野望も抱けずにひたすら生き残ろうとしてる畠山政頼さんの転生物語   作:区星

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前話とはガラリと違っていつもの感じになります、原作部分なのでね。許して


10話 姉川の戦い 前

 

「えらいべっぴんさん連れとるやんけ、政頼はんにもついに春が来たんか?」

 

「……私に何の相談もなく勝手に陣を抜けたと思ったらまた女の人を連れてきて、しかもそれが正室候補?ふざけるのも大概にしてください」

 

 憤慨する信教と笑いながらからかってくる孫一を見ながら思案する。

 

 ……全面的に俺が悪いか、しかしこれはやるべき仕事だったので仕方ない。

 

「いいです、話を変えましょう。織田信奈は縦深の陣を敷いて、浅井長政を引きずりこむつもりのようです」

 

「俺が相対するのは朝倉軍ってことか。戦力差的には相当厳しい戦いになりそうだな」

 

「そうです、だから政頼様としっかり話し合って戦略を決めたいと思っていたのですが、肝心の政頼様が部隊の指揮を放り投げて伊勢へ行かれたせいで全く準備出来ていません」

 

 あーまあ雑賀衆連れてきたから許してくれ。河内和泉じゃ流石に一万にすら届かんし厳しい。

 

「まあウチを引っ張って来た時点で大幅に戦力増えとるさかい、許したってくれへんか?」

 

「それも聞いておきます、いくらかかったんですか!雑賀衆を金で動かすとなると相当かかったはずです」

 

「一万五千貫やで、けんにょはんには金払い良すぎるからしゃーなしで動いたるって言い訳したわ」

 

「まあ雑賀衆には金で動いてもらえる程度には貸しがあるからな、まあ今回ぐらいしか頼む機会はないけど」

 

 まあ、貸しといっても俺が当主になった直後の話ではあるし、返してもらえないからどうこうってもんでもないけども。

 

「……あれはまあウチのオトンのせいやけど、雑賀衆全体としては動く理由にはなるやん?」

 

「…………一万五千貫……それって年間で河内の所領から入ってくる年貢とかと変わらないじゃ無いですか、もっとこう安く済ませられなかったんですか……」

 

 無理、根来衆ならもう少し安く動いてくれるかもしれんが。それでも戦力としては若干格落ちする。ここで朝倉に負けて京との連携を切られる方がよっぽどまずい。

 

「朝倉に負けないためならさすがに積むさ、真面目に雑賀衆込みでようやく互角と言い張って無理がないレベルだ。朝倉景恒は将として一段格上だし、富田長繁は見るからに厄介そうな人間だ」

 

 と政頼が語って居ると、大柄な忍び少女が情報を抱えて帰還した。

 

「算正、ただいま帰還。朝倉軍の先鋒は朝倉景恒を主将に、朝倉景健、富田長繁、真柄姉妹と錚々たる面々」

 

 うーわ……豪華という次元じゃねえよ、朝倉主戦派オールスターかな?

 

〜〜〜〜〜〜

 

 一方その数刻前、朝倉陣地。

 

「畠山勢、総勢一万四千とのことです、どうします?私が先陣を切った方が流石に良いのでは」

 

「思ったより多いな、多めに動員しても一万二千、領土に負担を掛けない兵数だと石高的には九千前後だろうと思ってたが……」

 

「どうやら雑賀衆が傭兵として加わって居るようです、その数五千」

 

「五千?!どうやったらそこまで引っ張り出せるんだ、さすがに多すぎる」

 

 朝倉景鏡が困惑する中、総大将の朝倉義景が浅井長政との相談を終えて帰って来た。

 

「浅井長政は相当な心意気で挑むそうよ、わたしたちにそこまでする意義があるかしら」

 

「俺も実際そう思う、畠山勢も思った以上に居る。朝倉としてここで浅井と共に倒れるわけには行かんからな」

 

「とはいえ、着陣してしまった以上は一戦交えなければなりませんが、まあ私が主戦派引き連れて壊滅してくればそれで解決すると言えばそうなのですが」

 

 景恒が物騒な提案をするが義景もそれに乗っかってきた。

 

「そうですね、先鋒で仕留められなければ撤退させましょうか、姉川を渡ればそこから先は勝たなければまともに引けないでしょうし」

 

 いわゆる背水の陣、というやつである。

 

「他はともかくお前はそう容易く死ぬやつじゃないだろ、まあ心配だから朝倉景健を付けるか。あいつならお前の部隊が壊滅しても首捕まえて引っ張って来れそうだし」

 

