君は無邪気な夜の暴虐   作:ミカ推し

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はたまた続き。面白いかはわかんね


アビドス襲撃

 

 

 

鋭い嗅覚が、硝煙の匂いを嗅ぎ分ける。

鋭い聴覚が、この場を“戦場”だと嫌でも分からせてくる。

 

「おぉぉぉぉぉ!!」「くそがぁぁぁぁぁぁぁ!」「やっちまえ!!」

 

「お仕置きの時間です〜♣︎」「ん。支援ユニット起動」

 

オレの憧れた『伏黒甚爾』は、その天から与えられた呪縛によって“呪いを見る力”と引き換えに異様なまでに発達した身体能力と五感を手に入れた。その強靭な肉体は見えないはずの呪いを悟り、呪いへの耐性まで兼ね揃えるというフィジカルギフテッド。

 

とそこまで言ったらわかると思うがオレもそれに近いフィジカルギフテッドを持ってしまっている。なんかよくわからねぇ異形共(ある意味お得意様である)が言うには“神秘の差し引き”だとか“神秘の転用”だとかよく分からない言葉で囃し立てられた。

 

……とここまで私がオレである理由を話したのには一つの理由がある。

 

「クソが……すみません。」「頼みましたぜ……」

 

目の前で、カイザーのおっさん子飼いである筈のヘルメット団がアビドス5人に壊滅させられたのだった。小隊ほどいたはずのヘルメット団は向こうのほうでノビているか逃げ足早く逃げているかのどちらかだからだ。

 

「…………はぁぁぁぁ」

 

「貴方が最後ですね……ってあれ?」「………見た事、ある」

 

オレも逃げたいがカイザーのおっさんに参加すると言った手前、戦闘しないまま引き下がるのは出来ないとメグミは非常に、非常に大きなため息を吐いて先ほどヘルメット団を撃退したアビドスを見返す。そこで昔、“色々と”お世話になった金髪と銀髪の狼耳を見てもうメグミは帰りたくなって来てしまった。

 

「よぉ。久しぶりだな」

 

「お久しぶりですね〜!メグミちゃん!」

 

「“あれ?知り合い?”」

 

「うん。新しい転校生」

 

それでも知り合いである以上、挨拶しないわけにはいかないとメグミが手を振った瞬間、金髪の少女が(あの時より確実にデカくなってるな…byメグミ)抱きついてくる。身長ではメグミの方が頭一つ抜けているが胸の大きさは張り合えると言う事もあってか、金髪の少女とメグミとの間で胸のおしくらまんじゅうが始まった。

 

その後ろではメガネをかけた生活感のないボサボサな髪をしたキヴォトスではいないはずの男が立っていた。どうやら銀髪狼耳の奴と仲が良いらしく、そいつの問いにメグミを新しい転校生だと紹介していた。

 

「誤解だ。……それで、あんたの名前は?」

 

「“私かい?”」

 

「“私は、先生。シャーレの先生だよ”」

 

「シャーレっつうと……あれか」

 

連邦生徒会の。そのメグミの問いに男は首を縦に振る。

連邦生徒会長が失踪してしばらく。その混乱の最中、連邦生徒会長が呼んだとされるフィクサー。それが連邦捜査部“シャーレ”の先生という事。風の噂でしか耳にした事ないが七囚人の1人を従えただとか、非常に戦術に長けているだとか言う話だ。

 

「“それで、君の名前は?”」

 

「あ?…あー……伏黒メグミだ」

 

短い付き合いだろうがよろしくな。と珍しくメグミ自身が腕を動かしてその先生と握手をする。事実、先生がアビドスを率いているという事がメグミの明確な敵であることが窺える。

 

「うへー…君がメグミちゃんかぁ……()()()()()()()

 

「ああ。()()()()()()

 

