転生したら霧の駆逐艦だったけど何すればいいですか   作:サンドフード

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A.D.2012~ 同僚との付き合い方

 結果から言えば、私の演算力向上計画は成功した。

 50年の歳月をかけ、ラボと工場を兼ねる、4基の大規模超並列演算ユニットの建造を行ったのだ。

 

──マリアナ海溝北端付近の底に位置する『ディープ・ブルー』

──南極大陸の地下深くに建造され、秘密の海底トンネルで繋がる『ポール・アラウンド』

──海洋到達不能極 ポイント・ネモ、あるいは人工衛星の墓場とも呼ばれる最も陸から遠い海域に眠る『セメタリー』

──資源回収ユニットを併設され、鬼界カルデラの底で溶岩を汲み上げ続ける『カタストロフィ』

 

 そのすべてに、広帯域量子通信機と一体となったマイクロ重力子ジェネレーターが設置され、我がコアと量子リンクすることで演算力を拡張してくれている。

 

 その結果、私の演算力は初期のおよそ3.5倍にも達したのだ!

 

 

 …いや、うん。

 大げさな割に、重巡クラスにも届いてないじゃん、とか。建造場所趣味に走りすぎでしょ、とか。アクセス悪すぎない?とか。

 いろいろ突っ込みポイントがあるのは自覚している。

 

 だが、これでも相当にすごいことなのだ。

 というか、自分のコアの持つ演算能力を甘く見ていたというか。

 

 今持てる技術のすべてを注ぎ込んで建造した海底クソデカデータセンターの演算能力が、小さなコアの半分ぐらいしかないと分かった時には、ない膝が崩れ落ちそうになったものだ。

 なので規模をさらに拡大せざるを得なくなった。

 

 で、案の定ナノマテリアルが不足してしまい、しかたなく、とある方法で調達した。

 

 どんな方法かというと──ほかのコアの寝室にお邪魔して、イニシャライズ未完了のナノマテリアル借りパクである。

 ちょ、ちょっとずつ、10トンぐらいずつだから。マージンあるから艦体建造には支障ないはずだから。

 

 それに、こういう格言もある。

 …バレなきゃ犯罪じゃないんですよ。

 

 

<< …*⁎*… >>

 

 

 で、演算能力の増強だけでなく、艦体の機能強化も行っている。増えた演算能力を活かしてクラインフィールドの多層化、主砲の口径拡大などもあるが、一番大きいのはやはりエンジンだろう。

 外部演算ユニット向けのジェネレータ開発で得られた知見は自身の主機にも惜しみなく投入し、ナノマテリアルと演算力の消費の徹底した低減、軽量化を行い、同一重量で重巡並みのエンジン出力を得られるまでになっている。

 

 その結果どうなったかというと、最高速度は従来比2倍、加速度は4倍近い値になっている。

 シマカゼよりずっとはやーい。

 

 いや、これに関してはやり過ぎた気がする。エンジンいじるの楽しくて…アマツカゼの名がそうさせるのだろうか。

 

 

 そして、その艦体性能を活かした戦術も同時に開発している。

 それは、そう、ラムアタックである。

 

 いや真面目なんだ。聞いてほしい。

 まず多層クラインフィールドを前方集中展開し、高速度を活かして相手の側面に体当たりをかける。

 火力に乏しい私が相手のクラインフィールドを割る有効な方式として、クラインフィールドの相互干渉がある。これはレパルスの弾道弾がムツを大破せしめたことから着想を得ている。

 

 総出力で負けていても密度差でクラインフィールドを貫通したら、推進部を省略した侵食弾頭──というかもう爆弾、を放り込み、逆噴射で全速退避ののち起爆する。

 クラインフィールドの内側から侵食弾頭を食らった相手は、なすすべなく爆発四散、というわけだ。

 

 下手な魚雷や誘導弾よりこっちの船速の方が速いし主砲副砲でも迎撃可能、レーザーや荷電粒子砲は守りを固めた正面以外に当てられないので、かえって被弾も最小限になる攻防一体の戦術なのだ。

 

 …まあ、霧の対応力の低さに甘えた初見殺し戦法なのは否めない。

 例えば機雷を撒いておくだけでこっちは自分が速すぎて避けられないし、侵食弾頭も船体のクラインフィールドを解いて弾頭を囲むように内向きにフィールド再展開すれば対処可能だ。

 まあ喉元に食い付かれている状況で一旦守りを解くという、とっさの判断ができるやつはそんなにいないと思うけどね。

 

 というか霧の艦艇と敵対する可能性がどれぐらいあるか、そもそもわからない。万一のときの保険みたいなものだ。

 人類の艦艇?主砲撃てば沈むよ。

 

 

<< …*⁎*… >>

 

 

 なんでこんなことを考えているかというと、いよいよ他の霧の艦艇が休眠から目覚め始めたからだ。

 

 先日、ついに自分以外の霧の船と初遭遇した。向こうも駆逐艦だったし、チチッと挨拶しただけだったが。

 

 メンタルモデルのような明確な自我があるわけではないが、アドミラリティ・コードの命令をどのように実行したものか戸惑っているようだった。

 

 霧の船が艦隊を結成し、海上封鎖を完成させるまでには、ここからさらに数十年を待たねばならない。

 正直そのあたりは私にはどちらの方向にも干渉するすべはないので、静かに見守るしかない。

 

 あと、メンタルモデルを自力で構築できないかと試してみたが、さすがに無理だった。出来損ないのロボットみたいなのが限界。まあ人間としての前世の記憶があるとはいえ、細胞1つ1つを意識的に操作していたわけではないしね…

 なのでこれも本編開始2年前を気長に待つしかないだろう。

 

 ただ、霧の艦艇が増えてくると海底を自由に使うのが難しくなってくる。

 外部演算ユニットの建造場所をなるべく僻地にしたのは、人類だけでなく霧の艦艇からも見つかりにくくするためだ。新規建造などは今からはもう難しいだろう。資材の搬入出用に、小型の輸送ステルス潜水艇を開発するなど、いろいろ準備はしているが…

 

 

 まあそんな感じで、本編前にできる準備はいろいろ進めている。駆逐艦としては、頑張った方じゃないだろうか。

 

 

 でも、何か重要なことを忘れているような…何だったかな。

 





これがやりたかったための天津風起用といっても過言。
シマカゼは一応原作で名前出てますね。

次話このあとすぐ、チャンネルはそのままで。
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