君は無邪気な夜の暴虐   作:ミカ推し

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たったひとつの冴えたる方法

 

 

『それでは……今からの話をしましょうか』

 

まあ勿論そんな過去の話は置いといて大事なのは今からであると相変わらず少女たちの衝撃なんて何のそのだと言わんばかりに、巻きにかかる黒服に流石の先生もキレたのはここだけの話。

 

「“黒服さぁ……”」

 

『くっくっく……いえ。流石に先を急ぎすぎましたね』

 

だがそんな先生の反応さえも面白いと笑う黒服を置いて、瀕死になっているナギサやセイアの背中を摩る。心が折れかけているのは勿論ナギサやセイアだけでなく、この場にいる殆ど全ての生徒だがそれもそうだろう。キヴォトスにおいて“ヘイローを砕かれる”…引いて死は最も忌むべき現象。何しろどれだけ敵対しあっていても相手が気絶すればその時点で攻撃をやめるぐらいにはお利口だからだ。

 

そんな中、自ら死を選んで“誰か”の殻を被った誰よりも人懐っこかった少女がそう成り果てたとなれば半生可な精神では許容限界を迎えてしまう。というよりミハがまだメグミとして活動していた頃から知っているヒフミはもう既に不安定の狂気に陥っている。

 

『ですが悔いる時間があるほど時間が残されているわけではありません』

 

黒服は変わらぬ口調で最悪の未来を語る。

曰く、神となって暴走しているミハを止められるのは多く見積もっても後数時間。その後、どう楽観的に見ても出力を大幅に強化したミハはその足でトリニティを完全に破壊する。アリウスからトリニティに向かい全てを灰燼に帰するまでデカルコマニーと黒服の計算によれば二時間も掛からないという計算結果が出た。

 

『考えてみれば想像よりも簡単です。聖園ミハにとってトリニティとは自身がこうなってしまった原因なのですから』

 

ならば何故ミハがトリニティを破壊するのか。それを先生が問うよりも先に黒服が断定する。……簡単に言えば復讐だろう。どうであれトリニティが善き生徒であった彼女を歪めて、殺したのが原因なのは明白だ。それが今に繋がっていると言えどそれは結果論に過ぎないのだから。

 

『トリニティを破壊したその後、間違いなくキヴォトス全土を滅ぼすでしょう』

 

まあ本来ならこの“ミハが〈崇高〉に至る儀式”だけで少なくともアリウスとトリニティとゲヘナは滅びるだろうという計算結果が出ていた様な気がするがそれはそれ。今は、あの暴走する神を止めなくてはキヴォトスに明日は無いと黒服たち、ゲマトリアは警告する。

 

「“………止める術はあるんだろう?”」

 

『ええ。勿論。』

 

だがそんな悲願的な黒服の報告とは裏腹に先生は現状を覆す術を既にゲマトリアは作り終わっているだろうと問う。何故かは分からない。強いて言うのなら大人としての覚悟だろうか。〈姫〉と呼んだり“娘分”と慈しんでるのをそのまま見ている程腐っていないだろうと言う先生の見立てだろうか。そんな先生の問いを待っていたとばかりに黒服が黒い球の向こうで笑った気がした。

 

『ですが…それはまあ、なんとも難題と言えるでしょう』

 

笑いつつも歯切れの悪い黒服の口籠る声。

それもその筈。今のミハに碌なダメージが入るとは考えにくい。直接ミハの攻撃を受けたことのある先生だから言えることだが、あの攻撃は下手に受けてしまえば一撃で終わる。それもその攻撃の威力は時間が経てば経つほど上がっていくだろう。しかもその上で、殆ど無限とも言える様なミハのエネルギー。一体こんな某ゲーム開発部が開発したTSCのボスよりも無理ゲーな上のクソゲーだ。設定上に語られるだけのボスが何故か本編に登場している様なモノだ。台パン&コントローラー投げ捨てが許される。

 

『聖園ミハを神にしている原因は“とある術式”が原因です』

 

『………ここから先は私が語りましょう』

 

勿体ぶった黒服の声に被せるように空中に暗幕が降りた。そこから聞こえる声はアリウスたちにとって最も聴き慣れた大人の声。そう。その声はベアトリーチェ。先生の、生徒の敵である彼女はこのアリウスという箱庭の創造者にして支配者。……まあ生きているとは思っていたがと先生は密かにため息を吐いた。

 

『先ほどぶりですね。先生。』

 

「“ああ久しぶりだね。ベアトリーチェ”」

 

苦虫を百匹ぐらい噛み砕いた様な先生の顔に、恐れを隠せず顔面蒼白になっているアリウスの姿を見てトリニティの面々も暗幕から聞こえる女の声がどういう存在なのか警戒心で見守る。

 

『長々と気取った口上や恨み言を除いて手短に』

 

「“………そうしようか”」

 

ベアトリーチェにとって生徒とは所詮“搾取するモノ”である事には変わらない。

だから勿論、裏切られたアリウススクワッドに関しては“先生が上手くたらしこんだな”という感想で終わるし(別に幾らでも恨言は出てくるが)トリニティに至ってはミハをこうして生徒を超越する存在にまで至らせてくれた事に“だけ”は感謝してやっても良いと思えるぐらいには生徒を見下していた。

 

今、こうしてベアトリーチェが冷静に話しているのは単に“完全に変わってしまったミハ”を“変わらない自分の妹”として最後まで護ろうとしたミカの心意気と、ミハを助けるにはどうしても先生の力が要るからである。

