転生したら霧の駆逐艦だったけど何すればいいですか   作:サンドフード

6 / 28
A.D.2039 いわゆる大海戦、そして

 

 

 霧の艦艇たちが目覚め始め、そして人類にもそれが認知されてから幾年月。今やほぼ全ての霧の船は目覚め、艦隊を組んで人類を海上から排除しようとしていた。

 

 それで私はなんと、総旗艦艦隊(フラッグフリート)に組み入れられてしまっていた。

 まあ確かにカスミやユキカゼのように駆逐艦も何隻か所属していたけれども。

 

 私の艦体スペックは公表しているので、ピーキーすぎる性能の私を他のまともな艦隊に組み入れられない、という事情も実はあったようだ。

 

 ただこのところ、ヤマトは表舞台から姿を消しているので、私の立場は浮いている感じだ。

 ナガトは自分の艦隊持っているしね。

 

 

 いまだ明確な自我を持たない霧の艦艇たちにとってアドミラリティ・コードの命令は絶対で、人類の排除を止めることはない。

 そして、それを人類が受け入れて、されるがままにすることも絶対にない。

 

 だから、衝突は必然で。

 それを止められるような手段は何もなかった。

 

 

<< …*⁎*… >>

 

 

 メンタルモデルを手に入れてからのヤマトはおそらく、霧と人類の共存を目指している。

 それ自体は私も大いに賛同するところだが、果たしてうまくいくのだろうか。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 文明も、暮らしも、取り返しはつく。霧の超技術を考えれば容易ですらあるだろう。発電所の代わりをこなしたアカギのように。

 原作の大海戦での死者は、およそ60万人。

 それらは、取り返しのつかないものだ。

 親しい者を亡くした人の感情は、簡単には変わらない。

 

 たとえ一時的な共存がかなったとしても、霧の恩恵を受け入れる者と、拒絶する者との間で、新たな争いになるのではないかと。

 そんな嫌な想像が頭から離れないのだ。

 

 私の知る範囲の原作では、そんな先のことまでは描かれていなかった。

 だからもしかして、何もしなくても上手くいくのかもしれない。

 原作通りの方が、良い結果をもたらすのかもしれない。

 

 

 それでも私が、未来が変わるリスクを無視してでも、介入することに決めたのは。

 ただ、見ていられなかったからなのかもしれない。

 

 

<< …*⁎*… >>

 

 

 各地の外部演算ユニット内にある工場は今フル稼働している。

 作っているのはいわば救命艇だ。

 

 重力子ジェネレータから1モジュールだけ切り出した超小型ジェネレータ、私製最新モデルの小型量子演算器、最近研究していた治療ポッドをセットにしてコアモジュールとし、コンテナ状に分離できるようになっている。これは人類側で再利用できるようにする工夫だ。

 量子演算器によりセルフで演算力を供給するので、私への負荷は最小限になっている。まあそれでも数が多く、操船は私なので結局それなりの負荷はあるのだが…

 

 IFFだけは港に着いた時点で停止するようにしている。救命艇で海に出放題なんてなったらさすがに困るし。

 

 戦闘が始まったらこいつを大量にばらまき、撃沈時点で息のある人間は助けられるだけ助けるつもりだ。

 

 使用は最小限にしたものの、それでもナノマテリアルをだいぶん消費してしまった。だが、大海戦が終われば補給を受けられるだろうという希望的観測で行動している。

 

 他の霧の艦艇からどう認識されるかもやってみるまで分からない。

 人類がどう受け止めるかだって、何もわからないのだ。

 

 それでも、私にやれることはやったつもりだ。

 

 

 そして、のちに大海戦と呼ばれる戦いが、始まった。

 

 

<< …*⁎*… >>

 

 

 大海戦が霧の艦隊側へもたらしたものもある。

 

 クラインフィールドを突破するすべを持たない人類相手に霧の艦隊の勝利こそ揺るぐことはなかったが、戦術を駆使する人類の艦隊に、霧の艦隊は思わぬ苦戦を強いられた。

 特にクラインフィールドを持たず装甲も薄い空母艦載機の被害は相当なものだったようだ。

 

 機械的な思考ながら、霧たちは驚いた。

 そして、人類の戦術に対応するために、二つのプランを実行する。

 

 一つは、共同戦術ネットワークの構築と、そこへの戦術データの蓄積。

 もう一つは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 ()()は、今の人類の戦術を最も危惧するヤマトの旗下であり──

 

 

 ──本来のイ401は、諜報艦だ。それらを任せるのにこれ以上の適任はいない。

 

 

 アクセス権限が低いため大きく推測交じりではあるが、人類がイ401を拿捕することができた理由を他に思いつかなかった。

 そして、戦術ネットワークの中枢にイオナが深くかかわっている理由も。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。