君は無邪気な夜の暴虐 作:ミカ推し
とある人が言った。
曰く、愛ほど歪んだ呪いはないよ。と
「と言うわけで。ナギちゃんをどこに隠したのか言ってくれる?私も暇じゃ無くってさー」
「ああ。ここに居る全員…ミハちゃんを除いてね?全員、1人ずつ嬲り潰しても良いんだけど。それは面倒臭いでしょう?」
「……随分と余裕ですね」
いつものようなミカの明るい笑みは今は何処か乾いている…そうそれこそミハがメグミの時だったような笑みで笑い掛ける。少なくとも、ミハの姉だ。筋肉で優っているのは明らかにミハだが……
(“ミハが冷や汗を流している”)
アリウスに囲まれている時も余裕な笑みを浮かべていたミハがミカの裏切り宣言と嬲り潰すと言う言葉の後には明らかに警戒している様に構えている。
「だって君たち────弱いもん☆」
嘲笑うかのように三日月に笑みを割ったミカが挑発する様に右手を手招くが、誰も彼もが動けない。先生は気が付かないが今の補習授業部の視点では、首筋にナイフを当てられているような悪寒。つまりは動いた瞬間に終わるという極限状態に擬似的に覚醒した本能そのもの。
「“……ミカ、どうしてこんなことしたのかな?”」
「およ?今それ聞いちゃう?…蛮勇かな?ああでもそうやってあの子たちの前に立つ先生の姿は好ましいかな」
「それなら仕方ない。先生に聞かれたら仕方ないね。」
一度溜めてミカはこう溢す。
「それは簡単、ゲヘナが心の底から嫌いだからだよ」
「私は本当に心の底からゲヘナが嫌い。もはや憎んでいると言っても良いかな」
「“…………”」
「……だからエデン条約を、壊そうと?」
いつもの微笑みで語るミカ。その言葉には本当に心の底から嫌いだと笑いながら語るミカの姿にはあの時、先生がミカとプールサイドで語ったのと同じ笑みで。
「えー…っと、どちら様だったけ?私、顔を覚えるのが苦手でさー…ミハちゃーん、お姉ちゃんに紹介してよ。友人なんでしょ?」
「……………」
「全くもう連れないなぁ…ああ。思い出した浦和ハナコだったっけ?水着で礼拝所に来たって言うあれ。懐かしいねえ。」
今、認識したと言わんばかりに微笑むミカの姿に悪意なくこれをやっているのだとハナコは気がついた。
「まあその通りだね。あんなツノ付きと平和条約?を結ぶのなんてゾッとしちゃうよ。本当にね。…まあナギちゃんが変なことさえしなければよかったのにさ」
「“………………”」
「一応私も胸が痛まないわけじゃないんだよ?だって幼馴染でミハのもう1人のお姉ちゃんを手にかけるのは心にクるものがあるしさー」
「“ミカ。………本当の事を言って”」
先生は1人だけ、ミカの言い分に違和感を感じていた。
そう、それはまるで劇の上で演じる演者の様なそんな読み上げているだけの様なミカの歪さ。それら全てを纏めて、先生は気がつく。“ミカはまだ本当の事を言っていない”と。
「………はぁ。降参降参。……うーん先生は騙せないねぇ」
「“……………”」
「もう、だからそう厳しい目で見ないでよー…ってそうか。先生がここに来る原因って言ったら私だもんね」
まるで百面相だという感想が出そうなほど、ミカの表情はコロコロ変わる。
そしてその最後に見せた表情は─────何処までも“無”なミカの真顔。
「正直に言うとね。私は別にティーパーティーとか興味なかった。別にゲヘナとか目の前と部屋にいない害虫の事を憎んでも意味ないでしょ?」
「アリウスも同じ。同情もするし、憐れみもする。でもこれでおしまい。私にとってそんな感じかなー。」
「“ならどうして君はティーパーティーをしてるの?”」
「ああ。それはミハちゃんを探すため。トリニティ全域を探して居なかったのなら別の場所を探すための権力がいるでしょ?ナギちゃんはその時点でフィリウスのリーダーが確定してたし…じゃあ後はどこが空いてて簡単に上がれそうかなってなったのがここ、パテルだった」
パテル分派は特にゲヘナを嫌っている人が多いからね。
ゲヘナを嫌っているという形をとって、後は根回しと武力を見せつけたらそこまで難しい事ではなかったよ。とサラリとミカは言うがそんなトリニティでティーパーティーになるのを“難しい事ではない”と言える時点でミカの真意が見えてくる。
