君は無邪気な夜の暴虐 作:ミカ推し
集結〈弍〉→空に神はありて
あけおめです。年末年始腑抜けてたらいつの間にかめちゃくちゃ時間経ってた事実。
「っく……っ!」
ミハとミカの戦いは常にミカの劣勢のまま進む。それもそうだろう。そもそもの馬力の差が圧倒的にミハの方が高い。「 」に至ったミハと壁を超えただけのミカ。幾らミハが中身のないハリボテと言えど神に相対出来るほどミカに力があるわけではない。
「雷明に逆巻く巻雲、地に堕ちる蝿」
「冗談、っ!☆」
一体どういう原理で発生させているか分からない電撃…いやもはや雷撃と言った方が正しいだろう。空に浮かんだままのミハは間違いなくこの世ではない言葉を唄い、何もないはずの虚空から広範囲に雷を落としている。
避けなければならない。何が何でもこれを受けてしまえばひとたまりもない。そう直感が訴えたミカは服が泥だらけになるのも無視して地面を転がり、時には持っていた弾丸を投げて避雷針代わりに雷を誘導する。そんなミカの直感は正しい。ミハの無造作に振り回される雷が当たった瞬間、“今のミカ”でさえ当たった部位が焼け焦げるだろう。
「地を見失っては、水と共に沈んでいく」
「あー!もう☆ちょっとは手加減してっ!くれっ!ないかなぁ!!☆」
見るも無惨に全身に着いてしまった灰や煤を拭う事も出来ずミカは必死に回避行動に専念する。広範囲の雷撃が一旦終わりを迎えて空を睨めば、ミハの頭上に集められた巨大な光球が地面に叩きつけられようとしていた。反射的にミカは愛銃で何発か撃ち込むがそもそも当たった様に見えない。
そしてその数秒後。プラズマの様な破壊的な光が漏れ出ている巨大な光球が地面に叩きつけられた瞬間。恐るべき速度と威力で地面に光の波が走る。僅かに残っていたかつての家は地面ごと均等に平らにされ、円形に削り取られたそのミハの一撃はミカとミハしか残らない。
(これ……ヤバいね。)
広域的な雷撃。そして先ほどの波状のエネルギー攻撃。その二つを受けてミカは悟る。間違いなくミハは“こちらに攻撃する意思がある訳ではない”と。ミハにとってはあくまで邪魔なゴミがあっただけだ。
避け続けるにもミカの精神も肉体も消耗されていく。ただでさえ今のミハには銃弾が当たらないし、近づこうにもミハの周囲に渦巻いている暴風が邪魔をする。このままいけば…今も尚、ジリ貧になっていく戦況を前にミカは次かその次までしか自分の命の保証は出来ないと揺れて暗黒に落ちていく瞳の中と、もう重だるくて動かない手足に喝を入れ、ミハを見上げる。
「………最後まで一緒にいるよ」
きっとおそらくこういう言葉を呟けたんだと思う。
ここまで立っていられるのは単に姉としての意地だけだ。正直に言うのなら、何回だって聞こえた。何回だって言っていた。“もう終わりにしてもいいんじゃないかって、もう倒れてしまってもいいんじゃないか”って思うぐらいに凄く、すごく疲れたのだ。
………ああ。でも
『私はお姉ちゃんなんだから!☆』
『どうして、どうして?』
『ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……』
身体に力が入る。例え一瞬、例えただの勘違いか幻だったとしても身体に心に熱が宿る。私の持てる全部を薪にしても、まだまだ私の心から力は無くなっていない。なら立ち上がる他、無いでしょう?
