未投稿のモノも含めて書きたい話が多すぎる…。
体調が悪い私を気遣って割とゆっくり移動したからか、登城を果たした時には既に全部終わっていました。あちらこちらで抵抗の痕跡は見られるものの、漏れなく全員の魂が抜かれています。
私の姿を確認し下位魔神達が抜け殻を退かそうとしてましたが、それを手で制し『
「新興国と聞いてましたが中々の発展具合ですね。三千年の間に技術革新が為されたのでしょうか」
主が居なくなった城内を気分転換がてら散策します。一通り回った感想としては予想以上に楽しめました。
見るモノ触れるモノ全てが新鮮で、マイナス補正を差し引いても嘗て軟禁されていた城より優れているのは明らかでしょう。
技術が格段に向上したのもそうですが、五種族大戦が終結した影響も大きいと思います。
防衛優先の武骨な造りから趣向を凝らした絢爛な内装にシフトしてるため、孤独を引き立てる閉塞感や、無駄に迷いやすい構造をして無いのも有難いです。
「ゼルドリスさんはまだ食事中でしょうか。……あっ、ここは寝室ですね」
最後に他の部屋とは趣が違う扉を見つけて開ければ、一目で上等だと分かる家具や骨董品が目に入ります。
部屋の位置や調度品から考えるとここは相当位の高い者……おそらく王の寝室ではないでしょうか。ただし質の高さを前面に押し出すのではなく、あくまで自分が過ごしやすいよう物は白を基調とし、落ち着いた雰囲気を保っているのが個人的にグッドです。
「今の王族はこんないい部屋を使ってるのですね。羨ましい…」
でもこの部屋の主はもう居ない。生きてるか将又死んだのかは興味ないですが、そうなるとこの部屋は誰にも使われずにずっと空き部屋のままでしょう。
ゼルドリスさんは他人が使用した寝具を嫌がるでしょうし、下位魔神は謂わずもがな。そもそも彼らが人前で寝ている所を私は見たことがありません。
「良いですよね? 文句を言うとしても精々メラスキュラさん位でしょうし、そもそも隠しておけば問題無いのでは…」
「?」
私がブツブツ自分に言い訳しているのを下位魔神が不審そうに見つめますが、湧き上がる欲求は抑えられず即断即決でこの部屋を私のものにすると決めました。
「十戒、《不殺》ノルンの名において此処にいる者達に宣言します。今からこの部屋は私のモノになったので、以降私の許可なく周囲30mに侵入することを禁じます。よって……早く皆さん散らばってくださ~い!」
一方的にそう宣告し、満面の笑みを浮かべながら群がる魔神達を押し退けます。何が何だかと言いたげなそこの貴方達、申し訳ないけどこれが上の者の特権ってやつなんです。本当にごめんなさいね。
「おっと忘れてました。上質な布団に入るのには特別な
自分に掛けた魔法を解き、靴も脱ぎます。そこから少し助走をつけて……飛び込むっ!
ぽふんっ
「ハァ~~! だらけ切ったこの感じ! とても皆さんには見せられないですねぇ~」
シスターに何度咎められても治らなかった悪癖が、三千年越しに他人のベッドで行なわれます。普段努めて頑張ってくれている表情筋を弛緩させ、誰が見ても分かるほどリラックスした姿を晒しました。
「あ、服にシワが付いちゃう。……あ、シワが出来る前に戻せば良いんだ。お腹空いてきたなあ…そう言えば三千間何も食べてなかったんでしたっけ」
ゴロゴロとベッドの中を転がり回る。品質の高さをこれで実感、堪能すると、ようやく転がるのを止め思考に耽る。
「そっか。本当にあれから三千年が経ったんだ。そう考えたら不思議な感じ…」
工夫が施された大理石の天井を見上げそう独り言を零す。聖戦時代の人間族は今みたく内装を凝る程の余裕も無かったというのに。
「それを為したのがメリオダスさん。貴方なんて…」
どうして…? 私を檻から救ってくれた貴方がどうして人間の味方なんかするの?
やっと私にも居場所が出来たのに、それを壊すのが何でメリオダスさんなんですかっ
「……止めよう。せっかくの良い気分が台無しです」
長考するとネガティブな事ばかり思い浮かぶのは私の悪い癖です。何だか城の探索という気分でも無くなっちゃいましたし、ここは別の事をして気を紛らわせるとしますか。
「そうだ、さっきの肉体と魂を分けて魔法を掛ける感覚。忘れないうちに練習しておかないと」
そう言って身体を起こすと、成功の経験を頼りに術を行使し始めます。ですが今度は中々に苦戦し、
「なっ………な…!」
「スー…スー…Zzz……」
私の前で一人の少女が眠っている。それは良い。私はこの国の王ではあるが、元が聖騎士の家の出でありその事を不敬と咎める気は無い。
師であるマーリンからは王の自覚が足りないと何度か注意を受けた事もあるが、あれは周囲に見せつけておくことで勘違いを起こさせなくするパフォーマンスの意味合いが強い。トップが自分達と同じ身分だと思われたらこの国自体が舐められてしまう。
それが分かっていながら毎度フォローを入れてもらう事に申し訳なさを感じつつも、取り敢えず今は目の前の少女について考えを巡らせる。
もう一度目の前の少女を見た。
年は自分と同じか少し下ぐらいだろうか。少しウェーブが掛かった金髪に、陶磁器のような白い肌。十人いれば十人が振り返るであろう
問題は何故、そんな少女が
(どどどどういう事だ!? 今朝部屋を出た時は何も無かったのに!)
