ヒナちゃんは天使です。   作:もちもちもちもちもちもちもちもち

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 ヒナちゃんを愛せない人はブラウザバック推奨。

 ヒナちゃんが他人とイチャイチャするのが見たくない人はブラウザバック推奨。

 ヒナちゃんと結婚を考えている人は良いだろう私と喧嘩しようか表出ろ。


 覚悟がキマリすぎて訳わかんなくなっている人はお通り下さい。


うちのヒナちゃんは可愛い。

 

 「……先生、それはふざけて言っているの?」

 

 私が座る席の向かい側。そこの席に座る一人の少女が静かに怒りを見せた。

 

―――その少女の名は「空崎(そらさき)ヒナ」。

キヴォトスに於ける三大マンモス高の一角、ゲヘナ学園。自治区の治安の悪さは他の学園自治区の追随を許さず、しかしながら生徒の平均戦闘能力が高い傾向にある悪質なその学園において、不良行為に働く生徒を取り締まる治安維持組織が「風紀委員会」と呼ばれる組織。そしてその組織の長を務めるのがこの少女であった。

 そんな危険な役回りを担う組織のトップが普通の生徒で在る筈もなく、曰く、ゲヘナ学園にはこんな言葉が存在する。

 

『悪事を働く際、どれだけ優勢な状況であろうと、空崎ヒナが現れたら全てを捨てて逃げろ』。

 

 そんな言葉が残るほど、この少女の戦闘力は並みの生徒達から逸脱していた。

 

 

 

 一つ、彼女の戦闘力について話をしよう。

 

 

 

 ゲヘナ学園は前述した通り不良行為に働く生徒が多く、平均的な戦闘能力が他の自治区よりも高い傾向にある。そんな危ない学園の中でも特に危険視され、風紀委員会、そして自治区の行政権を握るゲヘナ学園生徒会『万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)』から秘密裏にマークされている選りすぐりの不良集団は3つ。

 

―――その内の一つがゲヘナ学園三年生、黒舘(くろだて)ハルナ率いる『美食研究会』。

 

 彼女達の理念は食の幸せを追い求めること。一見すればありきたりな願いだと笑うことも出来るだろう。

 だが、その幸せを求める彼女達は止まることを知らず、まるで海中のマグロのように進み続ける。

 その結果、自分の求める食材を手に入れる、その為に手段を問わないのが彼女達の一番の問題であった。

 

 「大切に保管されているなら盗めば良いじゃない。警備ロボットがたくさん居るなら周囲を爆破すれば良いじゃない」を実際にやって遂げる彼女達が今まで破壊してきた施設は数知れず。

 その被害総額を計算したとある行政官は最初の計算後に何度も再計算を重ね、変わらない数字の桁数とその現実を前に思わず泣いたらしい。

 

 そんな彼女達が引き起こした事件の一つに「レインボー納豆事件」が存在する。

レインボー納豆とは百鬼夜行連合学院自治区で生産される幻の納豆だ。混ぜれば混ぜるほど色が変わっていき、最終的には虹色に輝くと言われている。

 そんな不思議な納豆は数多の美食家達の間では有名な食材であり、人生で一度は食べたい食材にノミネートされているらしい。

 

 だか残念ながら実際にこの食材を口に出来た者は少ない。

 

 その原因は圧倒的な生産性の悪さ。難易度としては人生を納豆作りに捧げた職人でさえ、一年に一個作れるかどうかという程。

 その為この納豆は市場に滅多に出回らず、奇跡的に出回ったとしても破格の値段が付けられるためそもそも買える者は限られてくるのだ。

 そんな珍しい納豆がオークションに掛けられるらしいと一年前に噂が流れた。もちろんその情報は当時の風紀委員会も掴んでおり、美食研究会が動くことも予期された。

 その為、風紀委員会は美食研究会を徹底的にマークし、オークション当日には会場の周囲に100名を越える人員を配置する万全の態勢が敷かれていた。

 

 

 

―――そしてオークション当日。

 

 緊張な面持ちをした風紀委員達の前に現れたのは、普段通りの優雅な姿勢と立ち振舞いを全く崩さない黒舘ハルナを始めとする美食研究会一同だった。

 本当に現れた、と更に風紀委員達へ緊張が走る。だがまだ現れただけのハルナ達を捕らえることは出来ない。捕まえるのは何かが起きた後だが、願わくはこのまま静かに過ごしてほしいと祈りながらオークション会場に入る彼女達の背中を風紀委員全員が見つめていた。

 

 

 

―――そしてその五分後に会場は爆発した。

 

 

 

 風紀委員達は自身の願いが却下されたことを悟り、直ぐ様会場に突入。オークション会場、その壇上に上がりレインボー納豆を手にしていた美食研究会を囲む。

 大勢の敵と様々な武器に囲まれた彼女達。誰がどう見ても絶体絶命な状況で、それでも彼女達は笑っていたという。いくら投降を呼び掛けてもまるで耳に入っていないかのように無視され、その目には周囲を囲む風紀委員達は映っておらず、代わりに映っていたのは手にしているレインボー納豆ただ一つ。

 そんな状況を好機だと感じた当時の指揮官は発砲を許可。包囲網の中心にいる美食研究会へ周囲から一斉に射撃を開始する。

 

―――だが、その射撃は美食研究会へ明確なダメージを与えることはできなかった。

 

 弾丸は、確かに届いた筈だった。身体を貫くことは無かったが、確かに命中したことを発砲した本人達は理解していた。

 しかし、目の前にいる彼女達は身体に傷を負うどころかその場から微動だにすらしていない。

 

 

 

 彼女達が無事だった理由。

 

―――それは本人達の身体を覆うように漂う半透明に近い薄い膜だった。

 

 

 

 ここキヴォトスには不思議な力が存在する。

 

 それが『神秘』と呼ばれるもの。

 

 その力の原理は不明 、何処から涌き出た力なのかも不明、だが確かに存在するその力は彼女達を常識の枠組みから外させる。

 防御に使えば普通の弾丸を受けても傷つくことはなく、また弾丸にその力を込めれば威力を段違いに引き上げる。

 そんな力を無意識に操れるのがキヴォトスに住む住人にとっては普通のことであった。

 

 神秘には2つの大きな特徴が存在する。

 

 それは個人によって保有できる量が違うということ、そして神秘で得られる能力は均一では無いということだ。

 神秘という力は使えば使うほどその強度、威力を増していく。この現状を例として上げるならば、風紀委員会総勢で放った弾丸、その弾丸一つ一つに風紀委員それぞれの神秘が込められている。一人ひとりの神秘の量は、決して多いとは言えない。しかしその神秘を集中させれば話は別だ。ちりも積もれば山となる、というように美食研究会へ集中する神秘の総量は明らかに少なくなかった。

 

―――だが防がれた。特別な動きも見せず、ただの薄い神秘の膜1枚で風紀委員会100名以上の攻撃を受け止め切った。それはつまり、放たれた弾丸、その神秘量を美食研究会のメンバー個人個人の身体に宿る神秘量が上回っただけという単純なことであった。

 

 

 

 このように神秘は各個人によって保有する量が全く違ってくる。

 

 そして、防御につかう為に身体に纏わせる、ただ弾丸に神秘を込め威力を上げるなどの基本的な行動については、ここキヴォトスに住む者ならば誰もが扱える技術だ。

 

 

 

 しかし、身体に保有できる神秘の量がある一定量を越えると神秘という力は不思議な現象を引き起こし始める。

 

 

 

 ある者は鉄さえ溶かすレーザーを受けても耐えることの出来る耐久力を手に入れ、またある者は天から隕石を振り落とす絶対的な力を手に入れる。

 戦闘に関しなくてもある者は発明、研究における天才的な頭脳を手に入れるなど、―――その能力はまさに十人十色。しかし誰もが普通では考えることの出来ない力を有していた。

 

 そして今も壇上に立ち、先程まで苛烈な攻撃を仕掛けられていた美食研究会、その会長である黒舘ハルナもその一人。

 彼女が持つスナイパーライフルの銃口が今は静かに対面している風紀委員会、その指揮官へ向けられた。

 指揮官がその事実に気が付いた瞬間、―――彼女は己の敗北を悟る。向けられた銃口、その先から感じる圧倒的な神秘の力。普通の人間には至れない、選ばれし者しか振るうことの出来ない力、その圧力に最早笑うことしか出来なかったと言う。

 そして彼女が放った一見何の変哲もない普通の弾丸が凄まじい速度で指揮官に命中し、その後周囲を巻き込んで大きな爆発を起こした。

 

 

 

 ―――これが黒舘ハルナが持つ神秘の力。弾丸に収束させた神秘を破裂させ爆発を起こす、彼女を強者としてこの場に君臨させる力であった。

 

 

 

 現場の指揮官がやられことで風紀委員会の指揮系統が一気に瓦解する。先程までの統率された動きは無く、その隙をついて美食研究会はその場を後にした。

 レインボー納豆を厳重に保管したアタッシュケースを片手に美食研究会のメンバーは疎らに動く風紀委員を倒しつつ外へ向かう。日の光を身体に浴びる頃、もう後ろから追いかけてくる音はしてこなかった。

 全員が安堵した。『これでやっと落ち着いてレインボー納豆を食することが出来る』と。走ることを止めウキウキで歩きだした美食研究会一同。何処で食べるか、トッピングはどうするか等を笑顔で話し合い、それはそれは幸せそうな表情を浮かべていた。

 

 

 

―――そして彼女達が歩きだして約10歩目。ハルナの隣を歩いていたメンバーが突然後方へと吹き飛んだ。

 

 

 

