野望も抱けずにひたすら生き残ろうとしてる畠山政頼さんの転生物語   作:区星

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13話 鴨が厄介事を背負ってやってきた

 あの後京で茜を買い、堺に。京にもう一度戻って茶を買い、堺へ。を行って、軍資金を稼いだところで10日の期限が来た、合間に「具教、あーん」「もぐもぐ」とかをやりすぎたかもしれない。

 

 高屋城に戻ると、ある人物が俺の元を訪ねて来た。

 

「私は土居清良(どいきよよし)、西園寺家家臣。と言っても西園寺家はすでに降伏しちゃったから一般浪人なんだけども」

 

 西園寺家が降伏ねぇ……思ったより長宗我部家の伊予方面への進出速度が速い。これは阿波でカチ合うかもしれんな。

 

「西園寺家も決して弱いわけではないはず、そこにお前の力が加われば並みの将なら凌げるはずだが……」

 

 実際久武親信が総大将だった頃は凌いでるしなぁ。香宗我部親泰でも振り分けたのか?

 

「長宗我部元親が直々に出張って来たから流石に厳しかったかな、七千近い兵力を迅速に立ち上げられてはちょっとね」

 

 鬼若子直々かぁ……そりゃ無理だわ。

 

「で、どのようなご用件で?実は時間には余裕があってな。南予の名将土居清良ともあろう方がいらっしゃったのだから歓待するぞ」

 

「そこまでしていただかなくて結構だよ。私は敗軍の将だから」

 

 清良は姿勢を正してこう言った。

 

「それで……単刀直入にいうね?私を家臣に加えてもらえないかな、鉄砲隊の指揮には自信があるから」

 

 彼女の活躍を書いた清良記の記述自体は大して当てにならないが久武親信を寡兵で討ち取った、というのは明確に史実だ。少なくとも戦では役に立つだろう。少なくとも彼女に毛利家や長宗我部家に逃げられるよりはここで家臣に加えておく方がだいぶいいはずだ。

 

「わかった、少なくとも部将格で雇わせてもらうぞ、これからよろしく頼む」

 

「ちょ、ちょっと待って、部将格?」

 

「不足か?なら家老扱いでもいいが……」

 

 少なくともうちの武将の質の関係もあって、今後讃岐や阿波を吸収したとしても指揮官を務められる人間がいない。そう言った指揮官に必要なのは才能だけでなく格が必要である。そうでないと兵が舐めて言うことを聞いてくれない。

 そして俺の副将格として活躍してもらうには侍大将では間違いなく不足、少なくとも部将格は最低限必要だ、

 

「いや、私にそこまでの役職を用意してもらえるのは嬉しいけど、それだと今いる家臣からの反発が心配で……」

 

「結果で黙らせればいい、俺はお前にそれだけの期待をしてる。それだけの重責に応える自信がないならこの話は無しだ」

 

「……わかった、君の言う通り受けるよ」

 

 …………

 

 ……

 

 この後、彼女から伊予の情勢を聞いているとどうやら来島村上水軍が家督交代で元服したての姫武将に家督を継がせたようで付け入る隙がありそうだ。と言う話や、伊予守護河野道宣は毛利家と従属同盟を結んでいるが数々の反乱によって大幅に衰微してる。などなどの情報を得た。

 

 …………この辺りを活かして長宗我部と毛利を食い合わせつつ、来島村上水軍を引き込めないだろうか。

 

 来島村上水軍は先代の道康の時代には義父河野道直を支えて奮闘、道康自身も一時は河野道直の家督をあわや相続寸前まで行ったほどの名将だ。その後継となる来島道総も水軍の将としては一流である、毛利の弱体化もかねて引き込みたい。

 

 現状の情勢は南予を手に入れた事で長宗我部家は一服してる。こちらも本猫寺や三好の出兵を解決しないことにはおちおち四国攻めなんてしてられない。おそらくタイミング的にはほとんど変わらなくなるはずだ、そして原作通りならこの謀略を通したとしてもおそらく第二次木津川口に間に合うかは微妙。せいぜい長宗我部元親の印象と来島村上水軍を味方につけられるぐらい。とはいえ瀬戸内の輸送路を村上水軍を無視して通せるようになれば硝石の輸入経路に苦しまなくて済む。

 

