蛇神様IN刃牙ワールド   作:揚げ物・鉄火

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久し振りの投稿です。
約半年ぶり…次の投稿はいつになる事やら

自分はジャックの『良いレバーだぁ~』までしか刃牙らへんを知らないので読み返そうかなと思っています。
それと最近になって『ゆうえんち』を読み始めました。一瞬でハマりました。


強者の権利(ちょっとした過去のおまけ付き)

「い、いきなりジャック・ハンマーって…お主も中々に贅沢じゃのう」

「贅沢?君も贅沢だと思うか?強き人よ」

徳川の言葉に蛇神が少しだけ首を傾げた。

 

「……範馬勇次郎()を味わい、不肖の倅(範馬刃牙)を喰らい。そして今度はジャック・ハンマーをも喰らおうとしている」

「父と子、範馬を三人喰らおうとして贅沢じゃない?これが贅沢じゃなければ何だって言うんだ?」

「ふむ…」

勇次郎の言葉に少しだけ口を閉ざしてから湯呑を手に答える。

 

「権利…かな」

「権利だと?」

思わぬ返答に勇次郎が聞き返した。

 

 

「そう。強者としての権利」

「闘う相手を選択(えら)ぶ権利」

「私は一人しかおらず、何人もの武術家共が闘おうと躍起になっている」

そう言って茶を啜る。

 

「…故に私には相手を選ぶ権利がある。見たこともないような相手と思う存分()り合えるのなら、相手は断る事は無いだろう」

「しかし、私は幾らでも断ることが出来る。無論断る気は無いが…」

「挑みたいのであれば好きに掛かって来るが良い。ただ、誰を相手にするかを決めるのは私だがな?」

自己の権利を説明し終えた蛇神が湯呑を置き天を仰ぐ。

 

「今から三世紀ほど前の事だ…」

「さ、三世紀、って幾つじゃお主!?」

「あれは、私が中国を旅している最中に路銀が尽きて頭を抱えていた時の事だ」

突如始まった蛇神の回想に徳川がツッコミ、勇次郎が睨み付け諫める。

そんな二人のやり取りを気にすることも無く蛇神の独白が続く。

 

「近くで武術大会が開かれ優勝者には莫大な富が与えられると聞いて、いの一番に参加したんだ。なんか賞金以外にも武術家として最高の名誉だとか、中国拳法界に於ける最高の称号…えっと、確か………海皇?の称号とやらも貰えたらしいんだが、そっちは興味無かった。称号で腹は膨れないからな」

「とまあ、すぐに参加しようとしたがな。女だからとか、海王じゃないとか、資格がどうのこうの言って来たからそこら辺の参加者を倒して参加枠を勝ち取って鳴り物入りで参戦したんだ」

「当然、快く迎えてくれるわけも無く、部外者()を排除すべく11対1の勝ち抜き戦が始まった。全員が敵視する中での第一試合…開始二秒、上段回し蹴り一発で決着」

そこまで聞いた時点で勇次郎が笑みを浮かべ髪を逆立たせる。

 

思わぬ強敵(蛇神)から聞いた思わぬ称号(海皇)

相手の年齢(とし)も性別も関係無い。もしもこの話が本当なら、目の前の相手は過去に出会った誰とも違う途轍もない強者の可能性があるのだ。

 

そんな勇次郎の反応を知ってか知らずか蛇神の話は続く。

 

「第二試合、正拳一発。第三試合、崩拳(中段突き)。第四試合、飛び膝蹴り。第五試合、二起脚(二段蹴り)。第六試合、貼山靠(ティエ・シャン・カオ)(鉄山靠)。第七試合、寸勁。第八試合、山突き。第九試合、虎倒崩山。第十試合、胸部への貫手。第十一試合、中段三発と肘打ち下ろし…」

「一人十秒だ」

全試合の決着の一撃を淡々と語り終え、全てを諦観した表現(かお)で呟く。

 

 

「一人十秒で全員を倒した。十一人抜きを成した。海王の称号を持つ武術家を十一人連続で倒し、中国拳法を用い、途中から興行も考えて派手に勝負を決めた。しかも一切の疲労見られない強者を前に大会運営側は苦渋の決断を下した」

 

私が海皇に成った(・・・・・・・・)

