君は無邪気な夜の暴虐 作:ミカ推し
続きが思いついたから供養。
「…………ちっ」
アビドス襲撃の準備を始めたミハ…又の名をメグミ。生憎と彼女が考えていたのは“非常にめんどくさくて気乗りしない”ということだけだった。
金髪のお嬢様の件もそうだがそれを差し引いても砂漠に残ってる学校を襲撃しろなんざおっさん子飼いの兵隊でどうにかならないものかとメグミの腰は重い。
連邦生徒会長が失踪したやらで裏に流れてくるゴロつきも増えたし、七囚人?とやらが脱走したと言う事もある。これ以上面倒ごととか勘弁してくれ…というのがメグミの率直な考えだった。
………まあ。色々と今更感はあるが。
ワルキューレの執行を退け続け、向こうにやる気が無かったとはいえSRTの小隊も退けた。十中八九目につけられていないはずが無い。
「まぁ……済んだことか」
どうでもいい。今さら終わった事には執着しない。
それがメグミの決めた生き方。記憶に残る“彼”の生き方を模したような生き方。
ワルキューレに目をつけられた時もSRTも。まだ彼女自身が荒れていた時の話だ。
そう。苦いモノを思い出したかのように顔を顰める彼女が足を踏み入れた先は、人々の喋る声と諸々の音が響く暗黒街。大体の品物…それこそご禁制の品物とか何でも見つかる闇市。それがここ“ブラックマーケット”である。基本的にメグミが使う武器はオーダーメイド製も多いが使い捨てのナイフだとか銃だとかはここで買ったモノを使うことが多い。
そして今日もまた掘り出し物探しにメグミはブラックマーケットの喧騒の中に沈んでいくはずだった。
「………ミハ、ちゃんですよね?」
横から、声がかかるまでは。
「あ゛?」
呼ばれ慣れた昔の名前。そんなモノをこんな所で聞くとは思わなかったメグミは顔を顰めながら声の方向に向く。……あの時よりも鍛え直して、身長も二回りぐらい大きくなっている。だと言うのに彼女に気がついたその人とは。
メグミの足元で1人の少女が立っていた。
栗色よりの金色をした髪を左右に纏めており黄色のヘイローをしたどこにでも居る筈のトリニティ総合学園の制服を着た少女。そしてそんな制服に似合わないほどに大きな白い鳥のバッグを身につけた少女が立っていた。
「ヒフミ……」
「あはは…お久しぶりです。ミハちゃん」
基本的に人の名前を覚えないメグミだし、過去のことは捨てているメグミだが彼女の事は嫌でも覚えていた。自分を普通と言って憚らないその言動。それでいて“次期フィリウス分長”と何の忖度も無しに付き合えるその友情と言い、それでいてメグミと同い年ということもあってかメグミがまだトリニティに居た時の友人“だった”子だ。
「ミハとは言うな。聖園とは縁切ってる」
「縁切っている?…そんな……!………いえ。なんて呼んだらいいですか?」
そんな昔の懐かしさから逃げるようにメグミはいつも通りの悪態を吐いてヒフミから目を逸らす。そんなミハにヒフミはショックを受けながらも、ミハがトリニティをある時から停学したという事を。そして行方不明という状況になっている事を思い出した。
「今は伏黒メグミだ。」
「そう、ですか……では改めてよろしくお願いしますね!メグミちゃん!」
それを差し引いても今のメグミとミハを繋げられる人は少ないだろうなとふとヒフミは感じてしまった。昔、誰もが目を引いて憧れたはずのミハの長髪は無造作に切り落とされ、その身体付きも変わってしまった。けどヒフミだけはメグミをミハと気がついた。それは単に友情だけは表しきれないヒフミの深い親愛があったからだろう。
「全くヒフミは……はぁ……」
「?どうしたんですか?メグミちゃん」
どうせヒフミの事だ。このブラックマーケットにきた理由もそのペロロの掘り出し物を探しに来たのだろうとメグミは考える。
ペロロ。それはヒフミの背負っているバッグの白い鳥の名前。モモフレンズと呼ばれるマスコットキャラクターの代表格らしいがその舌を出しながら目が少しキマっている姿にはこのキヴォトスでも賛否両論のキャラクターをこのヒフミは熱を上げて好きらしい。昔はよく語ってくれた事をメグミはふと思い出した。
「ブラックマーケットの危険性はよく知っているはずだ。…気をつけろよ」
「それはもちろん。……けどメグミちゃんも気をつけてね」
2人とも、昔は親友だった。そしてそれは今もそうなんだろうか。
ヒフミは未だに分かっていない。どうしてミハが学校を退学して出て行ったのかも、どうしてその後、姿を消したのかも。一体何をして今まで過ごして来たのかも。
でも、そのミハの瞼の上の傷が今までのメグミとしての生き方を見ているみたいで…ふとヒフミは寂しいような、物悲しいようなそんな追憶に襲われた。もう昔みたいに2人でトリニティのベンチに座って笑い合う事が出来なくなったみたいで。
「ね、ねぇメグミ────────」
「おうおうおう!そこにいるのはトリニティじゃねぇか」「ひゅー!こいつはいい攫って金貰おうぜ金ぇ!!」「隣のやつ……も締め上げとけ!」
「………めんどくせぇな」
もう、戻ってくる気はないの?もう、私たちは親友じゃないの?
