君は無邪気な夜の暴虐   作:ミカ推し

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続き。エデン条約編開始。



逆夢/序①

 

 

燃え盛る広場。悲鳴と怒号が入り混じるその場で悲鳴が鳴り止む。

 

「………どう、いう、ことかな?」

 

“とある罪”によって軟禁されていた筈のミカが脱走したという事でシャーレ・トリニティ連合の戦力が相手を上回り、これから攻勢に出ると言う所のはずだった。

 

瞬間、後ろからミカの胸を貫く無機質な銀色が全ての雑音を沈黙させる。

 

「ミハ」「“ミハ……っ!!”」「ミハさん……!」「うそ、でしょ……」

 

「気にすんな。大人しく倒れといてくれや。……なあ」

 

下手人は誰もが分かった。最近、復学したと言うことで“補習授業部”に居た彼女。

その姿は停学中よりもいっそう逞しくなって、まる別人と見違えるようだったがそれでも彼女の昔ながらの優しさは変わらないと“次期ティーパーティー”候補にまで名前があった彼女。

 

「おねえさま?」

 

瞬間的に振るったミカの拳。それにミハは逆らうことなく後ろに飛び上がる。

それを浮いたと認識したのか手の空いている少女たちがミハを制圧しようと銃の発砲を続ける。

 

「待って!」

 

「“けどミカ……!”」

 

「後は私に任せてよ⭐︎……久々の姉妹喧嘩みたいなもんだし!」

 

それに先生はまだやることあるでしょ?というミカの痩せ我慢に近い言葉と場を納めるように横に上げられた腕は、ミカ自身が好きではなかった“パテル分派のリーダー”のようで

 

「“…………っ!すぐ戻るよ!!”」

 

「おっけ〜⭐︎」

 

その声と共に先生とまだ戦える生徒たちは先生の後ろをついていく。

これからの戦いは死地であり、多くの敵が待ち構えているクライマックスだと知っているからこそ

 

「ミハの仲間たちはもうみんなこっちに居るけど?」

 

「アイツらが仲間とは思ったことねーよ。痩せ我慢」

 

立ってんのも辛いだろう?というミハの鼻で笑う声に無言で殴りかかる。

銃弾が身体を貫通しないほどにキヴォトスの生徒たちは頑丈だ。だと言うのにその頑丈が人一倍を誇る筈のミカがまるで豆腐にナイフを突き立てたようにミハの持っていた短剣?で刺し貫かれた。

 

「………っ!?」

 

「はっ……」

 

襲ってくる二撃目をいなしながらミカは考える。

 

(幾ら何でも……早すぎるでしょっ!!)

 

ミカは愛銃を振り回し、時には一マガジンを数秒で使い潰しながらどうにかミハに対応し続ける。だけど瞬間移動じみたミハの高速戦闘にミカは消耗をし続ける事しか出来ない。

 

「“隕石”最大出力─────!!」

 

ミカの掛け声と共に周囲を焦土にしながら落ちていく隕石。

ミカの持つ異能で、ここまで強くそして断続的には使ったことのないミカの奥義。

逃げも隠れも出来ない焼け野原で立っているのはミカだけ。後はミハとの一騎打ちなら勝てる………

 

「いない………?まさか………先生!?」

 

消耗させるだけ消耗させて、すでにミハは先生の後ろを追って行ったのではないか。

 

その考えが、一瞬の隙になるとは知らずに。

 

「………隙、見せたな?」

 

斜め後ろから迫るミハの異型の短刀。

それは寸分変わらずミカの首筋に刺さり、吹き出る血──────

 

「……………………………────────っっ!!」

 

ミカの最期の抵抗も許さず、ミハの短刀は冷静にミカの身体を袈裟斬りにして切り捨てる。

 

 

「………勘、鈍ったかな?」

 

後に残されたのは、脱力したミカの─────────

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

「あー………」

 

キヴォトスの一学園。トリニティ総合学園にメグミは1人、立っていた。

歩き慣れた筈のタイル。見慣れた筈のトリニティの生徒に“ねえ…あれ”だとか“やっぱりそうよね……”とか遠巻きに見られるのは意外と苦痛だった。

 

何故、メグミが遠巻きに見られるのか。それもそのはず。

トリニティを奔逸した時と比べて鍛えたミハの肉体は一回りも二回りも大きくなっており、記念にと残していた(いつか良い金で売れるかと)制服が入らずに作り直したのは良いものの、ボディラインを隠した形状にしたら特注となったのは苦い思い出だ。

 

まあ何と言うか、その頭ひとつ抜けた身長に見え隠れする筋肉。そしてボディラインを隠した影響で胸が強調される服となって非常に目のつき易い姿になってしまった。

 

「帰りてぇ……」

 

「メグミちゃーん!!」

 

そうして嘆くこと数分、ようやく“案内”がついたと安堵する。

そう案内とはただ1人。今も尚、交友があったヒフミである。

 

 

 

 

 

〈数日前〉

 

とある“お得意様”の依頼によりトリニティに潜入しろとの事だった。

何を隠そう。一度はトリニティに席を置いていたメグミが学籍を復活させようと頼ったのはヒフミだった。……まあメグミに他に頼れるトリニティの知り合いは居なかったから。という理由があるからだが。

 

「でトリニティに戻ろうかと思うんだ、が……」

 

『本当ですか!!??』

 

喜ばしそうに耳元で騒ぐヒフミから耳を離して舌を出して笑う。

これ、手段間違えた気がするなぁ…と

 

『……あ。でも復帰するとなると……』

 

「ヒフミでも難しいか?」

 