「うーんと…ああそうだった。それでどうして“ナギちゃんを狙ったか?”でしょ?」
今までで言うのなら、ミカのその理由はゲヘナと平和条約を結ぼうとしたからだ。
だけど、ここまでミカの真意を聞いていた先生にとってミカの本当の真意はそこには無いと勘付いていた。
「ま。最初は“穏便に”しようと思ってたよ?アリウスが表に出た後なら残りのトリニティを纏めるのに必要だからね。………でもダメだった。」
「ナギちゃんは絶対に手を出してはならないものに手を出した。」
………ここまで聞いたのなら分かるだろう。
ミカの唯一の逆鱗。それはミカのたった1人愛する、愛してやまない妹。
「ミハを補習授業部に入れるだけじゃ飽き足らず、それが終わったら自分の懐に入れようとする。……それが許されると思う?」
「これが理由だよ先生。…ああ後はアリウスか」
面倒だと一度ため息を吐いたミカは、また先生と補習授業部に向き合う。
「そしてアリウスはゲヘナを憎んでる同士。彼女たちにとってこれからのトリニティで動くための旗印が欲しかったし、私としても個人的に動かせるモノが必要だった。」
現ティーパーティー「ホスト」桐藤ナギサに正義実現委員会が付き、そしてこれからのティーパーティー「ホスト」聖園ミカにはアリウスが付く。
「こう言う事だね」
「……つまり私たちは、クーデターの……」
サラリと全ての目的を告げたミカは笑う。
そんなミカに今までずっと裏切り者として動かされていたアズサは震える声でその真実をつぶやく他無かった。
「まあそうだね。ありがとう。裏切り者。君のおかげでここまで物事は進んだ」
「ちっ……」
「そうそう。ミハちゃーん。こっちにおいでよ。ミハちゃんを補佐として置いておきたかったからさ!」
今までも、そしてこれからも。ミカとミハは比翼の鳥である事を疑わないミカは絶対にミハがこの手を取るだろうと思っていた。
「それと後は白洲アズサの処置だね。……君は桐藤ナギサの襲撃犯として片付けられる。ま。体の良いスケープゴートには丁度いいしね。」
「…………!」
「なんで驚いているの?世の中とはそう言うモノ。誰であろうともそうなる可能性があって、そしてそんな全ての罪を引き受ける存在が君だったってだけ」
「………それにしても驚いたなぁ…まさかナギちゃんが襲撃を受けてるって話を聞いた時はビックリしたよ。まさか補習授業部だなんて…ミハちゃんだって気がついた時には変な笑いが止まらなかったもん」
「“全ては…君が「ホスト」になるため?”」
「うん?そうかな?…そう見えるのか☆」
先生、私はね。と一拍置き、ミカはこう言う。
「ミハちゃんを守りたいだけ。この世の全ての危険から…ね」
それは誰もが抱く感情。「愛」と呼べるのに相応しい庇護欲。
感情の極み。どんな感情よりも熱く、どんな絶望よりも深いモノ。
「…それじゃ。ミハちゃんを渡してくれる?」
ミハちゃんを回収して、後はトリニティの穏健派を追いやってその空いた座にアリウスが座る。必要なら新しい連合にするし、また公議会も開いてもいいとミカは語る。
「“……っ!?”」
「それに、私が乗るとでも?」
「乗らないの?うーんいつの間にそんなお姉ちゃんを嫌う様な妹になっちゃったのかなー……ああ。先生もそんな怖い目しないで。怒ってるのは分かるけど、キチンと先生の取り分も用意しておくからさ☆」
ミカがパチンと大袈裟に鳴らした指に従う様にアリウスが銃を構えて前に出てくる。つまりはアリウスはミカの使いであり、ミカの忠実な手駒。
「大丈夫。お姉ちゃんが少しそこの邪魔物片付けてくるからさ!空いてしまった分の時間、キチンと取らないとね☆」
お姉ちゃんとして悪い奴らの集まりである補習授業部からミハを救う。
ただその一心で、ミカは殴りかかって来た。
ミカは ただ 妹の幸せを 願っている
次回【激突】
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