傍から見たら女性を連れ込んだようにしか思えない。しかし私に身に覚えは無く、気付いたら事案も疑われる事態に遭遇してしまった。
(お、落ち着けアーサー。落ち着いて今朝の記憶を振り返ってみよう。朝食堂で腹を満たした私は一度部屋に帰って着替えをし、そこから先程まで訓練していた。部屋には鍵が掛けてあって扉の前には警備の者もいる。当然私が部屋に女性を連れ込んだなんて記憶も無い。つまりこれは…)
無実! アーサー・ペンドラゴンは無実を勝ち取ったのだ!
(いや待て待て! そうなるとこの少女は何だと云うんだ! 暗殺者か!? 誰にも気づかれる事なく私の部屋まで辿り着いた暗殺者が寝落ちするか、普通!?)
「うぅ~~ん」
「!!?」ビックウゥゥ!
「ん? アーサー様…今少女の声のようなものが聞こえませんでしたか」
「ななっ、何も聞えなかったぞ!? 気のせいではないか!?」
努めて平静を装うが上擦った声にしかならない。だが多少疑念を持たれただけでそれ以上の追求は無く、少し休みたいから一人にしてくれと言うとあっさりその場を離れてくれた。
「ふう…、危なかった。こんな所見られたらまた婚約やらお見合いの話を持って来るんだから。今の私はキャメロットを発展させるのが精一杯で、現を抜かしている場合じゃないというのに」
そう自分に言い聞かせながらも視線は少女の方を向き、その場に立ち尽くしたまま気付けば数秒ほど見惚れていた。
「いやいやいや! 気をしっかり持て、今自分で言ったばかりだろうアーサー」
それにこの少女が何者なのか確認がまだだ。勢いで下げてしまったが、突然襲い掛かられた時のために護衛は残しとくんだったと今更ながらに後悔した。それとも呼び戻すか…?
「でもそしたら拘束はまず確定だろうし、私が弁明しても下手したら数日は牢屋の中だろうな。少女相手にそれはどうも…」
「う…うぅん?」
「――!?」
騎士としての誇りが判断を遅らせる中、夢の世界に旅立っていた件の少女が漸く目を覚ます。身体を起こし、一度大きく伸びをする。
寝惚け眼を擦りながら部屋をキョロキョロと見回せば、互いの目と目が合いそこで漸く私の存在は少女に認識された。
「………」
「………」
「……キ」
「き…?」
「キャアァァァーーー!!」
「待ってくれ誤解なんだァー!」
開口早々悲鳴が上がり、誤解を解くため慌てて詰め寄ろうとするが、一瞬にして部屋の角に逃げられた。てか速いな! 全然見えなかったんだけど!?
「アーサー様! やはり此方から少女の悲鳴のような声が――」
「すまないそれは私だ! 正体を偽って行動する際に女性の声も真似できるよう練習してたんだ!」
「成る程、流石ですアーサー様!」
「ああ! これしきは王として当然だ!」
あっぶなぁ~~~!! もう少しで私の評価が年下シスターを隠れて食い漁る変態騎士王になるところだった…! 聖職者は勿論、私を慕ってくれる民からも汚物と同じ眼で見られたかもしれない…!
「…? ここは…」
「気が付いた? ここはキャメロット国王の寝室、つまりは僕の部屋だ。どうして君がここに居たのかは正直分からないが、少なくとも私は何もしてない。だからどうか……悲鳴は上げないでくれお願いします!」
プライドをかなぐり捨てて本気のお願いをする。ここで少女に騒がれたら今度こそ言い訳が効かない。故に腰を90°曲げて平謝りした。
「…どういう事? 何でこの部屋の主がここに居るの。それに下位魔神達の反応が一体も無いどころか、街が復興しているのはなんで…」
「あ、あの。君は何を言って…」
私の言葉は耳に入らなかったようだが、取り敢えず落ち着いたのか結果オーライだ。
それにしても突拍子が無いというか、中々ぶっ飛んだことを言う子だなぁ…と首を傾げたその時だった。
遠くの方から地響きのような衝撃と轟音が私達二人の耳に届いた。
「今度は何だ!?」
「あれは、アルビオン? でもあんなもの今回の侵攻には居なかったはず。………まさか」
少女の視線の先に居たのは、これまで見たことも無いほど大きい何か…。山にも匹敵しそうな体躯のソレは、巨人族すらも踏み潰しかねない歩みを進めて真っ直ぐ此方に向かってくる。
「やってしまいました…」
普通なら…。そう普通ならここであの怪物を迎え撃つために急いで部屋をせて指揮をとらなければならない。あんな
だが戦慄必死の光景を前にして僕は、
そんな根拠も何もない、こんな状況でも落ち着き払っている異常性に目を瞑れば人間の枠組みに収まっている少女から目を離せぬまま、言葉が続けられた。
「うっかり寝落ちして… 世界を巻き戻しちゃいました」
彼女が何を言ってるのかは分からない。が、間違いなくただの一般人ではないだろうなと漠然とした不安を抱えたままキャメロットの命運を懸けた“本当の”分岐点に身を置くこととなった。
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