から戻ったエリザベスが見事
「と、ところでホークさん。メリオダスの闘級って…」
「やはり気になるか少年。実は私もだよ! どれどれ…」
そんな中、試練をクリアし闘級の上がったギルサンダーが耳打ちし、それに賛同したホークがバロールの魔眼で闘級を測定し始めた。
「出たぞ…、闘級3250! …ん?」
「やっぱりメリオダスは凄いよな! な!?」
「ま…まあな。でもその位すぐ追い付いてやるぜ」
純粋に尊敬を向ける者と戸惑う者とで反応が分かれるが、以前の数値を覚えていた一頭はそれを見て詰め寄った。
「こらメリオダス! “力”が戻ったわりに前の3370よか下がってんじゃん!」
「一桁0を付け忘れているぞホーク殿」
『 へ? 』
「…ってことは」
マーリンの指摘にもう一度よく見て、今度こそ刻まれた本来の数値に愕然とする。
「闘級…3万2500!!?」
「さ…3万……!!」
「…っ!」
周囲からは驚きの声が零れるが、当のメリオダスはというと〈十戒〉との衝突を想定し、最後の大罪に関心が向けられていた。
「さてさてさーて、それじゃあ次は――エスカノール捜しだな!」
「大罪最後の一人を今更捜して役に立つのかよ。もうお前一人で充分じゃね?」
「エスカノールはオレよか強えぞ?」
『ええ!?』
「エスカノール殿か……」
立て続けの衝撃発言に若い聖騎士二人の理解が及ばぬ中、その人となりを知るヘンドリクセンだけが神妙な面持ちを見せる。
「そうだマーリン。エスカノールと合流する前に話しておきたいことがある」
「それは例の魔神族……いや“魔人族”の少女についてか?」
「ああ。色々と課題はあるが、兎にも角にもノルンの〝絶対防御〟を崩さない事には話が始まらねえ。俺だと警戒される上に手の内もある程度割れてるから、そういう意味でお前とエスカノールの力を借りたい」
「成る程。それが〈四大天使〉を退けたとされる魔力の秘密か。面白い、後でゆっくり聞かせてもらおう」
目的を終えた一行はそのままジェンナとザネリに別れを告げ――何故かザネリの表情が優れず、テオも昼寝中で居ないが――、巨石の門をくぐり再び外の世界へと戻っていった。
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