「11の天輪21の天路。今この時を以て我が宿業をなそう」
「…………ああ。見えた」
最期の力を振り絞り、ミカは立ち上がる。もう何もかもボロボロでひしゃげているけどそれでも聖園ミカは立ち上がり前を向く。ミハの姿をその目に焼き付けた瞬間だった。理屈は分からない、理論もへったくれも無いミカの瞳だけが宿したミハの現状。
よく分からない人ならざる3つの何かがミハを愛撫するかの様にミハに絡んでいる。それが何かは考えてもきっと分からない。だけどそれが間違いなくミハの身体を使って悪さをしている事だけがミカには解った。
「お、前たちが──────!!!」
ひとつはミハの半透明となった翼を喰み、ひとつはミハの背後から抱きしめる様に手を伸ばし、ひとつはミハの身体に抱きつき絡み付く。まるでそれが合図とばかりにミハの身体から方陣と共に膨大なエネルギーが世界を歪ませる。
「無限光・今甦れし至高天」
極限まで圧縮された光の砲撃。
そこに込められた熱量は人1人を蒸発させるには過ぎた威力。世界を揺るがし、その対象がもしキヴォトスに向けばキヴォトスに致命的なダメージを与える事も出来る極光が聖園ミカただ1人に向けて放たれる。
極限まで削り取られたミカに回避行動を取れと言うのは無茶な話だ。ただでさえ、致命的なダメージを受けている上で持ち前の気力だけでガッツとなり立ち上がった上でしばらく再起不可能なレベルまで傷を負っている。
そしてその上からダメ押しとばかりに放たれた一撃。
誰がどう見ても詰みであり後は走馬灯を噛み締めるだけと言う段階になっても尚、ミカはミハから目を逸らさず、気強な視線で砲撃を真正面から受け止めるつもりだ。
(……………………)
何処かの楽園の妖精が持つ“世界を破壊する一撃”さえも防ぐバリアも、精神力に比例して強固になる絶対なる城を模した盾もミカは持たない。けどその迫り来る“おしまい”にミカは決して目を逸らさない。
死ぬと分かっている。全ては無駄なまま死ぬことになる。
何もかも間違っていた人生だった。妹の心の悲鳴を受け取る事は出来ずにその手は空を掻いた。全部を裏切り、怒りと憎悪だけに突き進んできた。そして妹の本心を推し量る事は出来ず、また同じ様にこの手から目の前で失ってしまう。
ああ。でもミハちゃんが泣いていないか
それだけが、心残りだ。
「─────────────」
「“私の………”」
もうひとつの輝きが、みえた
「“私の大切なお姫様に何してるの……!!”」
◆
[時間は戻り……]
謎の暴風。吹き荒れる竜巻の様な立ってられない風を前に外に出た先生とサオリたちは目を覆いながらその発生場所を見る。先生にとってそれが何か分からないが、むしろサオリも訳がわからない。この風の原因であろう場所は特に語る事もない様なアリウスでありふれた誰も居ない廃墟の街並みのひとつ。
「…くっ、本当に一体何があったんだ!?」
「わ、わかりませ……ひゃっ!!?」
「“ヒヨリ!!”」
人が満足に立つ事も厳しい暴風と言う事はそれほど飛来物も多いと言う事。ただでさえ道もマトモに整備されていない中、薬莢やら瓦礫やら飛んでくるモノをヒヨリはその身でまだ意識も戻っていないミサキをその背で防ぐ。
擦りや被弾も多い中、その背で守るヒヨリに先生も協力しながら現状を考える。
即ち、進むか止まるかの二択。この荒れ狂う暴風の中どこに行けば良いか分からない五里霧中を彷徨うのかそれともこの場で待つのか。突きつけられた選択にメリットデメリットを天秤にかけた結果を口にしようとした瞬間だった。
「サッちゃん!!」
「この声は……アツコか!!??」
暴風の奥。決して聞き取りやすいとは言えないほど小さな声が叫んでいるのが聞こえた。その声の主は…秤アツコ。先ほどミハに殺されただろう少女の姿に先生もサオリもヒヨリも瞠目する。死んでいるとは到底認められなかった。だが聖園ミハ…“暴虐天使”の異名を前に薄々覚悟していた中での特に怪我らしい怪我をしていないアツコの姿だ。
