君は無邪気な夜の暴虐   作:ミカ推し

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城狐社鼠

 

 

補習授業部との初会合を無事、特に何かいざこざが発生することも無く終えたミハはいつもの様に一晩泊めてくれそうな生徒を探しにトリニティ地区から出ようと考えた。おそらく何処まで話が漏れているか知らないが少なくとも現段階でトリニティ生徒にちょっかい掛けて火遊びするぐらいなら他校の生徒引っ掛けた方が安全で合理的だ。

 

(今日はゲヘナかなー……いやそれもなぁ……)

 

頭の中で考えを回しながらその肝心の何処の生徒を引っ掛けるか考え始めた。

ミハの勘だがおそらく今日…しばらくはゲヘナ生を引っ掛けても良いが、もしそれを見つかったとなると危険どころではない。何故なら昔からゲヘナを嫌いに嫌っている人物を1人、2人…3人とミハは知っているのだから。

 

(ならミレニアムか?……うーん)

 

そうこう考えながらミハの足は多くの色んな学校の生徒が集まりやすい連邦生徒会直下のD.U.地区に辿り着いた。ここは少し前めんどくさい経緯で顔を見合わせた“シャーレ”の先生だったり、ワルキューレやらSRTが目を光らせている場所だ。あまり長居したくないというのが本音ではあるが一晩泊まるためなら致し方なし。

 

ちなみに家に帰る(ミカが待っている)という選択はない物とする。

 

 

そう、色々考えている内に、ミハは後ろを付けている4つの影に気がついた。

明確にミハだけを追っている存在。本来なら気がつく事の無いようなそんな隠密であろうとも五感が異常に成長したフィジカルギフテッドであるミハには隠れていないのも同然だった。

 

とは言うものの面倒事には変わりはない。依頼ならばスマホに連絡が入るし、それこそ会いに来る人間の姿をしてない“大人”は空気の歪みと共に転移してくる。

そうなると今後ろを尾けている影はミハが【暴虐天使】である事に気がつき、それを倒して名声を上げようとするバカか、純粋にトリニティを狙ったアホかの二択と言う事になる。

 

「………おい。出てこい。」

 

「流石だな……」

 

そろそろ泊まる家に目星も付けたいと考えたミハは手っ取り早く路地裏に呼び出しお話の後に片付ける事にした。…生憎とお話で終わるような輩であれば“お片付け”しないで済むが果たして。

 

そう考え、路地裏の人気の少ないところで追って来た4人に声をかける。

そうして出てくるのは黒マスクとガスマスクと耳ピアスと狙撃銃。全員が全員、顔が分からない…或いは分かりにくいように細工した4人組。随分と鍛えられている身と言い、いつでも連携ができるように動いているその姿は“普通”の学生でも“不良”のスケバンとも違う。どちらかと言えばSRTに近い連中の様な気がした。

 

「それで?…お前らは誰だ?」

 

「ああ。……私たちはアリウススクワッド。マダムの命により協力を」

 

アリウス。そしてマダムとなるとベアトリーチェの事だろうか。

ベアトリーチェの依頼によるのなら今回は特別、協力者を付けると言う話だったがこいつらだろうか?

 

「ああ。…少し待て。」

 

「?ああ」

 

明確な依頼とそれに等しい報酬があればミハは基本的にどう言う依頼であれ動くが金払いを渋る奴や裏切る奴にはその身をもって【暴虐天使】としての異名を知る事になる。

 

その点、“ゲマトリア”という人の姿をしてない大人はミハのお得意様だ。

情報とか武器…或いは名声。ミハの今までを支えていると言うのであるならミハの、ある意味では恩人と言えるだろう。今回のベアトリーチェの件だってそうだ。今まで何度か依頼があったが相場の数倍は出すベアトリーチェの太っ腹をミハは気に入っている。

 

「あーあー。ベアトリーチェか?」

 

『はぁ……誰かと思えば貴方ですか聖園ミハ』

 

電話の先。ミハが電話を掛けた相手はベアトリーチェ。今は失われたアリウスという学園の生徒会長をしてるらしいという大人で今回の依頼者。

 

「アリウススクワッドってあんたの使い?」

 

『そうですね。言ってませんでしたか?』

 

「ここで聞いたから大丈夫だ。じゃ。」

 

問答無用で電話を切るミハを他所にベアトリーチェは慌てたように騒いでいた様だがミハにとって聞きたい事が聞けたからもういいかの精神だ。

 

