野望も抱けずにひたすら生き残ろうとしてる畠山政頼さんの転生物語   作:区星

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14話 本猫寺へ至る道

 

「信奈様、佐和山城城主の磯野員昌から降伏したいとの申し出が来ております」

 

「デアルカ、佐和山城は重要拠点だから召し上げるけどその代わりに高島郡を与えるわ!」

 

「そうだ、磯野員昌には子供が居ないのよね!姉川で信澄を救ってもらった恩もあるし、信澄を預けるわ!もし信澄が一人前になって家督を預けたくなったら楽隠居できるわよ!」

 

 完全に余計なお世話である、この後主君であるお市の姑になる員昌のことも考えてあげてほしい。

 

〜〜〜〜〜〜

 

虎御前山、相良の陣地。

 

「フハハハハ、相良、金ヶ崎ぶりにまた会ったな」

 

 金ヶ崎でも活躍した池田城城主、池田勝正が訪れていた。

 

「勝正さん、一体どうしてここに?摂津が本拠じゃなかったのかよ」

 

「それがだな、妹が三人衆侵攻に合わせて織田信奈を裏切り、三好家につくと言い出してな。城を奪われたのだ」

 

「やっぱりそうか……」

 

 (あの時、悲しげな目をしていたのはこれを察していたからだったのか)

 

「それでだな、相良。未来人である貴様には一門衆もいないせいで家臣不足だろう。我を家臣に加えてもらえないだろうか」

 

「いいのか?信奈はケチだから大して給金は出せないけど」

 

「構わん、貴様の運命を直ぐそばで見れることがその報酬だ」

 

〜〜〜〜〜〜

 

「……りきゅ」(信奈様は姉川での畠山家の奮闘に感謝するとともに、浅井が進軍するまでは参陣しなくて良いとおっしゃった)

 

「そりゃあありがたい、が…………」

 

「りきゅ〜」(幸いにも朝倉はほとんど動きを見せていない、十分織田勢で対応出来る。とのこと)

 

「朝倉かぁ……姉川の戦いも後ろの一万二千を叩きつければウチは持たなかったはずなんだよな、ただ浅井が本陣手前で崩れてる以上姉川を渡っていたら死地に放り込まれるのは朝倉もそうだったと考えると、逆に正しい判断だったのが腹が立つ」

 

「りきゅ?」(朝倉軍が戦意が低かったせいで負けたと聞いたけどそうじゃなかったの?)

 

「朝倉が戦意低かった、というわけではないかな。少なくとも先鋒は戦意旺盛だったから、とはいえ朝倉全体を通して考えると、浅井長政が織田と心中しても構わないぐらいの勢いで突っ込んで来たのに対して朝倉軍は一歩引いてたのは事実だ」

 

「どちらにせよ、明確に敗因として挙げるなら朝倉の戦意よりも浅井の不可解な撤退の方がなーという感じではあるかな」

 

「りきゅ〜!」ポン

 

 あ、茶器の中に小粒金だ。いつの間に?

 

 この茶器錬金術、本当によくわからない謎の技術ではあるのだが、どうやら西洋の錬金術と茶器の組み合わせであるのは間違いないようだ。

 

「このような錬金術が出来る大名物が、一個六百貫から」

 

 たけーよ!勝家の年収の半分じゃねぇか。そして可愛い声だな!

 

「りきゅ」(今日は信奈様の伝令と営業に来た)

 

 と千利休と遊んでいると。

 

「茶会中失礼するよ、三好家が本格的に動き出した、三好三人衆はもちろんのこと、篠原長房に十河存保まで加わっている」

 

「兵力の数は一万ほど、狙いは尼崎と堺だよ」

 

 と土居清良が急報を知らせて来た。

 

「篠原長房はそうそう動けないはずと見たんだが……彼女が動くとなると三人衆の独断というよりは三好家全体としての動きだろうな。ここを粉砕してやれば三人衆はもはや阿波讃岐にはいられないだろう」

 

「その篠原長房から書状が届いてる」

 

 その書状の要約をすると。

 

『ごめん、これまで散々理屈捏ねて三人衆を妨害して来たけどこれ以上やると三人衆どころか十河存保の機嫌まで損ねそうだったから仕方なしの出陣になる。将軍様にはよろしく伝えておいてくれ』