その後ろからちんちくりんなピンク色の髪した奴が近づいてくる。

……だがただ小さい奴と侮る事は出来ない。その体に収めた実力は他の学校とは一線を画すアビドスの中の最強だろう。その実力は少し前、小競りあったゲヘナの風紀委員長と勝るとも劣らずと言ったところだろう。

 

そんなメグミの内心を知ってか知らずか歩み寄ってくるピンク髪も表面上は仲良くしようと握手をするがその内心は警戒しているのだろう。少しだけ目が鋭くなったのをメグミは見逃さなかった。……まあだからと言ってそれをわざわざ言うほどメグミには興味がなかったが。

 

「じゃ、始めるか」

 

「“何を?”」

 

「ん?……ああ。そうだったな。こいつらの親玉に雇われてんだ。オレ」

 

再会に喜ぶ金髪と銀髪狼耳から一歩下がり、両手を後ろに回して伸びる。

幾ら再会と言えど、アビドスの最強に会ったといえどメグミのする事は変わらない。カイザーのおっさんに言われたアビドスの襲撃でアビドスの生徒を叩きのめせばいい事には変わりないと腕を回し、先生にサラリと重要な事を語る。

 

「!!」「メグミちゃん…それって……」「ノノミちゃん。準備して。彼女は……」

 

「“メグミ、君は……”」

 

「ま、簡単に言うならば敵だな」

 

そのメグミの敵対宣言を待っていたとばかりにピンク髪が真っ先に構えた盾で突っ込んでくる。小柄なのかその速度は確かに速いし、ヘルメット団ぐらいなら吹っ飛ばせるだろうなとは思う。……だがそれはあくまで一般論。

 

天与の暴君である彼女には通用しない攻撃ではあるが。

 

「おせぇ。軽ぃ……寝ぼけてんのか?」

 

(………っ!?何コイツ?受け止められた!?)

 

片手でシールドバッシュを受け止めながら、挑発するかのようにわざとらしく空いている片手で欠伸をして見せる。事実、メグミにとってこれは攻撃の範疇にも入らない。ただ遅く、軽いだけの突進なんざ受け止める型を作る必要もない。

 

そんなメグミの内心とは引き換えにピンク髪の内心は穏やかではいられないだろう。本来ならこの一撃で決めるつもりだった一撃だ。そんな一撃を躱すなどではなく真正面から受け止められて尚且つ盾を掴んで動かないようにされている。力に自信が無いとは言えないがそれでも明らかに自分より力も上という存在はピンク髪…ホシノにとって初めてと言える相手かもしれない。

 

「っ!?アンタ!ホシノ先輩から手を離しなさい!!」

 

「止めて見せます。メグミちゃん!」

 

「ん。話したい事もあるから……先生よろしく」

 

「“ああ。総員戦闘開始だ”」

 

「いいな……いいぜ。─────、刀。」

 

メグミとホシノの拮抗状態。…より少しホシノが押されている現状を見て、先ほどまでは警戒していた黒髪猫耳の少女が銃の発砲を始めた。それに伴い、見ていただけの金髪と銀髪狼耳も参戦。更にはかの名高い先生の指揮も直々に感じられると言う事でメグミは本来ならここでは使わない予定であったお気に入りの“長い刀”を取り出してアビドスと戦闘を始めた。

 

「まずは……邪魔だ」

 

「!!ホシノ先輩っ!」

 

「大丈夫〜……よくもやってくれたね」

 

となって邪魔なのは片手に掴んだままのピンク髪の盾だ。

ならばどうするかと言うとメグミはそのまま片手で盾を左右に揺らして浮かした直後、回し蹴りで吹っ飛ばし壁に叩きつけた。

 

その叩きつけにダメージらしいダメージは無かったが、ピンク髪を怒らせたみたいで怖い怖いと半分冷やかし混じりで呟きながらも縦横無尽に動き回りアビドスの奴らが明確に狙い撃ち出来ないまま近づいていく。

 

