君は無邪気な夜の暴虐   作:ミカ推し

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ベアトリーチェは死んだと言ったな?
あ れ は 嘘 だ

まあ某ボ卿の全員自分バグとまでは言わないけど自分の“コピー!”ぐらいは用意しとくよね


逆鉾

 

 

「……………おや」

 

「?どうした?ベアトリーチェ」

 

何処の一室。アリウスの深く、ベアトリーチェとミハ以外誰も知らない様な私室で2人は来たる時を待っていた。ベアトリーチェはこれから始まる“大儀式”を前に最終段階の準備に入り、その“大儀式”の要となるミハは今の所する事は無いから精神統一として坐禅を組んでいた所だった……まあ。あのミハが精神統一を必要とするほど精神がか細いとは思えないが。

そうしているとまだまだ“大儀式”の開始には程遠いタイミングで何かに反応するかの様にベアトリーチェが上を見上げる。

 

「“分霊”が破壊されたみたいですね」

 

「……ああ。あの“複製”の?」

 

ええ。とベアトリーチェは頷く。ゴルコンダが作成したテクストである〈自分では無い鏡写しの自分〉である記号…大衆的に認められたテクストで言うのならドッペルゲンガー或いはシェイプシフターと言われるモノ。

ゴルコンダから借りたそれに東洋の神秘概念…つまりは自らの姿形を分けた信仰体である“分け御霊”の概念を貼り付けた謂わば“第二のベアトリーチェ”を裏切ったであろうスクワッドと先生がアリウスに侵入する時の経路に配置した。

 

「……と、なると」

 

些か面倒な他ない。とミハは考える。あくまで分霊でしかないベアトリーチェと言えど最終命令である“分霊の完全破壊による強化の縛り”を考えれば、少なくともヒエロニムス以上の実力はある。……それが破壊できるとなるならば先生の支援というのは中々に“厄介”だ。

 

「いえ。ミハ、良い知らせです」

 

「………なんだ?」

 

「聖園ミカが先生とスクワッドとの協力を結んだ様です」

 

ベアトリーチェが1人、破壊された分霊の情報を読み取っていくと何とそこには先生やスクワッドと手を組んだであろう聖園ミカの姿があった。……ここまでは読み取れなかったとベアトリーチェは考える。聖園ミカのアリウスに対する憎悪も、スクワッドの聖園ミカに対する罪悪感も並外れたモノだ。そう簡単に協力できる様にはならないだろうと考えていたがおそらく先生が繋いだのだろう。

 

まあ、聖園ミカの参戦は“想定外の不運”ではなく、“想定外の幸運”だが。

 

「それじゃ、アイツらはバシリカに向かったのか?」

 

「ええ。バシリカに秤アツコを安置していますから…そうですね」

 

大儀式の準備は殆ど終わっていると見て良い。

秤アツコをあの場所に“接続”出来た時点で経路は繋がり、今となってはあの“ロイヤルブラッド”は儀式の邪魔をする不純物となり得る。

 

「聖園ミカの排除を行い、バシリカから秤アツコを回収しなさい」

 

「………委細承知」

 

「ええ……ああ。なんなら手足一、二本欠けていても構いません」

 

儀式には問題ないですし。と軽々と言うベアトリーチェの下した命令は先生を含むスクワッドの排除。そしてバシリカに縛られた秤アツコの回収だ。その中で発生した殺傷に対してベアトリーチェは犠牲を許容する。

 

「それでは“ダアト”でまた会いましょう」

 

「……ああ。」

 

先にベアトリーチェが空間転移を行い、渦の中に消えていく。ミハが触媒を用意しないといけないというのに対して、ベアトリーチェは腕の一振りで空間を繋げることが出来る。幾らここがベアトリーチェの領地とは言えその技は冴え渡っているとベアトリーチェが消えた部屋の中で1人ミハはため息を吐いた。

 

「………始まる、か」

 

一体どれほどが犠牲になるのだろうか。

一体どれほどの被害が出るのだろうか。

もはやミハでは考えられないほどの悲惨な事になるだろう。

 

何故ならばゲマトリアの計算上“初動”だけでアリウス全土が灰塵と化し、そしてその11回繰り返される余波だけでトリニティとゲヘナ全土が全壊し、完遂後にはおそらく残っているモノを数えるほうが早いとまで言われる“大儀式”だ。