そこまで言った所で勇次郎の手に収まっていた湯呑が圧力に耐えかねて砕けた。

 

砕けた湯呑の破片が勇次郎の皮膚を貫く事無く床に散らばり中身の熱い茶が脚に掛かるが毛ほども気にしていない。

蛇神の口から飛び出た有り得ない一言。

 

 

私が海皇に成った

 

 

現状、世界にたった一人しかいない海皇の称号を持つ者。

郭海皇。

 

その郭海皇とは別に目の前に現れたもう一人の海皇の称号を持つ者。

先程数分だけではあるが肌を合わせただけで理解した。武術の厚み、そして純度がまるで違う。

その厚みと純度に説得力を持たせるに充分過ぎる理由。

 

「フフッ」

海皇の称号を持つ者が目の前に座している事実に思わず笑みがこぼれる。

話を聞けば聞くほど期待感が込み上がって来る。膝を掴む手に力が籠もる。

 

だが、そんな勇次郎の反応を当然のように無視しながら蛇神が話を続ける。

 

「今まで数多の相手と闘って来た。総合格闘技では女子無差別級王者になり、他の格闘団体でも何の苦労も無く王者に成り…『永劫王者』、表格闘技界に於ける殿堂入りとして実質的な追放宣言をされた」

「裏社会に転身しても変わらなかった。当時の裏女子格闘技最大手団体三つに同時に所属し、各団体の最強闘技者、絶対王者、無敗の帝王を一分以内に倒した。存在するだけで勝利が確定するような存在に三団体全てがほぼ同時に私を『永世王者』として殿堂入りにして、また追放した」

 

 

「裏の女子格闘技界からも追放されてから一年程経ったある日、昔馴染みから連絡が来た。『男女混合裏格闘技界最強決定戦』が開催される、とな…すぐに参加を申し込み、表からも裏からも無数の強者たちが集まる程の大規模大会。予選から決勝戦までの期間、約二週間。ルール無用、武器の使用以外何でもありの大会。もちろん嬉々として参加したさ、少しは楽しめるって思いながらな。そして二週間後…」

己の過去を語っていた蛇神が湯呑の中身を飲み干し、軽く息を吐く。

 

 

「また王者に成っていた…」

「ふぅ…………………」

「…飽いた」

仲居に新しく湯呑に注がれた茶の水面を見ながら小さく呟く。

 

「王座に飽きた。玉座に飽きた。優勝旗に優勝杯に優勝トロフィーに飽きた。最強の座に、全冠王者に、帝王の椅子に、永世王者の永劫王者の、追放する為だけにわざわざ創られる称号の全てに飽きた」

「故に、だ。徳川の爺さん」

「儂!?」

一息で全て言い切った蛇神が徳川に視線を向ける。

その何かを期待しているような視線を向けられた徳川が一瞬驚くがすぐに持ち直す。

 

 

「故に私はお主に期待している。お主の闘技者達なら少しは楽しませてくれると…もう二度とそれらしい理由を着けて私を追放したりしないと、な?」

「私は強者として誰の挑戦でも受けるつもりでいる。だが誰も来ないのであれば、私から先に選ばせて貰う」

「どうだい?徳川の爺さん。これでもまで贅沢な選択だと思うか?」

「……ッッ!!」

僅かに口角を上げながら問う蛇神の姿に徳川は押し黙る。

 

闘う理由がまるで違う。

己の強さを誇示する為でも、面子を守る為でも、背負い込んだ物を守る為でも何でもない。

ただただ、飽いているから…強者である故の苦痛。

 

圧倒的強者にしか分からない、対等に渡り合える相手がもはや自分しか居ない。その領域にまで達してしまったが故の苦痛。

その苦痛を和らげるために強者との闘いを望んでいる。

徳川三成が過去幾度となく夢にまで見た動機を持つ存在が今目の前に座っている。これ以上の喜びは無かった。

 

 

「……」

一方の勇次郎も空間を歪ませ、屋敷全体を震わせる程の闘気を放ちながら心の内で歓喜する。同類に出会えた事に…

 

強者故の苦痛。強さの頂点(頂き)に立ってしまったが故の苦痛。

自分の後ろには無数の屍が転がり、自分の前には道は無い。

それでも進み続けるしかない。進み続ける事でいつしかこの苦痛を和らげることが出来ると信じて…

 