 

『まず、ミハを神に至らせた術式。それはアリウス全土に残る方陣を消せば一時的に神を弱らせることが出来るでしょう。』

 

聖園ミハを〈崇高〉に至らせる儀式はアリウス全土に敷かれた魔法陣とそれを守護する〈戒律の守護者〉だったモノ。セフィロトの樹を模して作られたそれはミハを〈崇高〉たらしめた基盤である。おおよそ無限のエネルギーがミハに供給されているのならその大元を消せば、あの馬鹿げた出力の攻撃や防御は“一時的に”出来なくなる。……まあ間違いなくそう遅くない内に、元には戻るだろうが。

 

だが、それを行うには1つ問題がある。

 

『ですがかつて〈戒律の守護者〉だったあの複製は今やミハの〈崇高〉に感化され、〈セフィロトの守護者〉となった存在が立ち阻みます。』

 

そう。〈戒律の守護者〉というのはあくまでマエストロが複製した亡霊に過ぎなかったがミハの〈崇高〉に感化された、つまりはデカグラマトンの様に10体の預言者…いや。神となったミハの使徒にして司徒がセフィラの守護天使として先生たちに立ち憚るとベアトリーチェは言う。

 

「“つまるところ……”」

 

『ええ。セフィラの崩壊なくして神を止めることは不可能です』

 

生徒の力を借りて各セフィラの〈セフィロトの守護者〉を倒していく必要があると言うことだ。出来るかどうか先生が生徒たちの顔を見ると、全員が頷いて戦えると肯定する。

 

『……どうやらそちらの腹は決まった様ですね』

 

「“今回ばかりは協力戦線を築こう”」

 

『ええ。よろしくてよ』

 

どちらにしろ。ミハを止めなくてはトリニティ…ひいてはキヴォトスに未来はない。それが分かっているからこそ少女たちは動き出す。残された時間はあまりにも少ない。……だがそれは決して敗北の宣言ではない。

 

今回ばかりは背中を預け合う事になるだろうと密かに予測と想像をしているベアトリーチェと先生は早速作戦のすり合わせを行う。暗幕にまるでプロジェクターを搭載したかの様な半透明のアリウスの地図には計十ヶ所の光る丸が浮かび上がっている。……これがセフィラの場所にして〈セフィロトの守護者たち〉が守る御所。

 

「先生。この場に集まったティーパーティ、正義実現委員会、救護騎士団、シスターフッドそして補習授業部。その全ての指揮をお任せいたします。……どうぞ、その腕を私たちにお貸しください」

 

準備が整った生徒たち…そのリーダーであるナギサが先生に頭を下げる。

ナギサを含むティーパーティ。ツルギ、ハスミ両名を兼ね揃えた正義実現委員会。ミネを代表とした救護騎士団。サクラコをリーダーとしたシスターフッド、そして才媛を含む寄せ集めの補習授業部。この場に集った全生徒、おおよそ大隊とも言える数の生徒が先生に従う。

 

連邦生徒会直属のシャーレの先生を含めた謎の組織、ゲマトリアなどの大人を含めた……未曾有にして前人未到の神を斃す作戦が始まった。

 

 



 

 

『こちら正義実現委員会、位置に付きました』

 

『こちらシスターフッド、同じく位置に付きました』

 

『こちらティーパーティ。いつでもどうぞ』

 

まずセフィラの討伐は三つの隊に分かれて三方向同時攻略を以って行う。

伝承をなぞるのであればセフィロトの樹は3つの柱に分けられる。ならばその3つに相対し、確実にそして必ず一個ずつセフィラを落としていく。感化されただけの〈セフィロトの守護者たち〉が神ミハから直接的な力の供給が今はないとは言え、これから無いとは言えない。つまり速攻、電撃戦で沈めていくしかない。

 

「“それでは……始めようか”」

 

『『『了解』』』

 

 

運命の車輪は回る。

───────命運は少女たちの手に託された。

 

 

 






[〈セフィロトの守護者たち〉攻略戦]

形式:総力戦
使用可能キャラ:トリニティのみ(聖園ミカ、聖園ミハ、補習授業部、放課後スイーツ部、トリニティ自警団、図書委員会のキャラは使用不可能)
尚、自軍に使用キャラを所持していなくても無料ゲストで使用可能


敵:セフィロトの守護者たち
BOSS:セフィロトの使徒
姿としては〈戒律の守護者たち〉の服装の白と黒が反転している。
BOSSは聖女バルバラの姿に白黒反転の後、白色が各セフィラに対応する色に染まっている。

・属性
第3、5、8セフィラは軽装備/ノーマル
第1、6、9、10セフィラは重装甲/ノーマル
第2、4、7セフィラは神秘装甲/ノーマル
尚、ゲーム上ではどこから倒しても問題はない。

・クリア条件
第1、2、3のセフィラの討伐又は5体以上、セフィロトの守護者たちの討伐で次のストーリーが解放される。

・ドロップアイテム
セフィロトの使徒を一体倒す事に青輝石×150、神名のカケラ×20、各学校の最上級素材(ランダムドロップ)がドロップする。




特殊ギミック

・ヒエロニムスの祝福
コスト回復力を大幅に増大させる

・グレゴリオの讃歌
攻撃力を大幅に強化する


ぶっちゃけこうしてゲーム式の設定を考えている時の方が面白かったとは言えない……
あ。感想、評価お待ちしてます。次回、『其は神を撃ち落とす──』
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