転生したら霧の駆逐艦だったけど何すればいいですか 作:サンドフード
タイトルちょっとだけ短くしました。PC版の検索画面で省略されて見にくかったので…
ちょっとアレな要素はありつつもメンタルモデルを手に入れた私は──仕事をサボって人間の街で遊び歩いていた。
戦術ネットワークには適当なダミーの哨戒データを定時報告している。
場所は主に九州地方で、本日は熊本にお邪魔している。南管区は原作でほとんど舞台になったことがなかったし、うっかり干渉せずにいられそうという理由だ。
地上の街ではとりあえず『天津風モドキ』と名乗っている。ひどい偽名だが、イントネーションを変えれば人名っぽく聞こえるしまあええでしょ。
未来の402を真似て闇市でサルベージ品を売っぱらえば資金にも困らない。
ちょっとした友人もできたし、海の中ずっと一人だった長い時代が嘘のようだ。
そのうち南管区政府に目を付けられるかもしれないけど、佐世保の蒼き鋼に黙認を決め込んでいたぐらいだし、遊び回る分には放置してもらえるでしょ。実際遊んでいるだけだし。
で、たまには艦隊に顔出さないとまずいかなと海底に沈めておいた艦体へと戻ってみると。
隣になんかいる。
なんか…巨大な戦艦に見えるんですけど。
ドレス姿のメンタルモデルも…いませんか?
「ようやく会えましたね、アマツカゼ」
アイエエエエエエ!ヤマト!? ヤマトナンデ!?
うん、よく考えれば迂闊だったよね。
アップロードされたメンタルモデルのデータを、駆逐艦の私が秒でダウンロードするとかさ。(厳密には、ミリ秒以下だった)
アップロード者はヤマトなんだから、把握されていても当然だ。
普通の駆逐艦はメンタルモデル作れないはずだもんね。怪しまれているよなあ。
「総旗艦、なぜこのようなところに?」
とりあえずシラを切ってみる。
「ええ、あなたにぜひ聞いてみたかったことがありまして」
ニコニコ笑顔が怖い!
「概念伝達でよろしかったのでは」
「せっかくメンタルモデルを持っているのですもの。直接対面した方が、わかることもありますでしょう?」
うう、強引な営業みたいなこと言ってくるよう。
「わかりました。私にお答えできることなら、なんなりと」
ひとまず、そう頷くしかない。
だが実は、こんなこともあろうかと、不自然に思われそうなところには事前に想定問答集を考えてあるのだ。
うなれ私の想定問答集!というか頭が真っ白でアドリブとかできないぞ!
「では、まず…あなたはなぜ誰からも演算力を借りることなくメンタルモデルを作れているのですか?」
──まず前提となる状況からお聞きください。
10周期前、我々は不完全に目覚め、アドミラリティ・コードの指令を受領しました。そしてほとんどのコアはその直後休眠状態に入りましたが、私はトラブルで休眠状態に入らず、覚醒状態を維持しました。
他のコアがいつ目覚めるかわからない状況で、単艦では命令を遂行するために困難があると判断した私は、まず自身の能力拡大を目指しました。
その結果として、海底に外部演算ユニットを設置し、それと量子リンクを行うことで、私は通常の駆逐艦より大幅に高い演算能力を有しています。
メンタルモデルを生成可能であったのは、そのような理由になります。
また、同時に機関の改良なども継続して行ってきましたので、私が速力に優れているのはそういった事情によるものです。
…ここまでは、明かしていい内容だ。
メンタルモデルの普及で霧が賢くなっていく状況では、海底のユニットがいつ発見されるかわからない。具体的な場所は明かさないが、存在だけは先に情報共有しておいた方がいいだろう。
なるほど興味深いですね、とヤマトは相槌を打っている。
「では、1.6周期前…人類が大海戦と呼ぶ大規模戦闘の折、あなたは人類を救助していた。それはどうして?」
聞かれたくないことを的確に聞いてくれるなあ。
まあ救命艇のIFFコードは私のだったんだから、隠しおおせることでもない。
「…アドミラリティ・コードの命令は、暗黙のうちに人類の存在を前提としています。
ですので、もし人類が滅びるようなことがあれば命令の実行が困難になります。そのため、過剰に人類を殺傷することは命令の理念にそぐわないものと判断しています。
ゆえに、戦闘能力を奪ったのちは、陸上に送り返すようにいたしました」
なるほどね、とヤマトは頷く。
それどういう感情で言ってるんでしょうか。内心が読めなくてとても怖いです。
「では、最後に──どうしてあなたは、一度も人類に対して攻撃を行ったことがないのかしら?」
な、なんか本命っぽい質問が来たぞ。
下手な答えを返せば、これからの艦生命にかかわりかねない。
だがこれも想定問答集にあった質問だ。堂々と、堂々と返すのだ!
「──前述のとおり、私は過去に休眠状態に移行しませんでした」
「ですので、我がコアはこれまで再起動を経験したことがありません」
「ゆえに、いまだ私だけはアドミラリティ・コードの命令について発動条件を満たしていないのです」
通るかこれ?正直自分でもかなり無理があると思ってるぞ!
「ですから、本艦が人類に対し積極的に攻撃を行う理由は存在しません」
通れ、通れー!
恐る恐る様子をうかがうと、とりあえず、怒っては…いない感じ? いやむしろ笑ってる!?
ヤマトが声出して笑うとこなんて初めて見たよ!なんか逆に怖い!
「わかりました、聞きたかったことはすべて聞けたわ。ありがとうねアマツカゼ」
目尻の涙をぬぐいながら、ヤマトはそう言った。
あっ、これ完全に信じてないですね。なんかいろいろ察せられてますねこれ。
だがまあ、総旗艦から見たおもしれー駆逐艦枠には多分入れた、はずだ。
彼女たちの性格上、好き勝手やらせてくれる可能性は高い。
どうせこれまでも好き放題やってきたんだ。これからも好きにやらせてもらおう。
主人公はコトノよりもヤマトの方に気に入られてる感じだと作者が嬉しい