ブルーアーカイブ ~先生は「ブラックライダー」~ IF√   作:クラウディ

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作者「言うは易し、持ってないキャラの純愛小説を書くなんて俺も今までできたことなかった(ry」

脳内人格「さっきからペラペラと……コイツ(作者)、(深夜テンションで)ハイになってやがる……」





"普通"の日常

「ここが……」

「そ、近場にあるのでは結構大きい神社。おー、出店もやってんね~」

 

防寒着を着こんだカケルと4人が共に向かったのは、比較的近い距離でありながら規模の大きい神社。

出店が開かれるほどの広さの境内は人混みでにぎわっており、少しでも足を踏み入れればあっという間に流されてしまいそうだ。

 

「わぁ……す、すごいですねぇ……私みたいなチビだとすぐ迷子になりそう……あ、あそこのお店! うどんを売ってます!」

「一人で行くなヒヨリ……っと、すまない先生。私はヒヨリのそばにいなければならなそうだ」

「私も行くよサッちゃん。それじゃ先生、ミサキ、また後でね」

「あー、また後で合流な~。迷子になるなよ~」

 

早速行動を開始しようとしたが、食べ物に釣られたヒヨリが人混みの中に突撃し、それを追ってサオリとアツコが人混みに入っていった。

残されたのはカケルとミサキだけ。

 

「……で、どうするの?」

「あっははは……とりあえず、ブラック達にはサオリ達の護衛についてもらって……一緒に行くかミサキ?」

「……まぁ、別にいいけど……」

「とりあえずこんな人混みではぐれないようにするにはどうするか……あっ」

 

一先ずはカケルの提案でともに行動することにした2人。

だが、これほど人でごった返しているのだ。何かしらの方法を取らなければはぐれてしまうだろう。

そこでカケルがなにかを思いついたのか、ミサキに腕を差し出す。

 

「ほい」

「……何その手」

「手を繋げばはぐれないだろ?」

「…………」

 

――はぐれないように手を繋ぐ。

人混みではぐれないようにするには単純だが効果的な手段だ。

そう考えたのかカケルは何気ない様子で手を差し出して提案した。

 

しかし、ミサキはその手をしばらく見た後、カケルにジトッとした目を向ける。

 

「……変態」

「んなっ!? 俺のどこが変態なんだよ!?」

「女の子の手を無遠慮に触ろうとしてる」

「うぐっ」

 

ミサキの言葉にぐうの音も出ないカケル。

確かに、歳の差があるとはいえ異性の手を遠慮もなしに触るのはいかがなものか。

それが教師という立場ならなおさらだ。

 

「ご、ごめん、配慮が足りなかったよな……」

「…………」

「いや、今度は何!?」

 

やってしまったという表情を隠さずに差し出した手を引っ込め、少し不機嫌そうなミサキに謝罪を返すカケル。

しかし、その引っ込められた手を見ながらミサキはさらにジトッとした目を向けた。

その視線に、カケルは今日何度目か分からない疑問符が浮かんだ。

 

「……別に、手を繋がないなんて言ってないから」

「…………???」

「……何その顔。変なの」

「え、いや、だって、勝手に触るなって……」

「…………いいから、早く行くよ」

「うわちょっ!」

 

異性の手を無遠慮に触れてはいけないと怒ったのに手を触れなかったら怒る。

そんなミサキの様子に訳が分からないと首を傾げながらも、カケルはミサキに引っ張られるまま人混みを進んでいく。

突然の行動に目を白黒させるカケルの姿を尻目に、ミサキは小さく呟いた。

 

「……まったく……この鈍感男……」

「うぇっ? なんか言ったかミサキ?」

「……なにもないけど」

「???」

「…………」

 

あまりにも鈍すぎるこの男に、苛立ちをにじませながらもミサキは手を引いていく。

そんな自身の手を自分よりも大きく分厚いカケルの掌に包まれながらふと思う。

 

(……温かい……)

 

大人として年相応に成長した筋肉質なカケルの掌は、あまり肌を露出しないミサキの細くて白い手と比べて、異性というものを強く意識させる。

 

繋いだ手から伝わる熱は、この冬場の冷たさを柔らかく溶かすようで……。

 

――そんな温かさを少しささくれて痛んだ皮膚の感触が、ざらりと撫でてくるのが違和感でしかなかった。

 

(…………)

 