 後ろへ倒れたのではない、吹き飛んだのだ。ハルナの隣からそのメンバーは一瞬にして消え、背後から聞こえてくるのは凄まじい轟音。その音に反応して振り向いた時にはもう、瓦礫に埋もれた彼女の意識は闇へと沈んでいた。

 余りにも突然の事に怯んだ美食研究会の面々。その全員の耳はコツ、コツと自分たちが向かおうとしていた道の先から響く規則的な足音を捉えていた。

 美食研究会が歩いていた方向へ、急いで視界を反転させたハルナ達。

 

 

 

―――その正面から現れたのは、白い長髪を靡かせる小柄な少女、ただ一人。

 

 

 

 どこか退屈そうにも見える表情を浮かべた彼女がその手に握るのは、小柄な彼女には不釣り合いの大型マシンガン。かなりの重量があるであろうその銃を軽々持ち上げているそんな彼女を見て、ハルナの首筋に冷や汗が流れ落ちる。

 

 

 

 彼女こそ風紀委員会、いや、ゲヘナ学園最強の生徒。ハルナ達を含めた不良生徒達が唯一登場を恐れる者、空崎ヒナであった。

 

 

 

―――ハルナ達美食研究会は、確かに強い。

会長である黒舘ハルナは云わずもがな、メンバー1人1人の神秘保有量が多く、総合的な戦闘力で見ればゲヘナ学園でもトップクラスであることは間違いない。

 

 

 

―――しかし、それはあくまでもゲヘナ学園の中に於ける話し。

 

 

 

 ハルナ達の前にいる少女は文字通り次元が違う。空崎ヒナというこの少女はゲヘナ学園ではなく、単身でキヴォトスに於けるトップクラスなのだ。

 

 

 

 キヴォトス最強は誰か、と言う話題は学生が集うこの都市においてよく話題に上がる話の一つ。

 

 誰が話しても必ず上がる名前は主に5つ。

 

 1人目。トリニティ総合学園所属、学園を統治する生徒会『ティーパーティー』が一人、【天災の魔女(ディザスター)】、聖園(みその)ミカ。

 

 2人目。同じくトリニティ総合学園所属。トリニティの平和を守護する『正義実現委員会』の長。【トリニティの戦略兵器(せんりゃくへいき)】、剣先(けんざき)ツルギ。

 

 3人目。ミレニアムサイエンススクール所属、ミレニアム最強の集団『C&C』の長、【コールサイン00(約束された勝利の象徴)】、美甘(みかも)ネル。

 

 4人目。百鬼夜行連合学院所属、キヴォトスにおいてその存在そのものが厄災と言われる『7囚人』の1人、【災厄の狐(さいやくのきつね)】、弧坂(こさか)ワカモ。

 

 そして5人目がこの少女。ゲヘナ学園所属、学園の治安を司る『風紀委員会』の長、【風紀委員長(最も登場を恐れられる者)】、空崎(そらさき)ヒナ。

 

 そんなキヴォトス最強に選ばれる少女が、今自分達の目の前に敵として存在している。この事態はハルナ自身が美食屋として活動をするにあたり、避け続けていたことの一つだった。

 忌避していた存在は囁くような声で警告をした。

 

 

 

「その荷物をこちらに渡して大人しく投降しなさい」と。

 

 

 

 此方を見詰める眼光は鋭く、逃げることなど許さないと言わんばかりの圧力が伴っている。ここで逃げる姿勢を少しでも見せれば先程吹き飛ばされた仲間のように、今度は自分達も同じ末路を辿るであろうとハルナ達美食研究会は最悪の未来を感じ取る。

 しかし、ここでアタッシュケースを渡すことは出来ない。それは一美食屋としてのプライド、そして何より先程から溢れだす、この食べ物を食べたい、という純粋な食への欲求が許してはくれなかった。

 ハルナは美食研究会のメンバーと瞬時に顔を見合わせる。全員が強がった笑顔を浮かべており、そこにはハルナと同じ考えに至ったことが容易に感じ取れた。

 

―――ならば取る選択肢は一つ。

 

 美食研究会全員が握りしめた己の武器、その照準の先を眼前の敵へと向けた。

 

 勝てないことは、全員がとうに理解している。しかし、ここで何もせずに最高な食を得るチャンスを諦めるわけにはいかない。

 そんな覚悟は先程から静かに美食研究会を見つめていた少女にも伝わり、少女は「……そう」、と一言言ってからその手に持つ兵器を完全に敵となった者達へと向けた。

 

―――先手を取ったのは、ハルナ達美食研究会。

 

 アタッシュケースを持つハルナはバックステップで大きく後退し、ハルナを守るように他のメンバーが前へと走る。

 動きながらも弾丸を放ち、少女へのダメージを狙う。しかし動きながらで十分に神秘が込められていない弾は少女に傷を付けることは叶わず、少女の前に展開された神秘の膜によって全てが消し飛ばされた。

 前に出た美食研究会メンバー達が少女の回りを取り囲む。一ヶ所に固まっていては少女の持つあの破壊兵器で一網打尽にされてしまうことは既に分かりきっていた。足を動かし続けて敵の照準を絞らせず、時折遮蔽物に身を隠しながら撹乱する。

 今のところ少女は防御に徹し、攻撃へと移る気配は見せていない。しかしいつ攻撃されるかは分からない。攻撃へと移られたが最後、彼女達は地面へと倒れ伏すだろう。それをさせない為にも少女へと弾丸を放ち続ける。神秘の膜のせいで少女には攻撃が命中していないが、その身に宿す神秘の総量は確実に削れている筈。このまま続けていればどれだけ掛かるかは分からないが何時かは少女にも限界が訪れる。それが美食研究会にとっての一番の好機。だがそんな好機に期待はしていられない。相手はキヴォトス最強に数えられる1人。その身に宿す神秘の総量は自分達の比では無く、先程から何百発も撃たれ続けているのにも関わらず一切の揺らぎが無い神秘の膜を見ていると、本当に限界など存在するのかとすら思えてくる。

 

―――だからこそ、狙うのは此方が現状で行える最大の攻撃で少女の態勢を崩し、その隙に逃げること。

 

 美食研究会の中で一番神秘保有量が高いのはハルナだ。先程後ろへと下がった彼女は仲間が攻撃をして少女の気を散らせている間、己の持つ全ての神秘を一発の弾丸に込め続けている。淡く光始めたその愛銃。その銃身の先を今、敵へと向けた。

 「皆さん!」と叫びメンバーへ合図を送る。その瞬間少女の回りを囲んでいた彼女達は少女から距離を取りつつその足元に向かって懐から取り出した手榴弾を投げつけた。

 それと同時にハルナは全身全霊で弾丸を放つ。―――ズガァッ!!!っと凄まじい音を響かせながら射出されたその弾丸は一瞬にして少女へと迫り、周囲に落ちていた手榴弾を巻き込んで会場内で起こした爆発とは比べ物にならない程の大爆発を起こした。

 

 神秘を使い果たし、膝から崩れ落ちそうになるのを何とか食い止め、ハルナは爆発が起こった方向を見つめる。

 流石にこの爆発の中心にいて、いくらあの少女であっても無事でいられる筈がないと確信したハルナは集まってきた仲間に支えられながら共に可能な限り急いでその場を後にした。

 

 

 

 身が震える程の達成感がそこにはあった。キヴォトス最強の一角を打ち破り、遂にあの幻の食材を完全に手に入れた。その幸福が美食研究会を包み込んでいた。

 走れないまでも、なるべく早足でその場を離れ続けているハルナ。当然彼女も考えているのは食への幸せだったが、どうしてか、先程の戦闘風景が頭から抜け落ちない。

 

 

 

―――先程の戦闘には、確かな違和感があった。

 

 

 

 何故あの少女は攻撃をして来なかった?

 攻撃をしていれば勝っていたのはあの少女のはすだった。

 

 

 

 何故あの少女はその場から動かなかった?

 いくら周囲を囲まれていようとあの少女であれば無理矢理その包囲網を突破することも可能だった筈だ。

 

 

 

 何故あの少女は単身で此所に来た?

 風紀委員会のメンバーが今出動している人員だけとは考えにくい。ならば遅れてきた少女は仲間を連れて此所に来れた

 

―――それは一体何故なのか。

 

 

 

 考えてみればみるほどあの少女の行動には疑問符が付き続ける。

 だが結果だけ見れば勝ったのは私たちであると結論付けハルナは考えることを放棄した。そしてその事を考えるために割いていたリソースは全てレインボー納豆の食べ方を考えることに費やすことに決めたのだった。

 仲間の1人がレインボー納豆をもう一度見たいとハルナに懇願する。もう少し落ち着いてからでも良いのではと思ったハルナだったが余りにも勢いよくお願いされてしまった為、苦笑しながら一度歩みを止めた。

 アタッシュケースを地面にそっと優しく置き、開けるためにその場にしゃがむ。しゃがんだハルナを囲むようにメンバーは立ちながらその解錠を待ちわびていた。

 本当にこの子達は私の同士なんだなと嬉しくなりハルナは思わず笑顔を浮かべてしまう。小さい頃はあまり周囲に理解されてこなかった自分の価値観を理解して、共に歩んでくれる仲間達がここにいる。その事に感謝しながらハルナはアタッシュケースの鍵へと手を伸ばした。

 

 

 

――――そして次の瞬間、ハルナの周囲を爆裂音と衝撃波が突き抜けた。

 

 

 

 思わずその場に(うずくま)る。落ち着いて周囲を見てみれば、先程まで自分の回りにいた筈の仲間達が居らず、その場に残っているのは濃い硝煙の香りのみ。

 ハルナが顔を上げて前を確認すると、約5メートル先に周囲に居た筈の仲間達が全員倒れ伏していた。

 

 