口から漏れ出ようとしたヒフミの偽りなき本心からの悲鳴は、ヒフミとメグミを取り囲む怒号で消え去った。
怒号の正体を見てみると、どの学校でもないセーラー服と黒色のマスクに白色のバツの文字。そして夜露四苦と刻まれたセーラ服の袖。そう彼女たちはスケバン。ヘルメット団以下の不良である。
そんなスケバンの群れにメグミも顔を顰める。幾ら弱肉強食が極まり切ったブラックマーケットと言えど、喧嘩売る相手を見誤るバカが居るとは考えてもいなかった。
「ひぃん…スケバンの方達ですか……」
「さっさと金目のもん出しやがれ!」「出したところで解放するわけじゃねぇけどな!」「おら!そこのやつもだ」
「──────、鎖」
ヒフミがどうしようかな。ペロロさま爆弾の数にも限りがあるし。逃げようにも取り囲まれたらヤバいと覚悟を決めるように口の中の水分を喉が嚥下した瞬間だった。
メグミが何かを呟いた瞬間。右手から“何か”を引き抜く動作をした後。
メグミを取り囲んでいたスケバンたちが一斉に何か重たいモノに飛ばされたように地面と平行して吹っ飛んでいったのは。
「……………ぇ」
「なんだなんだ!?」「やろぅやっちまえ!!」「てめえ私たちにてぇだしてタダで済むと思ってんのか!?」
「御託はいい。……ヒフミ。この間に逃げな。」
「っ!いえっ!私だって────!!」
突然攻撃され、吹っ飛ばされたスケバンの衝撃など他所にメグミはまるで今からつまらん事をするとばかりに仏頂面で首を回しながら手首も回している。手首の中には“何か”あるようでメグミの周囲には超速で風を切る音が響いている。
逃げろ。と言ってくれてるのがメグミの慈悲だとヒフミも気がついている。
だがそれでもヒフミが逃げるわけにはいかなかった。だってまだメグミとは話し足りないから。
バッグを傷つけない、且つできる限り急いでヒフミもペロロ様爆弾を取り出す。
爆弾のセーフティを引き抜き、相手に投げつけて爆発と共に大きく膨らむペロロ様。ここに、スケバンとメグミ&ヒフミのぶつかり合いが始まった。
「ははっ!!」
「やっちまえっっ!!」「くそっ!?はえぇ!!?」「なんだてめぇは!?」「つーかこの変な鳥うぜぇぇえええ!!」「回るな───────!!」
「なーにが変な鳥ですかぁぁぁ!!」
基本的にメグミは1人で戦う。それが最も強いからこそ。
それこそ“昔”なら周囲に合わせた戦い方をしたし、当時の全力について来れたのなんて“あの女”ぐらいだろう。
銃を使わず、接近戦のインファイトで戦う。それがメグミの戦い方だ。
もちろん、その後ろではヒフミがペロロを“変な鳥”呼ばわりした奴にめちゃくちゃキレて攻撃が激しくなっているが。
〔しばらくお待ちください……〕
あらかたのスケバンを叩きのめして、ヒフミとメグミは一服する事にした。(もちろん、売られていた昔ながらのソーダで乾杯だが)ヒフミの戦い方は昔から変わっておらずメグミはそれを懐かしんでいたが、逆にヒフミはまるで猛獣じみたそのメグミの戦い方に昔の姿とは重ならなくなって来てしまってどうしようも無い喪失感に襲われる事になった。
2人とも勝ったと言うのにその内心はどうしようもないほど真逆だったのだ。
「…………ま。じゃあなヒフミ」
そうして時間が経っていると空になった瓶をゴミ箱に投げ捨てて片手を上げて立ち去っていこうと背を向ける。メグミの口の中では“もう二度と会うことは無いだろうが”……そういう意味も込めて。
「待ってください!」
後ろから張り上げる声が聞こえた。
「………なんだよ」
「っ……ミカ様は!?どうするんですか?…ナギサ様だってっ!!」
ミハ、貴方の姉と幼馴染を捨ててしまうのか。
そのヒフミの鋭い、嘘を許さないという強い眼差しにメグミは目を逸らしてそのまま去っていく。
「……誰だっけ?」
「っ……!!」
最後に呟いた一言。ヤケにその喪失が現実じみていてどうしようもなく捻れてしまった事が伺えてしまった。
「ナギサ様に……いえ。」
「まだ、私にだってできる事はまだあるはずです……!」
反応、お待ちしてます