「“銃弾が……当たってない!?”」

 

「先生。あれは当たってないだけじゃ無い」

 

「メグミちゃんに当たりそうな弾は全部切ってますね〜」

 

メグミちゃん。身体能力が異様に鋭いですから〜とメグミのノーダメの秘訣を金髪は喋り方に見合わぬゴツいミニガンで斉射しながら声にする。……確かにこの金髪のところで一度泊まったがそれでもオレの身体能力について何か言ったかな?とふとメグミは考えてしまったが、まあいいかとすぐに諦めた。どうせ考えてももう覚えてないだろうし。と。

 

「これで……どう?」

 

「…………………ちっ」

 

銃の斉射を受けながら、前進するメグミに銀髪狼耳が何かを呟くと同時にその頭上に白いドローンが飛ばされているのが見えた。そしてその瞬間、見慣れた白い筒のような飛行物。

 

小型ミサイルが飛んできているのが見えた。

 

(ああ。なるほど?)

 

受け止めるか、受け流すか。それともノーガードで受けながら突っ込むか。

メグミは考えた末、とりあえず手に獲物を持っているのだから“切ってみる”事にした。

 

「…………そういう感じね」

 

着弾し爆発するより先にメグミの振るった銀色の閃光がミサイルを切り落とす。

着弾より先に爆発するものでもなく爆発した瞬間、何かが周囲に飛び散るモノでもない至って“普通の”ミサイル。しかも小型ぐらいならばメグミにとってはカモだ。

 

「……うそ!」

 

「はいお疲れ」

 

そのまま何かの瓦礫を下敷きに飛び上がり、斬り捨てる要領で瞠目する黒髪猫耳に切りかかる。ヘイローを割く“鉾”ではなくこれはただ鋭く硬いだけの刀だ。死なない程度に掻っ捌く事はメグミには慣れている。

とりあえずこれで1人脱落と。冷静に俯瞰しながらメグミは刀を振り下ろした筈だった。

 

「“まだだよ”」

 

「…………マジか」

 

青い光のような、それでいてシールドとは違う不可視の壁がそいつの前に現れた。

何か特別な武器でないにしろこの刀が切り裂けないとなると“普通の壁”ではないとメグミは判断する。……そしてこの壁を用意したのが先生である事も呟きを拾って推理した。

 

(ここで1人落とせなかったのはでけぇ)

 

反射的に後ろに後退したメグミの目の前に先生を守る布陣が出来上がっている。

そしてこの布陣を越えるためには“少しばかり本気”でなくては突破できないほどめんどくさい布陣である事がメグミの五感からの情報を統合した結果だった。

 

(そしてあの先生の壁?の出てくるタイミングも分からん)

 

“鉾”ならあの壁も突破できるかも知れないが、今のメグミにこれ以上手札を明かしてまでアビドスに敵対する利点は無い。そしてそれらの現状を統合してメグミが下した決断は

 

「………はっ」

 

「「「「………………………」」」」

 

「これ以上のただ働きはゴメンだね」

 

刀を仕舞い、全力で壁にぶつかり壁をぶっ壊して逃げる。

顔を守る体勢のまま突っ込んだから諸々の粉塵を無視して飛び出す。

 

「あっ!?逃げたぁ!!?」

 

「逃げ足だけは早いねぇ……顔覚えたからな」

 

「ん。前回もこんな感じで逃げられた」

 

「“伏黒メグミ、か”」

 

後ろで何か騒ぐ声さえも無視してオレは月下を駆け抜けたのだった。

 

 

 

 

 

 







「あ゛……ベアトリーチェ?どうしたんだ?」

「………エデン条約、ねぇ?」

「へぇ。オレに戻れってか。“あそこ”に?」

「あ?裏切り者ぉ?……それが何の、関係…」

「ちっ。良いだろう。気乗りしねえがな」

「報酬だけ多く用意しとけ………って切れた……」



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