「みんな無事!?……っ!」
「それはアツコの方だろう!??」
走り込んできたアツコが目にしたのは血は止まっていても今だに意識のないミサキの姿。痛ましそうに目を伏せると同時にアツコは自分の持っていた回復式の花形ドローンを即時展開して威力をブーストする代わりに範囲をミサキ1人に縛る。大分無茶苦茶やったせいか反動が来たがまだ何とかなる。
癒えていくミサキとは裏腹にアツコの呼吸は荒く、顔も真っ青になっていく。明らかに無理をしていると誰がどう見ても分かる。脳天と腹と胸に気絶した後も弾丸を食らっているのだ。幾らロイヤルブラッドと言う高貴な血筋であろうとも仮死状態から戻った直後にこんな暴挙をして無事であるはずがない。
そんな無茶を前にサオリは歯噛みする。どちらも大切な存在。
待ちに待っていたミサキの回復とアツコの負担を天秤に掛けることは出来ない。
選択が迫られる。
どっちを取るのか。どちらが大切か。
その命令を下すのに“大人”は許されない。これは“彼女たちの命を預かったサオリ”だけが許される選択。どちらを切り捨て様ともきっと恨みは起きない。ただどちらを選んでもサオリの心に小さくない疵を作るのは明白だった。
「……アツコ」
震える口調でサオリは優先順位を決めたその瞬間だった
「救護ッッ!!!」
鋼の白衣の、天使が飛び込んできた。
青い髪と青い翼をたなびかせ飛び込んできたるは救護騎士団団長、蒼森ミネ。トリニティが誇る“壊して癒す団長”、“団長が壊して騎士団が癒す”とも言われるほど職務にある意味忠実なドレスコートを白衣に定めた救護の天使が現れた。
「急患二名!!発見しましたっ!!」
手に持ったライオットシールドを力のままに地面に突き刺し、アツコとミサキの壁にする。癒しの手を止めないアツコを気絶させまだ傷が完全に塞がっていないミサキを見て、通信機器で残りの団員に必要な数のストレッチャーやその他諸々の資材の要請をする。
「……頼む。アツコとミサキを……私はどうなろうと構わないから……っ!!」
「一体何を言っているんですか?」
その姿はサオリもよく知っている。怨敵であったはずのトリニティ“ヨハネ派”の事実上のリーダー。救護騎士団団長であることは分かっている。つまりは敵であった人。今では間違いなく救いの福音だが…それが呪いの音色にならないか。もうサオリも限界だった。
「敵、アリウス?それが何だと言うのです。」
だがそんなサオリの想像さえもミネは切り捨てる。
誰がどうであろうとも傷を負い、救護を必要としている人がいるのならば例えかつての怨敵であろうともミネはその手を止めることは無い。
「私は、私の任務を忠実に尽くす。それだけです。」
「…………っ!」
我はすべての毒あるもの、害あるものを絶ち、悪しき薬を用いることなく、また知りつつこれをすすめざるべし。……これはミネの誇りだ。例え殺したとしても治す。必ず病巣を排除する“誰か”の意思と言葉は間違いなく今のミネに引き継がれている。
そしてそれは誰かの“憧れ”の姿にもなり得る。
そう。今も、その気高き心に感動した誰かが。
「………何より、約束ですから」
バイタルを取り、点滴を開始する。忙しなく動かすミネの手と身体。呟かれた一言にどれほどの意味があるのか。これはきっとあの時、あの子の言葉を聞いていたから。
『でも、私の家族でもあったんだ……』
ぶっちゃけあのシスターフッドのリーダーが無体な態度を取らないとは到底信じ得ないと話を“偶然”耳にしていたのだ。これからトリニティが先生と聖園ミカ救出の為にアリウスに突入すると言うことでアリウスの裏切り者の少女に道の変化パターンを聞いた時、最後に彼女はこう呟いた。一度は銃を向けられた相手なのにその子を助けることを望んだ。
