ブルーアーカイブ ~先生は「ブラックライダー」~ IF√   作:クラウディ

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極限状態(徹夜)で掴んだ、性癖の核心っ!





ミサキ√
祝福と呪い、仮面に隠された涙


――「祝福」とは、

本来の意味なら神にもたらされる「恵み」であり、普遍的なものでいうなら誰かによってもたらされる「願い」である。

分かりやすく言うなら、誰かの「こうであってほしい」という願いも、誰かのための「祝福」と言えるだろう。

そこに善意が含まれるかどうかで、それは祝福になりえる……私はそう解釈している。

 

――だが、善意があるから、好意があるなら、その言葉は必ず祝福になる……とは限らない。

 

祝福というものは、相手に「こうであってほしい」というのを願う言葉だ。

ならば、それは一種の無責任さがあるのではないかと思う。

 

――「生まれてきてほしい」

――「生きていてほしい」

――「怪我をしないでほしい」

 

そんなまじないの言葉も、その言葉の受け取り方によっては「祝福」が一転してその人の生き方を強制させてしまう「呪い」になりうるのだ。

 

「呪い」というのは非常に厄介である。

なにせ、この世で一番純粋ともいえる「愛」すら呪いへと変じてしまう可能性があるからだ。

そうなってしまえば呪いを解くことは非常に困難。

いずれはつぶれてしまうだろう。

 

だが、そんな呪いを解くことができたのなら……。

 

これは、そんな「祝福/呪い」を背負った男が、恵まれなかった少女に救われる物語である。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

『人殺しっ……!』

『どうして、お前がっ……!』

『お前なんかいなければ……!』

 

 

「ハッ……! ハァッ……! グッ……!」

 

 

『なんで助けてくれなかったのっ!』

『なんでっ!』

『なんでっ……!』

 

 

「俺はっ……違うっ……っ……!」

 

 

『お前が"バケモノ"なのには変わりないんだ!』

『お前なんかヒーローじゃねぇ!』

『お前なんかっ!』

『お前なんかっ!』

 

 

「あぐっ……かはっ……!」

 

 

『お前なんかお前なんかお前なんかお前なんかお前なんかお前なんかお前なんかお前なんかお前なんかお前なんかお前なんかお前なんかお前なんかお前なんかお前なんかお前なんかお前なんかお前なんかお前なんかお前なんかお前なんかお前なんかお前なんかお前なんかお前なんかお前なんかお前なんかお前なんかお前なんかお前なんかお前なんかお前なんかお前なんかお前なんかお前なんかお前なんかお前なんかお前なんかお前なんかお前なんかお前なんかお前なんかお前なんかお前なんかお前なんかお前なんかお前なんかお前なんかお前なん――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――カケル、誕生日おめでとう』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛っ!!??」

 

とある青年が叫びと共にベッドから勢いよく跳ね起きる。

時刻にして日付が変わり、しかし太陽は地平線の向こうにまだ隠れているような時間帯。

目が覚めるには相応しくない、そんな時間だ。

 

「ハァッ! ハァッ! ハァッ! ハァッ、ハァッ……ハァッ……ハァッ……夢、か……」

 

跳ね起きた青年――"遠山カケル"は、焦燥しきった顔で重々しくそう呟く。

額には珠のような汗が浮かび、瞳孔は不安げに揺れ、指先は痙攣している。

明らかに精神状態は優れないようだ。

 

「また、か……」

 

しかし、彼がこのようなことを経験するのは一度や二度ではない。

かれこれ数年はこの状態で飛び起きることがあり、もはや日常の一つといっても過言ではない。

だが、それでもこのような後味の悪い夢など、慣れるわけがない。

 

ましてやそれが、『自分がやらなければいけない』という、強迫観念じみた"存在理由"のきっかけとなった出来事なら猶更だ。

 

「っ……うぇ……」

 