 

 まさか、と思いハルナはバッと勢いよく後ろを振り返る。

 

 

 

 そこに立っていたのは服にすら傷一つ無い、先程倒したと確信したばかりの少女だった。

 

 

 

 『あの爆発で、無事だった筈がない』。

 

 

 

 そう信じ再度少女の様子を冷静に確認するも、やはり傷を負った様子は一切無く、息切れの一つすらしていない。

 

 甘かった、とハルナは自身を責めた。キヴォトス最強は伊達ではなかったのだ。あれ程の攻撃を浴びて無事でいられる者など居ないと、最後に確認しなかったのがこの惨状を招いてしまった。

 神秘の力は先の戦闘で使い果たし、もう無い。今少女に撃たれればろくな防御も張れず一撃で意識を失うだろう。

 

―――ハルナは今回はここが最後だと理解し、せめてもの悪あがきとして目の前の少女に先の疑問を問いかけた。

 

 

 

Q,何故攻撃をして来なかったのか

A.貴方達の戦闘能力、特に攻撃力を知る為

 

Q,何故撃たれても動かなかったのか

A,貴方達の持つ神秘、その総量を図る為

 

Q,何故仲間を連れてこなかったのか

A,私1人で殲滅出来ると分かっていた為

 

 

 

 最後の質問の答えを聞き、ハルナは諦めたように薄く笑った。この少女は全てにおいて自分達の遥か上を行っていたのだ。初めから勝てるとは思っていなかったが、ここまでの大きな差が在るとは思ってもいなかった。

 

 

 

 『神秘という概念が存在するキヴォトスでは人数的有利は意味をなさない』。

 

 

 

 そう言ったのは誰だったか。その言葉は本当に正しい。

 

 先程自分達が蹂躙したと言っても過言ではなかった風紀委員会との戦闘。此方の人数は圧倒的に少なかったがそれでも軍配は自分達の方に上がった。

 

 

 

―――神秘の量こそが、キヴォトスにおける戦闘の絶対的な正義。

 

 

 

 先程までの味方していた筈のその概念が、今は自分の喉元を喰らい尽くそうと牙を向いている。

 

 そうしてハルナは自身の愛銃を地面に置き、手を上にゆっくりと上げて投降した。

 

 

 

―――これがレインボー納豆事件の全容。

 

 空崎ヒナがいる限り、ゲヘナの治安は決して揺るがないとキヴォトス全土へ改めて知らしめた事件であった。

 

 

 

 

 

 

 さぁ果たして、そんな絶対的強者である彼女を怒らせてしまった人物とは一体誰なのか。―――()はそっと目線を移す。

 

 高級そうなオフィステーブル、座り心地の良さそうなイス、テーブルの上に置かれた綺麗な装飾の施された万年筆。

 大層良い身分なのだろうと初見でも感じ取れるこの席に座ることが出来るのは、直立不動で顔を恐怖で引き攣らせながらもヒナちゃんから必死に目を逸らさない大人の男性。

 

 

 

 この人は連邦捜査部シャーレの顧問、―――通称『先生』。

 

 

 

 シャーレとはキヴォトス全体の政治を統括する連邦生徒会、その会長が創設した特務機関。

 

 この機関の特徴は何と言ってもシャーレしか持ち得ない超法規的措置における捜査権。

 

 どんな自治区であってもシャーレは自由に出入りが可能であり、起きてしまった問題や事件に関して独自に調査をすることが出来る。シャーレには顧問である先生の許可が降りれば誰でも入部可能であり、では入部したからと言って皆がその権利を有することが出来るかと問われればそういうわけではなく、あくまで顧問である先生にしか発動できない権利である。

 悪人が持てば犯罪を起こし放題なこの権利だが、実際に権利を持つ先生はそんな事はした事がなく、むしろ各自治区で傷ついた生徒の為にその力を振るっていた。そうした事を繰り返し行っていた結果、先生はキヴォトスにおいて一種の英雄的存在として認知されている。

 不思議なことにここキヴォトスには女子が余りにも多すぎる。そんな中に突如現れたシャーレという組織、そしてその顧問である先生。話してみるとよく分かるのだがこの人は優しさの権化である。他人の話しによく耳を傾け、何時でもどんな話しでも受け入れてくれる年頃の女の子にとっては夢のような存在。それでいて顔も中々カッコいいのだから惚れる生徒がまぁ居ること居ること。

 先生争奪戦争ももしかすると近いうちに開戦されるのかもしれない。

 

 

 

 そんなモテまくりの先生が、珍しく悪意を向けられている。ついでに顔も引き攣っている。そんなことが何だか面白くて私は二人にバレないように静かに笑った。

 

 

 

「ま、ままままままってよヒナッ!私はそう言うつもりで言った訳じゃ…ッ!」

 

「―――そういう、つもり?」

 

 

 

 バキッ!っと音がしてヒナちゃんの持ってるペンが砕け散る。その光景を見た先生は更に顔を青くしていた。

 

 震えすぎて口から声が出ていない。口からでるのはただの空気だけであり、喋れない先生の代わりに空気が意思を持って音を発することは一切無かった。

 

 

 

「」

 

「先生、そういうつもりじゃ無かったら、これは一体どういうつもりなの?」

 

 

 

 そういってヒナちゃんが先生に突きつけたのは一枚の書類。

 

 その一番上に大きく書かれているのは「シャーレへの専属所属についての説明」の一文。

 

 

 

「そ、それは連邦生徒会から念のために渡されていた資料なんだ。シャーレに所属してくれる子達にこういうことも出来るよって説明するために―――」

 

「―――言い訳は聞きたくない」

 

 

 余りにも理不尽すぎるその一言。重い一撃を食らった先生はじゃあどうすれば良いんだと言いたげに頭を抱えて椅子に座り込んでしまった。

 

 

 

「……先生」

 

 そんな先生に変わらないペースで話しかけるヒナちゃんはきっと本気で起こっているのだろう。私からは鬼に見える。

 

 

 

「……なに?」

 

 もはや涙すら流し始めた先生。椅子に座ったまま顔だけを上に上げヒナを見つめる。

 

 あぁ、本当に可哀想だ。先生は真面目に仕事をしただけだ。それなのにこの仕打ち、こんなの誰がやられても泣くだろうに。

 

「……これが先生の仕事って言うことは私も分かってはいる。先生が私に配慮して私が席を外したタイミングでこの説明を彼女にしていたことも分かってる。優しい先生のことは心から信頼してるから」

 

「じゃあ…!」

 

「―――でも」

 

 

 

 先生の目には希望が映り始めていたのだろう。ぱぁっと明るい笑顔を浮かべ、「もしかしたら許されるのではないか」、と期待もしているのだろう。

 

 

 

 だがヒナちゃんはその希望と期待を捻り潰す。

 

 

 

「この子を…、雪華(ゆきはな)ユキナを…、ゲヘナの風紀委員会、その副委員長を…、そして何よりも―――」

 

 

 

 言葉が進むにつれてヒナちゃんの声が段々と怖くなってきた。先生は先程の笑顔が嘘のように無表情で涙を流している。

 

 あぁ、本当に可哀想な先生。でもごめんなさい、自分で言うのも何だけどそこはヒナちゃんの地雷っていうことは先生も分かってたもんね。だからこれはきっと自業自得。

 

 ……うん、そういうことにしておこう。

 

 言葉を区切ったヒナが何故か此方へと近づいてくる。テーブルの回りをぐるりと迂回し辿り着いたのは椅子に座ったままの私の後ろ。

 

 そしてそのまま私の首に細く白い両腕を回し、後ろからぎゅっと抱き締めてきた。

 

 

 

「―――何よりも、私の大切な親友を奪うことは、例え先生であっても許さない」

 

「わぁ、ヒナちゃんあったか~い」

 

 

 

 目の前まで来た腕をぎゅっと優しく握り、そのままヒナちゃんの身体が私にもっと密着するようにその腕を前に引っ張る。「わっ」、っと可愛らしい声を出しながら態勢を崩したヒナちゃんは私の思惑通り身体を密着させてきた。

 

 ヒナちゃんの顔が私の頬に触れるほど近い。サラサラとした白い髪は首筋に触れてくすぐったく、ふわりと香る甘くて良い匂いは私を笑顔にしてくれる。私は今、とても幸せです。

 

 横目で見えるヒナちゃんのお顔は頬が少し赤くなっている。恥ずかしがっているのかなぁ、あれだけ風紀委員会の部室でじゃれあっているのに。それでも離れようとせず笑顔を浮かべていると言うことはヒナちゃんも満更ではないのだろう。

 頬が赤いことに関しては何を今更、なんて思ったが此所には普段と違い見学者が居ることを思い出す。

 

 

 

「ヒナちゃん、先生が凄い顔でこっち見てるよ?」

 

「……そう、でも今は別に気にしない。」

 

 お構いなしかこの子。

 

 

 

 ヒナちゃんは抱きつく力を更に強めて私は離れません、離しませんと私に無言で伝えてくる。

 

 

 

「ふ、二人はやっぱり仲が良いね」

 

「それは勿論。なんたって―――」

「幼馴染だから」

 

 

 

 最後の台詞を掠め取って言ったヒナちゃんはとても優しい笑顔を浮かべ私の瞳を見つめる。

 

 そう、私たちは小さい頃からの幼なじみであり親友。互いを一番に信頼し、互いを思いやれる、私たちはそんな存在同士。

 まぁ最近はヒナちゃんから向けられる感情が重い気もしているけど。

 

 

 

「……そっか、それはとても良い関係だね」

 

 

 

 今の今まで泣いていた筈の先生が微笑ましいモノを見る目と優しい笑顔のハッピーセットを携えて此方を見つめてくる。

 