何かが変わるわけでは無い。
ただ、もう薄寒い夜の時間は終わろうとしている。
「「先生!!」」
多くのトリニティの生徒がアリウス自治区に突撃した。
それはただ人徳が有ったからだけでは無い。ここに至るまで多くの人が動いていた。先生やミカ救出の為に各所に頭を下げていたティーパーティーの2人。実務部隊として必死に統制していた正義実現委員会のメンバー。そしてこの場所を正確に表した古書を復元し、解析・解読する為に〈古書館の魔術師〉と〈才媛〉がシスターフッド共に動いていた。
そうやって繋いだ縁の星は、ようやく先生と繋がる。
現れたのは2人の姿。それはティーパーティーとして多くの人員と共に姿を現したのだった。
「お待たせしました先生。」
「うん…ここまでは想定通りだ。総員、作戦通りに」
「“ナギサにセイア!?”」
胸に手を当て一礼するナギサにしたり顔で笑うセイアは近くにいた正義実現委員会に命令を下す。限定的とは言え未来を見ることができるセイアは現状、この荒れ狂う暴風の理由もある程度は把握している。だからこそ今、この場に来た。
「先生。手短に話そう」
セイアは先生に告げる。
この場に私たちが来たことは置いておいて、それより先に先生にやって貰わなくてはならない事を。
「この暴風の原因は“実験にて暴走して狂ってしまったミハ”が原因だ」
「“ミハが!?”」
「……ええ。どうやらセイアさんが言うにはゲマトリアと呼ばれる集団がミハさんを扇動し、ミハさんの身体を使って実験を始めてしまった様です。」
ゲマトリア。その名前に聞き覚えしかない。
アビドスでもやろうとして失敗した事を今度はまた別の生徒で行ったと言う事。先生の琴線に触れるのは想像に難くなかった。
「そしてそれを止める為に今、ミカが孤軍奮闘している」
死ぬかもしれない。むしろ運命の車輪はそちらに動いているとセイアは告げる。
そして、それを覆せるのは運命に縛られていない先生だけであるとセイアは頼み込む。
「今この場でミカを救えなければミハは絶対に暴走が止まらない」
だから、頼む。と頭を下げるセイアを前に先生の腹は既に決まっていた。
そんなモノ、最初から決まっていた。生徒のための先生なら今もたった1人で戦っている生徒を見捨てられるはずがない。
「“大丈夫。だって私は先生なんだからね”」
此度の疾走は逃走のためではない。
そしてその手は────────
「“私の大切なお姫様に何してるの……!!”」
間違いなく、届いたのだ。
今回のステージギミック一覧。ちなみに負けイベです。
聖園ミハ=◼️◼️◼️・◼️◼️・◼️◼️◼️
レベル:1
HP:100000000×9999+
属性:ノーマル/通常装甲
特殊ギミック
・白◼️最も新◼️い◼️
全ての攻撃に対して非常に強い耐性を得る(99%カット)
状態異常無効
30秒毎にHPの210%分のシールドを生成する(45秒間)
・均衡の王冠
攻撃/防御属性の有利・不利を打ち消す
自身に対爆発・貫通・神秘属性に非常に強い特攻状態を付与
シールド、障害物貫通を自身に付与
・慈悲の知恵
対象の強化・防御バフを攻撃時、解除する(高確率)
フィールドに持続するダメージを解除する
・峻厳の理解
30秒毎にHPの55%分の回復を付与する
その回復量がHPを超える場合、超えた分だけ自身に攻撃力・会心ダメージ増加(乗算
)
EXスキル
・辟。髯仙?繝サ莉顔幡繧後@閾ウ鬮伜、ゥ
正体不明
聖園ミカ
lv.85
HP:32833
スキルレベル:8/8/8
特殊ギミック
・奮い立つ決意の意思
自身にガッツを付与する(HPが0になった時、一度だけ全回復)【解除不可】
エデン条約編第四章「祈り満ちる青春のためのキリエ」完読。
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