 …………毛利が足利義昭を抱え込まなければこんな面倒な上労力だけ嵩むようなことをしなくていいのだろうが、現状細部に違いがあるとはいえ原作通りに進んでいる、警戒するに越したことはないはずだ。

 

 ともかく現時点で打てる手は来島村上水軍に商人や貿易船経由で資金援助を行うこと、それも村上水軍や当の来島村上水軍にこちらからの金だと気取られないように。

 

 妙に羽ぶりがいい、ぐらいに思われて不審がられる程度が一番いいはず。

 

 …………

 

 ……

 

 と言う話を原作知識抜き、上で話していない長宗我部や河野道宣、毛利家への対策込みで信教と清良に話したら死ぬほどドン引きされた。

 

「謀略の全体像話すだけでこんだけ引かれることあるか?」

 

「まずここまで長期的な謀略をこの一瞬で組み立てつつ費用対効果まで考えてるの頭おかしいと思います、どういう頭してるんですか」

 

「君、頭おかしいってよく言われない?私からみたら北条氏康や毛利元就の域に片足突っ込んでるように見えるんだけど」

 

 思いついちゃったものは仕方ない。これを歴史知識も原作知識も無しに組み立てられるのが彼らだろう。そういう意味では俺はまだ未熟だ。

 

「しかしこれが現実になれば毛利の後背を長宗我部元親が易々と狙えるようになりますね、山陰軍の吉川元春はさておき山陽軍の小早川隆景は相当神経をすり減らすでしょう」

 

「従属同盟中の河野道宣を助けられないと宇喜多直家のような半独立大名からは同盟相手も助けられない大名として見られてしまうだろうな、そうなれば相当苦しくなる」

 

 おやおや?思った以上に副次効果がデカいぞ?

 

「来島村上水軍については……むしろこっちの方がおまけまでありますよ、正直彼ら無しでは河野家は立ち行かないところまでは来ていますし、彼らの離反があれば致命傷になるでしょうけど」

 

「ある意味では蟻の穴から堤も崩れる、と言ったところかな?ここを起点に崩しをかけていくのは正直面白い」

 

 …………。それはそれとして来島村上水軍を引き抜ければ村上水軍対策に使えんかね?

 

「これが毛利との海戦に間に合えば……と思いたい気持ちもまあわかるんですが、どうあがいても初戦は無理です。少なく見積もっても半年単位で掛かるような謀略ですよこれは」

 

「おそらくだけど播磨を狙ってダメなら海路、それでダメなら山陰になるだろうね、毛利の水軍を指揮する彼女のことだ、早めに村上水軍という札は切ってくると思うよ」

 

 あーやっぱり?君らからしてもそう思うんだ、まあねぇ。

 

「一番面倒なのは長宗我部元親をなんとかすることですかね、軽く見積もっても2万は動員して来そうです。一領具足の動員速度はかなりの物ですし、さらにいえば動員人数も石高に比べてかなり多い方です」

 

「彼らの戦術も挟撃重視と単純かつ明快、だからこそ対策が難しい。さらに動員速度が速いせいで攻めに回られるとどんどん苦しくなる」

 

 南予を抑えてる以上土佐一国だけより飛躍的に動員能力は上がっているはずだ、ある意味では格上と数で負けた勝負を強いられる可能性もある。

 

 信教は阿波を指差して、こう続けた。

 

「正直ここで負けると何も始まらないし、使えるものは全て使うべきだと思います。例えばそう、政頼様の隠し札、とか」

 

「隠し札……?一体何のことを指してるのか新参の私にはさっぱり、君は勿論知ってるんだよね?」

 

 アレかぁ……三好家には馬鹿ほど効くだろうが本人の体調だったり色々難しいところはあるからな、正直俺以上の才能を持つ人だ、切りどころは選びたい。

 

「ちらつかせるぐらいはしてもいいかもしれんが、まあ本人次第だな、どっちにしろ腐らせて置くには惜しい札だが」

 

〜〜〜〜〜〜

 

「へくしゅん!ずず……冬は寒さが堪えますね、体調もだいぶ良くなって来たのでまた政頼には迷惑を掛けるとは思いますが恩返しをしてあげたいです」

 

 そう小柄な姫君が話す。

 

 彼女の名前は千、今はただの千である。

 

 




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