 先生、そんな目で見ないでください。このまま見られていては私が照れてしまいます。

 

 そんな事がヒナちゃんにバレれば後でからかわれるに決まってる。普段はクールビューティーの化身をその身に宿しているヒナちゃんだが、私と話すはちょっぴり意地悪なのだ。

 皆には向けないヒナちゃんの一面を私だけが独占できるというのはとても魅力的で素敵なことではあるのだが、私は基本的に人を虐めていたい質だから非常に悩ましいところではある。

 

 

 

 

 

 さて、遅れながらだがここらで私の話をしよう。

 

 私の名前は雪華ユキナ。

 

 現在はゲヘナ学園所属の3年生。風紀委員会にも所属していて知らない間に副委員長の座に就いていた、というか就かされていた。

 私に抱きつく姿からは想像できないが、キヴォトス屈指の実力者であるこの少女、空崎ヒナとは小さい頃からの幼馴染の関係に当たる。2人で居た時間は私の人生、その大半を占めていると言っても流石に過言ではあるが、そう言いたくなるぐらいの長い時を一緒に過ごしている。

 1年弱ヒナちゃんと離れて別の自治区で暮らしていた時期もあったが、それ以外は基本的に一緒の自治区、つまりゲヘナで暮らしている。

 

 私がゲヘナから離れて暮らすと告げた時のヒナちゃんの反応はとても酷かった。

 普段の姿からは想像が付かないほどぐしゃぐしゃの顔で泣き喚き、これでもかという程私に抱きつき、終いにはハイライトを無くした瞳を浮かべ、鋼鉄の鎖や南京錠、スタンガン等を持ってきて私を家に閉じ込めようとして来た。

 私が月1で帰ってくること条件に何とか説得できたが、それでもしばらくの間は私が所有する端末の着信音が鳴り止まない日々が続いた。

 

 

 

―――此所まで説明してご理解頂けただろうか。

 

 

 

 空崎ヒナという少女は私に間違いなく依存している。

 

 

 

 その原因は、もちろんある。

 

 

 

―――それは私が過去、ヒナちゃんを虐めから解放したことだ。

 

 

 

 ヒナちゃんは小さい頃、具体的には小学校に通う頃からもう既に強力な神秘の力を扱えていた。普通神秘の力は身体の成長と共にコントロールできるようになってくる。しかし生まれつき強大な神秘の力を宿していたヒナちゃんはその普通から外れていた。

 それが周囲の子供達からは異質に見えたのだろう。自分達が持っていないモノを持っている、自分たちが出来ないことを出来る。そんな事に対して嫉妬心何かもあったのかも知れない。

 

 

 

―――そうして何時からかヒナちゃんへの嫌がらせが始まった。

 

 

 陰口、物隠し、本人に関するデマの拡散。様々な方法でヒナちゃんを追い詰めて行った。

 

 だが、当の本人はそれに対して一切反応を示さなかった。

 

 いや、示せなかった。

 

 元々感情表現が苦手で人付き合いも躊躇いがちなヒナちゃんには誰かに助けを求めるという選択肢は無く、自分で解決しようとしてもまずいじめっ子達に話しかけること自体が不可能。更に優しく寛容な性格が悪い方向で相まっていじめ解決への大きな壁として立ち塞がっていた。

 

 暴力で解決しようとしても当時はまだ小学生。今でこそ銃を気軽に相手へ向けられるがその当時のヒナちゃんの性格を考えると厳しいだろう。

 

 

 

―――その時はまだ、私はヒナちゃんがいじめられていることを知らなかった。

 

 

 

 私は元々友達が多く、もちろんいじめっ子達とも縁があった。ヒナちゃんとも幼なじみではあるが、当時はただそれだけの関係に留まっていた。

 

 しかし関わりが薄くても幼馴染は幼馴染。その事を踏まえたのだろう。ヒナちゃんをいじめていた奴らは私にその情報が行かないよう悪質にヒナちゃんをいじめていた。

 

 

 

―――いじめは約三ヶ月間程続いた。

 

 

 

 その内容は徐々にエスカレートし、いじめっ子達は遂に人質を取ってヒナちゃんを直接呼び出した。

 

 呼び出す際に使った人質は、関係性のある私。

 

 私が本当に捕まっていたとかそう言う訳じゃない。ただの嘘の脅しとして名前を使われただけだ。

 

 ヒナちゃんと関係があるにはあるが、友達と言えるかも分からない当時の私達

 

 

―――でもヒナちゃんは、素直に従った。

 

 

 

 その現場にたまたま通り掛かった子の話によると、「あの子には手を出さないで」、と珍しく大声を上げて怒っていたという。

 

 ヒナちゃんは純粋で、優しすぎた。

 

 そんな彼女の状況が、その子を通じて私に入ってきた。

 

 息を切らして走ってきたその子には驚かされた。

 「ヒ、ヒナちゃんがッ!ヒナちゃんがッ!!!」、と焦りにまみれた必死な形相で私の肩を掴みブンブン揺らすものだから何事かと思ったのだ。

 

 

 

―――だが、落ち着かせた後で詳しい内容を聞き、ついてこようとするその子を置いて私はヒナちゃんの居る場所へ全力で走り出した。

 

 

 

 私は一体何をやっていたんだ、と走りながら後悔した。

 この3ヶ月間、ただ楽しく笑って過ごしていただけの自分自身が憎くて憎くて仕方がなかった。

 

 

 ヒナちゃんには、友達が少ない。というか失礼を承知で言うと居なかった。

 

 

 ヒナちゃんは望んで友達を作らなかった訳じゃない。他人と関わるのがただ怖かっただけだ。本当だったらあの子だって友達がほしい筈。話して、遊んで、たまに喧嘩もして。そんな笑っていられるような日常をあの子も過ごしたかった筈だ。

 

 だが、とても内気なあの子にとって、学校というコミュニティは余りにも酷だった。

 

 話しかけても良いのか、そもそもどう話せば良いのか、話したところでつまらないと思われたらどうしようとか。そんな不安が募り、次第に大きな壁となってしまった。

 

 

―――だけど、あの子にとって私は別だった。

 

 

 昔から知っている顔馴染み。話したことも遊んだこともある存在。そして、学校という檻の中で、唯一安心して関われる存在。

 

 

 だけど私はヒナちゃんから離れてしまった。

 

 

 沢山の友人を作り、たった1人の幼なじみという1よりも、学校の友達という100を選んでしまった。

 

 その事実がヒナちゃんにどれだけの傷を負わせてしまったのだろうか。

 

 ヒナちゃんは優しい。本当に優しい。だから私が他の子と居るとき話しかけては来なかった。私なんかと話して、あの子も嫌われたらどうしようとか、本気で考えていたのだろう。

 

 

 そうしてヒナちゃんは孤独になり、その全てに私は気がつけなかった。

 

 

 

 後悔だけが残り、歯を砕く勢いで噛み締める。

 

 あの子に謝ろう。そして許されるかは分からないが、許されるのなら今度こそ、私はあの子だけを選ぼう。

 

 何があっても離れず、何があっても一緒に居よう。

 

 そんな事を心に誓った。

 

 

 

 ヒナちゃんが呼び出されたのは、当時通っていた学校から少し離れた場所にある無人の倉庫だった。

 最近使われた形跡は全く無く、人目に付きたくない事をするにはうってつけの場所.

 

 私が倉庫のすぐ側まで到着したとき、倉庫の中から大きな音が聞こえてくる。

 

 

 

―――それは間違いなく銃声だった。

 

 

 

 血の気が一瞬で引いたのが自分でも分かった。

 

 急いで倉庫の扉を開け中に飛び込む。

 

 

 

―――倉庫の中心に、ヒナちゃんは居た。銃も何も持たず、彼女はそこでただ立っていた。

 

 

 

 そしてそんな彼女を取り囲むように並ぶ五人の女の子。

 

 その子達の手には間違いなく―――拳銃が握られていた。

 

 全員の拳銃の銃口から立ち上る、薄い硝煙。

 その銃口の先が誰に向けられていたのかなど、もはや聞くまでもなかった。

 

 

 

―――私は突然の乱入者に驚いている彼女達に向かって走り出した。

 急いできた為武器など何も持ってきてはいない。

 だから私に有るのは、固く、そして強く強く握られた2つの拳だけ。

 

 未だに怯んでいる子達の1人、―――その腹を思いっきりアッパー気味で殴る。「ガァ……ッ!?」と呻いてしゃがみこんだその子の左側頭部を目掛けて体重を乗せた渾身の蹴りを放ち、別の子の方向へとその身体を吹き飛ばす。

 自分の足元にまで地面を擦って近づいてきた同胞を見て怯えてしまったその子。私は怯えたままのその子の元までダッシュで移動し、その顔面を横から殴った。何も言えずに横向きで倒れたその子の鳩尾を爪先で思いっきり蹴る。「ヴェァ……ッ!」と濁った音を発したその子の足首を最後に踏みつけて完全に動けなくさせ次の標的を探る。

 

―――彼女達にはきっと、私は悪魔に見えていたのだろう。

 残った三人が私に向けている目のその奥。そこは恐怖で埋もれていた。

身体を見てみれば震えていない場所は1つもなく、逃げたくても足がすくんで逃げれない様だった。

 

―――それを好機と捕らえ、私は残りの三人を殲滅しに動き出した。

 

 

 

 

 

―――結局彼女達は私に銃を発砲してこなかった。

 最初の2人がやられた時点できっと心が折れてしまったのだろう。銃口自体は向けてきたが、トリガーを引こうとしても上手く引けておらず、例え引けたとしてもその状態ではまともな狙いすらつけられず銃弾は私には命中しない。

 

