キャメロット陥落にここまで話割いたのって自分だけだろうな~と思って書きました。
「はあ、はあっ…! くそっ、あいつら一体何なんだよ」
路地裏の入れ込みを駆使し、とっておきの
「あのガキ共、化け物相手に臆するどころか命令してやがった。絶対に普通じゃねえっ、魂を喰うとか訳分かんねえよ」
そもそも街が怪物に攻め込まれてるってのに平然としてる時点でおかしかったんだ。分かりやすく危険なのがその辺を蔓延っちゃいるが、真に警戒しないといけないのは奴等の方だ。
視線を向けられた。ただそれだけの事で幾度となく死線から救ってくれた生存本能が、有り得ないぐらいに警鐘を鳴らしたのだから。
(戦士の勘が言ってる。アレはやべえ、早くこの国から出ねえと)
腰が抜けそうになるのを気合で耐え、重い足取りは無視して街の外周へと向かう。
そうして身体を引き摺りながら何とか辿り着いた先で、思いもよらぬ事態に直面した。それが――
「なんでっ…、なんで外に出られねえんだよぉ!?」
あと一歩というところで
「ちくしょう何でだ! 結界はさっき破られた筈だろう!? だから化け物共が攻め入って来たのに何でっ」
「それは私が
「ハッ――!?」
ビクリッと心臓が跳ね、反射的に後ろを振り返った。
男の人生の中でこの時ほど予想が外れて欲しいと思ったことは無い。だが現実は非情で、振り向いた先には最悪の予想通り魔人族の少女ノルンと、その隣には彼女が引き連れてきた下位魔神がいた。
しかも驚いたことに、両者がいるのは数分前に休憩した“路地裏”だった。
咄嗟に前へと向き直るが、今まさに自身の逃亡を阻んでいた壁は既に無く、代わりに後ろの化け物と物理的な距離という新たな二つの絶望が横たわった。
「な、なんでまた此処に…」
おかしいおかしい。絶対におかしい!
俺には此処に戻ってくる理由も、
そもそもこんな訳の分からない状況こそ質の悪い悪夢で、目が覚めたらいつも通りになっていないかと淡い願望を抱くほどには。
「あれ…、もしかしてこの道を通った事覚えてます? だとしたら一発で成功ということに……いやまあそれならそれで良いんですけど」
「はあ…? 何を言って」
「こっちの話です。魔法を肉体と魂別々に分けて掛けられるかの実験だったのですが、予定より早く終わっちゃいましたね」
自分にやったらここまで上手くいかないでしょうけど、と小さく呟く。
「それはそうと話の途中で逃げ出すなんて失礼な人ですね。私まだ何もしてないじゃないですか」
「そんな言葉に騙されるかよ! どうせ用が済んだらそこの化け物の餌にされるんだろ!」
「よく分かりましたね。その通りです」
「ヒッ――」
薄々察していたが、実際に明言されたことでか細い悲鳴が漏れる。よく見ればいつもは温厚そうなノルンの眼が鋭く此方を射抜き、まるで人に向けるとは思えない軽蔑した表情を張り付けていた。
「私は人間が嫌いですが、その中でも特に嫌いな人種というのは存在します。それが何か分かりますか」
「あ…あァ……ああっ!?」
「一つは王族。彼等は此方の事情など全く考えず、それと以前私に執着してきた皇太子と無理やり婚約させられたから」
「二つ目が騎士を騙る者。理由は下らない嫉妬心で私を害してきた連中が、口先だけの綺麗事を並べて自分を正当化しようとしたからです」
そして最後に――。
「へ……ぶげえッ!?」
「そんな連中がシスターを盾に私を脅したから、貴方のような平然と人質を使う輩を見ると腹が立つんですよ!」
何時の間にか取り出した錫杖を男に向けて振るうと、まるで巨人族に殴られたかのような衝撃が男を襲い、壁や床を二度三度バウンドして漸く止まる。
「おうぷっ…ぐうえ”ェ~~! (何、だ。あの細い体の何処にこんだけの力が!?)」
勿論二人の体格差を考えればそんな事起こり得る筈も無く、むしろノルンの方が抑えつけられた拍子にけがを負っても不思議ではない。
しかし現実は二回りも年が離れた少女の腰の入ってない一撃に叩き伏せられ、骨が折れて逃走も儘ならない状態へと追い込まれた。
「……すみません、取り乱しました。つまり同族を使って自分だけ助かろうとした貴方を、私は許さないという事です」
「ぞん”な…!」
それは男に対する死刑宣告だった。ノルンの合図とともに下位魔神が前に出ると、男の魂を抜き去って口の中に含み……咀嚼した。
その光景を見届けたノルンが魂を失った抜け殻に手を添え、時間加速の魔法を掛ける。
すると男の肉体がまるで早送りのように老化していき、肉が崩れて骨すら塵になると、吹いた風が人の生きた一切の痕跡を攫ったまま何処かに行ってしまった。
「いつの時代も人の愚かさは変わらないのですね。もしこの先殺生の罪を裁かれるのだとしても、我が身に人間の血が半分流れている以上に重い罰はないでしょう」
――ズキンッ
「痛っ…!」
ふいに、痛みを感じない筈の身体に激しい頭痛が走った。一瞬目の前が真っ白になり、何が起きたか理解するより前にまた次の痛みが襲う。
「ハア、ハァッ…!」
――ノルン、貴女は人の痛みを知れる人間になりなさい。
膝をついて立てなくなった原因が過ぎるのを待つ間、突然蹲った私を心配してか下位魔神がオロオロするのを霞む視界で捉えていると、ようやく頭痛が収まってきた。
「はぁっ、はぁ……っ、勘弁してくださいシスター。これじゃあ本当に“呪い”か何かじゃないですか。私は貴女を悪霊にしたくはないのに」
力なく独りごちて、一瞬「でも悪霊でいいから会いたい」などと願った自分を恥じた。
これではまた皆にいい加減親離れしろと揶揄われても仕方ない。それを否定する私自身、過去を受け容れきれぬまま来てしまったのだから。
「
「ええ、大丈夫……と言いたいですが、やはり結構きますね。少しゆっくりしたいですし、寄り道は一旦止めて城に向かいましょうか」
「
道中の足を仰せつかった魔神はノルンを背に飛び立ち、今まさに陥落したばかりの王城へと十戒を運んだ。
>>人質を使う輩を見ると腹が立つ
グロキシニア「ほお~」 ドロール「それはそれは」←人質ニギニギ
メラスキュラ「とんでもない奴がいたものねえ」←エレインの魂をチラつかせながら
フラウドリン「戦士の風上にも置けんな」←リオネス王国襲撃
エスタロッサ「んな事よりエリザベス何処だ?」←言わずもがな
そんな奴ばっかじゃねえか!
ノルン「ま、まあ魔神族って元々そういうものですし」震え声
実際は身内に甘々なので気にも止めてませんが。
ただしエスタロッサ、てめぇは駄目だ。