 

ゲマトリアは間違いなく生き残る…と言うより儀式が始まるその時を楽しみにしているだろう。そして後無事だと考えられるのは…異常なまでの護りを持つ先生ぐらい。先生の場合は生きていたら、が付くが

 

「………さようなら」

 

立ち上がったミハは今のミハとは思えない感傷の声が漏れ出る。

まるで別れを惜しむかの様に、死に行く知り合いを憐れむ様にミハは今まで記憶に残っていた人の名前を顔を浮かばせては消していく。

 

補習授業部。ハスミ、ヒナタ、ノノミ…そしてセイアにナギサにミカ。

 

「聖園ミハ」

 

そして最後に聖園ミハ。

これら全ての忘却を以て、天与の暴君“伏黒メグミ”は完成した。

 

それでは……もう、おしまいの時間だ。

 

 


 

 

「………もう、終わりですね」

 

ふと空間転移する最中、ベアトリーチェはまるで惜しむかの様な口ぶりで振り返る。……ああ。そうか、ベアトリーチェは惜しいのだ。幼年期でありながら“大人”に踏み込んだ少女。或いは天与の暴君として恐れられながらも“美しさ”があった彼女も。そしてどんな姿であれ頼ってくれるミハの姿にベアトリーチェは自身の子とも言える親愛の情念があった。

 

「さようならミハ……次は、大人になった貴方に会いましょう」

 

きっと……その時は“あの約束”を─────────

 

 



 

 

 

「……………」

 

「……………」

 

「“……………”」

 

「ねえ、おかしくない??」

 

ベアトリーチェを倒した先生一向。行方を阻むモノといえばあとはアリウス生だけとなったアリウス自治区への道行は案外簡単に進んだ。その間、サオリが体調を崩して一旦休憩にした間を入れても想像より早く進んでいる。

 

それもそのはず。本来居ないといけないアリウス生が何処にもいないのだ。皆よく使っている筈の大通りも、巡回している筈の裏路地も。その何処にもアリウス生の影も形も無いのだ。

 

「ああ。明らかに異常だ」

 

自分たちが立てる以外の物音が一つも聞こえないと言うサオリが今まで生きてきた中であり得ない事態が発生していることに、ミサキの硬くなった声色も理解できるモノだ。

 

「ど、ど、どうしますか………?」

 

「………いや。進もう。好都合だ」

 

ヒヨリの思案にそれでもかとサオリは足を進める。確かにこれからの道先は〈彼女〉に嘲笑われた道筋となろうとも進まなくてはならない。いくらベアトリーチェを倒したとはいえあの口調なら間違いなく“儀式”は夜明けと共に始まるだろう。予定通りに。

 

「……うーん。本当に何もいないね☆」

 

「“ミカ……大丈夫?”」

 

スクワッドを拷問するかの様に痛め付けた事に多少の罪悪感がある(というかミハと同じ様にベアトリーチェに騙されていただけの被害者という事も鑑みて)ミカは、サオリが倒れた時点から今に至るまで周囲の警戒にキャパシティを割いている。

 

「先生は優しいね!…でも大丈夫!☆」

 

「“辛くなったら言ってね”」

 

アリウス自治区では何故かシッテムの箱由来の索敵が出来ない。アロナ主導のバリアや生徒の支援が出来るが、アリウス生の数と配置を知ることだけが出来ない。おそらくベアトリーチェの妨害…或いは元々バシリカに貼られていた力場がそうして索敵を防いでいるのではないかという結論だ。

 

その為、ここまで来る間。ミカが主に一番後ろで警戒をしていたが、その分消耗が早いだろうと先生は気にかける。…それもその筈。ミカが幾ら強いと言っても、常時全方面に敵がいないかと気を張っているのは疲れるだろう。

 

「うん☆」

 

「……すまない。聖園ミカ」

 

割とマシになって来てはいるがそれでもまだまだ病み上がりなサオリがミサキの肩を借りて、ミカに謝る。どうであれ、ここまで巻き込んだのは私たちだと言うかの様に謝るサオリに顔を背けながら素っ気なく返す。

 

「謝らないで錠前サオリ。私たちは互いに“護りたいモノ”の為に動く…それだけでしょ?☆」

 

「………ああ。感謝する」

 

「…………☆」

 