 そんな状態の彼女達を1人ずつ確実に殴り倒した。今は全員気を失っており、きっと暫くは起きないだろう。

 

 

 

 仕事を終えた私に襲ってきたのは疲労感のみ。

 殴ったことに対する罪悪感等は一切無く、むしろ起きたらもう一発殴ってやろうとすら決めていた。

 

 

 

―――だが今はそれよりもやることがある。

 

 

 

 重くなった身体を動かして倉庫の中心に向かう。

 そこには床にぺたんと座り込み、呆然とした目で此方を見ているヒナちゃんの姿があった。

 

 

 

 ヒナちゃんの目の前まで近寄り、しゃがむ。お互いその時の身長差はそこまでなかった為顔同士が正面からぴったりと合わさった。

 

 

 

「な、なんで……」とヒナちゃんは私を見つめながら言った。

 

 その目は今にも泣き出しそうで、それを止めるのに必死だった。

 

 私はそんなヒナちゃんの頭を軽く撫でながら此所に来た経緯を説明し、最後に謝罪した。

 

 早く気が付かなくてごめんなさい。

 

 到着が遅れてしまってごめんなさい。

 

 待たせてしまってごめんなさい。

 

 

 

 そして―――

 

 

 

 今まで、1人にしてごめんなさい。

 

 

 

 

―――そう告げた瞬間、ヒナちゃんの目から涙が溢れだした。

 

 泣きじゃくるヒナちゃんの身体を引き寄せて、抱き締める。

 

 強く、強く。もう離さないように。

 

 もう決して、1人にしないように。

 

 

 

 ヒナちゃんは嫌がること無く私の肩に頭を置いて泣き続けた。溢れづつける涙はきっと今まで必死に堪えていた恐怖心。彼女は1人きりで戦い抜いたのだと、その涙と嗚咽からは感じ取れた。

 

 

 

―――15分程そのままの状態で居ると、ヒナちゃんも落ち着いてきていた。

 

 ヒナちゃんはそっと私の殻だから離れる。だが顔は俯かせたまま上げてはくれない。きっとまだ顔を見せたくは無いのだろうと思い、無理には顔を上げさせることはしなかった。

 

 

 

 ヒナちゃんは俯きながら小さな声でぼつり、ぽつりとこれまでの事を話し始めた。

 

 

 

 いじめっ子達の前では強気で居たが、本当は怖かったこと。助けなんて来ないと諦めていたこと。学校を辞めようと思っていたことなど、誰にも語ってこなかった心の内を一つ一つ話してくれた。

 

 私は話を聞きながらヒナちゃんの頭を優しく撫で続ける。時折話を中断し、軽く頭を揺らして撫でてほしい位置に頭を移動させるヒナちゃんは何だか可愛らしく見えた。

 

 そうして話していると最後にヒナちゃんは顔を上げてくれた。

 

 その頬には涙の跡がしっかりと付いていて、目元は赤く腫れている。だけど可愛らしい笑顔をヒナちゃんは浮かべていた。

 

 

 

―――そして。

 

 

 

「ユキちゃんが来てくれて嬉しかった」と、ヒナちゃんは笑顔で言ってくれた。

 

 

 

 今度は私が泣き出す番だった。

 ヒナちゃんから離れていってしまった事への罪悪感、そして許されるか分からなかったことに対する恐怖心などが混ざりあい、それが涙となって溢れだしてきた。

 

 身体を折り曲げ倉庫の床に雫を落とし続けるわたしの背中を、ヒナちゃんは私が落ち着くまでゆっくりと擦ってくれた。

 「泣くことなんて無いのに」、と小さく笑いながら言ったヒナちゃんはとても嬉しそうだった。

 

 

 

―――私が落ち着いたのはそれから約5分後。

 

 「もう少し撫でていたかったのに」と笑うヒナちゃんは意地悪だと思い、抱きついてお返しをする。

 「もう……」と良いながらも受け入れてくれるヒナちゃんは、やっぱり笑っていた。

 

 

 

 

―――その日から、私たちはずっと一緒。

 

 

 

 

 

 学校では私が一緒に居ることでいじめもなくなり平和が訪れた。

 いじめっ子達はそれから学校には姿を見せていない。噂では他の自治区へ移ったと聞いたが、もう私たちには関係の無いことだった。

 

 

 

 私とヒナちゃんはそうして親友となり、今に至る。

 

 

 

 だがこの一見でヒナちゃんの心は深い傷を負った。

 そしてその傷は一度離れてしまった私が、もう一度離れてしまうのではという恐怖心を生み出している。

 

 

 

―――きっとヒナちゃんの依存も此所が原因だろう。

 

 

 

 だから私もそれを受け入れている。

 元々私の罪が原因ではあるし、それにヒナちゃんは大好きで束縛されても嫌じゃない。

 ただ流石に監禁は許してほしいけれども。

 

 

 

 

 

―――回想が長くなってしまったが、いい加減現実に戻ろう。

 

 

 

 そんな過去があったと思わせない程の明るい笑顔を浮かべるヒナちゃんは今、とても機嫌が良い。それは先生が救われるラストチャンスと言って間違いないだろう。

 

 

 

―――だから先生、そんな暖かい目で此方をみていないで、早くお逃げくださいな。

 

 

 

 先生も私の視線で今がチャンスと気が付いたのだろう。タブレット端末と財布、シャーレオフィスの鍵だけを持ちいつでも外に出れる準備をしていた。

 

 そうして先生の準備が5秒で終わりあとは部屋から脱出するだけというところで、底冷えした声が室内に響く。

 

 

 

「―――先生、何処に行くつもり?」

 

 

 

 名残惜しそうにしながらも私から離れたヒナちゃんは一瞬で先生の後ろまで移動した。

 

 

 

 (あー、これは終わったかなぁ)

 

 

 

 先生に心の中で黙祷。ありがとう先生、貴方の事は忘れないよ。

 

 当の先生といえば立ったまま白目を向いて気絶していた。脳の防衛本能が心を守るために強制シャットダウンをかけたのだろう。だが今回は相手が悪い。

 

 ヒナちゃんはそんな先生をイスまで引き摺って座らせ、耳元で何かを囁いた。

 

 その言葉が無意識でも理解できたらしい先生の意識は一瞬で戻ってきた。

 

―――先生の怯えた顔を連れて。

 

 

 

「さて、説明してくれるかしら」と改めて話を開始したヒナちゃん。過呼吸になりそうな先生の息を整えさせる暇すら与えず先生の隣に仁王立ちして顔を見下ろしている。

 

 

 

「―――まぁまぁヒナちゃん落ち着いて」

 

「―――ッ!……ユキ」

 

 

 

 これ以上は流石に先生が可哀想だ。

 そう思い私はヒナちゃんの動きを止めさせる。此方を見るヒナちゃんは若干困ったような顔をしていた。

 私の事を思って怒ってくれているのは嬉しいのだが、まだ続けてしまうとヒナちゃんが悪役になってしまう。ヒナちゃんに悪役は似合わない。それだけは阻止しなければ。

 

 先生は私の事を救いの女神かのようにその目を見開いて見てくる。

 

 ヒナちゃんに聞こえないよう口パクで「ありがとう…ありがとう…」と繰り返し伝えてくる先生。―――元はと言えば私のせいでこの一件に火が着いたようなものであるためその痛ましい姿を見ていられず目をそらして言葉を続けた。

 

 

 

「……ヒナちゃんも自分で言ってたけど先生だってお仕事なんだしさ、今回はしょうがないよ。それに先生も悪気は無いってヒナちゃんも分かってるでしょ?だから先生を責めるのはもうやめようよ。それよりも先生の口からよくお話を聞いた方が良いと私は思うな~」

 

「それは……、確かにそうね。―――ごめんなさい先生、少し、やり過ぎてしまったわ」

 

 

 

 ―――少し?あれが少しなのか?大の大人が無言で泣いていたのが本当に少し?

 そう思ってしまったが、冷静さを取り戻し本当に申し訳なさそうな顔で先生に謝罪するヒナちゃん。

 そして、「う、うん大丈夫だよ。……元はと言えば私が悪いんだ、私の方こそごめんね、ヒナ」、とまだ恐怖が残っている顔で謝罪を受け入れ、更に謝罪を返す先生を見ていると、(まぁ、どうでもいいか……)、と思ってしまう自分が居た。

 

 

 

「―――じゃあさっそく説明してもらうから、先生。どうしてこんなことをしたの?」

 

 ヒナちゃんはそう言いながら先程の書類を先生に突きつけるよう持ち上げた。

 

 

 

「シャーレへの専属所属についての説明」。

 

 確かにそう書いてある書類を見て、私はヒナちゃんが離席していた間に先生と話していたことを思い出していた。

 

 

 

 シャーレへ所属するに当たって、その生徒は2つの選択肢を選ぶことが出来る。

 

 シャーレの専属として先生と共に働くか、否か。

 

 先生と一緒に働きたがる生徒はとても多い。しかしシャーレ専属になるということは今まで過ごしてきた学校、自治区から離れなければいけないということ。

 

―――その選択は、まだ子供の私達にとっては難しい。

 

 その事が分かっている先生も無理にこの話を進めようとはせず、むしろ今まで通り自分の学校に通い青春を楽しめるように話す程だった。

 

 私は今日がシャーレに来た初めての日であり、所属をするための書類を書きに来ていた。ヒナちゃんはその付き添い。シャーレまでの道程や入館の方法を教えてくれてとても助かった。

 

 シャーレの存在自体は私も以前から知っていて、先生にも風紀委員会の仕事を通じて何度かお世話になっている。だがヒナちゃんを始めとした多くの風紀委員がシャーレに所属している為、「私はいいや、みんなに任せた!」、と言って所属をしていなかった。