 

 とのことらしい。あー、板挟みかぁ。

 

「ともかく出兵しないことには厳しい、まずは堺を確保するために南摂津の天王寺砦に兵を送る。そっからは信奈の動きに合わせて兵力をどうするか決めるが……義継や光の動向はどうなってる?これに乗じられたら流石に天王寺砦とか言ってられなくなるぞ?」

 

「両方とも対三好のために部隊を編成してるよ、君の危惧は正しいけど流石に彼女たちもそこまで阿呆ではない。朝倉が巣篭もりしている以上織田信奈はこちらにほとんどの戦力を振り分けられる、ここで背くことは滅亡一直線さ」

 

 ここで大規模な反乱が起きていたらそれこそ俺は高屋城に籠るしか手段の取りようがなくなるのでまあ良かった。

 

「軍議を開くぞ、堺を抑えられる前に天王寺砦に向かわないとまずい」

 

〜〜〜〜〜〜

 

 前日、若江城。若江三人衆が筆頭、多羅尾綱知の屋敷に池田教正、野間長前が集合していた。というのもーー。

 

「ふーん、関白様からの密書ね。三人衆に同調して将軍義栄を追いなさい、と」

 

「そうですわ、代わりの神輿すら提案されてございません。おそらく足利義輝の妹でも戻すのでしょうけれど……」

 

 疑問視する多羅尾綱知に同調するように池田教正はこうも続ける。

 

「そもそも本猫寺を蜂起させるにしても、朝倉が完全に巣篭もりの体制に入ってしまってる以上誰が背後を突くのかしら。上杉謙信?まだ雪は解けてないわよ?」

 

「武田信玄も北条氏康の救援で小田原城に詰めている。これでは背後を突くも何もあった物じゃない」

 

 野間長前が痛烈に指摘する。

 

「現時点では画餅どころか書きかけの餅ね、というか誰かがそうさせたのかしら」

 

「三好家は畿内を追われてから阿波衆と三人衆の路線対立もあり、一度も畿内に顔を覗かせていません。これが暴発の理由になったのでしょう」

 

「むしろ関白様は後付けで手を打って居るのでは?わたくしはそう考えますわ」

 

 当たらずとも遠からず。三人衆の暴発に合わせて本猫寺を蜂起させ、さらに浅井朝倉を動かすつもりだったが朝倉ににもべもなく断られた形である。

 

「ともかくこの書状は……見なかったことにするわ」

 

「畠山政頼は今のところは私たちや義継様をそう蔑ろには出来ないはずです、ここでその信用に背くのは美味しくありません」

 

 と野間長前が締めくくり、彼女たちの会談は終わった。

 

〜〜〜〜〜〜

 

 そんな若江三人衆が喧々諤々の議論の果てに関白の密書を見なかったことにしたのを全く知らない畠山政頼は、南摂津の天王寺砦で三好義継と若江三人衆、および松浦光の名代である寺田姉妹と合流した。

 

「これで堺の確保は出来たか。とはいえ俺らだけでは三好三人衆を追討するには戦力不足」

 

 となると、本猫寺への備えも兼ねて根来衆を呼び出すか。本音を言えば岸和田城ではなく天王寺砦まで上がらせたいが、本猫寺を刺激しすぎてもまずい。

 

「算正、根来衆を岸和田城まで引っ張って来てくれ。三人衆への備えに使う」

 

「了解いたしました」

 

 後は信奈の到着を待って迎え撃つだけ……だけだといいなぁ。

 

「「野田福島の攻略に必要になると思ったので真鍋水軍を準備しました」」

 

 寺田姉妹がハモリながら言う。水軍……?和泉にそんな使えそうな水軍あったかな……。

 

「「淡輪の真鍋氏が有する水軍になります、数は関船五十隻ほどになりますが足しにはなるでしょう」」

 

 淡輪というとええっと…………確か今で言う岬町(南の西の端っこ)らへんか、あそこだと雑賀衆とも近いんだよな。

 

 あんまり数がないけど今回ばかりは贅沢言えない。なんせ安宅水軍の引き抜きとか一切手を付けてなかったのだから。

 

 

 




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