調子が狂うなとばかりに黙るミカに本気で煽り抜きに謝罪と感謝をしているサオリ。確かにどうであれ互いに行動原理は同じだ。ミカはミハを止めに、サオリはアツコを取り返しに。それは間違いなく護りたい人を取り戻す戦いだ。

 

 


 

 

 

 

「“ミカ。本当にお疲れ”」

 

先生たちはようやくアリウスの旧校舎の前までたどり着いた。

スクワッドたちの作戦はもう人気が途絶えて久しい旧校舎を通ってバシリカまで強行突破するという作戦だ。ここから先は室内という事もあってミカに警戒して貰わなくとも、敵に気が付きやすいと先生がミカを労った瞬間だった。

 

 

 

ドグシュァ

 

 

 

「………は?」

 

一体誰がそう、溢したのだろうか。

ミカが警戒を解いたその瞬間。

 

「“……っ!!??”」「!!」「……!!」

 

「ミ、ハちゃん……どこ、から……」

 

ミカの腹を貫く鈍色の輝き。

間違いない。それは刀。鋭く、それでいて今この瞬間ミカの血で汚れた剣先から血が滴り落ち、純白なミカの服をじわじわと血で赤く染め上げていく。

 

「気にすんな。大人しく倒れといてくれや。……なあ」

 

下手人はすぐに分かった。その姿を隠そうともせず、斜め下から突き穿つかのように両手でミカの身体に刀を押し込んでいるミハの姿があった。白い長ズボンと半袖黒色のタンクトップ。

 

「おねえさま?」

 

したり顔で見上げるミハに、ミカは反射的に拳を振るう。

その拳圧にミハは逆らう事をせずに、近くの高台に降り立つのを見てサオリが目潰しとばかりに銃弾を放つ。

 

「待って!」

 

「“けど…ミカ……!”」

 

血が滴る腹を片手で押さえながら、ミカは空いた片手で後ろにいたサオリが前に来るのを遮るかのように立ち尽くす。先生やサオリを明らかに庇っているのが分かるミカの立ち姿に先生は吠える。明らかにこの近くにミハは居なかった筈なのにと。

 

「後は私に任せて☆……まあ姉妹喧嘩みたいなモノだよ!!☆」

 

サオリも先生もこの先に行かないといけないでしょ?という金色の眼差しを受け取り、断腸の思いで決断する。…この場でミカとミハがぶつかれば私たちは間違いなく邪魔でしかない。むしろミカの弱点になりうる事を全員が分かっていた。

 

「“っ!!すぐ戻るから!!”」

 

「おっけ〜☆」

 

せめてアツコを助け出せれば、ミカの援護も出来ると自分たちの目的を先にこなす方が得策だと歯噛みをしながらサオリたちが旧校舎の中を迂回しながらではなく、直線距離で走り出す。勿論、一番後ろからヒヨリが先生を手招くのに走り出す。

先生がふと最後に振り向いたら、ミカはこちらを片手間で見ながらも手を振っていた。

 

 

 

 

 

 

「ベアトリーチェは死んだよ。私が殺した」

 

「殺したんじゃ無くて殺させて貰ったの間違いだろう?…痩せ我慢が丸見え」

 

ミハの依頼者であるベアトリーチェはミカたちは討ち取った。もうこれ以上戦う理由はない。とミカは痛む腹を強く押さえながら吠える。そんなミカの姿にミハはバッサリと切り捨てて刀を肩に担ぎながら大胆不敵にミカを見下す。

 

「………もう止まれないんだね」

 

「止まるも何も聖園ミカ。あんたの排除が命令だ」

 

依頼のために、聖園ミカを排除したいミハ。

何が何でも、妹であるミハを止めたいミカ。

 

ゲマトリア所属と生徒。妹と姉。全ての場所が対極になった2人に突き付けられたのは無慈悲なまでの分断のみ。決して“理解”だけでは埋まらない溝が──────

 

引き金になった。

 

「そっか☆……じゃあおいで?お姉ちゃんが遊んであげる☆」

 

「…………………」

 

右手で引き金を放つように、左手で構えるのを補助するポーズでミカは構えミハを迎え撃つ。……満面の笑みのミカは一体何を考えているのだろうか?怒り?憎悪?悲しみ?......いや。もはやそのどれでも無いのだろう。

 

(………大丈夫。私はお姉ちゃんだもん)

 

腹に出来た傷はジクジク痛みを訴える。

でも、そんな…こんなモノに邪魔されてたまるか─────!!!

