転生したら霧の駆逐艦だったけど何すればいいですか   作:サンドフード

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南管区まわりの超捏造設定注意です。



A.D.2056 Girl meets fleet girl (下)

 

 マツリから衝撃の告白を受けた後日、本人のいないタイミングを見計らって私は彼女の実家を訪れていた。

 何か具体的な考えがあったわけではないが…黙って失踪するような真似を、彼女にさせたくなかった。

 私自身は、どうしたいのだろうか。

 

「すみません、マツリさんのことでちょっとお話が…」

 

「あら、茉莉(マツリ)のお友達?」

 

 にこやかな女性が、そう言って屋内に案内してくれる。

 その姿はマツリによく似ていた。

 

「わたしは、茉莉の母の、如月桜花(オウカ)。旧姓は、()()桜花よ」

 

 わざわざ旧姓を名乗ったということは、きっと彼女はもう知っている。

 彼女は四天桃花の娘だ。つまりマツリは、南管区首相の孫娘にあたる。

 

「それで、茉莉を連れていきたいって話で、あってる?」

 

 お茶の用意をしながら、さらりと彼女はそう言った。

 

 おそらく、マツリとの交流はずっと監視されていた。

 人類に敵対的でないメンタルモデルへの、間接的なコンタクトの試みとして。もともと警護のためのシステムがあったから、簡単だったろう。

 少しでも人間らしさを感じていたくて、すべての探知系を切っていた私は、間抜けにもそれに気づかなかった。

 本人にはどこまで知らされていたのだろうか。

 

 きっと政府は、引き止めはしない。

 駆逐艦とはいえ霧をコントロールする手段になり得るなら、孫だって簡単に差し出すだろう。

 

 お茶の用意を終えて、対面に座った女性はふぅ、とため息をついた。

 

「海に惹かれるのは、血かしらね。いやになっちゃうわ」

「血、というと、あなたも?」

 

 ええ、と彼女は続ける。

 

「わたし、元海軍だったのよ。艦長だった父にあこがれて。そしてともに、あの戦場へ出た」

 

 艦は別だったけれどね、と彼女は言った。

 

「父は助からなかったけど、わたしは助かった」

 

 その視線はどこか遠くを見ているようだった。そして、私の方を向く。

 

「会ってみて分かったわ」

 

 桜花はにっこりと微笑んだ。

 

「あなたが、あの時助けてくれたのでしょう?」

 

 私は、言葉を失った。

 

 

<< …*⁎*… >>

 

 

 そういう、直感が鋭い家系なのかしらね、うちは。

 娘もそうだし、母も──首相にまでなるとは、びっくりだったけどね。

 

 しばらく、母とはちょっと疎遠になっていたのよ。

 わたしが大反対を押し切って海軍に入ったっていうのもあるし…

 父の死を、最大限政治利用するその姿に、反感を覚えたのもあるわね。

 でも、あれが母なりの報い方だったんじゃないかって、今では思えるようになったわ。

 

 

 実は茉莉、千早群像にあこがれているのよ。

 一緒に佐世保に行ったときに、一行を見かけたこともあったし…

 それに、SSTOの打ち上げの日、わたしたちは見学させてもらっていたの。母のコネでね。

 そして、彼らが霧の巡洋艦を撃沈してみせたところを、見てしまった。

 

 わたしも目が焼かれたわ。でも、戦後生まれの娘にとっては、もっとだったでしょうね。世界に、風穴があいたような。

 

 ──霧の存在が、当たり前の世代。茉莉ももうすぐ中等部卒業だわ。

 

 母に頭を下げて、南管区の推薦枠をもらえないかって考えてたのよ。海洋技術総合学院の。まあ一般受験で何とかしてみせるって本人は言ってたけどね。どうなんだか。

 

 でもきっと、学院で学べるどんなことも、本物の水平線にはかなわない。

 わたしが焦がれたその光景を、茉莉は知らない。

 

 あの子がそれを望むなら、きっと誰にも止められない。わたしも止まらなかったもの。

 

 

 それに──貴女になら、任せられるわ。

 

 こんなことを言うのもおかしいかもしれないけど。

 あの時、助けてくれてありがとう。そのおかげで、わたしは茉莉に会えた。

 

 

<< …*⁎*… >>

 

 

「ただいまー、って、モドキちゃんなんでいるの!?」

 

 ご挨拶に来たの、と適当に返す。

 

 原作では、生まれてこなかったはずの生命。

 私の友達。

 

 これも(えにし)と呼ぶのだろうか。

 

 イオナの気持ちが、少しわかった。

 信じられる誰かにこの身を預けるのは、とても気分がいい。

 

「改めて、自己紹介しようか。私は霧のカゲロウ型駆逐艦9番艦、『アマツカゼ』。

 ──これからよろしくね、マツリ艦長」

 

 何にも恥じることなく、私は名乗る。

 

 花弁のような星が三つ並んだイデアクレストが、私の額に輝いた。

 

 

「あなたをこの世界のどこへでも

 連れて行ってあげる」

 

 

<< …*⁎*… >>

 

 

 で、とりあえず連れ立って艦のところまで来た。

 

「ちょっと待ってて、上司の許可とるから」

 

 上司?とマツリは首を傾げる。

 

「えー、ヤマト様、今ちょっとよろしいですか?」

 

<< あらアマツカゼ、どうしたの? >>

 

「実は私に乗りたいっていう()がいるので、しばらく艦隊離脱してもいいですか?」

 

<< あらあらまあまあ、それは素敵ね。もちろんオッケーですよ >>

 

「ありがとうございます」

 

<< たまには連絡を入れてくださいね。それでは、よき航海を >>

 

「よき航海を…ふう、よし、許可とれたよ」

「え、え…? 今のなに?」

 

 霧の艦隊総旗艦ヤマトだよ、と答えると、マツリは目を白黒させていた。面白い。

 

「そ、そんなのでいいんだ…」

「まあ私は霧と敵対するわけじゃないし」

 

 そう言いながら私はゴソゴソと目的のものを取り出す。

 

「じゃあまずは、これ着て」

「なにこれ?」

「耐Gスーツ」

 

 耐Gスーツ!?とマツリは目を丸くするが、必要なものだ。

 

「私の本気の機動だと戦闘機とか宇宙船並みのGかかるからね。しばらくはそれ着て訓練だからね」

 

 ひええええ、と情けないマツリの悲鳴が、水平線に溶けていった。

 




これにて、第一章完結です。一応エピローグ的なのがもう一編。
あとは不定期に間章を上げつつ、原作の更新を待ちたいと思います。
待て、第二章アメリカ編!(嘘予告)

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