腹の奥から気持ちの悪い何かがこぼれだそうとしているのを感じ、思わず口を抑える。

 

『ひっ……!』

 

「っ……ご、めん……」

 

『近づくなっ、"バケモノ"!』

 

「うぁっ……!」

 

しかし、吐き気を抑え、深呼吸をすることで少しでも楽になろうとすると、それすら許さないと言わんばかりに、虚空から自身を責め立てる声が響いてくるようだった。

 

まさに生き地獄。

だが、この状態は誰かの手によって起こされたものではない。

無自覚に自分自身を自らの手で追い詰めているだけなのだ。

 

 

――己の手で殺めた人たちの命を背負い、それ以上の人を助けなければという"強迫観念"。

 

 

いっそのこと、"全て"から嫌われていれば楽だったのかもしれない。

 

 

――でも、そうはならなかった。

 

 

『カケル、誕生日おめでとう』

 

 

「っ……」

 

脳裏によぎる、慈愛のこもった祝福の言葉。

 

まだ誰から見ても子供だと言われる無垢なあの頃だったらどれだけ喜んでいたことか。

 

誕生したことを祝われるという、全ての人類が受けるべき"祝福"。

 

それが今は受け入れられなかった。

 

受け入れたら……受け入れてしまったら……今まで殺めた人達はどうなるのかという考えがいつも頭の中の片隅で、己の心に牙を突き立てていたからだ。

 

布団を蹴飛ばし、こみ上げる異物感をこぼさないようにトイレへと駆け込むカケル。

 

「う、ぐぇっ、うぇっ、おぇっ……かふっ……っ……」

 

腹の中身なんて出し切ってしまっても、体中を駆け巡る嫌悪感は止まない。

 

だからふと、カケルは思ってしまった。

 

「お、れは……いきてちゃ、いけなかったんだ……しあわせになんて、なっちゃいけなかったんだ……」

 

心と口ではそう言っても、生存本能がそれを避けようとして、あることを思い起こさせる。

 

『先生』

 

「っ……あぁ、そうだ……俺は、まだ死んでる暇なんて、ねぇんだ……皆が、まだいる……」

 

どれだけ死にたいと願っても、自身には彼女達を助ける"責任と義務"があると死人のようだった心に火をつける。

 

だが、精神はもう限界だ。

全てを投げ捨てて楽になってしまいたい……そんな考えは"呪い"のようにこびりついている。

 

しかし……だがしかし。

 

"それでも"と、彼は立ち上がるのだ。

 

それが、彼の背負う"呪い/祝福"だから。

 

 

あぁ、けれど、もし彼に救いが与えられるというのなら――

 

 

 

 

 

――それが"祝福"であることを祈ろう。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

「……もう、朝なんだ……」

 

肌寒い日の出前の冷気をかき消すように暖かな朝日が差し込むシャーレの一室で、一人の少女は目を覚ました。

 

彼女の名前は"戒野ミサキ"。

数か月前に起こった"エデン条約"、その調印式場を襲撃し、甚大な被害を起こした"アリウス分校"の特殊部隊――"アリウススクワッド"に所属していた、現在の処遇はシャーレ預かりの"特別監察保護"というなかなかの経歴を持つ少女だ。

 

そんな彼女はある意味では有名人だ。

なにせ、現在のキヴォトスで1、2を争うほどの規模を持つ2つの学園――トリニティ総合学園とゲヘナ学園、その両校が集って結ぶ和平条約――"エデン条約"の調印式を襲撃することで、トリニティとゲヘナの両校に大きな損害を与えたテロリストだからだ。

 

そんな彼女がなぜ、シャーレ預かりの特別監察保護という処分で済んだのか。

 

それは、調印式の際にも出席し、彼女達の襲撃の被害を受けたシャーレの担当顧問である先生こと"遠山カケル"自身が抗議をしたからだ。

それも、彼女達がこのようなことを起こした……否、襲撃をせざるを得なかった決定的な証拠となる記録を提出したのもあって、彼女達は日向の道を歩けている。

 