 

(ずっと甘えたかったよね。大丈夫……)

 

あの日から、私たちは致命的にすれ違ってしまった。

あの日、あの時。私がミハちゃんの手を繋ぎ止められなかったから。

 

(全部、全て。……受け止めて、あげる」

 

 

 

瞬間、ミカはミハの動きを見失う

 

 

 

(……っ!?はやっ!!)

 

瞬きをした瞬間に見失うミハの姿。襲ってくるミハの二撃目を防ぐ事が出来たのは殆ど勘みたいなモノだとミカは背筋に冷たい汗を走らせながらも、使い慣れた銃を振り回しながらミハを追う。数秒のうちに1マガジンを平気で使い潰しながら、決してミハから目を離すまいと追い続ける。

 

(………っ!!こっちもいつまで持つか……)

 

アリウスの旧校舎の屋根に降り立ったミハの背中を眺めながら、荒れる息と共に減って来た残弾を前にミカは歯噛みする。このまま行けば劣勢を強いられるだけで無く、近接にまで持ち込まれたら……最後に待つはミカの敗北。

 

(…………仕方がない………)

 

これは使いたくなかったとミカは銃を背中に戻しガラ空きになった両手を、組み構え右手で挑発するかのように手印を組み、左手は胸元にして構える。

 

「“隕石”最大出力─────!!」

 

ミカの掛け声と共に周囲を焦土にしながら落ちていく隕石。

ミカの持つ異能で、ここまで強くそして断続的には使ったことのないミカの奥義。だがこうして広範囲、高火力で焼き払うことのできるミカの禁じ手。

逃げも隠れも出来ない焼け野原で立っているのはミカだけ。後はこの隕石で消耗しているであろうミハとの一騎打ちに持ち込む。

 

「いない………?まさか………先生!?」

 

周囲一体が平坦な焦土になった中心でミカは立ち尽くす。

先ほどまで感じていたミハの存在が全く感じられない。

一瞬空白になった思考に、すぐさま“ミハは先生たちを追ったのではないか”という可能性が思いつく。それだったらマズイ。間違いなくスクワッドと先生だけではミハを止められない─────────

 

その思考の隙が、致命的だった。

 

「………隙、見せたな?」

 

斜め下から迫り来るミハの残像。一体いつのまにとミカが思考するよりも早く、ミハがいつの間にか持ち替えていた異形の短刀が首を一直線に突き刺す。

 

銃弾さえ弾くようなキヴォトスの生徒の肌なら、幾ら力の強いキヴォトスの生徒が殺意さえ込めたナイフであろうとも傷一つ付かないかもしれない。……そう、そのミハが持っていた短刀が“普通”のモノだったら。の話になるが。

 

「……………………………────────っっ!!」

 

ヘイロー持ちの頑丈さなんて無かったとばかりにその短刀はミカの首を穿ち、鮮血を吹き出す。喉を1突きされた衝撃でミカは血を吐き出しながら倒れ込む。

そしてミハはそれだけでは足りないと判断したのかすぐさま短刀を抜き出しそのまま身体をバッサリと袈裟斬りで切り捨てる。

 

「……勘、鈍ったかな?」

 

後ろで全身を鮮血に染めたまま崩れ落ちたミカの事なんて眼中に入れる事もなく、ミハは汚れてしまった短刀から血を払い落とすかのように上下に一回振り落とす。

 

 

 

 

 

 

その後、ミハは姿を消す。

その場に残されたのは…血の海に倒れたミカの姿。

ミカの特徴的な純白の翼さえも、鮮血に濡れて倒れるその姿には生気なんて感じられず、輝いていたはずの金色の瞳からは、光を返さない黒ずんだ輝きの中でミカは─────。

 

 

 

 

 





ちなみに今のミカのスチルは4th PVのヒナの姿を丸々ミカにした感じだよ!
まあ出血量は全身を赤色で染めるぐらいだから比じゃないんだけどね。むしろ残酷さが上がってる。
天使のように綺麗な羽も鮮血に汚れて…これぞホントの天使ってかガハハ


次回『青春は澄んでいるか?』

「“帰ろう。アツコ”」



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