〜〜〜〜〜〜

 

 遠江、三方ヶ原。壊滅する松平軍にて一人の姫武将が元康の影武者として奮闘していた。

 

「私こそが松平元康!武田の衆よ!我が首、取って見せるが良い」

 

 そう叫び、敵を引きつける夏目吉信の前に6尺は有ろうかという大男がが現れた。

 

「俺の名は原昌胤。姫武将で有ろうが、戦場では関係ない。が、それはそれとして影武者に関わり合ってる時間などない」

 

「だが貴様を倒さねば元康は追えん、少し相手をしてやろう」

 

「貴様が武田の守勢の勇将か、相手にとって不足無し、いざ!」

 

 …………

 

 …… 

 

 勝負は一瞬でついた、胸を石突で打ち抜かれ、吉信は一瞬で意識を失うことになった。

 

「勇気ある将を俺は高く評価する。松平家にはそういった将が多く居るようだな」

 

 

〜〜〜〜〜〜

 

 南近江の畠山陣地で俺は三方ヶ原の戦いの結果を受け取っていた。

 

「んーやっぱり勝てないか。まあそらそうだよな」

 

「となると岐阜に攻めかかるか尾張を切り取るかだが……岐阜を抑えそうだけどな、斉藤道三とたっきーが居るとは言え相当厳しい戦いになるだろうし」

 

 美濃も義龍の帰り忠がなければ厳しいだろう。啄木鳥が発動せずに力押しに徹された場合も時間が稼ぎきれない。

 

「こう考えると俺が負けたらやっぱり厳しいんだよな、朝倉は全力を尽くしてくるだろうし。ウチが潰れれば織田は浅井と朝倉に挟撃される」

 

「そうなれば原作以上に厳しい戦いになる。ならないために引っ張ってきた雑賀衆があるとはいえ流石に不安だ。正直いえば関ヶ原の次に不安なのがこれになるしな」

 

「…………具教を呼んで手合わせするか、多少の発散にはなるだろ」

 

〜〜〜〜〜〜

 

 犬山城内、武田信繁陣地。

 

「よくやってくれたわ、昌胤。まさか松平屈指の勇士である夏目吉信を生け捕りにするなんて」

 

「元康を捕らえられなかったのは残念だけど、三方ヶ原の戦いであれほど粉砕しておけばしばらくは立ち直れないはずよ」

 

 昌胤は今後の戦略を考えながら、手元にある地図の岐阜を指差す。

 

「次は岐阜か?となると斉藤道三を相手取るわけだが……厳しい戦いになりそうだ」

 

「そうね、姉上もここは激戦になると見越して虎の子の騎馬隊を注ぎ込むつもりよ」

 

 (となると織田信奈は二方面作戦を強いられる訳か、少なくとも岐阜城は浅井朝倉との決着が着くまでにはケリを付けてしまいたいところだが……やはり滝川一益が厄介だ)

 

「織田信奈は浅井朝倉との決着が付けばすぐに取って返すはずだ、それまでに軍師様も岐阜城を片付けてしまいたいはず。流石に籠城されると厳しいが……軍師様のことだ、その方策をも考えていることだろう」

 

〜〜〜〜〜〜

 

 俺だ、畠山政頼だ。姉川に着陣した。

 

 正直武田に関してはもう放置するしかないとして、目の前の朝倉軍をなんとかしないとまずい。夜が明けたらそのまま決戦だろう。

 

 両翼に和泉勢、北河内勢を配置。中央に火力に優れた雑賀衆と畠山家の手勢を配置する。いわゆる鶴翼の陣で迎え撃つことにした。

 

 とはいえ畠山勢はある程度自由に動かせる構えだ。

 

 しかしまあ夜が明けるのを待つしかないのがね。信教達は自分の陣地に戻って居るし。

 

「不安ですか?朝倉軍は精強と名高い、それに対して雑賀衆の援軍を引き込んだとて畠山兵はさほど強くありません。負けても仕方ないでしょう」

 

「でもあなたなら飛び道具でもなんでも使って当たるのでしょう、わたしにそうしたように」

 

「そう思うからわたしは安心して旗本兵の指揮を取れますし、あなたに向かってくる兵、その尽くを斬って見せましょう」

 

 ちょっとは安心しましたか?と具教が微笑みかけてきた。

 

 まあ、ちょっとだけな。と返すと「それで良いのです、あなたはそうでないと」と言いながら頭を撫でられた。

 

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