その記録とは、アリウス自治区を長い間支配していた絶対的な存在――"ベアトリーチェ"とのやり取りと、アリウス自治区に残されていたおぞましい実験、洗脳教育の数々を映像として残した物だ。

 

――"ベアトリーチェ"。

 

カケルがシャーレに所属して間もない頃に接触した組織――"ゲマトリア"の幹部であり、アリウスの生徒であり、ミサキ達の所属していたアリウススクワッドの姫――"秤アツコ"が有するロイヤルブラッドの神秘を搾取し、自身を高位の存在へと昇華させようとしたカケルと同じ大人とは思えない存在だ。

 

そんな存在が行っていた目を覆いたくなるほどの惨劇に、さすがの連邦生徒会もアリウス分校の生徒達には情状酌量の余地があると、カケルの提案を受け入れ、彼女達を特別保護観察という立場にしたのだった。

 

それから数か月経って現在に至る。

ミサキは寝起きで固まっている体を動かし、ある程度動きやすくなってからベッドを降りる。

そして部屋に設置されていたクローゼットから服を取り出し、袖を通していく。

寝巻から着替え終わったミサキは、ふと部屋を見渡した。

 

「……はぁ…………」

 

まるで、苦虫をかみつぶしたような表情を一瞬浮かべたミサキだったが、それも気にするだけ無駄かと思い、ため息を吐く。

 

――昔のような狭くて暗い部屋じゃない。

――隙間風で凍える夜を過ごしたあの場所じゃない。

――いつ死ぬかもわからないと諦めていたあの時じゃない。

 

――だけど、なんでだろう……今が幸せであることに違和感を感じるのは……。

――もしかしたらこれはまだ夢で、目が覚めればまたあの場所にいるのかもしれない。

――だけどこの暖かさは本物なんだ。

 

そんな感情が見え隠れするようだった。

 

「…………」

 

そんな考えを頭を振って誤魔化し、自分の部屋から出る。

 

ある程度進んで出た先は、テーブルと椅子が揃えられているシャーレの応接室兼リビングである場所だった。

基本的に、シャーレに居住しているミサキ達はここで朝食をとっている。

今日も朝食をとるために来てみたのだが、まず目に入ったのは椅子に座って食事をとっている少女――"槌永ヒヨリ"だった。

 

「もぐもぐ……あ、ミ、ミサキさん、お、おはようございます。き、今日は少し遅かったですね……?」

「……おはようヒヨリ。相変わらずよく食べるね」

「え、えっと、や、やっぱり、食べすぎぃ……ですかね……?」

「…………今度の健康診断、気を付けなよ」

「う、うぅ~……で、でもでも! こんなにおいしいご飯をたくさん作る先生が悪いんですぅ! うわぁああああああん!!」

「……食べるのは止めないんだ」

 

食べ過ぎだと指摘されても食べるのは止めず、むしろ食べる手が進んでいるヒヨリの姿を見ながら、ミサキは足を進めてキッチンの方へと向かった。

 

キッチンには、先程ヒヨリが言っていたように食事を作っている先生――"遠山カケル"と、その隣に立っている黒髪の少女――"錠前サオリ"、そしてサオリと挟むようにしてカケルの隣に立つ儚げな少女――"秤アツコ"がおり、カケルが何やら2人に指示を出している。

 

「そうそう。合わせ地が冷めてきたら数の子を入れて、しばらく漬け込んでおくんだ」

「こ、こうか……?」

「大丈夫。焦らなくてもちゃんとできてるから」

「先生、黒豆もできてきたよ」

「どれどれ……うん! ミモリちゃんの作ってるのと同じ味だ!」

「うん、喜んでもらえてよかった。昆布巻きもできてるから」

 

