転生したら霧の駆逐艦だったけど何すればいいですか   作:サンドフード

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完全ギャグ回です。



A.D.205X 空中戦艦アマツカゼ(戦艦でない)

 

「ねえ、アマツカゼって空は飛べないの?」

 

 いきなり何を言いだすんだこのお子様艦長は。

 

「水上と水中は行けるから、次は空かなって」

 

 いやそのりくつはおかしい。

 私はあくまで艦艇だ。クラインフィールドで一時的に浮くのを飛ぶとは言わないだろうし、こんな巨体が空を飛べるわけ…いや、待てよ。

 

 私はエンジンの改良を加え続けた結果、スラスター推力はすでに自重を超えている。

 であれば、それを下に向ければ、重力に逆らって宙に浮ける。つまり…飛べるのでは?

 

 思いついたら試さずにはいられない。

 下方に全力でエンジン噴射しても前後のバランスが保たれるように、丸一日かけて艦体の構造の調整を行った。

 じょ、冗談だからね、そんな本気にならないで、というマツリの声は無視した。

 

「それでは艦長、号令を」

「…ア、アマツカゼ、リフトオフ」

 

 艦長席(超耐G仕様)に座らせたマツリに、号令をかけさせる。

 機関音が激しいうねりを上げる。

 吹き上げられた海水がしぶきとなって、霧のように周囲を覆う。まさに霧の艦艇ってなHAHAHA。

 バランスを調整しながら徐々に推力を上げていき、重力と拮抗したところでついに船体が浮かび上がった。

 

「おお、飛べた」

「ほ、ホントに浮いてる…」

 

 ある程度高度を上げたところで、真下に向けていた推力を少しずつ後方に偏向させる。

 すると船体は滑るように動き出した。

 

「すごい、本当に空を飛んでいるのね…って、ちょっとスピード速すぎない?」

 

 水の抵抗がないので、スピードはどんどん上がっていく。

 ああ、何でもっと早く思いつかなかったんだろう。海とかクソや。時代は空やったんや。

 

「ア、アマツカゼ!正気に戻って!」

 

 音速の壁を突破するが、クラインフィールドがあるのでその内側には風を感じない。

 つまりクラインフィールドをリフティングボディのような空力形状にして、揚力を発生させるようにすれば──もっと推力をスピードに回せる!?

 

 逝ってやるぜ──スピードの向こう側にな!

 

 その日、彼女らの飛行速度はマッハ5を記録した。

 その後、アマツカゼは土下座した。

 

 

<< …*⁎*… >>

 

 

「まったくもう…死ぬかと思ったよ」

「ごめん、楽しくなっちゃって」

 

 そんなに?というので、やってみる?と返す。

 艦長席の周りに操縦桿などがにゅるんと生えて、操縦席に早変わりする。

 

「制御の細かいとこはこっちでやるから、ゲーム感覚で操艦できるはずだよ」

 

 簡易操作マニュアルをモニタに表示しながらそう伝える。

 

「え、ええと…こう?」

 

 恐る恐るという感じで、艦体が再度浮上する。

 

「わっ、動いた」

「オーライオーライ、じゃあ前進もしてみようか」

 

 最初はおっかなびっくりだったが、操作に慣れてくるにつれて操艦もスムーズになり、自在に動かせるといっていい様子になっていった。

 

「うん、これ…楽しい、かも」

 

 はっはっは。完全にはまったなこれは。

 ただ──

 

「ちょっと高度上げすぎじゃない?」

「だってほら、空気抵抗が──ジャマだから」

 

 いかん、完全に目が据わっている。

 そう言っている間にも高度と速度はどんどんと上がっていく。

 

「機関出力、160%!」

「い、いくら私でもムチャだよそれは!」

 

 叫ぶがまったく聞いてくれない。

 ちなみに私のエンジンにリミッターなんてものはない。

 

「いい?アマツカゼ!(ソラ)の次は──宇宙だよ!」

 

 第一宇宙速度を突破する直前で如月マツリはかろうじて正気に返り、その後土下座した。

 

 

<< …*⁎*… >>

 

 

「空まで飛んじゃうと、いよいよ艦長っていうより、パイロットじみてきたよね」

「やめて言わないで」

 

 彼女たちはまだ知らない。

 かつて『航路を持つ者』と呼ばれた千早群像になぞらえて、自分たちが『翼を持つ者』と呼ばれるようになることを、まだ知らない…

 




人間の柔軟な発想が活きる。

次回じゃない予告:
 マッドサイエンティスト・アマツカゼ
 女教師アマツカゼ

もお楽しみに!

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