そして遂に出会えた。

道なき道を歩み付けて遂に出会えた好敵手を前に、もはや零れ落ちる笑みを、歓喜に震える肉体(からだ)を、昂る感情(気持ち)を抑える事が…否、抑えようともしなかった。

範馬勇次郎(地上最強の生物)が、己の全身全霊を掛けて楽しめる相手を前に無邪気な子供のような気持ちになった。

 

 

「だったらさ…」

その気持ちの昂りを部屋の外から一声に遮られた。

 

「俺が一番に立候補していいかい?今すぐにでも」

「ば、刃牙ぃ!!?」

「刃牙ッ!?」

「…?」

部屋の外、障子に手を掛けながら聞いてくる刃牙に対して全員が一斉に振り向いた。

池から這い上がったばかりなのか髪が濡れており、その身に着けている服からは水滴が滴り落ちている。

しかし、その目線は自分を見ながら首を傾げている蛇神を鋭く睨み付けている。

 

 

「………」

「……………」スズッ

「お主…」

数瞬の沈黙の後、茶を啜った蛇神が軽く口を開く。

 

「武術家としてこの上ない恥の上塗りをする気か?」

「え?」

蛇神から投げ掛けられた質問に困惑した様子で刃牙が反応した。

 

「せっかく何時かまた挑戦するチャンスをくれてやったのに、それを無碍にし挙句の果てに一日で二度の敗北を味わう気なのか?と聞いているのだ」

「お主は確かに強いだろうが、お主レベルなら過去に何人も出会って来た。かつて戦った海王達もその(ことごと)くが『俺がお前を倒す』だとか『あいつの分も』とか『俺の力を示す為の』何とかって、どいつもこいつも似たような前口上を口にしたは良いが、長くて15秒で倒されてるからな…お前には正直あまり期待していないんだ。悪く思うなよ?」

「……」

「刃牙…」

「………」フンッ!

蛇神の言葉に刃牙が押し黙る。

それを見た徳川が心配そうな眼差しを送り、勇次郎が不機嫌そうに軽く鼻を鳴らした。

 

「さて、用も済んだし帰らせて貰う。試合の日程はホテルのフロントにでも伝えてくれ。シティホテル.de lujoに泊まっているからな」

「それでは失礼する」

湯呑の茶を飲み干した蛇神が立ち上がり一枚の紙きれを渡し、仲居に案内されながら徳川邸を後にした。

 

「俺も帰らせて貰うぜ。徳川」

「………フンッ」

先に帰った蛇神と同じように用が済んだ勇次郎も立ち上がり、刃牙を一目見てからまるで『期待外れだ』でも宣言するように鼻を鳴らしてから帰路に着いた。

 

「クッ…グクッ……」ポタ・・・ポタ

「刃牙…!」

強者二人の自分に対する評価をまざまざと見せ付けられた刃牙は、血が滴る程に拳を握り締めて屈辱を噛み締める事しか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

その日の午後17時頃

 

徳川邸に呼び出されたジャックが徳川と向かい合って座っていた。

座布団に座ってから十分以上が経過し、徳川がようやっと口を開く。

 

「ジャックよ。ご指名だ」

「…誰が?」

「少し前に現れた心音の持ち主。挑むのであればだれとでも()る…ただ、名乗り上げないなら自分が選ぶと言っておった」

「試合は…いつ頃で?」

「明日の夜でどうじゃ?」

「………イイデショウ」

 

一分にも満たない会話の内に試合の日程が決まり、蛇神にも即座に連絡が届いた。




この頃の刃牙は、オリバを倒し終えてピクルと出会ってない(存在すら知らない)頃の刃牙なので実力的に低評価喰らってます。本人もオリバを(一方的に)倒してるので
それに加えて一瞬で決着+勇次郎と闘った興奮+話の邪魔をされた+早く帰りたい欲が混ざり若干イライラしてたので露骨に態度が悪いです。

親子喧嘩が終わったら、『良き』を貰えるくらいには評価が上がる事でしょう。
ちなみに勇次郎に対しては、『満足』と評価しています。

次回はいつになるのだろうか。
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