3人はそれなりに広いキッチンに並んで料理を作っていた。

少し不安そうなサオリを落ち着かせるカケルと、そんな彼に味見を頼むアツコ。

まるで家族のような距離感で接している3人の姿を見ながら、ミサキは声をかけた。

 

「なにしてんの……」

「ん? お、おはようミサキ。いや~今日は結構めでたい日だし、ちょっと凝った料理を作ろうかなって思ってたんだけどサオリとアツコが手伝いたいって言ってくれたから3人で作ってるんだよ」

「おはようミサキ。ちょっとだけ眠そうだね」

「……おはよう姫。それとリーダー」

「あ、あぁ……おはよう、ミサキ」

 

なんかやたら嬉しそうな3人の姿に、思わずジトッとした目を向けて尋ねてみれば、カケルが作ろうとしていた料理を手伝っているだけだという。

その割にはやたら嬉しそうな雰囲気だったなとさらにジトッとした目でにらみつけてみれば、サオリは気まずそうに顔をそらし、アツコは鈴を転がすような声でころころと笑った。

そんな二人の姿に呆れたようなため息を吐く。

 

「……まぁ、別にいいけど。で、そんなにいろんなの作ってどうするの?」

「んー……あれ? ミサキに言ってなかったっけ?」

「……言ってないって、なんのこと……?」

「「???」」

 

互いが互いの言っていることの訳が分からず、2人は首を傾げてしまった。

そんな時に、様子を見守っていたアツコから助け舟が出される。

 

「先生、ミサキは昨日の夜は早めに寝ちゃってたよ。だから、今日の予定は聞いてない」

「あ、あー、そういやそうだったな。起こすのもあれだし、そのまんまだったなそういや……」

「……? いや、本当に何のこと? 今日の予定? 私聞いてないんだけど」

 

カケル達だけで納得されてしまって、まるで自分が蚊帳の外にいるように感じたミサキが少しだけ圧をかけて再度尋ねた。

そんなミサキの様子に降参といわんばかりに苦笑いを浮かべたカケルは答えた。

 

「今日は世間でいうなら謹賀新年。要するに新しい年が始まったので皆祝いましょう! ってところかな」

「……なにそれ。新しい年が始まった程度で祝うの?」

 

何か馬鹿にされてるのではないかと先程のように目を細めて圧をかけるミサキ。

しかし、アツコ側からそれを否定される。

 

「そうだよミサキ。新しい年が始まって、皆新しい時間を過ごしていくの。その始まりを祝って今年が良い年になりますように、って祝う。良いことだと私は思うよ」

「……そう……まぁ、祝う程度なら別にいい。面倒なことにならなければ、それでいい」

 

理由は聞いたが、そっけなく返すミサキ。

少しぶっきらぼうな口の利き方だが、これが彼女だ。

 

「まっ! とりあえずは飯食って初詣にも行こうぜ! "おせち"もそろそろ完成するしさ!」

「…………私は行かない」

「おろろん? 行かないのミサキ? お汁粉とか美味しい物いっぱい食えるかもしれないぞ~?」

「……別に、私はヒヨリじゃないから」

「!? と、遠回しに食い意地張ってるって言いましたかミサキさん!? う、うわぁああああああん!! どうせ私は食べるしか能がないんですぅ!! うわぁああああああん!!!」

 

何故だかヒヨリに流れ弾が行ったが、ミサキとしては単に行く意味がないと思っているからこのような返ししかしないのだ。

こんなお人好しが誘ってくるのだ、絶対に面倒なことになる。

なら作り置きの食事かインスタント食品でも食べながらカケル達が帰ってくるのを待っていた方が良い。

そう思って口を開こうと――

 

「あ、もしかしたら正月限定の可愛いぬいぐるみあるかもしれな――」

「何してんの。早く食べて早く行くよ」

「早っ!」

「ミサキ……」

「ふふっ」

「うわぁああああああん!!」

 

――可愛さに篭絡されて行くことを決意してしまったミサキであった。

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