転生したら霧の駆逐艦だったけど何すればいいですか   作:サンドフード

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 イ402は陸上の活動拠点としている横須賀を一時離れ、東京湾旧お台場へと向かっていた。そこにはアカギが停泊し、発電に向けた準備を進めているはずだ。

 

 今の402の主任務は、北管区の意向を受けて第4施設の内部を探ろうとするハルナとキリシマを阻止し、かつその際の付帯被害を極小化することにあった。

 そのために、タカオやズイカクとともに人間に紛れて共同生活を送ってみたり、第四施設から人を遠ざけるために統合学院の学園祭を開かせてみたりと、なかなか波乱万丈な日々を送っていた。

 

 アカギの発電も、学園祭を開かせるための取引の一環である。資材やエネルギーの不足によって長年中断されてきた学園祭の再開のため、こちらから電力供給を持ち掛けたのだ。

 海域強襲制圧艦隊の主席艦であるアカギを発電艦代わりとするのもどうかとは思うが、海域強襲制圧艦の連中はなんというか、大雑把な性格のものが多く、繊細な作業を任せられそうな者が他にいない。うっかり人類の電力網を焼き尽くしてしまいかねないのだ。そうなったらもう、学園祭どころではない。

 

 ほか、魚介類の提供にズイカクも動いているはずだ。おかしな趣味に目覚めたものだと思ったものだが、このような形で役立つとは、分からないものである。

 

 

 かなり迂遠なことをやっているという自覚は、402にもある。そもそも、ハルナもキリシマも、艦隊を離脱したわけではない。つまり、総旗艦の権限を用いれば、強制的に第4施設への接近を禁じるということは、容易なはずなのだ。

 

 にも関わらず総旗艦はその方法を取らず、多くの艦艇を巻き込んで迂遠な防衛戦を展開しようとしている。

 総旗艦の胸の内は、直衛艦たる402にも見通せない。ただ、おそらくは多くの霧の船に多様な経験値を積ませたいのだろう、とは予測していた。その経験値が何のためのものなのか、というところまでは分からなかった。

 

 あの第4施設の中身が関係しているのだろうか。ハルナ達が知りたがっている中身を、402は知っている。

 なにせメンタルモデルを持たぬ頃とはいえ、第4施設事件のその場に立ち会っていたのだ。そこで起こった出来事は、ログの中に克明に記録されている。

 一方で、立ち会っていてさえも、あの事件で分からないことはいまだ多い。

 

 総旗艦と、そして自分たちの、メンタルモデルのルーツ。

 

 総旗艦ヤマト自身も、第2巡航艦隊から借り受けたアタゴを伴って、人間に紛れて生活しているらしい。

 タカオからの報告では、学院内によくわからない情報トラップが仕掛けられているそうだが、おそらく総旗艦とアタゴの仕掛けた悪戯なのだろう。そのことはタカオには伝えていないが…

 

 そんなことを考えながら歩くうちに、アカギのメンタルモデルが見えてきた。人間のスタッフと何か話し終えたところのようだ。

 

「アカギ」

 

 階段を昇りながら、アカギに声をかける。彼女は長髪で、人間でいう巫女服に似た服装をしている。海域強襲制圧艦のメンタルモデルの中では、長身なほうである。

 

「来てくれたのか402」

「どうだ? 上手くやれそうか?」

 

 送電線が炎上して消火活動が行われているところを見るに、万事順調、というわけではなさそうだった。

 

「彼らの変電ユニット2組と超電導ケーブル3本をダメにしてしまったよ。彼らには申し訳無い事をしてしまった」

「そうか、それはこちらから何か補償をするよ。初めてなんだ気にするな」

 

 何か物資を提供するなり、発電量を増やすなりすれば、困窮しているこの国にとっては喜ばれるだろう。自分たちで海上封鎖しておいて、ムシのいい話だとは思うが。

 

単冠(ひとかっぷ)湾で他の子達と大分、人間ゴッコをしてきたのだけど、所詮オママゴトだったね」

 

 アカギはそんなことを言う。確かに、実際に人間との交流を経ての経験値の大きさは402も実感していることだった。戦術ネットワークの存在でベースとなる知識が共通するためか、人間と交流のないメンタルモデル同士でのコミュニケーションは、新たな経験値となりにくいのだろう。

 

「まあ、次は大丈夫そうだ」

「期待している」

 

 

<< …*⁎*… >>

 

 

 その後、人目につかないよう周囲20kmほどを閉鎖してもらっていること、ここから送られた電力は大型変電所を通じて横須賀に送られること、他の街にも幾分か流れるだろうことなどを話す。

 

「発電もやってみると、なかなか奥が深くて面白そうだ。ところが、思わぬライバルが居るということがわかってね」

「ライバル?」

 

 疑問符を浮かべる402に、チッ、と電力系統図が送られる。

 

「人類の電力ネットワークをスキャンしていたら、あちこちにおかしな電源が接続されているのを見つけたんだ」

「ふむ、これは…」

「ああ、おそらく重力子機関のものだ。人類はまだ重力子機関の実用化には程遠いのだろう?」

 

 空中に3D構造図を浮かべながらアカギは言う。

 

「つまりこれは霧の…」

「ああ、私より前に人類の電力系統を熟知して、これを作った誰かがいたということさ」

 

 アカギは陸の方を見やる。その向こうにあるものに思いを馳せるように。

 

「規模は小さいが、よくできている。悔しいが、いま私がやっているのより大分洗練されているね」

「そうだな……この、所有権コードは」

 

 受け取った情報を精査していた402が、何かに気付く。

 

「これ、あなたのところの、例の変わり者の駆逐艦じゃない?」

「そのようだな。こんなことまでしていたのか…」

 

 402はそう嘆息する。

 

「一応僚艦ではあるが、メンタルモデルを持って以降に顔を合わせたことがないんだ。他にも気になる事はあるし、機会があったら話を聞いてみるよ」

「興味深そうだし、支障なければ私にも教えてね」

「ああ」

 

 402は踵を返し、階段を下り始める。

 

「行くの? 忙しい事」

「総旗艦が直接出張れないのでね。でも、私を楽にしてくれる方を迎えに行くんだ。これから少しだけ楽になると思うよ」

「誰が来るの?」

「コンゴウが、こちらへ向かっている」

 

 コンゴウの名を聞いて、アカギは喜ばしそうな顔をする。確かこの二人は仲が良かったはずだ。

 

「そうか、それは頼もしい限り。久しぶりに会いたいな」

「そうだな…お前の近くに碇泊してもらうようにするよ」

「楽しみにしてる」

「それじゃ」

 

 ああ、とアカギの返事を最後に、402はその場を離れた。

 




ちょっと余裕がなく、今週と来週は1本ずつになります。
感想返信も滞っていてすみません。なんとか時間を作って追々。

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