 

 

 

―――だが先日ヒナちゃんから強制的にシャーレへの所属を勧められ(どうやらシャーレにも付いてきて欲しいらしい)、今に至る。

 

 

 

 先生にはいつの間にかヒナちゃんから話が行っていたらしく、部屋に入室すると同時にクラッカーを鳴らして快く所属を受け入れてくれた。

 

 本当にこの人は良い人だな、と改めて思っていたら隣に立っていたヒナちゃんが更に距離を詰めてにきて私の腕にこっそり寄り添ってきたのはここだけの話。

 

 

 

 所属するに当たっての書類の記入は意外と量があり、少し時間がかかった。

 

 午前10時頃には自治区を出発し、シャーレに着いたのはそれから約一時間後の午前11時。それから更に書類を作成したりシャーレの仕事について説明を受けたりと、そんなことをしている内に時計の針は2本ともすっかり天辺を指していた。

 きゅるきゅると私のお腹の音がオフィスに鳴り響く。そんな私を見て笑う2人に「笑うなー!」とぷんすかしていると、ヒナちゃんが昼食の買い出しに行ってくれた。

 

―――その隙に先生は専属所属についての説明を始めた。

 ヒナちゃんに聞かれたら不味いことは先生も重々承知のようで、何処に隠し持っていたのか書類をすぐさま出してきて簡潔な説明をしてくれた

 

 時間にして1分半くらいだっただろうか。

 

 先生の説明が終わり、どうする?と聞かれた私は即答でお断りした。

 

 

 

 理由は簡単、ヒナちゃんがヤバイことになるから。

 

 

 

 以前離れると言ったときですら監禁の準備をし始めたのだ。今度ゲヘナから離れるなんて言い出したら何をされるか分からない。最悪の場合、オフィスの窓から見えるあの明るい太陽を見ることが二度と無くなるかもしれない。

 

 それに、もしもヒナちゃんが「私も付いていく」何て事を言い出したらもっと不味い。

 

 今のゲヘナの風紀はヒナちゃんに大部分を支えられている。それに大した仕事は出来ていないが私だって肩書き上は副委員長なのだ。

 風紀委員会のトップ2人がいきなり辞めるだなんて事を言い出したらゲヘナ自治区内が一体どうなることやら。全く想像もしたくない。

 

 そういった諸々の理由から私はノーと言うことを決めていた。

 

 先生もその答えを予測していたのだろう。「そっか」、と一言だけ言って笑っていた。

 先生が特定の生徒の時間を長い間拘束することに対して否定的な考えをしているという事もあり、現在シャーレ専属の生徒は1人もいない。そんな中でこの話を断るのは些か申し訳ない気がしていた。

 

 しかしそんな私の気持ちを察したかのように軽く手を振りながら、「大丈夫、大丈夫」なんて言って笑う先生。その姿は普段先生に特別な感情を抱かない私の目にも、少し魅力的な男性に映った。

 

 

 

―――そのまま先生が書類を仕舞おうとしていた時、急にドアがガチャンと音を立てて開いた。

 

 その扉から見えたのは、白い髪をした可愛らしい少女。

 

 

 

「……ヒナちゃん?随分と早かったね?」

 

「実は財布を忘れてしまって。一度と取りに戻ってきたの」

 

「あぁ、そうだったんだ。なんだ、連絡してくれれば私が持っていったのに」

 

「そんな事はさせられない。ユキはシャーレの事についてまだ先生と話があるだろうし。……現に今の今まで話していたようだしこれで良かった。先生、今は何の説明をしていたの?」

 

「えっ!?あっ、そ、それは……」

 

 狼狽えすぎた先生。その姿を不審に思ったヒナちゃんが目を細めながら先生へ近づく。

 

「ヒ、ヒナちゃん、私、お腹空いたなぁ~。あっ、そうだ!この近くに美味しいパスタ屋さんがあるってチナツちゃんから聞いてたんだ!ね、ヒナちゃんが良かったら行こうよ!ほら、急いで急いで!」

 

 頭の中を高速回転させ援護射撃を開始する。「一緒に行こうよ」と聞いたヒナちゃんの足が一瞬止まる。だが流石はヒナちゃん。背中越しに「それは後で行く」、と言って再び先生に近づいていった。

 

 

 

―――そして。

 

 

 

「…………………。」

 

「あっ、あぁ……。」

 

 

 

 物の見事に一瞬で先生から書類を奪い取り、その内容を確認していた。

 私には背中を向けているため表情は見えないが、正面に立つ先生の顔が笑えないほど青白くなってきている事から少なくとも幸せそうでは無いことが伺えた。

 

 

 

―――グシャグシャグシャッ!っと、紙を握り潰す嫌な音が聞こえてくる。そして一度、ヒナちゃんは元々座っていた私の対面の席へと再び座り、潰した書類を丁寧に開いてもう一度その内容を確認していた。

 

 

 

(ヤバイ、怖すぎる…………)

 

 

 

 対面に来たことでヒナちゃんの表情が、あの目が見えてしまった。あれは機嫌が悪いときに緊急任務が入り、上手いこと逃走を続け中々見つから無かった敵を漸く見つけて、そいつらを本気で潰すときの目と同じだ。

 身体が妙に震えてきた。チラリと先生の顔を確認すると、今にも死にそうな青さをしていた。

 

 

 

―――そんな状態でも、先生はどうにかしなければと焦ってしまったのだろう。

 

 

 

「ヒ、ヒナ。それは違うんだよ。決してそうなってくれとユキナに言った訳じゃ……」

 

 

 

 あぁ、先生。それは悪手だ。今のヒナちゃんに言い訳は通用しない。例えどんな正論、真実をもって説明しようとしてもその全てをヒナちゃんは切り捨てる。

 

―――そしてその言い訳は、本気でヒナちゃんの逆鱗に触れてしまったようで。

 

 

 

「……先生、それはふざけて言っているの?」

 

 

 

―――そうして始まりへと至るわけだ。

 

 

 

 

 

 今日の先生はついてないなぁ、と改めて思いながら乾いた笑いを浮かべる。

 でもそんな先生にも遂に運気が回ってきたようだ。ヒナちゃんは落ち着きを取り戻し、いつもの冷静なヒナちゃんにも戻っている。これならば先生の言い分も通じるだろう。

 

 

 

 「ご、ごめんねヒナ。本当にユキナをシャーレの専属にさせるつもりなんて無いんだ。その書類は連邦生徒会から生徒に説明しやすいよう用意して送られてきた書類でさ、ユキナには今後色々とお世話になりそうだし、細かい所まで説明しておこうと思っただけなんだ。」

 

 

 

 うん、丁寧で分かりやすい説明だ。これならヒナちゃんも納得するだろう。

 

―――と思っていたが。

 

 

 

(あれ、まだムスッとしてる)

 

 

 

 説明を聞いた筈のヒナちゃんの顔を見てみれば、何故だかほっぺを少し膨らませている。

 

 可愛い、あのほっぺをぷにっとしたい。後でやらせて貰おう。

 

 

 

「……先生がユキをシャーレ専属にしようとした訳じゃないこと、それは分かった」

 

(―――お?)

 

 

 

 じゃあ何に怒っているんだろう。てっきりまだそこに怒りを示しているのかと思っていたのだけれど。

 

 何も言わずにヒナちゃん見つめていると、ヒナちゃんは「……でも」、とぼそりと呟いた。

 

 

 

「でも、何で私が居ないところで説明したの?私が居る間でもその話しをするのは別に問題ない筈」

 

 

 

((―――いや無理でしょ))

 

 

 

 多分、先生と考えがシンクロした。先生は呆れた表情でヒナちゃんを見つめている。私も同じ顔をしているだろう。

 

 そんな私達の顔を見て、「な、何その顔…!?」と焦るヒナちゃんはとても可愛い。

 

 

 

(―――あぁ、でもそういうことか)

 

 

 

 何となくヒナちゃんが怒っている理由が分かった。

 

 全く、本当に可愛いんだから。

 

 

 

 私は席を立ってヒナちゃんの隣の席をヒナちゃんの背後に移動させそこに座る。急に移動してきた私にヒナちゃんは驚いていた。

 

―――そして先程ヒナちゃんにやられたように、今度は私がヒナちゃんの背中に抱きついた。

 

 「なっ、なに!?」と、真っ赤な顔で慌てるヒナちゃん。別に逃げようとはしていないが離さないようにしっかりと首に腕を回してホールドする。耳も段々赤くなってきた。横顔から見える口元はそれ以降言葉を発さずにただもにゅもにゅと動いている。

 

 

 

「ヒナちゃん、仲間外れだと思っちゃった?」

 

「―――ッ!」

 

「え?」

 

 

 

 そんな状態のヒナちゃんに私の推測を伝えると、ヒナちゃんは肩を震わせ分かりやすく動揺した。

 

 

 

「―――大丈夫だよヒナちゃん。私はずっと此所に居るから。ヒナちゃんの隣に、ずっと居るから」

 

「……うん」

 

 

 

 

 震えるヒナちゃんの耳元に近づき、そっと囁く。

 

 そうするとヒナちゃんは私が回した腕の間に顔を埋め、表情を隠した。

 

 疑問符を浮かべる先生は、この状況がいまいち良く分かっていないようだ。

 

 

 

 だが、分からなくていい。それでいいのだ。

 これは私とヒナちゃんの間にだけある、私達だけの呪いみたいなもの。

 この呪縛には決して他人を、例え先生であっても踏み込ませない。

 

 そんなヒナちゃんを安心させるよう、私の心臓の鼓動が伝わるように今までよりももっと力強く彼女を抱き締めた。

 

 