その感触が意味することを理解してしまったミサキは、無意識に唇を強く結んでしまう。

この能天気に笑っていた男の背負っている"もの"の大きさ。

それを察することしかできない自分と、いまだに本当の意味で心を開いてくれないこの男、その2つに腹が立った。

 

――カケルはミサキ達にとっての"救世主"だ。

 

そんなことを言われても、あの"地獄"からすくい上げてくれたのだから当然だろうと考える誰かは多いだろう。

 

だが、ミサキ達が救われたと思っているのはそれだけではなかった。

 

それは数か月前の出来事――ベアトリーチェから解放されたあの日のことだ。

 

『な、なぜだっ!? ガラクタを纏った程度の貴様になぜ勝てない!?』

『てめぇは何も分かっちゃいねぇんだよベアトリーチェ。俺達が今も生きていけるのは、誰かと共に生きて、誰かと共に支え合い、誰かと共に幸せになれるからだ。一人だけ生きて、支え合うなんてこともせず、一人で幸せになろうとしているお前じゃ、俺……いや、"俺達"には勝てないんだよ』

『知ったような口をきくなぁああああああああああああ!!!』

 

"バケモノ"となったベアトリーチェを前に、堂々と啖呵を切るカケル。

まさしく魔物と英雄の決戦という場だったが、ミサキ達の心に深く刻まれたのはこの後だ。

 

『ヒヨリ! お前は自由になったら何をしたい!? なんでもいいぞ!』

『えっ!? わ、私ですか!? え、えっとぉ……』

『できれば手短にな! 割とギリギリだからな俺!』

『えぇっ!? じゃ、じゃあ、ご飯をお腹いっぱい食べていろんなネット小説を読んで温かいところで皆とぐっすり眠りたいですっ!』

『んんんんっ! 滅茶苦茶注文が多いがとりあえず何とかするわ! 次、サオリ!』

『わ、私か!? わ、私は……』

『安心しろ! 時間は俺が作ってやる! 今思いつかなくても後で考える時間はたっぷり来るんだ!』

『……すまない、今は無理だ……』

『よし! 今度喫茶店にでも行って甘いもの食いながら考えるぞ!』

 

土壇場でありながら全員の"やりたいこと"を聞いていくカケル。

言外に、「絶対にこいつぶっ飛ばして自由にしてやるからな! その後は皆で幸せになるんだ! 絶対に!」ということが伝わってくるようだ。

 

だからこそ思ったのだ――

 

 

『次! ミサキ! お前のやりたいことはなんだ!?』

 

 

『私は――』

 

 

――こんな自分達でも、救われていいのだと。

 

――それを、この男はやってくれるのだと。

 

――だから、ミサキは――

 

 

『――普通の生活が送りたい。寒くて、暗くて、孤独になるなんてことがないような、そんな生活が欲しい』

 

『――よく言った! よっしゃ行くぜぇ!!!』

 

 

――昔の自分なら叶うわけがないと諦めていた"願い"を口に出すことができたのだ。

 

 

そう言ってカケルは絶望の象徴であった"バケモノ"を討ち倒した。

 

それが、数か月前の出来事で、それからは激動の日々だった。

 

一旦はシャーレにかくまってくれたカケルのふるまう料理の温かさに涙を流した日もあった。

 

ついに罪人として断罪されるのかと思っていた自分達の前に、嬉し泣きをしながら駆け寄ってきたカケルに全員抱きしめられうっとうしく思ったこともあった。

 

初めて見る可愛いぬいぐるみに目を奪われていたところを、カケルにからかわれて腹が立った時もあった。

 

たくさんの幸せを重ねて、たくさんの"普通の日常"を送ることができて、たくさんの笑顔を見ることができた。

 

それら全てはカケルという大きな存在がいたからだ。

だから、ミサキはカケルに感謝をしている。

 

――しかし、"それら"があるから"隠し事"をしていいとは思っていない。

 

そのことにミサキは薄々勘づいている。

カケルは何かしらのことを見せないようにしていると。

 

だが、言い出せなかった。

下手に触れてしまえば、"ナニ"が出るのか分かったものではないからだ。

 

だから、今は触れない。

それが今の"普通"を守る最善だと思ったからだ。

 

(……いつかは話してもらわないと)

 

そう心に決め、ミサキはカケルの手を引きながら人混みを抜けていくのであった。

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