ここまでで勘付いた者もいるかも知れないがベアトリーチェにとってもミハはお得意様だ。金払いさえ気前よくしておけば100点…いや120点以上の成果を叩き出すミハのその姿は非常に好感が持てた。依頼者の情報秘匿という点に於いてもミハはベアトリーチェにとって例えアリウスを無に還したとしてもミハからの絶対の忠誠が手に入るというのなら安いものだと考えている程だ。

今回の電話もミハと分かった時点でベアトリーチェは腰を下ろして聞こうとするほどの価値があると考えていた。まあそれがまさか確認だけで問答無用で切られるとは。まあそれもミハの美点かとベアトリーチェは気前よく笑うのだった。

 

 

まあそんなベアトリーチェは放っておき、電話を切ったミハはようやく接触してきたアリウススクワッドが協力者である事を知った。

 

「………貴様はマダムと連絡を取り合えるのか?」

 

「ん?……ああ。まあな。お得意様だよ」

 

「……………………………そうか」

 

不思議にも沈黙するアリウススクワッドにミハは少し考えたがすぐに忘れた。

そして、何故アリウスが今、接触してきたのかと言う話だった。

 

「どちらにせよ。一度は顔を合わせておいた方が良いだろう?」

 

「まあそうだな。………好きに動けよ。オレは1人の方が動きやすい」

 

「ああ。十分に理解しているとも。【暴虐天使】」

 

アリウススクワッドもミハも互いにこの場で騒ぎを起こすほど蛮族ではない。

とは言っても心を開くほど親しくなる気はないし、あくまで依頼者/マダムの命令によるものでしかない事を両者共々気がついている。

 

「まあ。情報交換ぐらいにしとくか」

 

「それが良いだろう……我々はまず───」

 

アリウススクワッドはまずトリニティに潜入する事に成功。

そして第一にもう1人の協力者…曰く、トリニティの裏切り者による“百合園セイアの襲撃”に成功。

 

「……マジか。百合園死んだのか」

 

「ああ。“同胞”によればヘイローの破壊に成功したとの事だ」

 

「そうか」

 

ミハの脳内で桐藤たちの慌てようと言い聖園のあの言動と言い、ようやく頭の中で繋がったらしい。確かにティーパーティー所属のサンクトゥス分派のリーダーが暗殺されたとなれば隠しきれない恐慌が出てもおかしくはない。

 

「……というかよく上手くいったな」

 

「うん?……ああ。手引きと言い、そうだな」

 

「……………………」

 

ミハの無意識のうちに口から漏れ出た賞賛が心からのモノだと分かったアリウスは心良いモノになった。誰だって賞賛には心良くなるものだが特にそう言うものが無かったアリウスにとってはマダムが協力を依頼するほどの強者にその腕を認められると言う事がどれほどの嬉しさなのか。

 

勿論そんなアリウススクワッドの内心とは打って変わって、ミハの内心は“本当にセイアが暗殺されたのかどうか”という所に焦点は移っていた。“あの”百合園セイアが暗殺される?ただで暗殺されきるような奴だったか?という疑問に変わるが。

 

(まあ…その程度だったのだろうな)

 

「あい分かった………それじゃ本番までどうしていたらいい?」

 

「その辺りは……すまない。私たちの干渉できる余地はない」

 

というと。あくまでミハとアリウスの間に明確な上下関係は無い。

ミハはアリウス…ではなくベアトリーチェに雇われているし、アリウススクワッドもベアトリーチェの命令で動いている。つまりどちらも等しくベアトリーチェの下にいるということ。

 

「確かにな。……ならベアトリーチェからの追加を待つか」

 

「ああ。マダムの指令まで我々も潜伏を維持する」

 

つまりは両者不干渉で取り決めは終わった。互いにヘマをするとは考えられないがそれでも接触をすればするほど人の目に付く可能性が高くなる。特にミハはトリニティに“潜入”という形で復学しているという事であるから下手にアリウスと共にいるところを見られる危険性はよく知っている。

 

「……それじゃあ。まあよろしくやっていこうや」

 

「胸を借りる。【暴虐天使】」

 

互いに言葉を吐き合い、姿を消していく。ミハは気配を極限まで消してアリウスはそのまま路地裏の奥に立ち去っていき、先ほどまで声がしていたところにはもはや鼠一匹も残っていなかった。

 

 

「…………あっ」

 

「もうこの時間、碌に居ねえじゃん」

 

泊めてくれそうな奴がいない夜の街並みをミハはガックしと首を下ろしながら立ち去って行くのだった。

 

 

 






いやぁ…まさかトリニティから手紙が来るだなんてねぇ……
しかもその内容がとある部活の監督をしてほしいから説明するだなんてご丁寧な

次回【呉越同舟】

ファウスト…じゃ無かった。…ヒフミ元気にしているかな〜?


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