 

―――暫くして、「も、もう大丈夫」と言い顔を上げたヒナちゃん。柔らかい笑顔を浮かべながら「ありがとう、落ち着いた」と伝えてくるその様子はすっかりいつものヒナちゃんだった。

 

 私はただ笑ってそれに答え、ヒナちゃんから少しだけ離れる。

 

 

「……ヒナ、大丈夫かい?」

 

「うん先生。ごめんなさい、もう大丈夫だから」

 

 

 

 心配そうに此方を見つめていた先生は、ヒナちゃんの答えを聞いて安堵したようだ。

 

 

 

「そっか、良かったよ。…ごめんねヒナ。仲間外れにするつもりじゃなかったんだ。ただ、ヒナが心配すると思って……」

 

「それも大丈夫、先生。あれはただの我儘だから、むしろ私が悪い。心配かけて、ごめんなさい」

 

 

 

 互いに謝った二人は顔を見合わせて笑い合う。

 

 

 

「うん。仲直りできて何より何より」

 

「ハハッ、元々喧嘩はしてないけどね」

 

「確かに、それもそっか。じゃあもっと仲良くなったってことで。めでたしめでたし~!」

 

「ふふっ、ユキ、なにそれ」

 

 

 

 今度は三人で笑い会った。みんな笑顔で楽しい空間。やっぱりこれが一番居心地がいい。

 

 

 

「……あっ!お昼ごはん買ってこないと…!ユキ、ごめんなさい、お腹空いているのに……。」

 

 

 

 当初の目的を思い出したらしいヒナちゃんは暗い顔で私に謝ってくる。確かにお腹は空いていたがそんな事気にしないでいいのに。

 

 

 

「んーん、大丈夫だよ。……せっかくだし、一緒に買いに行こっか。ほら、ヒナちゃん行こう?」

 

 

 

 そういって差し出した左手。ヒナちゃんは驚きながらもすぐに笑顔になって、右手を私の左手に絡めた。指を一本一本交互に挟み、決して離れないよう強く握ってくる。その行為に私が逆に驚かされ、ヒナちゃんはしてやったりとまた笑っていた。

 

 

 

「……もう、驚いたよヒナちゃん」

 

「ふふっ、これは今日のお礼」

 

「……なら、いっか」

 

 

 

 そういうことにしておこう。

 私達は自分の財布や端末などの荷物を持ってオフィスの出入り口まで歩く。そして部屋を出る前、先生の居る方へ振り向いた。

 

 

 

「じゃあ先生、行ってくるから。先生は何がいい?」

 

 

 

 そう聞くと先生は静かに首を横に振った。

 

 

 

「いや、私は大丈夫だよ。私は自分のお弁当があるからね。……まぁ私が作った訳じゃないけど」

 

 

 

 私が作った訳じゃない?じゃあ誰が作ったのだろうか。そこらへんが気になるが聞く前に先生が私達に近づき、何かをヒナちゃんの左手に握らせた。

 

 

 

「―――!先生、これは……」

 

「これで美味しいものでも買っておいで。今日のお詫びって言うことで、遠慮はいらないよ」

 

「でも……」

 

 

 

 申し訳なさそうなヒナちゃんに、先生は「大人の財布を甘く見ないの。良いから行っておいで、ユキナがお腹の空きすぎで倒れちゃうよ?」と軽く冗談を交えて罪悪感が少しでも消えるよう話す。

 

 ここら辺が先生の凄いところだなぁ、なんて感心してしまいながら、私とヒナちゃんは「ありがとう」と、笑顔で先生にお礼を言った。

 

 そうしていざ部屋を出ようとした時、

 

 

 

「ピピピッ!ピピピッ!」

 

 

 

 凄く聞き覚えのある音が部屋の中に響いた。

 

 

 

「……ヒナちゃん」

 

「…………」

 

 

 

 ヒナちゃんは無表情で、無言。

 そしてそのまま自分の端末を黙って取り出す。

 

 点灯している画面。そこに映るのは「天雨(あまう)アコ」の文字。

 

 ヒナちゃんは静かに通話を開始した。

 

 

 

「……もしもし、アコ?」

 

「あっ、委員長!繋がりましたか!」

 

 

 

 端末の先に付いている装置から青い光が出始め、やがて1人の女性の姿が空中に現れる。

 

 現れたのは私達風紀委員会のNo.3。

 風紀委員会で行政官を務める天雨アコちゃんだった。

 

 アコちゃんはやけに焦りを見せる表情だ。いつも冷静な彼女が一体どうしたのだろうか。

 

 

 

「やっほーアコちゃん、一体どうしたの?」

 

「あっ!やはりユキナさんもご一緒にいらっしゃいましたか!ちょうど良かったです、今お二人はどちらに?」

 

「私達はシャーレよ、アコ。それにしても緊急回線での連絡なんて何があったの?」

 

「ッ!そうですかシャーレに…!なら本当に良かったです。……実はメインストリート3番区画にある貴金属店で集団強盗が発生しまして、現在犯人グループを追跡中です。ですが相手はかなりの武装をしているらしく、現場に向かったイオリから応援要請が出されました。流石にこれ以上長引かせるわけにも行かず、委員長に連絡をしたという流れです。」

 

「そう、集団強盗ね。……それで、私達がシャーレにいてちょうど良かったというのは?」

 

「はい、実はその犯人グループが現在シャーレ本部のあるシラトリ区に向かっているとの情報が入りまして。……委員長、ユキナさん、どうかお願いできませんでしょうか?」

 

 

 

 アコちゃんは大変申し訳ないですと最後に言い、返答を待っている。

 

 

 

「……ヒナちゃん、お昼は後回しだね」

 

「そう、ね。今はこっちが優先。仕方ない」

 

 

 

 苦笑いしながらお互いの意見を合致させる。可愛い後輩からのお願いだ、聞かないわけには行かない。

 

 

 

「アコ、今から犯人の確保に向かう。場所の指示を」

 

「あと相手の人数と大まかな武装も知りたいなぁ~、アコちゃんお願いできる?」

 

「……!はいっ、お任せくださいッ!」

 

 笑顔になったアコちゃんは、すぐさま情報を纏めますので一度失礼します、と言って通信を切った

 

 

 

―――さて。

 

 

 

「……ごめんね先生。そういうわけで私達、ちょっと行ってくるから」

 

 後ろで聞いていた先生に一言謝る。

 

「うん。了解したよ。……私も行こうか?」

 

 軽く頷いた後に先生はそう言って提案をしてきたが、私はヒナちゃんの顔をちらりと横目で見てからお断りした。

 

「んーん、大丈夫だよ。いつもの事だし、今回の規模だったら先生の手を煩わせるような案件でもないしね。それにさ―――」

 

 私はヒナちゃんの耳元にそっと近づく。

 

 

 

「―――せっかくヒナちゃんとデートできるからね」

 

「ッ!!!!!!!!?」

 

 

 

 ボンッ!っと煙を上げそうなぐらい一瞬で真っ赤になったヒナちゃんのお顔。

 そんな彼女の手を引いて私は入り口の方へ歩きだす。後ろから「気を付けてね~」と掛けられる先生の声に、右手を上げて振り向かずに答えた。

 

 そうしてエレベーターについて乗り込みシャーレオフィスのある上層階から1Fへ。

 

 終始無言だったヒナちゃんをつれてエントランスに到着した。

 

 

 

「ヒナちゃん、大丈夫?」

 

「……だいじょうぶじゃ、ない」

 

 

 

 二人っきりのエントランス。

 

 その場所で未だに真っ赤な顔を若干俯かせながらも此方に潤んだ瞳だけを向けてくるヒナちゃん。

 

 

 

 その上目使いは、反則だと思うんだ。

 

 

 

「―――ヒナちゃん、その顔は駄目だよ?」

 

「えっ、えっ?何を言って―――!?」

 

 

 

 ヒナちゃんと繋がっている手を強く引いて無理矢理身体を引き寄せる。

 

 彼女の小さく華奢な身体。白くて長いふわふわの髪。そこから漂う甘い香り。その全てが私を幸せで包む。

 一体今日何度目のハグだろうか。それでも感じる幸せは全く減らず、むしろ増えている気さえしていた。

 

 

 

「…………」

 

「―――ユキ?」

 

 

 

 何も言わずに抱き締め続ける私。

 いつもだったら軽口の一つや二つを言うタイミングで何も発しない私を心配したのか、ヒナちゃんは私の胸の中に埋もれながら問いかけてきた。

 

 そんな彼女の頭の上で、私は心の内を吐露する。

 

 

 

「―――ヒナちゃん、怪我しちゃ駄目だからね。私、ヒナちゃんが傷つくのなんて、見たくないよ」

 

「―――!」

 

 

 

 ヒナちゃんは強い。その身に宿す神秘の質量が圧倒的な彼女はキヴォトスでも最強の一角。今回の仕事程度では恐らく傷の一つも負わないだろう。そんな彼女を心配するなんて、可笑しいのかもしれない。

 

 

―――それでも。

 

 

 

 彼女が1%や例えそれ以下の確率であっても、その身体を傷つかせる可能性のある場所へ自ら赴こうとしているのを、私は黙って見ていたくない。

 

 可能ならば、止めたい。そんなところに行かないで、此所で待っていてと言いたい。貴女の分は、私が頑張るからと言って説得したい。

 

 

 

―――こんなに可愛くて仕方のない彼女を、私は血生臭い戦場へと送りたくはない。

 

 

 

 だけどそれは言えないし、言わない。

 それを言ってしまったら、ヒナちゃんはきっと困ってしまうから。彼女を困らせるようなことは、極力したくはない。

 だから私は自分の本心を圧し殺して、せめて言えることばだけを選別して、彼女に贈る。

 