いえ…そう言うわけでもなく。

ヒフミの解説によればトリニティの生徒会である【ティーパーティー】には今、ナギサとミカが座っているらしい。

 

「あれ?ティーパーティって……3人じゃなかったか?」

 

『セイア様は……療養中らしいです』

 

「セイア……ああ。百合園か」

 

となると頼れるのは桐藤ぐらいだろうか。とメグミは冷静に考えを巡らせる。

居ないセイアの事は考えたところで意味のない話だし聖園は……あれは“上”に立てるような奴じゃないだろう。何でその座に居るのか甚だ疑問だ。

 

「まあ学籍残ってねぇだろうから、その辺りも」

 

『え?』

 

「ん?」

 

『残ってますよ。学籍……というか聖園ミハは停学って事になってますが……』

 

「………………へえ」

 

残っているのならちょうど良い。とメグミは凄惨に笑う。

どちらにしろこの復帰して事を起こした後、“トリニティには居られなくなる事”は確定しているのだから。

 

「んじゃ。復帰できるか桐藤先輩に聞いといてくれや」

 

『ナギサ様にですか?………良いですけど、名前とか大丈夫なんですか?』

 

「あ?……まあ良いだろ。別に名前なんて記号に過ぎねぇし」

 

 

 

 

 

なんて電話がありヒフミの指定の日時にメグミは準備を終えて、ここトリニティの校門前に立っていると言う事だった。というかこれマジで依頼じゃなかったからここに立ってないぞ(byメグミ)

 

「待たせちゃいまし……ってうわぁ!!」

 

「あぶねえ。足元キチンと見ろ。ヒフミ」

 

転けかけたヒフミを真正面から引き寄せ抱きつける。

ちょうど、胸の合間にヒフミの頭が来る形となってしまいヒフミはその暴力的とも言えるほどの柔らかさと暖かさに顔を埋めることになってしまった。

 

「………………………きゅう………」

 

「どうした?………ヒフミ?…ヒフミ!?」

 

さもありなん。もう一度言うが、メグミの胸はHカップレベルの豊満な母性の象徴を持っている。しかもそれだけではなく鍛えられている肉体の上のこれだ。柔らかさだけでなくほどよい反発力とハリがあるそのメグミの胸は同性であろうとも一度は触ってみたいほど素晴らしい代物となっている。

そしてそんな胸に不可抗力とは言え、飛び込んでしまったヒフミが目を回すというのもまあ理解できる話だろう。……ちなみに後にこの事件をヒフミは“天国を見た”などと清々しい笑みで語ったという。

 

 

〈閑話休題〉

 

 

ようやく落ち着きを取り戻したヒフミの案内の元でティーパーティー御用達のガーデンに出向くことになった。話には聞いていたが現在、三つに分かれている分派のリーダーが周期ごとに生徒会長を務めて、他2人が補助だったか?

 

「ナギサ様…お連れしました」

 

『入ってください』

 

聞き慣れた声に顔を顰めながら、ヒフミが扉を開ける。

その先は太陽光を十分に取り入れた部屋でありながらこのトリニティのトップが居る一筋縄では行かない場所。メグミの優れた聴覚は部屋に“2人”いる事を察知していた。

 

「案内ありがとうございます。ヒフミさん……それでいて久しぶりですね。ミハさん」

 

「私は…失礼しますね。」

 

積もる話もあるでしょうし。とヒフミが出ていく。

おいおい置いていくのかよ。とも考えたがまあ別に何の問題もない話だ。桐藤の横で同じ顔した長髪は感情を感じさせない笑みで笑っていようともだ。

 

「……………手短に。まずはお久しぶりです。元気してましたか?」

 

「桐藤様も変わらず」

 

スカートをひとつまみの後、カーテシー。これがトリニティでの目上の礼儀だった筈。意外と身体に叩き込まれた動作は覚えているものだなとメグミは内心驚きながらも言葉を繋げる。

 

「………いえ。それで復学という事ですね」

 

「はい」

 

一度目を瞑った後、桐藤の変わらない金色の眼差し。

昔から何も変わっていない筈の空気なのに。何処かよそよそしいと感じるのはナギサの本心だろうか。

 

「……問題ありませんが、ミハさんには遅れている授業分のためにとある部活に入ってもらいます」

 

「はい」

 

それも想像できた事だとメグミは心を殺したようにyesだけの反応を復唱する。

もっと、もっと何かあるだろう。何か言えるだろう。それが紛れもないナギサの本心だと言うのにその地位が。その場所が今のミハと妨げられているようで。

 

「部活動の名前は“補習授業部”……部長はヒフミさんです」

 

「……………わかりました」

 

あのヒフミがそんな呼んで字の如くの補習に参加するほど成績が悪かっただろうか。……いや。そんな事今考える必要はないかと一拍遅れてメグミ…ミハは頭を下げる。

 

「よろしい。教室等はヒフミさんを頼ってください」

 

「はい。お心遣いに痛み入ります」

 

もう一度スカートをひとつまみの後、カーテシー。

その後、話は終わったとメグミ…ミハはもう一度一礼をして部屋を出て行こうとドアノブに手を触れた瞬間だった。後ろから声が聞こえたのは。

 

 

「…………ちょっと、待ちなよ」

 

 

 

 

 






双子、だとか姉妹だとか。一人っ子だと意外と憧れる物なんですよね。
その子は自分と似ているのか。それとも全然違う道を歩んでいるのか。


次回。【煮豆燃萁しゃとうねんき

あはは。身近にいる人ほど意外と見えてなかったりする事、あるかもしてませんね。



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