―――これが今、私に出来ること。

 

 

 

 ヒナちゃんが顔を上げて私を見つめる。

 彼女の目に映る私は、一体どんな顔だろうか。

 

 ヒナちゃんはきょとんとした不思議な顔をしている。

 

―――まるで珍しいものでもみたかのようだった。

 

 

 

「―――ふふっ」

 

 

 

 彼女が、笑顔を見せて小さく笑う。

 

 それはとっても素敵な、慈愛に満ちた笑顔だった。

 

 

 

「大丈夫、ユキ。私は傷ついたりしない。だって傷なんて負ってしまったら、―――貴女に、抱き締めて貰えないから」

 

 

 

 そう言ってヒナちゃんは私の頭を軽く撫でてきた。

 

 優しい手付きで、ゆっくりと。私に自分の存在をしっかり感じさせるように。

 

 

 

「ユキ、今日はどうしたの?いつものあなただったらきっとそんな顔はしないわ。……何かあった?何かあったのなら私に伝えてほしい。私も協力するから」

 

 

 

 本気で心配そうな表情で私の顔を覗き込むヒナちゃん。

 

 そんな姿を見て、私はますます彼女が好きになる。そんなに心配そうな顔でこっちを見ないでほしい。もう二度離れたくないと思ってしまうじゃないか。

 

―――でもそれは口にしない。

 

 

 

(私は大丈夫、まだ私は大丈夫)

 

 

 

 そう自分に言い聞かせ、心を強く保つ。

 

 これ以上彼女に無用な心配を掛けさせるわけにはいかない。

 

 私は無理に作った笑顔を浮かべて返答した。

 

 

 

 「……んーん、大丈夫だよ。特に何もないから安心して。さっきまで初めての場所に居たから緊張が抜けちゃただけだと思う」

 

 

 

 厳しい言い訳だと自分でも分かる。

 

 だけどヒナちゃんは無理に聞き出そうとはせずに、「……そう。ユキがそう言うなら、分かった」と言って私の身体からゆっくり離れた。

 

 自分でも、今日の私はどうかしていると思う。

 普段だったら隠せる心が隠せていない。

 多分、昔の事を久々に思い出したからだろう。感情の歯止めが少しだけ緩んでしまっている。

 

 

 

(―――後で締め直さなきゃね)

 

 

 

 家に帰って1人になったら、少しはクールダウン出来るだろう。

 それまでもう少し頑張れ、私。

 

自分に渇を入れ、気持ちを切り替える。

 

 

 

「……ユキ、行けそう?」

 

 隣に立ったヒナちゃんから未だに心配そうな声で問われる。

  

「うん、もう大丈夫、何時でも行けるよ。ヒナちゃん、ありがとね」

 その答えを聞いてようやく安心したのか、「どういたしまして」と笑うヒナちゃん。

 

 

 

 

 

 ヒナちゃん、その笑顔はやっぱり反則だよ。

 

 

 

 

 

「ピピピッ!ピピピッ!」という音が広いエントランスに鳴り響く。

 

 恐らくアコちゃんからの連絡だろう。私達は自分の端末と仕事用のインカムを繋ぎ耳に装着する。

 

 そうして聞こえてくるのはやはりアコちゃんの声。

 

 

 

「委員長、ユキナさん、聞こえますでしょうか」

 

「聞こえてるわ、アコ」

 

「私もばっちりだよ~」

 

 

 

 

 揃って返事を返す。聞こえてることを確認したアコちゃんは今回の犯人たちの装備、そしておおよその現在地や風紀委員会の配置などを知らせてくれた。

 

 そして通信の最後に、「お二人共、宜しくお願いします」、と伝えてきたアコちゃん。

 

 そんな事を言われてしまったら、本気で頑張るしかないじゃないか。

 

 私とヒナちゃんは一度顔を見合わせて笑った後、繋ぎ続けている手をもう一度強く握った。

 

 

 

「空崎ヒナ、出るわ」

 

「雪華ユキナ、仕事を開始します」

 

 

 

 通信に言葉を乗せ、私達はシャーレから飛び出す。

 

 外の世界はとても良く晴れていて、いい仕事日和だと思った。

 

 作戦上別行動となるためヒナちゃんとはすぐにお別れ。

 

 その別れ際、互いの手を離した後に、私達は一瞬立ち止まる。

 

 ここから進む方向は、全くの逆。

 

 ヒナちゃんから離れるのは、やっぱり心配だ。

 

 

 

 でも、大丈夫。

 

 

 

「じゃあ、また後でねユキ」

 

「うん、またねヒナちゃん」

 

 

 

 互いに背中を向け、振り返らずに言葉を交わす。

 それで良いのだ。例え肉体が離れていても、心はいつも寄り添いあっている。

 

 そう信じてるから、私は彼女を見送れる。

 

 私が右で、彼女が左。

 

 私達は1歩目を踏み出す。

 

 

 

「行くわ、相棒」

 

「行くよ、相棒」

 

 

 

 きっと彼女も、私と同じように笑っているだろう。

 

 

 

 

 

(―――さぁ、仕事の時間だ)

 

 互いに駆け出した私達。

 

 神秘の力で強化した身体は、あっという間に互いの距離を開け、後ろから聞こえていた足音を無くす。

 

 

 

(私達は、2人で1つ)

 

 

 

いつか誓ったその言葉を、私は思い出し、静かに笑う。

 

 

 

―――不安は、もう無い。

 

 

 

 私はわたしのすべきことを、全力でやろう。

 

 私を信じてくれた、あの小さな風紀の為に。

 

 

 

「さぁ、―――行きますか!」

 

 

 

 そうして私達は今日もまた、自分の行くべき道を走りだした。

 

 

 





 ヒナちゃんって可愛いですよねそうですよね分かります何が可愛いってまずその容姿ですよね一番最初に目に入るのはやっぱりあの純白の髪でしょうかあの髪の毛絶対ふわふわして触ったら気持ちがいいと思うんですよお仕事しているヒナちゃんの後ろからそっと近づいてあの髪の毛をもふもふしたいですよねきっとヒナちゃんはビックリして「え、なに!?」とか言うんですけど自分のされている行為に気がついて段々と顔が赤くなるんですよでも余りにも真剣な表情で触られるものだから怒るに怒れなくてそのままなんだかんだで許しちゃうんですよね分かりますそうして触られている内に段々と気持ちが良くなってきてうとうとし始めるんですよそしたら皆さん狙い時ですよ直ぐに髪の毛の中に顔を埋めましょうきっと可愛い声で驚くに違いありませんそれを聞いてにやにやしていたいですよね分かります何だったらその声をこっそり録音しておいて二人っきりになった時とかに流すんですよそしたらヒナちゃんは顔真っ赤で怒ってくるわけですねでもそれも可愛くて仕方ないので私はヒナちゃんを抱き締めますそしてその姿をアコちゃんに見つかってシバかれたいですよねそうですよね皆さんなら共感してくれるって分かってましたよありがとうございますでもあれですよね二人っきりじゃないときでも流したいですよね例えばイオリが部屋にいるタイミングで流すんですよもちろんヒナちゃんの耳元でイオリには聞こえないようにそしたらヒナちゃんはやめてって恥ずかしがって止めようとしてくるわけですよでも必死に逃げるんですね余り激しく動きすぎると音声がイオリに気づかれてしまうからどうしても奪いきる所まで行けずにもどかしい気持ちになっちゃうヒナちゃんの表情を想像するだけで私はスカイツリーを全裸で駆け登る勇気が出てきそうです髪の毛の次に目に入るのはやっぱりあのヘイローですかね目立ちますもんねあれヒナちゃんあのヘイローのこと多分気にしてそうだと勝手に思ってるんですよ正直結構イカツイですからねまぁ私は大好きですけどなんならあのヘイロー私も付けてみたいくらいですきっと私が付けた瞬間あのヘイロー7t位になって自由落下で私の頭潰してくるんでしょうけどまぁいいやでですよあのヘイローの事をまぁ年頃の女の子ですから気にはしてると思うんですよでもそんな相談を出来る人は居なくて1人でしょげているですね部屋の中でそんなヒナちゃんのヘイローをある日突然誉めるんですよ格好いいねとかお洒落だよねとかセンス感じるよねとか美味しそうだよねとかそしたらヒナちゃん嬉しいんだか恥ずかしいんだか良く分からない感情になっちゃって逃げ出そうとしちゃうんですよそんなヒナちゃんを無理矢理止めて正面で向き合ってジッと何も喋らずそのお顔を見つめていたいですよねきっとお顔を反らしちゃうんですけど反らした方向に移動して360度全方位何処からでも見つめて上げたいですそれとあれですよねやっぱりあの身長ズルいと思うんですよだってあんなに小さおっと誰か来たようなので私は逃げますそれでは皆さんごきげんよう最後に我が愛しのヒナちゃんいやみんなの愛しのヒナちゃんの為の歌を皆で歌いましょうえ?そんな歌知らない?しょうがないですね私が熱唱しますさぁいきますよさんはあいやちょっとまってヒナちゃんそれは不味いアイスピックは不味いって何処から持ってきたのそんなのてか何本持ってんのアイスピックえ12本?多すぎだよヒナちゃんどんだけ氷削る気なのレッドウィンターから氷無くす気かいえ?削るのはお前だって?ハハハ冗談が上手いなぁヒナちゃんはまったくよし分かった今座布団持ってきてあげるからそこで大人しくしておくんだよまってやめてその状態で近づかないでアイスピックの先端こっちに向けたままこっち来ないで分かった座布団じゃなくておはじきもってきてあげるからヒナちゃんおはじき好きそうだしほらそれでいいで









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